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同一労働同一賃金

2020年3月13日(金)更新

働き方改革関連法により、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者といった非正規雇用の労働者に対して不合理な待遇差をなくすための「同一労働同一賃金」が2020年4月から施行されます。この記事では、同一労働同一賃金が導入される目的や、企業に求められる対応とその手順などについて解説します。

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~この記事でわかること~

  1. 2020年4月から施行される「同一労働同一賃金」の内容
  2. 同一労働同一賃金の施行にあたり、企業に求められる対応
  3. 同一労働同一賃金のメリット・デメリットと成功事例

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、 同じ労働に従事する労働者にはその雇用形態にかかわらず同じ賃金を支給するという考え方 です。

厚生労働省は、同一労働同一賃金の導入について以下のように定義しています。

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
【引用】同一労働同一賃金特集ページ/厚生労働省

この「同一労働同一賃金」は、政府主導の働き方改革の一環として、 2020年4月1日 から施行されます。(中小企業は2021年4月~)

【関連】働き方改革とは?目的や背景、改正内容から企業の対策と事例まで徹底解説 / BizHint

同一労働同一賃金の目的

深刻化する人手不足を背景に、企業は今後、正社員に限らない多様な雇用形態に目を向け、より幅広い人材の活用を実現する必要があります。

ところが現状、同じ仕事をしているにも関わらず、単に雇用形態の違いのみで待遇に格差が設けられるケースが多く、非正規という働き方へのマイナスイメージや、実際に非正規で働く人の意欲低下を招いています。

その格差を埋めるために考えられたのが「 同一労働同一賃金 」です。

つまり、同一労働同一賃金を導入する目的とは、 正社員と非正社員の間の不合理な待遇差を解消し、働く意欲のある人が多様な働き方を自由に選択できるようになることで、より多くの人が活躍できる環境をつくる ことにあります。

【関連】非正規雇用とは?割合や増加理由、メリット・デメリット、雇用ルールまで徹底解説 / BizHint

同一労働同一賃金のメリット

同一労働同一賃金を実現することで、企業側と労働者側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

企業側

企業側には次のようなメリットがあります。

生産性の向上

正社員と同じ仕事をしている非正社員に正社員と同じ賃金が支給され、また、正社員と同じ研修を受けるようになれば、非正社員の仕事に対するモチベーションやスキルの向上が期待できます。

それらは、企業全体としての生産性の向上に繋がります。

優秀な人材の確保

求職者が非正社員を選択する理由は様々ですが、労働条件としては少しでも賃金の高いところを選びますし、優秀な人材であればなおさらです。

同一労働同一賃金を導入することで、非正社員の賃金が正社員並みになれば、より優秀な人材を確保できるようになります。

労働者側

労働者側(非正社員)には次のようなメリットがあります。

モチベーションの向上

これまでは非正社員がどんなに頑張ったところで正社員と同様の賃金を得ることはできませんでしたが、同一労働同一賃金を導入することで、納得できる賃金を得られるようになり、モチベーション向上にも繋がります。

キャリアアップにつながる

同一労働同一賃金を導入することで、正社員と同じ仕事をしている非正社員は正社員と同様に評価されていくようになりますし、研修なども受けられるようになります。

非正社員は、これまで以上に能力を向上させることができ、今後のキャリアアップにつなげることができるでしょう。

同一労働同一賃金のデメリット

同一労働同一賃金を実現することで想定されるデメリットについても、きちんと理解しておくことが重要です。

企業側

企業側には次のようなデメリットがあります。

人件費の増加が懸念される

同一労働同一賃金の導入は非正社員の賃金アップにつながります。そのため、非正社員を多く抱えている企業では人件費が大幅に増加してしまうことも考えられます。

そのため、同一労働同一賃金の導入と同時に、業務効率化や人員削減なども検討する必要があるでしょう。

待遇についての説明責任が増える

詳しくはこのあと説明しますが、同一労働同一賃金が導入されることで、正社員と待遇の差がある理由など、非正社員から求めがあれば企業は説明を行う必要があります。

待遇を見直す際は説明会などを開催し、問い合わせがあれば随時説明していかなければなりません。

労働者側

労働者側には次のようなデメリットがあります。

非正社員に対する評価が厳しくなる

正社員と同じ仕事をしている非正社員に正社員と同様の賃金が支給されるようになれば、その非正社員は正社員と同様に評価されるようになります。

このため、これまで以上に責任を持って仕事に取り組んでいかなければならなくなります。

正社員のモチベーションに影響が出る

非正社員の待遇を改善することで、これまでのように正社員の給与や賞与のアップ、また、福利厚生の充実を図れなくなることも。さらに、人件費の増加により正社員の採用が縮小される一方、優秀な非正社員が増加し、正社員としては難しい立ち位置になっていく可能性も考えられます。

これらは正社員のモチベーション低下に繋がりかねません。企業としては、このような事態がおきないよう、慎重な対応が必要です。

働き方改革における同一労働同一賃金

ここからは、2018年6月に成立した「 働き方改革関連法 」における同一労働同一賃金について詳しく解説していきます。

いつから施行される?

働き方改革関連法の中で同一労働同一賃金について改正されたのは「 パートタイム・有期雇用労働法 」、「 労働者派遣法 」という2つの法律です。

それぞれ対象者が異なっており、施行時期も異なります。

  • パートタイム・有期雇用労働法 …パートやアルバイト、契約社員など、短時間労働者・有期雇用労働者が対象
    施行日:大企業 2020年4月1日~/中小企業 2021年4月1日~
  • 労働者派遣法 …派遣労働者が対象
    施行日:大企業・中小企業ともに2020年4月1日~

パートタイムや契約社員といった有期雇用労働者については、中小企業に猶予が設けられていますが、派遣労働者への対応は企業規模関係なく2020年4月1日から求められます。

中小企業の定義

どのような企業が中小企業に当たるのかについて確認しておきましょう。

資本金の額または出資の総額 」と「 常時使用する労働者数 」のいずれかが以下の基準に該当すれば中小企業とされ、該当しなければ大企業とされます。

詳しくは以下の表にてご確認ください。

【出典】パートタイム・有期雇用労働法の施行にあたっての中小企業の範囲/厚生労働省

※企業規模は、本社や支店、工場などのいわゆる「事業場単位」ではなく「企業単位」で判断され、業種の分類については、「日本標準産業分類」に従って判断されます。

具体的な改正内容

パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法の具体的な改正内容は次のとおりです。

1. 正社員と非正社員との間における不合理な待遇差の禁止/合理性の判断基準の明確化

同一企業内に所属する正社員(無期・フルタイム勤務の正規社員)と非正社員(パート社員・契約社員・派遣社員)の業務内容や責任の程度などが同じであれば、同じ待遇にすることが義務付けられました。

また、待遇差を設けている場合には、その理由の合理性を説明できなくてはなりません。この 合理性についての判断基準が、「同一労働同一賃金ガイドライン」により明確化 されました。これが、今回の改正の大きなポイントです。

2. 非正社員に対する待遇に関する説明義務の強化

非正社員は、正社員との待遇差の内容やそのように整理している理由などについて、事業主に説明を求めることができるように。企業は、その 求めがあった場合には説明を行わなくてはなりません

3. 同一労働同一賃金にかかわる行政対応の強化

行政は、非正社員の雇用管理の改善などを図るため、必要に応じて事業主に報告を求めたり、助言や指導、勧告ができるようになります。また、同一労働同一賃金にかかわるトラブルについて「 行政ADR 」の対象とし、都道府県労働局において、無料・非公開で解決を図れるようになります。

※行政ADR…裁判外紛争手続きのこと。裁判のように多額の費用をかけることなく、短い期間での解決を目指すものである

違反した場合には

上記の改正内容に違反したとしても 法律上の罰則はありません

ただし、非正社員との間で大きなトラブルにでもなれば、損害賠償を請求される可能性もあります。

同一労働同一賃金に関する判例についてはこのあと紹介しますが、 待遇の格差が不合理とされ、企業側に損害賠償を命じている判例もある ため、注意が必要です。

同一労働同一賃金の施行で企業に求められる対応と手順

同一労働同一賃金を適正に導入するためには、単に非正社員の待遇を正社員と同じにすればよいというわけではなく、正社員と非正社員の業務内容などを確認したうえで同じ待遇にするのか差を設けるのかを検討する必要があります。

ここでは、企業に求められる対応と手順について、パート社員・契約社員と人材派遣会社などから受け入れている派遣社員とに分けて説明します。

現状の把握

まずは、自社の現状の把握から始めます。

雇用形態の確認

自社に非正社員であるパート社員や契約社員がいるのか、また、人材派遣会社などから派遣社員を受け入れているのであれば、それぞれどのくらいの人数がいるのかを確認します。

そもそもこれらの非正社員がいないのであれば以降の対応は不要です。

待遇の状況確認

パート社員や契約社員がいれば、それぞれの基本給や賞与、各手当、また、福利厚生などの待遇を確認し、正社員とどのような違いがあるのかを表などに整理してその 違いを明確 にします。

待遇の状況を確認して、同様の仕事をしている正社員と差がない場合には、今すぐ対応すべき課題はありません。(ただし、そのようなことは稀であると言えます)

また、 派遣社員を受け入れている場合には、自社のパート社員や契約社員とは異なった対応が必要 です。

ここからは、「パート社員・契約社員」と「派遣社員」のケース、それぞれどのように対応すべきか解説していきます。

【パート社員・契約社員】合理性の検証

パート社員・契約社員と正社員の待遇に差がある場合には、そのことについて合理性が説明できるかどうかを検証しなくてはいけません。

この合理性については、「 同一労働同一賃金ガイドライン 」をもとに判断していきます。詳しくは次の章で解説します。

合理性が説明できる場合

パート社員・契約社員と正社員の待遇に差があることについての合理性を説明できれば 問題ありません

例えば、契約社員に住宅手当や借り上げ社宅制度を適用しないのは転勤がないため、と整理していることなどが挙げられます。(この場合、正社員も転勤の可能性がないのであれば説明は難しくなります。)

ただし、合理性を説明するにあたっては、そのことを就業規則や社内規程で明確にしておく必要があります。

パート社員・契約社員から説明を求められた場合、不合理ではない理由についてきちんと説明できるよう整理しておきましょう。

合理性が説明できない場合

パート社員・契約社員と正社員の待遇に差があることについての合理性を説明できない場合には、パート社員・契約社員の 業務内容や待遇を見直す 必要があります。

これについては「 待遇差の合理性が説明できない場合に、企業がとるべき対応 」にて詳しく説明します。


パート社員・契約社員に対する取り組みの詳しい手順は、こちらのページにも記載されています。
【参考】パートタイム・有期雇用労働法 対応のための取組手順書/厚生労働省


【派遣社員】派遣先企業として求められる対応

先述した通り、人材派遣会社などから受け入れている派遣社員については、自社で雇用するパート社員・契約社員とは対応が異なります。

ただし、 派遣労働者の同一労働同一賃金を考えるのは基本的に派遣元企業 です。

派遣元企業は、派遣労働者の同一労働同一賃金について、以下のいずれかを選択します。

  1. 派遣先の正社員とのバランスを図る「 派遣先均等・均衡方式
  2. 労使協定により、賃金については同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額と同等かそれ以上とする(賃金以外の待遇については原則として派遣元の正社員とのバランスを図る)「 労使協定方式

上記の内容を受け、派遣社員を受け入れている派遣先企業としては、次のような対応が求められます。

派遣元企業へ待遇に関する情報を提供する

自社に派遣されている派遣社員が、「派遣先均等・均衡方式」「労使協定方式」のどちらを適用されているかにより、派遣元企業へ提供する情報が異なります。

  • 「派遣先均等・均衡方式」が適用されている場合
    職務内容などが同じ自社の労働者を「比較対象労働者」(基本的には正社員)として選定。その「比較対象労働者」の待遇などの情報を派遣元に提供
  • 「労使協定方式」が適用されている場合
    業務に必要な能力を付与するための教育訓練や、食堂・休憩室・更衣室の利用に関する情報を派遣元に提供

教育訓練を実施する・福利厚生施設を利用させる

派遣先企業は派遣元企業の求めに応じて、派遣社員に対し、業務の遂行に必要な能力を付与するための 教育訓練を実施する義務 があります。

また、食堂・休憩室・更衣室などの 福利厚生施設の利用機会 を与えなければならず、そのほか、運動場や体育館、保養施設などの施設についても配慮の必要があります。


派遣先企業の対応の詳細については、以下のページにてご確認ください。
【参考】派遣先の皆さまへ/厚生労働省

派遣元企業が対応すべき内容についても、厚生労働省のホームページなどでご確認いただけます。
【参考】派遣元の皆さまへ/厚生労働省


待遇差の合理性はどのように判断するのか

待遇差の合理性については、先述したように「 同一労働同一賃金ガイドライン 」をもとに検討していきます。

同一労働同一賃金ガイドラインとは

同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針) 」は、厚生労働省が同一労働同一賃金の実現を図るために策定されたものです。

パート社員・契約社員・派遣社員の基本給その他の待遇の考え方、また、問題とならない例と問題になる例などが示されています。

ガイドラインでは「パートタイム労働者・有期雇用労働者」「派遣労働者」にわけて解説されていますが、 基本的な考え方はどちらもほぼ同様 です。

ここでは、合理性の基準の概要を記載します。

合理性の基準について

判断項目は大きく以下の5つに分類されます。

  1. 基本給
  2. 賞与
  3. 各種手当
  4. 福利厚生
  5. 教育訓練・安全管理

①基本給

  • 労働者の能力または経験に応じた基本給
  • 労働者の業績または成果に応じた基本給
  • 労働者の勤続年数に応じた基本給
  • 労働者の勤続による能力の向上に応じた昇給

これらを基本給に反映させている場合、正社員の反映基準と同一の額にて支給(昇給)する
※一定の相違がある場合には、その相違に応じた額を支給する

②賞与

会社の業績などへの貢献に応じて賞与を決定している場合 は、貢献度の反映部分を正社員と同一の額にて支給する
※一定の相違がある場合には、その相違に応じた額を支給する

③各種手当

正社員と同一の支給要件を満たす場合は、正社員と同一の手当を支給する

<手当の一例>

  • 精皆勤手当
  • 時間外労働の手当
  • 深夜・休日労働の手当
  • 通勤手当、出張旅費
  • 役職手当  など

※内容に一定の相違がある場合には、その相違に応じた額を支給する(役職の内容に応じて支給する役職手当など)

④福利厚生

同一の事業場で働いている場合、正社員と同一の 福利厚生施設(飲食施設や休憩室および更衣室)の利用 を認める。また、 転勤者用社宅慶弔休暇病気休職 といったその他の福利厚生に関しても同様の措置を行う
※契約社員の病気休職については、契約終了までの期間を踏まえて取得を認める

⑤教育訓練・安全管理

現在の 職務遂行に必要な技能または知識を習得するために実施する教育訓練 について、正社員と職務内容が同一である場合は非正社員にも同様に実施する。また、正社員と同一の業務環境に置かれている場合には、 正社員と同様の安全管理に関する措置および給付 を行う
※職務内容に一定の相違がある場合には、その相違に応じた内容を実施する


それぞれの詳細や事例などついては、厚生労働省のホームページでご確認ください。
【参考】同一賃金同一賃金ガイドライン/厚生労働省


待遇差の合理性が説明できない場合に、企業がとるべき対応

正社員と非正社員の間の待遇差の合理性が説明できない場合、まずは、非正社員の業務内容や責任の程度、また、必要に応じて問題になっている手当の支給要件を明らかにします。

それでも説明が難しい場合には、待遇そのものを見直さなければなりません。

具体的な対応方法について説明します。

業務内容等・手当の支給要件を明確にする

就業規則などの規程上で、非正社員の担当業務が明確でなく、実態的に非正社員の業務内容や責任の程度が正社員と同様になっているのであれば、非正社員が本来担当すべき業務内容や責任の程度を明確にし、 正社員との差別化 を図りましょう。

また、個別の手当が非正社員に支給されていないことが問題となっているのであれば、正社員のみを対象としている理由・要件を明確にします。

待遇そのものを見直す

上記の方法でも合理性が説明できなければ、待遇自体を見直すことになります。

具体的には、合理性が説明できない賞与や手当、退職金などを、 正社員と同様に非正社員にも支給する ことなどが該当します。

社員に支給されている賞与などを非正社員に合わせて引き下げる、または、廃止するといったことも考えられますが、これらは労働条件の不利益変更にあたり、原則としては正社員の同意が必要になるため、現実的な対応であるとは言えません。

賃金規程・就業規則の改定

上記のように業務内容などを明確にしたり、待遇を見直す際には、あわせて 就業規則や賃金規程などを改定 しましょう。

そもそも賃金(各種手当を含む)については、就業規則に必ず記載しておかなければならないものですし、業務分掌なども明確にしておかなければ、後々のトラブルにつながるためです。

同一労働同一賃金に関する最高裁判例

同一労働同一賃金に関する判例は数多くありますが、同一労働同一賃金に対応していくうえで確認しておきたい最近の判例を2つご紹介します。

ハマキョウレックス事件(最高裁平成30年6月1日判決)

運送業などを営む会社の有期契約労働者が、正社員と業務内容などに違いがないにも関わらず、無事故手当やその他の手当について正社員と格差があることは違法とし、その差額の支払いを求めた事案です。

第1審議と第2審ではやや異なる判断でしたが、最高裁では正社員は転勤や出向の可能性があることや会社の中核を担う可能性がある点を考慮し、正社員と有期契約労働者の待遇に差を設けることは不合理ではないとしました。

しかしながら、これを考慮しても待遇の差を設けることに合理性があるのは住宅手当のみであり、その他の無事故手当や作業手当、給食手当などは労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)の違反とし、差額分の損害賠償を認めました。

この最高裁判例で確認できることは次のとおりです。

  • 正社員と有期契約労働者の待遇に差を設けることはできるが、その待遇差についてはそれぞれの立場の違いによる明確な整理が必要である
  • 業務内容などが同じである限り、業務にかかわる待遇に差を設けることはできない

【参考】ハマキョウレックス事件(未払賃金等支払請求上告、同附帯上告事件)/裁判所・最高裁判所判例集

長澤運輸事件(最高裁平成30年6月1日判決)

運送業を営む会社で定年後に有期契約労働者として再雇用された数人の者が、正社員と職務内容などに相違がないのもかかわらず、正社員と異なる賃金体系が適用されたことにより、定年前と比べて賃金が低下(約20~24%)したことは違法とし、その差額の支払いを求めた事案です。

第1審では違法性を認め、第2審では一転して棄却されましたが、最高裁では待遇の差が不合理であるかどうかは、定年後に有期契約労働者として再雇用された者は長期の雇用が想定されていないことや、要件を満たせば年金を受給できることも考慮しなければならず、再雇用前後の賃金総額を比較することのみによるのではなく、各手当などの趣旨を個別に検討していくべきとしました。

そのうえで、精勤手当と超勤手当(時間外手当)については労働契約法第20条違反として、これらの差額分の損害賠償請求を認めましたが、能率給や職務給、住宅手当、家族手当、役付手当、賞与については、労働契約法第20条に違反しないとしました。

先に説明したハマキョウレックス事件と同じ部分もありますが、この最高裁判例で確認できることは次のとおりです。

  • 待遇差が不合理であるかどうかは、有期契約労働者が置かれた立場も考慮して判断しなければならない
  • 待遇差が不合理であるかどうかは、賃金が正社員の何%になったのかなどの総額で判断するのではなく、各手当などがそれぞれどのような趣旨で支払われているかについて個別に判断しなければならない

【参考】長澤運輸事件(地位確認等請求事件)/裁判所・最高裁判所判例集

同一労働同一賃金導入の導入事例

大手企業では、同一労働同一賃金が義務化される前に既に導入しているところもあります。 ここでは大手2社の導入事例をご紹介します。

イケア・ジャパンの導入事例

大手家具販売のイケア・ジャパンでは、2014年9月に次のような人事制度改革を行っています。

  1. 全社員正社員化
    全社員の7割を占めるパートタイム労働者を短時間勤務の正社員に転換し、福利厚生や厚生年金・健康保険への加入、65歳定年など全て正社員と同じ待遇とした
    また、あわせて、短時間勤務の正社員がフルタイム正社員に転換できる制度も導入
  2. 同一労働同一賃金の導入
    職種ごとに業務内容と責任の範囲を明確に定め、それが同じであれば、全社員に同じレベルの業務を求めるとともに時給換算した賃金を同等とした

イケア・ジャパンでは、これらの取り組みにより、以前は30%ほどあったパートタイム労働者の離職率が半減したほか、正社員になったことによる意識の変化が責任感やコスト意識を生み出し、組織や業績に良い影響を与えたとしています。

【参考】【事例から学ぶ働き方改革】人件費はコストではなく投資 正社員化・同一労働同一賃金を同時にスタート 第4回:イケア・ジャパン株式会社/nomad journal

りそな銀行の導入事例

りそな銀行では、2008年10月および2015年10月に次のような人事制度改革を行っています。

  1. 正社員とパートナー社員に共通の職務等級制度を導入(2008年10月)
    役割等級・職務グレードが同じであれば、正社員かパートナー社員(原則1年更新の有期雇用従業員)であるかにかかわらず、時間当たりの職務給は同一とし(ただし、フルタイムのパートナー社員に限る)、評価方法や処遇の反映、スキルアップのための研修参加も共通化
  2. 正社員の新たな雇用区分「スマート社員」を導入(2015年10月)
    正社員の新たな雇用区分として、勤務時間もしくは業務範囲のどちらか一方を限定できる「スマート社員」を導入し、働き方の選択肢を拡大。育児や介護などのために通常の正社員から「スマート社員」に転換することや、転換後も希望に応じて通常の正社員に戻ることも可能に

りそな銀行では、職種にかかわらず、従業員が能力を最大限発揮できるようにし、また、ライフイベントなどに応じた柔軟な働き方に変更できるようにすることで、優秀な人材を確保していきたいとしています。

【参考】事例紹介 株式会社りそな銀行/多様な人材活用で輝く企業応援サイト(厚生労働省)
【参考】人事制度/りそなホールディングス

まとめ

  • 同一労働同一賃金の考え方は、業務内容などが同じであれば、雇用形態を問わず同一の賃金(待遇)を支給すべきとするものであり、業務内容などが異なるのであれば、待遇差を設けることも可能である。
  • 働き方改革としての同一労働同一賃金は2020年4月1日から施行されるが、中小企業のパートタイム労働者・有期雇用労働者の同一労働同一賃金については、2021年4月から適用される。(派遣労働者の同一労働同一賃金については、中小企業も2020年4月1日から対応が必要)
  • 同一労働同一賃金にかかわる法改正内容に違反しても法的な罰則はないが、非正社員から損賠賠償を請求される可能性がある。
  • 同一労働同一賃金の対応は、法改正内容のほか同一労働同一賃金ガイドラインを十分に確認して進めていかなければならない。

<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士

関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。


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