はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2018年2月27日(火)更新

地域限定社員

日本型雇用システムの中では、支社や営業所を持つ規模の企業であれば、それらを転勤しながら長期的にキャリアを積み、昇進していくのが一般的でした。しかし、近年では新しい働き方として、「地域限定社員」制度を導入する企業が増えていると言います。本記事ではそのメリット、デメリットなどを具体的に見ていきましょう。

地域限定社員 に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

地域限定社員とは

地域限定社員とは、勤務地を限定し、転居を伴う異動(転勤)が発令されない正規雇用労働者の事を指します。上位概念として「限定社員」がありますが、これは例えば勤務時間や職種などを限定する場合も含めています。地域限定社員は、その中のひとつのかたちだと言えるでしょう。

例えばアルバイト・パートタイム労働者などの非正規雇用労働者を正規雇用に転換させる際に、労働者側にとってネックになることが多いのが勤務地の問題です。全国区に転勤する可能性のある正規雇用労働者になると、家庭との両立が困難になることから、特に女性の登用の妨げとなってきた面があるのです。転勤の辞令を受けた時点で、能力や意欲があったとしても、自ら非正規雇用を選択するか離職するケースが珍しくなく、企業側もそれを受け入れてきました。

しかし、労働力人口の減少や、働き方の価値観の多様化に伴い、企業にとって有用な人材の確保を目的として、地域限定社員制度を導入する企業が増えてきていると言います。政府も後押しをする制度であることからも、その傾向は今後も強まっていくだろうと思われます。企業によっては全域型社員との相互転換も認めるなど、社員のキャリア開発にとっても選択肢が広がる制度を導入しています。

増加傾向にある地域限定社員

地域限定社員の労働者全体における割合や、導入企業数などの推移については詳しい調査がなく、以前と比べて実際にどれくらい増加しているか、明確ではありません。

2013年の全国各業種1,000社を対象とした調査によれば、地域限定社員が在籍している割合は、調査対象のうち複数の事業所に限定すると12.4%です。(データは2011年のもの)

【出典】独立行政法人労働政策研究・研修機構「「多様な正社員」の人事管理に関する研究」

2013年、第ニ次安倍政権下で閣議決定された「日本再興戦略」に、雇用政策のひとつとして「多様な正社員」の普及が盛り込まれ、厚生労働省の有識者懇談会にて継続的に議論されている話題でもあります。その後2015年の調査によれば、勤務地が限定される働き方の区分がある企業は19.4%となっています。

【出典】独立行政法人労働政策研究・研修機構「「改正労働契約法とその特例への対応状況及び多様な正社員の活用状況に関する調査」結果」

単純比較すると、2011年から1.5倍以上増加したことになります。同調査では、勤務地限定社員を含めた「多様な正社員」を今後導入(増員)する予定がある企業は全体では20.4%だったものの、1000人以上の従業員がいる企業では37.2%にのぼり、正規労働者全体に占める地域限定社員の割合は、今後も大きくなっていくと見込まれます。

2007年にユニクロが地域限定正社員制度を導入し、店舗勤務の非正規社員の正社員化を進め始めました。当初の目標だった5,000人を大きく上回り、2015年現在では10,000人を超える地域限定正社員が在職していると言います。さらに16,000人に増やす計画も発表されています。また、2014年には日本郵政が地域限定社員を20,000人採用すると発表しています。

これらの報道は、社会的に大きなインバクトがありましたが、大企業での同様の動きが活発化していることは、前述の調査結果からも推測できるでしょう。

地域限定社員とアルバイトや正社員の違いは

ここで、地域限定社員と、他の雇用区分との違いを具体的に確認してみましょう。地域限定社員の定義上、明確な点もありますが、企業ごとに実態が異なる点もあります。実態の違いは、地域限定社員という雇用区分を設ける目的が、従来の正社員・一般職からの転換なのか、非正規雇用からの登用なのかによって生じていると考えられます。

転居を伴う異動のない正規雇用労働者

非正規雇用であるバート・アルバイトとの大きな違いは雇用期限です。パート・アルバイト労働者が有期雇用契約を結んでいるのに対し、地域限定社員は雇用期限に定めのない、いわゆる無期雇用契約となります。正規雇用である正社員と明確に異なるのは、前述のように転居を伴う異動がないことです。勤務地、または勤務地域が固定された労働契約を結ぶことが前提となっています。

仕事の内容・権限

従来から転勤がない前提のアルバイト・パートや一般職社員の場合、職務も限定的であることが普通でした。それに比べると、地域限定社員については職域、つまり仕事の幅が広がるケースが多いと言えます。

例えばユニクロなどの小売店なら販売だけでなく、店舗運営や仕入れにかかわる業務も担当するようになります。それに伴い、責任範囲も広くなり、自らの判断にもとづいてスタッフへの指示を行うなどの権限を持つことになるでしょう。金融機関などにおいては、内勤の事務職だけでなく営業職を担当したりすることもありえます。このような場合では、職階が変わらなければ権限上の変化はないと考えられます。

昇格やキャリア形成

アルバイト・バート社員の場合は、その雇用区分の中でのリーダー職を任命されることはありえます。 しかしながら、いわゆる管理職としてのキャリアまで用意している企業は稀でしょう。対して、地域限定社員の場合は、一定のレベルの管理職までは昇格機会が与えられることもあります。具体的には、小売店の店長や店舗マネージャーなどです。

しかしながら、無限定の正社員同様とまではしていない企業が多いようです。 前述の調査結果によれば、「多様な正社員」には「役職に就かせない」とした企業が40.5 %、「下級(課長職)まで」としている企業が24.1 %です。地域以外の限定社員も含まれているため、正確なところはわからないものの、無限定の正社員と同等の昇格機会を設けている企業は少数派と考えて差し支えないでしょう。

【出典】独立行政法人労働政策研究・研修機構「「改正労働契約法とその特例への対応状況及び多様な正社員の活用状況に関する調査」結果」

一方、地域限定社員から無限定の正社員との相互転換を認めている企業も60.1 %あり、その意味では門戸を完全に閉ざしているわけではないでしょう。これは、例えば育児や介護等、家庭の事情で転勤ができない時期は地域限定社員として勤務し、その事情が解消した後は無限定の正社員として上級管理職を目指す、というキャリア形成も可能だということです。

解雇しやすい雇用形態?

有期の雇用契約でいう雇止めについては、無期の正規労働者である地域限定社員には当てはまらなくなります。日本型雇用の特徴として、解雇要件の適用が厳格であることが一般的に言われています。地域限定社員についても同様と考えておいたほうがいいでしょう。

第二次安倍政権下では、人材の流動化を目的とした解雇規制緩和が議論されてきました。限定社員制度の普及も、同じ文脈で議論されることが多いようです。これは、職務や地域を限定した労働契約を結ぶため、その職務や、その地域の事業所がなくなってしまった場合には解雇となる場合がありうるからです。そのため、限定社員=解雇しやすい人材として捉えられる傾向もあります。

しかし、現段階では解雇規制の緩和について結論が出ているわけではなく、無限定の正社員と比べて解雇しやすいとまでは言えないと考えたほうがいいでしょう。企業の事情による、いわゆる整理解雇を実施する要件としては、①人員整理が本当に必要か②解雇を避ける努力をしたか(異動先の提案等) ③誰を解雇するか、合理的に選んだか ④解雇手続は妥当なものかの4点があり、これは限定社員に対しても同じように考えなければいけないからです。

無限定の正社員への転換制度があるならば、それも選択肢として提示する必要もあるでしょう。

地域限定社員の給料や賞与の仕組み

賃金については、大まかにパート・アルバイト<地域限定社員<正社員という式が成り立ちます。地域限定社員の賃金水準は、概ね正社員の8~9割とする調査結果があります。

【出典】厚生労働省「多様な正社員の処遇」

正規雇用のため給与体系は正社員に準ずるものが適用され、手当や賞与等が無限定の正社員よりは低く抑えられる場合が多いようです。これは、前述した昇格に限度を設けている企業が多いこととも無関係ではないでしょう。職位に対して手当てを付与する賃金体系を取っている場合では、職位が上がるほど正社員との差が大きくなると考えられます。一方、通勤交通費の支給や健康保険/厚生年金、福利厚生については正社員との差は少ないとする調査結果があります。

【出典】独立行政法人労働政策研究・研修機構「「改正労働契約法とその特例への対応状況及び多様な正社員の活用状況に関する調査」結果」

地域限定社員制度を導入するメリット

地域限定社員とはどのような特徴を持つ雇用区分なのか、これまで確認してきました。この制度を導入することの、企業側から見たメリットを改めてまとめておきます。

ワーク・ライフ・バランス

ひとつはワーク・ライフ・バランスの担保です。転勤がないことは、例えば住宅の購入などの決断をしやすくするでしょう。また、勤務地域が限定されていれば、通勤にかかる時間も一定範囲内に収まると考えられます。これは労働者にとってのメリットだけではありません。その企業で働くことへの不安や身体的な負担を軽減することは、生産性やモチベーションの向上につながると考えられ、結果としては企業の業績向上や成長につながるからです。

【関連】「ワークライフバランス」/ BizHint HR

ダイバーシティ

もうひとつは、ダイバーシティの実現です。従来の無限定な正社員かパート・アルバイトかという2極の雇用区分しかない場合、例えば出産や育児、介護といったライフステージ上の変化が社員に起こったときに、柔軟な対応が困難です。これらは既に女性だけの問題ではなくなっており、そういった事情を抱えている多くの労働力の活躍を促進するでしょう。また、高齢者・障碍者・外国籍の労働者といった、多様な労働力を活用する機会も生まれてくる可能性もあり、組織の活性化という観点からも効果が見込めます。

【関連】ダイバーシティとは?意味や経営を推進するためのポイント/ BizHint HR

人材確保の有効な手段

現在のところ、能力も意欲もありながら、様々な理由から非正規雇用にとどまらざるを得ないケース、または離職を余儀なくされるケースも少なくありません。勤務地域を限定することで、企業にとって有用な人材の採用・登用・流出防止を図ることができます。

地域限定社員制度を導入するデメリット

では逆に、地域限定社員制度を導入することの、企業にとってのデメリットはどんなことが考えられるでしょうか。

ひとつは、人件費コストの増加です。先に見てきたように、パート・アルバイトと比べると賃金水準を高めとすることが一般的なため、非正規雇用労働者の登用の受け皿として考える場合、人件費はどうしても増加することになります。

また、雇止めができなくなるため、その地域の事業規模を縮小するなどの場合には、要員がだぶついてしまうことも考えられます。これも先に見てきましたが、決して解雇しやすい雇用区分とは言えないため、人員整理の必要が出た場合には、特に配慮する必要があります。

そして、無限定社員との賃金等の待遇や評価・昇格についての公平性の確保も難しい問題です。まったく同一にしては無限定社員の不満につながり、大きな格差をつければ地域限定社員の不満につながります。あるいは「同一労働・同一賃金」の問題に抵触する可能性なども、考慮しなければいけません。

人事評価制度も複雑化しやすく、透明性や公平性を確保するための努力は今まで以上に必要となると言えるでしょう。

地域限定社員制度を導入している企業の事例

ユニクロ

ユニクロの地域限定正社員制度は、2007年に非正規雇用労働者の正規化を目的として運用を開始しました。当時、目標として5,000人を正社員化するとして注目を集めましたが、現実には7年かけても1,400人程度にとどまりました。その理由を、同社では「正社員と同じく、繁忙期である土日の勤務や週40時間のフルタイム労働を求めた点に無理があった」(ファーストリテイリング広報)と分析しています。

その後2014年には、非正規雇用労働者の半数以上にあたる16,000人を正社員化すると発表しました。今回は転勤がないだけでなく、勤務日数を少なくできるなど、社員の希望に柔軟に対応できるように制度を見直しています。結果として2015年時点でも10,000人以上が正社員となったと言います。

ユニクロでは、非正規雇用労働者を正社員に転換するだけでなく、新卒採用・中途採用でも地域限定社員を募集しています。そのリクルーティングサイトを見ると、教育システムやキャリアパスも含めた制度全体がよく練り上げられているのが伝わってきます。大規模な正社員化による人件費のコスト増加は避けられないところでしょうが、それでも同社にとって地域限定社員制度は人材確保のために欠かすことのできない成長戦略の一つなのだと考えられます。

【参考】東洋経済オンライン2014年「ユニクロ、”パート正社員化”へ2度目の挑戦」
【参考】キャリアデザインタイムス「ユニクロの【地域正社員制度】から紐解く、「働き方の多様性」を実現するために必要な3つの要素」
【参考】UNIQLO ユニクロ 地域正社員募集

日本郵政

ユニクロが地域限定社員を16,000人増加させると発表した同じ2014年、それを上回る20,000人の目標を掲げたのが日本郵政グループです。現在、非正規からの登用に加え、新卒の採用枠に地域限定社員が組み込まれています。呼称はグループ内の日本郵便・ゆうちょ銀行で地域基幹職・エリア基幹職と異なりますが、郵便局長や支店長への昇格制度も設けられている点は共通しています。

一方、本記事で取り上げてきた地域限定社員と異なっているのは、新卒の場合、転居を伴う異動が全くないわけでなく、全国を13に分けたエリア内では転勤がありうることです。日本郵政の全国中に行きわたったネットワークからすれば、実際に通勤可能な範囲に数多くの営業拠点があり、地方の人材、特に「基幹職」と呼ぶ中核的な職層の地盤を固めることが主眼と考えられます。完全に転勤がない区分として、従来からある一般職の募集も継続されていることからも、そのことがうかがえます。

非正規雇用からの登用の状況について、詳細は明らかではありませんが、大きな雇用基盤を持つ企業だけに、今後の動向にも注目が集まるところでしょう。

【参考】地域基幹職、エリア基幹職、業務職・営業職の仕事/ JAPAN POST GROUP RECRUIT

AOKI

紳士服を中心とした衣料品販売店を全国に展開するAOKIでも、地域限定正社員制度を設けています。各店舗に勤務するスタッフには女性が多いということで、家庭や育児との両立を目的とした制度設計がされています。

通常でも自宅から通勤可能な範囲に配属されることに加え、「ギアチェンジパッケージ」と呼ぶ、その時々のライフスタイルに合わせて働き方を変更できる制度が導入されています。勤務地は自宅から90分以内とされ、勤務時間や勤務日についても柔軟に対応しているようです。店長職やそれに準ずる役職につくケースもあると言い、女性の活躍というダイバーシティ実現のための制度導入であることが見て取れます。

【参考】AOKI 地域限定社員採用情報

まとめ

  • 地域限定社員制度は、労働者にとっても企業にとってもメリットがある。今後の日本社会にとって不可欠な仕組み。
  • しかし、企業の状況や方針によっては導入には考慮しなければいけない問題も多く、安易にはできない。
  • 既存社員とのバランスなども考慮した人事制度自体の設計をしっかり考慮したうえで、導入を検討したい。

注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計130,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 事業運営のキーワードが把握できる
  • 課題解決の事例や資料が読める
  • 厳選されたニュースが毎日届く
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

地域限定社員の関連キーワードをフォロー

をクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードフォローの使い方

ビジネス事例や製品の情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次