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2019年10月31日(木)更新

マトリックス組織

「マトリックス組織」とは、「職能」「エリア」「事業部」など様々な構成要素を組み合わせ、複数の指揮命令系統により組織を管理する形態のことを言います。2016年にトヨタ自動車が導入したことで大きな注目を浴びました。では、マトリックス組織とはどのような特徴を持つ組織構造なのでしょうか。他の組織構造との違いや、そのメリット・デメリット、三つの類型や導入ポイント、そして実例まで詳しく解説します。

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マトリックス組織とは?

「マトリックス組織(マトリクス組織)」とは、例えば「職能」「エリア」「事業部」などの構成要素を組み合わせて組織を作る方式です。従来のような一元管理ではなく、複数の指揮命令系統により組織を管理する形態のことを言います。

マトリックス組織のメリット

マトリックス組織をつくることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

メリット①複数の組織構造の組み合わせで、柔軟な対応が可能に

様々な組織構造のメリットを持ち合わせているため、市場の変化やクライアントの希望に柔軟に対応しながらも、一貫して管理しやすいのが魅力です。

多角的な経営を行っている企業では、例えば国別、製品別、機能別など3つの組織構造を組み合わせた「三次元マトリックス」なども導入されています。

メリット②複雑な管理が必要なグローバル展開にも有効

グローバル展開を進める際、エリアごとの市場特性を見抜くためのマネジメントが必要であると同時に、各種製品別の管理も重要となります。製品部門は、各エリア部門からの情報を吸い上げながら改良や機能追加を進めることで、地域特性に合った製品の提供を可能とします。

グローバル化が進む現代においてマトリックス組織は必要不可欠な存在となりつつあります。

マトリックス組織のデメリット

マトリックス組織を導入するデメリットとしては、主に以下のような点が挙げられます。

  • レポートラインが複数存在するため、組織全体で情報が重複するなど、複雑化しやすい
  • 複数人の上司が存在するため、組織構造を形成する際に役割や責任の分担を怠ると、指揮命令系統に混乱を招いてしまう

複数の要素を組み合わせて組織を形成していくため、指揮命令系統やエスカレーションの経路が複雑になってしまうというのがデメリットになりうるでしょう。

責任者や最終的な意思決定者を明確にしたり、混乱を防止するためにルールを設計したりすることで未然に防げるよう工夫しなければなりません。

その他の組織構造との違い

他の組織構造と、マトリックス組織の違いについて見ていきましょう。

プロジェクト型組織

「プロジェクト型組織」とは、新規プロジェクトごとにチームを結成した形態のものを言います。

  • メリット:プロジェクトごとにプロジェクトマネージャーが任命されるため、責任の所在がはっきりとしており、クライアントの細かな要望なども即座に反映させやすい
  • デメリット:プロジェクト終了後にチームは解散となってしまうため、そのプロジェクト中に得た情報や技術などの成果物を正しく記録して保管しておかないと、次回以降に活かせなくなる など

マトリックス組織との違い

各種部門をまたいで人材が集まるという意味ではマトリックス組織と似ていますが、マトリックス組織はそもそも人材が複数の組織に所属しているという点に違いがあります。また、マトリックス組織は一時的なものではなく、継続的な組織であるという点も大きな相違点です。

機能型組織

「機能型組織」とは、組織のトップの下に、開発や製造、販売、人事などの機能別部門(職能部門)がぶら下がっている形態の組織構造を言います。

  • メリット:指示命令系統が一貫しているため、統制が取りやすい。同じ業務を担当する人材が集まっているため、その専門性を高めたり、スキルを蓄積したりもできる
  • デメリット:部門外との連携や情報交換に弱く、市場の変化への対応が難しいという点 など

マトリックス組織との違い

マトリックス組織との大きな違いは、その組織形態が「機能」単位であるか、「機能」と「エリア」など複数の軸から編成されるかにあります。また、マトリックス組織では人材が行と列、2つの組織に属しており、双方の知識・スキルを持てるため、機能型組織よりもマルチな人材を育てることに長けているとも言えます。

事業部制組織

「事業部制組織」とは、大規模な組織で一般的に導入されている組織構造であり、地域別、製品別、ブランド別などの関連事業単位でまとめられた組織構造のこと言います。

  • メリット:事業部ごとに分かれているため、その分野における情報交換を密に行うことができる。高度な意思決定でも事業部内で完結できるケースも多く、市場の変化に合わせた方向修正に迅速かつ柔軟に対応しやすい
  • デメリット:強い決定権を持つ組織だけに、正しい判断力を持った責任者を設定しなければ組織全体にとって大きな損失となる場合がある。独立性の高さによって事業部間の連携が疎かになりやすく、情報の伝達や共有の際に大きな支障をきたす場合も

マトリックス組織との違い

マトリックス組織との大きな違いは、組織形態が「事業部」単位であるか、複数軸による編成であるか、という点にあります。また、マトリックス組織は少なくとも2名の責任者のもとに業務を行うため、意思決定などの際の視野を広げやすいです。そして、人材が複数軸の組織にまたがっているため、横の連携も取りやすく、情報伝達もスムーズという特徴があります。

マトリックス組織の類型

特殊な構造を持つマトリックス組織ですが、プロジェクトチーム結成時におけるプロジェクトマネージャーの配置の有無やその選出方法の違いから、さらに3つの組織構造に細分化できます。

ウィーク・マトリックス型組織

まず、ウィーク・マトリックス型(ウィーク型)組織です。

この型では、プロジェクトマネージャーは配置せず、プロジェクトメンバー達がリソースの調整や判断などを行います。そのため、メンバーの能力や関係性によっては指揮命令系統がうやむやとなってしまい、非効率的な環境が形成されてしまうというリスクもあります。

しかし、現場において柔軟な対応を取ることができ、フットワークの軽いプロジェクトチームを作り上げることができるというメリットもあります。

  • プロジェクトマネージャーの配置:配置されない
  • プロジェクトマネージャーの選出方法:(配置されない)

バランス・マトリックス型組織

次に、バランス・マトリックス型(バランス型)組織です。

プロジェクト全体の進行速度を常にチェックし、必要に応じてリソースを再調整する必要があるシステム開発などを多く扱う企業などで取り入れられます。

しかし、プロジェクトマネージャーとは別に、部門におけるラインマネージャーが存在するため、複数の上司による調整の悪化というマトリックス組織特有のデメリットの表面化も懸念されるため、注意が必要です。

  • プロジェクトマネージャーの配置:配置する
  • プロジェクトマネージャーの選出方法:プロジェクトメンバーの中から選出される

ストロング・マトリックス型組織

最後に、ストロング・マトリックス型(ストロング型)組織についてです。

一般的にプロジェクトマネジメントオフィスから選任されたマネージャーは、ラインマネージャーよりも強い責任権限を持ちます。これにより、指示命令系統が明確になり、メンバーはプロジェクトに集中できます。独立部門設立のため、小規模な企業においては敷居が高く、ランニングコストなどの問題も浮上します。

しかし、各プロジェクトにおける成果物をしっかり管理でき、経験や情報、ノウハウなどを蓄積出来るというメリットは絶大なものでしょう。

  • プロジェクトマネージャーの配置:配置する
  • プロジェクトマネージャーの選出方法:プロジェクトマネジメントを専門的に扱う部門(プロジェクトマネジメントオフィス=PMO)を独立させ、その部門から選出した担当者を各プロジェクトに配置する

マトリックス組織を実践するにあたって重要なこと

高い効果を期待できるマトリックス組織ですが、複数の上司とレポートラインの存在による組織内の混乱を避けたいというリスク回避の観点から、導入するまでに至らないという現状があります。

どのすればこのリスクを軽減し、マトリックス組織の持つメリットを最大限に活かせるのでしょうか。

組織の方向性に対する共通認識を持たせる

マトリックス組織の導入に際して大切なのは、従業員に組織の方向性に対する共通認識を持ってもらうということです。

それにはまず、マトリックス組織やその他の組織構造の違いなどについての説明に加え、「なぜ今、マトリックス組織の導入が必要なのか」「自社のどのような課題を解決しようとしているのか」など、その目的や目標、重要性について説明し、理解を促す必要があります。

特に、マトリックス組織化を進める上で、実際に現場で組織を動かす管理者の協力は必要不可欠であり、事前に説明会や研修などの機会を儲けることも必要でしょう。

自社にあったマトリックス組織の類型を導入する

先ほどもご紹介したように、マトリックス組織には3つの類型があります。まずは、それぞれの類型について理解した上で、自社がマトリックス組織を導入する目的や、企業規模、社内の現状などと照らし合わせた上で、どの型で導入するのかを検討します。

組織改革は、失敗した場合でもすぐに改変することは難しいため、現場の管理者なども含め事前の十分な検討が重要です。

指揮命令系統を整理する

マトリックス組織を導入すると、社員にとっては所属部署や上司が複数となり、必然的に情報が複雑化します。その際、どの上司の指示を採用すべきなのか、双方の指示にギャップがある場合、どのように対応すべきかなど、事前のルールづくりが重要となります。

意思決定者や指示の内容についての優先順位はもちろん、管理者同士でどのように連携を取るのかなど、指示命令系統を明確化、整理しておく必要があります。

マトリックス組織導入事例:トヨタ

複数の国や地域において販売活動を行う際、そのエリアごとに最適化したマーケティング活動が必要となります。ただ、製品管理や事業展開などにおいては、それら専門のマネジメントが必要です。このように、複数の視点からの管理が必要なグローバル展開において、マトリックス組織は欠かせない手法となっています。

2016年3月、グローバル市場において大きな活躍を見せているトヨタ自動車(TOYOTA)がマトリックス組織を導入し新体制を作っていくことを発表して大きな話題となりました。 大企業になればなるほどマトリックス組織の中途導入は難しく、企業内の混乱が起こる可能性も大きくなります。

そのため、すでに安定したグローバル経営を行ってきていたトヨタ自動車がなぜ今リスクを背負う必要があるのかと、多くの経営者から注目を浴びることとなったのです。

豊田社長の描くイメージとは

この大規模な組織改革を行うにあたり、豊田章男社長は「組織改正は『ソリューション』ではなく『オポチュニティ』である」と発言しています。

ソリューションとオポチュニティという二つの用語の意味と違いを正しく理解することが豊田章男社長の戦略を理解する第一歩となるでしょう。

ソリューションとオポチュニティ

ソリューション(solution)には「解答」「解決」「解法」などの意味があります。 それに対し、オポチュニティ(opportunity)は「機会」「好機」「チャンス」といった意味を持ちます。

つまり、今回トヨタ自動車が行った組織改革について豊田章男社長は、グローバル化において生じた問題に対する解決策として選択したわけではなく、トヨタ自動車という企業が今後更に大きく羽ばたいていくためのチャンスを自ら作ったのだと主張しているのです。

トヨタのマトリックス組織を紐解く

今回の組織改革において、縦軸として第1トヨタ、第2トヨタなど4つのビジネスユニットを設置し、そこに横軸として技術開発本部や生産管理本部、経理本部などを横断させることによってマトリックス組織を形成しました。

第1トヨタと第2トヨタはそれぞれ世界各地の販売エリアを有しており、今回のマトリックス組織の形成によってこれまで以上にローカル市場動向の把握に力を入れ、販売戦略を地域に特化したものに強化していきたいというトヨタ自動車の方向性が明らかとなったのです。

【参考】「仕事の進め方変革」をさらに推進/TOYOTA Global Newsroom
【参考】トヨタの「異次元改造」が始動 複雑怪奇な組織体制へ/ライブドアニュース

国内のみで展開している企業でも活かせるマトリックス組織

世界進出を意識して活動を行う組織が導入するイメージの強いマトリックス組織ですが、国内のみで展開している中小規模の組織の場合にはどのように活用できるでしょうか。

地域に密着し、非常に限られた範囲で活動を行っている酒屋があったとします。 その酒屋は現時点で大きな問題を抱えておらず、固定の顧客が多いため新規開拓する必要性もありません。

しかし、酒の種類やターゲット層(一般客と飲食店)などに細分化した部門を新設しマトリックス組織を形成することにより、専門的知識を持つプロフェッショナルやターゲットごとに的確な営業ができるエキスパートを育成し、組織としての更なる可能性を広げることができるのです。

前述したトヨタ自動車のマトリックス組織導入の際、豊田章男社長は「この組織改正を将来の正解にするのも、間違いにするのも私たち自身である」と述べています。

ビジネスシーンにおいて100%の正解は存在せず、評価の対象はいつでも結果に向けて行われます。 マトリックス組織という複雑な組織構造を扱うことは決して容易くはありません。

だからこそ、マトリックス組織には多くの可能性が秘められているのです。

まとめ

  • マトリックス組織を導入することにより、様々な組織構造のメリットを融合して柔軟な対応が可能となる反面、情報共有や指揮命令系統などが複雑化する可能性もあるため対策が必要です。
  • マトリックス組織を導入する際は、あらかじめ社内で組織改編についての共通認識を持たせることや、指揮命令系統についてルールを整理するなどの準備が必要です。
  • 複数の国や地域ごとにマーケティングを必要とするグローバル展開においては、製品やサービス別の事業とクロスさせて管理することが必要であり、マトリックス組織が非常にマッチしている手法であると言えます。

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