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2017年11月15日(水)更新

マトリックス組織

マトリックス組織という組織構造についてご存知でしょうか?2016年に大企業のトヨタが取り入れて大きな注目を浴びたマトリックス組織とは、どのような特徴を持つ組織構造なのでしょう。メリット・デメリットや実例を上げて解説致します。

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代表的な3つの「組織構造」

企業などの組織内部において使用されているコミュニケーションの流れや、責任、権限 などの関係性を示したものを組織構造と呼びます。

そして、この組織構造がしっかりと形成されている企業ほど、情報伝達がスムーズに行われ、従業員1人1人が自分の行うべき仕事を正しく把握し、企業戦略が実現されやすくなるのです。

組織構造には多くの種類があるのですが、その中でも多くの企業で導入されている機能別組織(機能型組織)、事業部制組織(プロジェクト型組織)、マトリックス組織を順に紹介致します。

機能別組織(機能型組織)

組織のトップの下に、開発や製造、販売、人事などの機能別部門(職能部門)がぶら下がっている形態の組織構造を機能別組織と呼びます。

地域密着型の企業や、中小規模の組織で選ばれることの多い機能別組織ですが、メリットやデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

メリット

機能別組織という組織構造のメリットは、部門別に行う作業の目的が明確なものとなっており、個々の役割分担がしっかりと行われているため、効率的に業務を行うことが出来るということです。

また、部門内における情報の交換や共有もスムーズに行えるため、情報漏れなどによるミスを防ぎやすいという利点もあります。

デメリット

機能別組織は部門内で多くの情報や作業を完結する特徴を持ちますが、そのメリットは反面で部門ごとの孤立性を示すものでもあります。

つまり、権限を強く握る上司の判断が無ければ一般社員が行動に移すことが出来ないため、指示待ち状態に陥ってしまうと作業スピードが急激に落ちてしまうという問題や、新規プロジェクトを立ち上げた際に責任の所在をどこにおくべきかというトラブルが発生する恐れがあるのです。

また、部門外との連携や情報交換に弱いというのもデメリットといえるでしょう。

事業部制組織(プロジェクト型組織)

組織のトップの下に直接各部門がぶら下がっている形態の機能別組織に対し、地域別、製品別、ブランド別などの関連事業単位でまとめられた組織構造のことを事業部制組織と呼びます。

また、事業部制組織の中でも新規プロジェクトごとにプロジェクトチームを結成し、独立してプロジェクトに打ち込むといった形態のものをプロジェクト型組織と呼びます。

全国にチェーン展開を行っている企業や、比較的大規模な組織において多く用いられる事業部制組織ですが、メリットやデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

メリット

事業部制組織は地域別、製品別、ブランド別などの事業部ごとに分かれているため、その分野における情報交換を密に行うことができます。

また、設定された事業領域の範囲内において独立企業レベルでの決定権を持たせる場合もあり、高度な意思決定についても事業部内で完結することが出来るため、市場の変化に合わせた方向修正や微調整を行いたいと思った場合に迅速かつ柔軟に対応出来るということも事業別で活動を行う大きなメリットといえるでしょう。

プロジェクト型組織においてはそのプロジェクトごとにプロジェクトマネージャ(プロジェクトマネジャー、プロジェクトリーダー)が任命されるため、責任の所在がはっきりとしており、窓口としてクライアントの細かな要望などを聞き入れることで、即座にプロジェクトに反映させることができます。

また、その専門性の高さゆえに作業効率の成果の向上に大きな期待を持つことができます。

デメリット

強い決定権を持つ事業部制組織やプロジェクト型組織だけに、正しい判断力と決断力を持った責任者を設定しなければ組織全体にとって大きな損失となる場合があります。

さらに、独立性の高さによって事業部間の連携が疎かになりやすく、情報の伝達や共有の際に大きな支障をきたす場合もあります。

また、プロジェクト型組織であればプロジェクト終了後にチームは解散となってしまうため、そのプロジェクト中に得た情報や技術などの成果物を正しく記録して保管しておかないと、次回以降のプロジェクトに活かすことが出来なくなることもあるのです。

「マトリックス組織」とは?

組織構造には多くの種類がありますが、その中でも特殊な構造を持つのがマトリックス組織(マトリクス組織)です。 マトリクス(matrix)は、行と列によって形成される格子状の配列や表の事を指します。

多くの組織構造がトップから下に向けて裾を広げていく形態を取っているのに対し、マトリックス組織では部門編成を網の目のように交差させた形態を取っているのです。

具体的には以下のような組織構造があります。

  • 地域別や製品別の事業部制組織をベースとして、人事や経理などの専門性の高い分野のみ本社からチェックを行うために機能別組織として横断させている
  • 普段は事業部制組織や機能別組織という形態を取っているが、プロジェクトを行う必要が出た際にはプロジェクトチームを結成して独立部門として活動を行わせ、その成果物については永続的に存在している部門が回収を行う

このように様々なパターンの組織形態を形成することのできるマトリックス組織ですが、メリットやデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

マトリックス組織のメリット

マトリックス組織は組み合わせられたそれぞれの組織構造のメリットを持ち合わせているため、市場の変化やクライアントの希望に対して柔軟に対応を行いながらも、一貫して管理を行うこともできる非常に優れた組織構造であるといえます。

そのため、海外進出など多角的な経営を行っている企業では、国別、製品別、機能別など3つの組織構造を組み合わせた三次元マトリックスなども導入されております。

また、グローバル化が進む現代においてマトリックス組織は必要不可欠な存在となりつつあります。 日本国外で製品を販売したいと考えた場合、エリアマネージャ(エリアマネージャー)率いる地域別組織によって国や地域といったエリアごとの市場特性を見抜くためのマネジメントを行います。

それと同時に、事業責任者が率いる製品別組織は地域別組織からの情報を吸い上げながら製品の改良や機能追加などを行っていきます。 このようにマトリックス組織としてそれぞれの事業領域内で力を発揮する事により、それぞれの地域特性に合った製品の提供が可能となるのです。

マトリックス組織のデメリット

マトリックス組織はそれぞれのメリットを組み合わせることのできる優れた組織構造であることが分かりました。 それでは、なぜ多くの企業がこのマトリックス組織を取り入れることに対して躊躇しているのでしょうか。

組織の複雑化

マトリックス組織ではレポートラインが2方向や3方向と複数存在します。 そのため、組織全体で見た際に重複する情報も存在することとなり、複雑化しやすいといったデメリットがあります。

一度活動を始めた組織構造は、そう簡単に変えることはできません。 それだけに、組織構造を検討する際に複雑化させることは極力避けたいと考えるのです。

複数の上司による調整の悪化

マトリックスの行と列それぞれが別の事業分野となっているせいで構成員の上には複数人の上司が存在することとなります。

それぞれの上司が自身の役割と責任を把握して適切な指示を行えれば良いのですが、組織構造を形成する際に役割や責任の分担を怠ってしまうと指示命令系統(指揮命令系統)に混乱を招いてしまうというのも大きなデメリットといえるでしょう。

マトリックス組織の累計

特殊な構造を持つマトリックス組織ですが、プロジェクトチーム結成時におけるプロジェクトマネージャ(project manager)の配置と選出方法から、さらに3つの組織構造に細分化することができます。

ウィーク・マトリックス型組織

ウィーク・マトリックス型組織では、機能別組織と同様にプロジェクトマネージャを配置する事無く、プロジェクトメンバー達がリソースの調整や判断などを行います。

そのため、メンバーの能力や関係性によっては指示系統がうやむやとなってしまい、非効率的な環境が形成されてしまうリスクを伴います。 しかし、そのような問題点をクリアする事が出来るならば、現場において柔軟な対応を取ることができ、フットワークの軽いプロジェクトチームを作り上げることが出来るのです。

バランス・マトリックス型組織

バランス・マトリックス型組織では、プロジェクトメンバーの中からプロジェクトマネージャが選出され、配置されることとなります。

そのため、プロジェクト全体の進行速度を常にチェックし、必要に応じてリソースの再調整を行う必要があるシステム開発などのプロジェクトを多く扱う企業などで取り入れられます。

しかし、プロジェクトにおけるプロジェクトマネージャとは別に、部門におけるラインマネージャ(ラインマネジャー)が存在するため、複数の上司による調整の悪化というマトリックス組織特有のデメリットが表面化されてしまいます。

この問題に対し、ラインマネージャがプロジェクトマネージャを兼任することで指示命令系統をまとめてしまう方法もありますが、部門についての報告とプロジェクトについての報告が混同してしまうという情報管理面での不安が生まれ、マネージャの兼任を行う担当者の負担も大きなものとなることから、この方法を取り入れる際にはしっかりとケアを行う準備もしておく必要があるでしょう。

ストロング・マトリックス型組織

ストロング・マトリックス型組織では、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO=Project Management Office)のようにプロジェクトマネジメントを専門的に扱う部門を独立させ、その部門から選出した担当者を各プロジェクトにプロジェクトマネージャとして配置します。

そして、一般的にプロジェクトマネジメントオフィスから選任されて配置されたプロジェクトマネージャは、ラインマネージャよりも強い責任権限を持ち、プロジェクトの遂行に全力を注ぐこととなります。

これにより、指示命令系統が明確になり、プロジェクトメンバー達はプロジェクトに集中することができるのです。

独立部門を設立しなければならないため、扱うプロジェクト数が少ない組織や小規模な企業においては敷居が高く、ランニングコストなどの問題も浮上します。

しかし、各プロジェクトにおける成果物をしっかりと管理でき、経験や情報、ノウハウなどを蓄積していくことが出来るというメリットは絶大なものでしょう。

管理者育成がマトリックス組織を形成する鍵となる

高い効果を期待できるマトリックス組織ですが、複数の上司とレポートラインの存在による組織内の混乱を避けたいというリスク回避の観点から、導入するまでに至らないという現状があります。

どのような努力や業務改善を行えば、このリスクを軽減し、マトリックス組織の持つメリットを最大限に活かすことが出来るのでしょうか。

組織の方向性に対する共通認識を持たせる

まず大切なのは、組織の方向性に対する共通認識を持ってもらうということです。

これはマトリックス組織という組織構造に限らず、組織活動を行っていく上で欠かしてはならない重要な要素ですが、マトリックス組織においては認識のわずかな違いが大きな歪みを生み出し、即座に現場の動きの鈍化へと繋がってしまうため、今一度しっかりと徹底しておく必要があるでしょう。

管理者育成を行う際にこの部分を意識的に教育することにより、違う部門の管理者として配置された後も共通認識に基づいて指示や命令、判断を下すこととなり、複数の上司による見解の違いなどのトラブルを解消することが出来るのです。

必要に応じて柔軟な情報共有を行う

共通認識の徹底と共に、組織内の風通しを良くする工夫も行いましょう。 いくら共通認識の上で組織活動を行えるようになったとしても、それはマイナス要素を取り除いただけに過ぎないのです。

そこにプラス要素として部門間コミュニケーションの円滑化を加えることによって、マトリックス組織は更なる力と効果を発揮してくれることでしょう。

企業のグローバル化が複雑な組織構造を加速させる

日本企業のグローバル化が課題に上がるようになってから長い月日が経ちましたが、未だに多くの企業がグローバル市場における立ち回り方や組織構造の確立について正解を見出せずにいます。

日本国内でのマーケティングに成功している企業でも、日本国外となると途端にマーケティング不足に陥ってしまい、効果的な戦略を組み立てられなくなってしまうのです。

そのため、世の中の動向を観察する中で販売市場をいくつかの国や地域に絞り、そのエリアごとにエリアマネージャを中心とした部門を設置してマネジメントを実施、継続していく必要性があるのです。

そして、そのマネジメント結果を販売する製品の能力や価格に反映させるため、経営戦略の自然な流れとして複数軸による管理を行うマトリックス組織が選択されるのです。

トヨタが海外向けにマトリックス組織を導入

2016年3月、グローバル市場において大きな活躍を見せているトヨタ自動車(TOYOTA)がマトリックス組織を導入し新体制を作っていく事を発表して大きな話題となりました。 大企業になればなるほどマトリックス組織の中途導入は難しく、企業内の混乱が起こる可能性も大きくなります。

そのため、すでに安定したグローバル経営を行ってきていたトヨタ自動車がなぜ今リスクを背負う必要があるのかと、多くの経営者から注目を浴びることとなったのです。

豊田社長の描くイメージとは

この大規模な組織改革を行うにあたり、豊田章男社長は「組織改正は『ソリューション』ではなく『オポチュニティ』である」と発言しています。

ソリューションとオポチュニティという二つの用語の意味と違いを正しく理解することが豊田章男社長の戦略を理解する第一歩となるでしょう。

ソリューションとオポチュニティ

ソリューション(solution)には『解答』『解決』『解法』などの意味があります。 それに対し、オポチュニティ(opportunity)は『機会』『好機』『チャンス』といった意味を持ちます。

つまり、今回トヨタ自動車が行った組織改革について豊田章男社長は、グローバル化において生じた問題に対する解決策として選択したわけではなく、トヨタ自動車という企業が今後更に大きく羽ばたいていくためのチャンスを自ら作ったのだと主張しているのです。

トヨタのマトリックス組織を紐解く

今回の組織改革において、縦軸として第1トヨタ、第2トヨタなど4つのビジネスユニットを設置し、そこに横軸として技術開発本部や生産管理本部、経理本部などを横断させることによってマトリックス組織を形成しました。

第1トヨタと第2トヨタはそれぞれ世界各地の販売エリアを有しており、今回のマトリックス組織の形成によってこれまで以上にローカル市場動向の把握に力を入れ、販売戦略を地域に特化したものに強化していきたいというトヨタ自動車の方向性が明らかとなったのです。

【参考】「仕事の進め方変革」をさらに推進 | TOYOTA Global Newsroom
【参考】トヨタの「異次元改造」が始動 複雑怪奇な組織体制へ /ライブドアニュース

国内のみで展開している企業でも活かせるマトリックス組織

世界進出を意識して活動を行う組織が導入するイメージの強いマトリックス組織ですが、国内のみで展開している中小規模の組織の場合にはどのように活用することができるでしょうか。

地域に密着し、非常に限られた範囲で活動を行っている酒屋があったとします。 その酒屋は現時点で大きな問題を抱えておらず、固定の顧客が多いため新規開拓を行う必要性もありません。

しかし、酒の種類やターゲット層(一般客と飲食店)などに細分化した部門を新設しマトリックス組織を形成することにより、専門的知識を持つプロフェッショナルやターゲットごとに的確な営業を行えるエキスパートを育成し、組織としての更なる可能性を広げることが出来るのです。

前述したトヨタ自動車のマトリックス組織導入の際、豊田章男社長は「この組織改正を将来の正解にするのも、間違いにするのも私たち自身である」と述べています。

ビジネスシーンにおいて100%の正解は存在せず、評価の対象はいつでも結果に向けて行われます。 マトリックス組織という複雑な組織構造を扱うことは決して容易くはありません。

だからこそ、マトリックス組織には多くの可能性が秘められているのです。

まとめ

  • メリットとデメリットを正しく理解した上で組織構造の選択を行う
  • マトリックス組織の成功の鍵は管理者の育成にある
  • 組織改革は更なる飛躍のチャンスであり、中小規模の組織であってもそれは変わらない

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