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連載:第15回 中竹竜二さんが聞く【新しい組織・リーダー論】

専門家たちを集い、患者・家族を救う――在宅医療は究極のチームビルディング【医療法人社団悠翔会理事長・佐々木淳さん】

BizHint 編集部 2019年3月18日(月)掲載
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「在宅医療サービス」は住み慣れた自宅で、充実した最期を迎えるための総合的ケアサービス事業。医師、歯科医師、看護師、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、管理栄養士など多様なプロたちがチームを編成して、献身的なサービスを提供しつづけている「難しくもやりがいがある仕事」です。首都圏最大の在宅医療サービスを展開する医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長に在宅医療の現場について聞きました。

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医療法人社団悠翔会

理事長・診療部長 佐々木淳さん

1973年生まれ。筑波大学医学専門学群卒業後、三井記念病院内科、消化器内科にて勤務。井口病院副院長、金町中央透析センター長を経て2006年MRCビルクリニック設立・理事長。2008年医療法人社団悠翔会に法人化、理事長に就任。 編著に『これからの医療と介護のカタチ~超高齢社会を明るい未来にする10の提言』(日本医療企画刊)『在宅医療 多職種連携ハンドブック』(法研刊)『在宅医療カレッジ: 地域共生社会を支える多職種の学び21講 』(医学書院刊)などがある。


中竹竜二さん(以下:中竹):  佐々木さんは1973年生まれ。私と同い年です。我々の世代って“端境期”だと思うんです。上の世代のようにビジネス一辺倒ではない。かといって今の20代のように学生時代から「社会的起業家」、「ボランティア」が“生き方”の選択肢になっていたわけじゃない。社会課題を解決するため自ら動きだす人が少ない世代と思っていました。

でも、佐々木さんは勤務医としてのキャリアから離れ、自ら「在宅医療」事業にどっぷり取り組まれてきました。学生時代から在宅医療に興味があったのでしょうか。

勤務医から一転。自分が「在宅医療」に携わるとは想像してなかった

佐々木淳さん(以下佐々木): いえいえ。この仕事をはじめたのが32歳の時。それまで自分で在宅医療サービスを立ち上げるなんて思いもしませんでした。

私は大学卒業後、民間の医療機関で内科医として働いていました。5年ぐらい働いた後、大学院に行ったのですが、 多くの患者さんと接するうちに「自分は本当に患者さんの役に立っているのか」と自問自答 することが増えました。私の専門は「内科」ですが、内科の病気は治らないものが多い。患者さんを救っている実感が少ないんです。病院では医者も患者も頑張っている。医療費もじゃんじゃん使っている。でも結局、最期は辛い思いをして死んでいく方が多かった。自分は一体何のためにやっているのか。なにか別のやり方で役に立つ道があるのでは――と悩むうちに、ヘルスケアビジネスに可能性を見つけました。それでマッキンゼーに転職する予定だったんです。転職する前のある日、アルバイトで「在宅医療」のお手伝いをしたんです。その現場で、「価値観が大きく転換する」ほどの衝撃を受けたんです。「臨床でこんな世界があるなら、自分でやってみたい」。その場でこの世界に入ることを決めました。

中竹: 天啓に導かれるほどのカルチャーショックだった。 

佐々木: 病院では 「病気が治せないこと」イコール「医療の敗北」 だった。病気や障害は、不幸である。だから病院は、患者の病気を治すことでその人を幸せにしようとする。そして、治療手段がなくなると、医者は患者に「もうできることはありません。ごめんなさい」と謝るんです。

でも、これってお医者さんが勝手に自分たちの価値観を患者さんに押し付けているんですよね。患者さんにとって、病気はその人の一部に過ぎない。病気が治せないから人生が終わるわけでも、必ずしも不幸になるわけでもない。

むしろ誰かが 「確かに、あなたの病気は治すことはできない。だけど、あなたの人生はまだまだ続くし、幸せな生活を諦める必要はない」と気付かせてあげないと いけないと思います。

中竹: その役割が在宅医療だった。

佐々木: ええ。病院に通えない方のご自宅に医師や看護師が定期的に伺い、健康管理や療養生活のお手伝いをするのがこのサービスです。病気を治すのが病院の医療だとすれば、在宅医療はその人が、治せない病気や障害があったとしても、充実した生活を過ごせるよう支援するのが仕事です。延命のためだけに患者さんを病院にとどめておくより、多少のリスクはあっても住みなれた家で、好きなことをやる。家族やペットたちと一緒に生活をしていたほうがはるかにその人のQOL(クオリティオブライフ)は高まる――という考え方です。

「医療から卒業する」ことで人生最後の選択肢が広がる

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