働き方
官民を挙げて進められている働き方改革では、長時間労働の是正や生産性向上のためにも「働き方」を見直す必要性が高まっています。労働人口減少や労働市場の変化によって新しい働き方がうまれ、導入が進んでいます。働き方改革の推進にはこれらを導入するだけでなく、企業と社員双方が協力して取り組み働き方を変えていくことが必要です。
働き方改革が進まない要因
官民を挙げて取り組まれている「働き方改革」ですが、企業としての取組みが社内に浸透しない、あるいは頓挫するケースも少なくありません。
日本の構造的な問題として少子高齢化による労働人口減少が深刻化するなか、働き方改革は企業存続と発展のために欠かせない重要な取り組みです。この改革が進まない主な要因としてどのようなものがあるのでしょうか?
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企業風土や制度の改革が進まない
働き方改革は、組織全体で取り組むことによって推進します。それには、企業の目標に応じて、従来の企業風土や制度の改革を行う必要があります。
例えば、問題となっている長時間労働が進まない要因として、定時で帰ってしまうと評価が下がるのではないか、上司が残っているので帰りづらいなどがあります。こうした長時間労働をよしとする職場の雰囲気を払拭するためには、「定時で帰れるのは仕事ができる社員である」ということを全社に周知することからはじめましょう。そして、長時間労働をみとめない評価へと制度を見直し、トップや管理職から率先して取り組むことで、不要な残業は認めない風土へと改革を進めていきます。
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新しい働き方の導入が進まない
育児や介護と仕事の両立や労働人口減少の問題は、企業にとっても大きな課題となっています。こうした課題解決のために新しい働き方を導入したものの、社員の活用が進まない、あるいは導入効果を実感できないケースも多くあります。
その要因として、例えばテレワークの場合には、導入のためにITツールを導入することがゴールになってしまっている、あるいは、制度改革や周知が不十分なために社員がテレワークを活用しにくいなどがあります。新しい働き方の導入には、こうした要因をなくしていくことが必要です。
さらに、経営課題への貢献度を見える化するために目標数値の設定と一定期間ごとの効果測定を行い、PDCAを繰り返すことで定着化させることが大切です。
個人の働き方の改善も必要
働き方改革の推進には、企業と社員双方の努力が欠かせません。社員個人の取組みとしては、意識改革や働き方の見直しがあります。労働市場が流動化し、雇用形態も多様化が進むなか、企業による育成や能力開発だけに頼ることは難しくなっています。
自分が望む生き方や働き方を視野に入れたキャリアプランを考え、自身で付加価値を高めていく努力が求められています。自主的にキャリアの目標を掲げることで、働くモチベーションが増して、仕事に対して意欲的に取り組むことができます。また、自己啓発によって働き方を見直し、改善されることで、効率化や生産性向上に繋がります。
働き方改革に繋がる新しい働き方とは
時代の変化とニーズによって、新しい働き方が注目されています。こうした働き方は、インフラなどの環境の整備を行い、社内制度改革や周知活動も並行して行うことが大切です。
テレワーク
テレワークは、ICTを活用することで、移動時間や場所に制約されずに自宅や外出先など会社以外の場所で働くことをいいます。企業と雇用関係があれば在宅勤務やモバイルワーク、ない場合はSOHOなどに分類されます。ICT技術の進歩により、ツールの多様化や導入や運用コストの低価格化も進んでいます。
テレワークのメリットとして少子高齢化対策の推進やライフイベントとの両立に対応できる、ワーク・ライフ・バランスの実現、生産性向上などが挙げられます。一方デメリットとして労働実態が見えにくく、人事評価や、人材育成、マネジメント方法が従来やり方では対応できない、情報漏洩リスクなどがあります。
こうしたデメリットをカバーするための改革や整備を行うことが、導入成功へのカギになります。
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ワーク・ライフ・バランスからワークライフインテグレーションへ
ワーク・ライフ・バランスの実現によって、仕事とプライベートのバランスがとれる働き方や就業環境を整える必要性や重要性については広く社会に浸透してきました。
昨今ではこの考え方をさらに発展させたワークライフインテグレーションを目指す働き方が求められています。これは、人生の構成要素である仕事とプライベートを分けて考えるのではなく、統合的に捉えることにより、どちらも充実感を得て生産性向上と生活の質の向上という相乗効果を目指した新しい働き方です。
ワークライフインテグレーションの推進には、社員に対して仕事とプライベートを調和させることで相乗効果を図るという本質の理解を浸透させることが大切です。そのうえで既存の社内制度をさらに充実させるなど推進のための整備を進めていくとよいでしょう。
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パラレルキャリア
パラレルキャリアは本業と平行して、余暇を活用して複業や社会貢献といった第2の活動を行うことです。企業を取り巻く社会環境の変化によって雇用システムが変わり、働き方が多様化したことで、自分自身でキャリア形成を考えながら行動することが求められています。
パラレルキャリアを通して、視野が広がり人脈を築けるほか、本業での生産性向上に繋がるスキルアップや問題解決力といった効果が期待できます。このように自らのキャリア形成や能力開発、そして本業にも役立つ新しい働き方として注目されています。
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働き方改革で求められる女性活躍の推進に必要な要素とは
働き方改革で求められる女性の活躍を推進するには、女性自身の意識改革やキャリアデザインの構築を行うことが必要です。同時に企業の取組みとして、ライフイベントが発生しても継続就業が可能な環境整備や制度改革を行うことで双方の努力が実り、女性活躍推進という結果に繋がります。
女性自身の働き方への意識改革とキャリアデザインの必要性
女性活躍の推進には、女性自身が働き方に対して意識改革を行うことも大切です。
従来の慣行による性別役割分担意識から、女性はライフイベントを機に退職するものと捉えられている、あるいは男女で育成やキャリア開発に違いがあるといったケースもあります。一方で、女性自身が役付きの昇進を望まないケースが多いのが実情です。
政府を挙げて女性活躍の推進が行われている昨今、女性にとって仕事はライフイベントによって中断される一時的なものではなく、人生の長きに渡って続くものになっています。そのために人生の早い段階から自分自身のキャリアデザインを行い、ライフイベントと両立しながらどのようなキャリアを形成していきたいか主体的に考え、キャリアを積んで実現していく働き方が求められています。
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女性のライフイベントに柔軟に対応できる環境整備と制度改革を
女性活躍推進には、女性が安心して働きながらキャリアを形成できるよう、企業がライフイベントとの両立が可能な環境や制度の改革を行うことが必要です。
例えば、在宅勤務制度や時短勤務制度を導入した場合には、定着化させるために、全社員への周知や安心して制度を活用できる風土改革や評価制度の見直しを行うことが重要となります。女性が活き活きと働いて組織で活躍するためには、ライフイベントに柔軟に対応できる組織改革がカギになります。企業として取り組みを進めるために、女性活躍推進法やポジティブ・アクションを活用するのもひとつの方法です。
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生産性が高い人の働き方の特徴とは
働き方改革には、企業改革だけでなく社員一人ひとりの働き方を見直すことも必要です。生産性が高い人、つまり仕事ができる人の働き方の特徴を知って、自らの働き方を見直すことで、生産性向上や残業時間削減に役立てることができます。
適切なタスク管理と最善の業務遂行ができる
生産性を高めるには、日ごろの業務を適切なやり方で効率的に処理することが大切です。そのためには、以下のスキルが必要となります。
- ひとつの業務を構成要素ごとにタスク化できる
- タスクの重要度と優先順位づけを適切に行うことができる
- タスクごとに最適なやり方を選択し、それを遂行することができる
これにより、生産性の高い人は日常業務を効率的に行うことで生産性や仕事の質を高めています。こうした日々の積み重ねは仕事の成果や信頼の獲得にも繋がります。その結果として難易度の高い新しい仕事に挑戦するチャンスを得るなど、仕事を通してスキルやキャリアアップができます。タスクを効率的に処理するために、インバスケット思考を活用すると効果的です。
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ロジカルシンキングを活用した問題解決とコミュニケーション
生産性の高い人は、ロジカルシンキングを活用することで仕事を円滑に進めています。ロジカルシンキングは問題を要素に分けることで整理し、仮説を検証することで筋道の立った解決策を導き出します。日常の業務における問題解決やコミュニケーションなど、多くの場面で活用することができます。活用することで得られる効果は以下に挙げられます。
- 問題解決力が身につき、多角的な視野でものごとを客観視できるようになる
- 相手が理解しやすく説得力のある伝え方ができる
- 効率良く必要な情報収集ができるようになる
- 考える力がアップすることで、業務の効率化や生産性向上に役立つ
- 仕事が円滑に進むようになり、モチベーションの維持、向上にも繋がる
日ごろからロジカルシンキングを意識して活用することが、業務の生産性向上に役立ちます。
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コミュニケーションスキルが高い
仕事は社内外の人たちとコミュニケーションを取りながら進めていくため、コミュニケーションスキルは必須のビジネススキルです。生産性の高い人はコミュニケーションスキルが高く、相手と着実に信頼関係を築き、相手を正しく理解して自らの意見を分かりやすく伝えることができます。生産性向上以外にも、コミュニケーションスキルが求められている理由は以下に挙げられます。
- ダイバーシティによって、異なる価値観を持つ人たちとのコミュニケーションの必要性がでてきている
- 業務の生産性向上や長時間労働の是正のため、仕事だけでなく、コミュニケーションも効率化が求められるようになっている
- 社内SNSの発達にもみられるように、仕事を円滑に進めていくためにコミュニケーションの重要性が見直されている
日ごろからコミュニケーションを意識して行うことがトレーニングとなって、スキルを高めることに繋がります。
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セルフマネジメントができる
生産性の高い人は自分自身を統制して管理することで、良い結果に繋がる行動をとることができます。その結果としてストレス管理をしながら着実に行動を継続することで目標を達成しています。セルフマネジメントによって得られる効果は以下に挙げられます。
- 思い込みや感情からでははく、客観的な事実に基づいて適切な判断ができるようになる
- 今やるべきことに集中して取り組めるようになる
- 明確な目標を立ててその実現に必要な行動をタスクとして具体化できるようになる
- 目標を達成するための行動を継続できるようになる
このように自己を管理するだけでなく、より良く改善するためにも役立てることができます。セルフマネジメントを学ぶには、書籍のほか様々な機関の研修に参加するなど、様々な方法があります。
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リカレント教育でさらに付加価値を高める
生産性の高い人は、日ごろの業務で成果をあげるために、自身のスキル不足を補い、付加価値を高めるための努力をしています。そのための1つの方法としてリカレント教育があります。これは、就職後の自身のニーズに合わせて教育機関で再度教育を受けられるシステムです。
働き方の多様化が進むなか、従来の企業内での人材育成に代わり、必要なスキルを自分自身で学ぶことが求められるようになっています。リカレント教育の普及が進むために、本業とリカレント教育を両立できる企業での受け入れ体制や、教育機関のプログラムの充実など環境の整備が必要とされています。
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働き方を変えるために必要な企業改革
働き方改革を推進するために必要な、企業改革の要点はどこにあるのでしょうか?
トップのコミットメントと働き方改革を企業内外に周知
働き方改革を推進していくためには、トップのコミットメントが必要です。経営トップが働き方改革の推進に本気で取り組む決断をして、全社員に対して自ら発信し、ホームページに掲載するなど社外にも周知していくことが重要です。こうした周知活動が、組織全体の意識を高めて推進活動の大きな後押しとなります。
企業と社員のために健康経営を導入する
個人の働き方にも変化が求められるなか、社員の心身が健康でなければ、業務効率化や創造性を高めることは難しくなります。そこで、社員の健康を維持するために健康経営を行うことが、社員一人ひとりのモチベーションや生産性の向上に繋がります。社員が健康であることは、企業、社員双方にとってメリットとなります。
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働き方改革は長期的な視野で
働き方改革は、企業としての改革と社員一人ひとりの働き方を変えていく必要から、短期的に結果を出すことはできません。トップの周知からはじまり、ビジョンにあった目標値の設定、全社員の意識改革、制度や環境の整備を行いながら、社員も生産性のある仕事のやり方に変えていきます。
期間ごとに効果測定を行い、改善をしていくなかで改革が推進していきます。長期的な視点で改革を進めることが、目標の達成や生産性向上だけでなく、定着化させるためには必要です。
働き方について学べる本のご紹介
ここでは、働き方について学べる本についてご紹介します。
働き方―――「なぜ働くのか」「いかに働くのか」 /稲盛 和夫
京セラ、KDDIの創業者であり、日本航空の経営再建でも知られる稲盛和夫氏の著書です。稲盛氏が様々な体験を通して学んだことの中から、「働き方」について多岐にわたって分かりやすく解説しているほか、労働が人生にもたらす素晴らしい可能性についても示唆を与えています。
【参考】Amazon.co.jp/働き方―――「なぜ働くのか」「いかに働くのか」 /稲盛 和夫
「働き方」の教科書―人生と仕事とお金の基本/出口治明
60歳でライフネット生命を創業した出口治明氏による、働き方についての本です。各年代でやっておくべきことや働き方について、著者が伝えたいことが丁寧に説明されています。そのほか、人生と仕事の関係など、仕事や働き方について大事なことについてわかりやすく書かれています。
【参考】「働き方」の教科書―人生と仕事とお金の基本/出口治明
まとめ
- 働き方改革を進めていくためには、企業としての風土や制度改革のほかに、個人の働き方を改善していく必要があります。
- 生産性の高い人の働き方の特徴を知ることで、自らの働き方を見直し、生産性向上や残業時間削減に役立てることができます。
- 女性活躍推進で女性の働き方も変化するなか、女性自身の意識改革やキャリアデザインの必要性と共に、ライフイベントに対応できる環境や制度の整備を企業が行う必要があります。
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