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2019年5月19日(日)更新

女性活躍推進法

女性活躍推進法は、職場での活躍を望む女性が力を発揮できる社会づくりのために制定されました。今回は、女性活躍推進法の原則や企業が負う義務の概要、具体的な事業主行動計画の策定方法を解説します。また、優秀企業に対する制度「えるぼし」認定や、実際の企業事例、法律の課題点もあわせて紹介します。

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女性活躍推進法とは

女性活躍推進法は、自らの意思で「働きたいと」希望する女性が職業に就くにあたって、より自由に活躍することができるような取り組みを行うことで、豊かな社会づくりを実現するために制定された法律です。少子高齢化による労働力不足の解決を図るために施行されました。

正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、平成27年8月28日に成立しています。

この法律では、基本原則や方針、女性活躍を促すために企業が行うべき事業主行動計画の策定や義務、支援内容などが定められています。

女性活躍推進法において企業に求められる義務

女性活躍推進法の施行により、企業に義務として求められる事柄は、大きく分けて以下の3つになります。

具体的には、まず初めに社内の現状把握と改善しなければならない点の洗い出しを行い、その内容に基づいた内容の「事業主行動計画」を策定します。この行動計画は、各都道府県の労働局に届け出た上で社外への公表、社内への周知活動を行う必要があります。

その後、実際に行動計画に沿った取組を行ったことで得た成果などの情報も、企業は定期的に公表しなければならない点にも注意が必要です。

※なお、事業主行動計画とは、実際に女性が職場で活躍するための数値目標を計画値として定めた計画書類のこと指します。一般の企業が定めるものを「一般事業主行動計画」、国や都道府県、市町村が定めるものを「特定事業主行動計画」といいます。

義務付けられている企業

企業全体で301人以上の労働者を雇う事業主には、事業主行動計画の策定や届け出が義務づけられています。

300人以下の労働者を雇う事業主の場合、策定や届け出は「努力義務」となります。

罰則規定について

女性活躍推進法では、前述のようにさまざまな内容が義務づけられています。しかし、これらの内容を実施しなかった企業に対する具体的な罰則規定については特に設けられていません。

ただし、厚生労働大臣は必要に応じて一般事業主に報告を求め、助言・指導もしくは勧告ができることになっているため、各企業には法律の内容を理解し、積極的に取り組みを行うことが求められています。

「事業主行動計画」の策定に向けた手順

それでは、ここからは女性活躍推進法の中でも非常に重要となる、「事業主行動計画」の策定方法について解説していきます。

1.状況把握と課題分析

今後の方針を確定するためには、まずは自社の状況を把握することと立ちはだかる課題や問題点の適切な分析が重要です。

状況把握

はじめに、必ず把握すべき「基礎項目」の数値状況を確認します。

【基礎項目】

  1. 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  2. 男女の平均継続勤務年数の差異
  3. 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
  4. 管理職に占める女性労働者の割合

女性社員数は男性社員数と比べてどうか、出産前後の女性が継続して就業できる環境か、残業時間数はどうか、仕事と家庭の両立はできているか、管理職に占める女性比率はどうか、といった要素ごとに自社の状況を割り出し、当てはめていきましょう。

「基礎項目」を算出したところで、最低限の社内の実情が理解できるでしょう。そこで、次は以下に記された、「選択項目」を活用し、状況把握を進めていきます。

【選択項目】

  1. 採用
  2. 配置・育成・教育訓練
  3. 継続就業・働き方改革
  4. 評価・登用
  5. 場風土・性別役割分担意識
  6. 再チャレンジ(多様なキャリアコース)
  7. 取組の結果を図るための指標

なお、これらの状況把握は、会社の前年度のデータをもとにするのが通例とされています。

課題分析

基礎項目ごとの状況を把握できたら、課題点を見つけるための分析作業に入ります。

具体例として、前述の基礎項目である「1. 採用した労働者に占める女性労働者の割合」での課題分析を考えてみます。

算出した数値を分析した結果、雇用している労働者のうち、女性労働者が著しく少ない部門が明らかになったとします。その際の解決策の一つとしては、採用基準や人事考課基準を見直す方法が挙げられます。

このように、洗い出された課題をもとに、一つずつ丁寧に分析を行っていくことが大切です。

【参考】一般事業主行動計画を策定しましょう︕︕(パンフレット)から抜粋(ステップ1 女性の活躍に関する状況把握、課題分析)/内閣府男女共同参画局ホームページ

2.行動計画の策定・社員への周知、公表

課題の分析が一通り済んだところで、次はいよいよ実際に行動計画を策定し、従業員への周知や公表を実施する段階へと入ります。

行動計画を作成する際は、以下3項目の設定が必要です。

  • 計画期間
  • 数値目標
  • 取組内容および実施時期

どのように行動計画を作り上げていけば良いのかを、具体例を交えて説明していきます。

計画期間

まず初めに、計画期間を設定します。計画期間とは、社内で策定した取り組みを行うためにかかる期間のことで、設定した目標を達成するまでにどのくらいの時間がかかるかを検討した上で設定していきます。

期間の目安は会社の状況にもよりますが、平成28年~令和7年までの10年間から、およそ2~5年ごとに区切っていくことが推奨されています。検討により、5年以上かかるという結論が出された場合は、設定した目標の見直しや計画内容を再検討するようにしましょう。

たとえば、計画期間を2年ごとに区切る場合は、「平成30年4月1日~令和2年3月31日」などと記載します。その上で、定期的に計画の内容や期間の見直しを実施することになります。

数値目標

社内での取り組みを、何をもって達成したかを具体的に図るためのものが「数値目標」です。従業員を取りまく状況の把握や、分析したのちに割り出された課題をクリアするための数値などを算出します。

割り出す順番としては、社内で最も問題が大きいと判断された内容から優先的に行うことが適切です。なお、数字の設定方法は、「現状の3倍にする」などの“倍数”や「現状から15%アップ」などの“割合”、「10人以上に増加させる」などの“実数”など、数字を使った表記であればいずれの方法でも構いません。

取組内容および実施時期

取組内容とは、前項目で設定した数値目標を達成するために行う行動の内容のことを指します。時系列に沿った内容で、具体的な取組内容や実施時期を記載することがポイントです。

たとえば、「総合職の女性労働者を1人から8人以上に増加させる」という目標の場合、「令和2年4月に新卒者向けの社内リーフレットの内容を見直す」「令和2年6月には会社説明会の内容を検討する」といった取組内容と実施時期を設定していきます。

注意点としては、性別を問わず、男女の労働者をともに対象とした取り組みを行う必要があることです。たとえば女性労働者を採用などの人事面で優先した待遇に処した場合、男女雇用機会均等法に抵触することになるためです。ただし、雇用管理区分内の女性労働者の割合が男性労働者と比較して4割を下回る場合は、女性のみを対象とした社員教育などを行うことが許されています。

具体的な取組内容を設定する場合は、法律に沿った内容かを検証しながら行うことが求められています。

上記の点をふまえた上で、設定した目標ごとに具体的な取組内容を記載し、行動計画が完成します。

3.従業員への周知と公表

行動計画は、策定しただけでは意味がありません。その内容を従業員へと周知し、社外へ情報を公表する必要があります。

社員への周知

行動計画に記載した目標を実現するためには、社員の理解や協力が不可欠です。計画が完成したところで、従業員に対して内容を周知しましょう。

周知の方法は、書面配布や社内掲示、メール添付、社内ネットワークなどによる共有の方法が挙げられます。

社外への公表

作成した行動計画は、社内に周知させるだけではなく、社外にも広く公表することが義務づけられています。社内で策定した行動計画を公表することで、同じ悩みを持つ他社に対して取組内容の情報を共有し、社会全体で女性労働者がより活躍できるような状況を作り出すきっかけになるためです。

具体的な公表の方法としては、厚生労働省のサイト「女性の活躍推進企業データベース」への掲載や、社内ホームページへのアップなどの方法があります。女性の活躍推進企業データベースに登録を行った場合、企業名や所在地、実際に作成した一般行動計画書の内容がホームページに掲載し、誰でも自由に閲覧できる状態となります。

【参考】女性の活躍推進企業データベース/厚生労働省ホームページ

4.行動計画を策定した旨の届出

行動計画を策定し、周知や公表の作業が完了したところで、次は事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に向けて届出をします。実際に、届出を行う場合、郵送や直接持参、電子申請などの方法が認められています。

届出の際には、次の内容について必ず記載しなければなりません。提出前に、記入もれがないかを確認しましょう。

  • 一般事業主の氏名又は名称及び住所(法人の場合は代表者名)
  • 常時雇用する労働者の人数
  • 一般事業主行動計画を策定・変更した日、変更内容
  • 一般事業主行動計画の計画期間
  • 一般事業主行動計画を定める際に把握した女性の職業生活における活躍に関する状況の分析の概況
  • 達成しようとする目標及び取組の内容の概況
  • 一般事業主行動計画の労働者への周知の方法
  • 一般事業主行動計画の外部への公表方法
  • 女性の職業生活における活躍の推進に関する情報の公表の方法

5.取組実施と定期的な点検・評価

行動計画の届出が完了したら、いよいよ次は内容に沿って取り組みを実施する段階へと入ります。設定した目標を達成するため、実施時期にあわせて会社全体で取り組んでいきましょう。

女性の活躍状況に関する情報の公表について

先述した通り、取り組みを実施したことによる結果や生じた効果は、定期的に点検した上で評価をしなければならず、その内容の公表も義務となります。 これは、先に事業主の義務として述べた「行動計画の社外公表」とは異なる点が特徴です。 「女性の活躍状況に関する情報」とは、次の項目のうち、事業主側が公表するに値する適切な内容だと判断するものを公表することです。

  1. 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  2. 採用における男女別の競争倍率又は競争倍率の男女比
  3. 労働者に占める女性労働者の割合
  4. 男女の平均継続勤務年数の差異 または 男女別の採用10年前後の継続雇用割合
  5. 男女別の育児休業取得率
  6. 一月当たりの労働者の平均残業時間
  7. 年次有給休暇取得率
  8. 係長級にある者に占める女性労働者の割合
  9. 管理職に占める女性労働者の割合
  10. 役員に占める女性の割合
  11. 男女別の職種又は雇用形態の転換実績
  12. 男女別の再雇用又は中途採用の実績
  13. 企業認定の有無

なお、公表の方法は、行動計画の社外公表と同様で、厚生労働省のサイト「女性の活躍推進企業データベース」への掲載や、社内ホームページへのアップなどの方法があります。

女性活躍推進法の認定制度「えるぼし」

策定した行動計画に沿って取り組みを実施し、その内容が「優秀である」と認められた場合、「えるぼし認定」と呼ばれる厚生労働大臣の認定を受けることができます。なお、認定を受けるには、都道府県労働局への申請が必要となります。

「えるぼし認定」について

【出典】えるぼし認定企業(女性活躍推進法)のご紹介/広島労働局

「えるぼし」とは、女性労働者の活躍推進のための取り組み状況が優良と認められた企業に付与される認定制度の名称です。認定を受けるためには、女性活躍推進法に定めのある「女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準」を満たす必要があります。

優良かどうかを評価する項目は、具体的には次のような内容になります。

  1. 採用
  2. 継続就業
  3. 労働時間等の働き方
  4. 管理職比率
  5. 多様なキャリアコース

えるぼしでは、評価が星により分類され、最高評価は三つ星とされています。三つ星を獲得するには、上記の1~5全ての評価項目を満たす必要があることに注意が必要です。

【関連】 えるぼしの意味とは?認定企業例やくるみんマークとの違い/BizHint HR

えるぼし認定のメリット

えるぼし認定は、企業側にさまざまなメリットをもたらします。

たとえば、企業イメージアップです。えるぼし認定を受けた場合、厚生労働省の特設ホームページに「認定企業」として掲載されます。これにより、自分の会社が女性の活躍を後押ししている優良な企業であると対外的に知らしめることができます。

また、えるぼし認定は採用活動を有利に進められるというメリットもあります。「この会社なら安心だ」という考えから、優秀な女性労働者が集まりやすくなるでしょう。

公共調達における加点評価も

さらに、えるぼし認定には公共調達の際に有利になるというメリットもあります。これは、女性活躍推進法の第20条で、国や地方公共団体は基準を満たす企業などに受注の機会を増やすように定めていることに基づくものです。

女性の活躍に取り組む企業の事例

それでは、ここからは女性活躍へ積極的に取り組む企業の事例をいくつか紹介をしていきます。

株式会社 資生堂

化粧品の製造や販売を行っている株式会社資生堂では、女性活躍の推進に向けて次のような取り組みを実施しています。

課題

  • 女性のキャリアステップにおけるロールモデルの構築
  • 多様な価値観に応じた柔軟で生産性の高い働き方の実現

目標

  • 2020年までに国内任用リーダーの女性比率を40%にする
  • 長時間労働の是正
  • 在宅勤務及びフレックスタイム制度の利用者増加

取組内容

  • 一人別人材育成の強化による女性リーダー候補者の可視化
  • 育成施策の実施及び強化
  • 長時間労働是正策の検討・実施
  • 在宅勤務及びフレックスタイム制度の継続的な活用推進

計画期間:2019年1月1日~2022年12月31日

【参考】女性の活躍推進企業データベース/株式会社資生堂

株式会社 三井住友銀行

金融業界大手の株式会社三井住友銀行では、女性活躍の推進に向けて次のような取り組みを実施しています。

課題

  • 女性が能力を思う存分に発揮できる職場環境の整備
  • 女性が更なる活躍をするためのキャリア支援

数値目標

  • 基幹職の新卒女性採用比率を30%以上にする
  • 部下の管理監督業務を行う女性管理職の比率を25%以上にする
  • 男性の育児休業取得率を100%にする

取組内容

  • 女性の継続的かつ安定的な採用
    (応募者に向けた積極的な情報開示)
  • 女性に対する細やかなキャリア支援
    (出産や育児によるキャリアブランクをフォローする研修や面談の実施 など)
  • 全従業員が活躍できる職場環境の整備
    (男性による短期育児休業取得の勧奨 など)

計画期間:2018年4月1日~2020年3月31日

【参考】女性活躍推進法および次世代育成支援対策推進法に関する一般事業主行動計画/株式会社三井住友銀行

株式会社 ベネッセスタイルケア

高齢者介護サービス事業や保育事業を営む株式会社ベネッセスタイルケアでは、女性活躍の推進に向けて次のような取り組みを実施しています。

課題

  • 男性に比べ、女性の新卒スタッフ(介護職)の定着率が低い
  • 正社員介護職スタッフやサービスリーダーの女性比率は過半数を超えているにも関わらず、ホーム長の女性比率が25.6%と低い

数値目標

  • 女性の新卒スタッフ(介護職)の5年目継続雇用割合を60%まで上げる
  • ホーム長の女性比率を現在の約1.3倍となる30%まで増やす

取組内容

  • 新卒スタッフの定着率改善に向けた取り組みの実施
    (新卒3ヶ月目研修でのストレスケア研修や事業部によるフォロー など)
  • 育児や介護と仕事を両立できる仕組み作りの継続実施
    (仕事と育児を両立している従業員を対象としたコミュニティの創立 など)
  • サービスリーダーやホーム長候補の計画的な育成
    (サービスリーダーから登用したホーム長を対象とする研修の実施 など)

計画期間:2016年4月1日~2018年3月31日

【参考】株式会社ベネッセスタイルケア行動計画/ベネッセスタイルケア

女性の活躍推進企業データベースは取組例の宝庫

厚生労働省の運営する「女性の活躍推進企業データベース」は、女性活躍推進に関する情報や各企業の取組例などを紹介したデータがふんだんに盛り込まれています。

2019年4月現在 、登録企業数は、データ公表企業が10,000社以上、行動計画公表企業が13,000社近くとなっています。業種別の検索もできるため、同業他社の取組例を確認するにも便利です。自社の推進活動の参考にすると良いでしょう。

【参考】女性の活躍推進企業データベース

女性活躍推進法がもたらすメリット

女性活躍推進法の存在意義は、単に女性の社会進出を後押しするということだけではありません。企業、働く女性の双方に数多くのメリットをもたらすという効果もあります。

企業にとってのメリット

女性活躍推進法が企業に対してもたらすメリットには、次のようなものが挙げられます。

ダイバーシティの推進

ダイバーシティとは、年齢や性別、能力などを問わず、多種多用な人材の活用を図ろうという思想のことで「多様性」と訳されます。もともとは、社会的少数者の就業率アップを後押しするための考え方でしたが、日本では女性の活躍を推進するための取り組みを指すケースが多くみられます。

ダイバーシティを推進することで、女性労働者が置かれた状況を理解し、その特質を生かして雇用することで、多様化しているビジネスモデルに対応できる能力を企業にもたらすという効果があります。

【関連】ダイバーシティの意味とは?経営推進のポイントから企業事例もご紹介/BizHint HR

ワーク・ライフ・バランスの実現

女性が活躍できるような環境を作り出すことは、前項目で問題視されていた女性の離職率の低下につながります。

たとえば、育児や介護を理由にフルタイムで勤務ができなくなった女性労働者に対する雇用継続対策を取ることで、その労働者に「離職しない」という選択肢が生まれ、優秀な人材の流出を防ぐことができます。また、女性の離職率が低下することで離職に伴う採用活動や再雇用者への教育にまつわるコストも削減することが可能です。

【関連】ワーク・ライフ・バランスとは?メリットや推進ポイント、取組事例もご紹介/BizHint HR

社外への企業ブランドのアピール

女性が生き生きと働ける企業では、高いモチベーションを持って働く社員が多い傾向があるため、より高い生産性が期待できます。また、男女が分け隔てなく活躍する企業は、対外ブランドイメージが良く、採用や営業活動において有利な状況を作り出すことが可能です。

女性にとってのメリット

女性活躍推進法が女性に対してもたらすメリットには、次のようなものがあります。

キャリアの選択肢が広がる

男女雇用機会均等法などにより雇用における男女平等がうたわれてはいるものの、これまでは、業種や職種によって女性が進出することが困難な状況も見られました。

女性活躍推進法が施行され、女性の活躍を後押しする対策を取る企業が増加することで、多くの女性が断念していたキャリアアップを実現する可能性が広がるのです。

多様な働き方ができる

女性活躍推進法は、育児や介護、家族の転勤などにより、就業時間や場所を制限されている女性労働者にとっても有効な制度です。

制限されている要因を会社側が受け入れて新たな働き方を提案することで、就業やスキルアップを諦めていた女性が生き生きと働き続けられる環境が増えるでしょう。

女性活躍推進法施行の背景

これまで、女性活躍推進法の概要について説明をしてきました。 最後に、女性活躍推進法が施行に至るまでにはどのような背景があったのか、その存在意義について述べていきます。

国ではこれまで、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法、次世代育成対策推進法などにより、雇用における男女格差問題や女性の社会進出を図るための対策を取ってきました。そして次の段階として、女性がさらに幅広いフィールドで活躍できるような取り組みを実施することになったのです。

安倍内閣では、「2020年30%」の目標を掲げています。これは、2020年までの間に、社員を指導する立場に置かれた女性労働者の割合が少なくとも30%程度になるようにするように、という内容です。

しかし、現状は依然として30%には程遠い状態が続いています。総務省が実施した平成26年の労働力調査によれば、日本の管理職における女性の割合は11.3%であり、世界水準を満たない結果が報告されています。

【参考】 「2020年30%」の目標の実現に向けて/内閣府男女共同参画局リーフレット
【参考】 男女共同参画白書 平成27年版 第2節 雇用の場における女性(管理職に占める女性割合の推移)/内閣府男女共同参画局ホームページ

このような結果が算出された背景としては、我が国で働く女性が置かれている、次のような状況が原因とされています。

女性雇用者の半数以上は非正規雇用

労働政策審議会雇用均等分科会による「女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築について(報告)」によると、2013年、雇用者全体において女性が占める割合は43.3%(約2,400万人) と4割を超えています。しかし、その半数以上(53.9%)は非正規雇用であることが報告されています。

出産・育児を機に離職した後、再就職できない女性がいまだに多い

日本では、30代の女性は出産・育児期に入ることが多い傾向にあり、30代の就業率が低くなる「M字カーブ」は以前から女性労働者の就労割合の特徴とされていました。しかし、その特徴が現在も依然として残っていることが問題視されています。

働いていない人の中で就職を希望している女性は、2013年の調べで315万人です。 このうちの多くを出産や育児に携わることの多い30代女性が占めていることが、女性の社会進出を妨げる理由の一つになっています。

【関連】M字カーブの定義とは?問題の中身と原因、解消までの道のり/BizHint HR

管理職に占める女性の割合が世界から見ても極めて低水準

管理職(課長級以上)の「意思決定層」に占める女性の割合は、2013年の時点でわずか7.5%でした。男女雇用機会均等法の制定時(1985年)の1.4%に比べれば増加しているものの、女性管理職が30~40%ほどを占める諸外国に比べると、日本は極めて低水準に留まっていることが現状です。

【参考】女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築について(報告)
【関連】ウーマノミクスとは?意味や効果、メリット、課題や問題点をご紹介/BizHint

「女性活躍推進法」施行後の課題

女性活躍推進法は、女性が職場で生き生きと働くことができるように定められた法律ではありますが、実際に女性労働者が活躍するためにはさまざまな課題が立ちはだかっていることも事実です。

たとえば、法律自体が周知されているかどうか、という点が課題として挙げられます。女性活躍推進法という法律の名称は知っているものの、その内容を正しく理解し、行動計画に取り組んでいる事業主が100%とは言えないのが現状でしょう。

また、男性労働者の中には、女性労働者の活躍推進に積極的ではない者が存在するかもしれません。協力する気持ちが薄い、または協力するために何をすればいいかわからないなど、取り組みへの参加を躊躇してしまうケースも問題点の一つです。さらに、女性労働者自身が出産や育児などの忙しさに呑み込まれ、継続雇用を断念する場合もみられます。

課題解決に向けてのポイント

前述のような課題を解決するためには、まずは事業主自身が法律の内容を正しく理解し、自分の会社で問題になっている点を浮き彫りにすることです。

また、仕事とプライベートの両立に関する問題は、男性労働者にとっても他人事ではありません。働き盛りの男性労働者が親の介護をしなければならない事態も、今後は増えることが見込まれています。このような事態に陥った場合、優秀な女性労働者の存在は貴重な戦力となるはずです。社員一丸となって、取り組む必要があります。

継続雇用を迷う女性労働者に対しても、専用の職場復帰プログラムの作成や社内での定期的なコミュニケーション機会の設定、周りの労働者の理解などでカバーすることが可能となるでしょう。


課題や企業が行うべきことについては、こちらの記事でもご覧いただけます。
【関連】女性の活躍を推進するには?課題や企業が行うべきことなど解説/BizHint


まとめ

  • 女性活躍推進法とは、女性が職業に就くにあたり、より自由に活躍できる職場づくりを目指した取り組みを実施し、豊かな社会を実現するために制定された法律です。
  • 一定規模の企業には、女性活躍の社内状況把握や課題分析、行動計画の策定や周知、公表後の届け出が義務づけられています。取組実施後の定期点検・評価情報の公表も必要です。
  • 女性活躍推進法には、ダイバーシティの推進やワーク・ライフ・バランスの実現等のメリットがある一方で、法律の認知度や取組への意識改革、継続雇用推進の問題もあります。

<執筆者> 加藤知美 社会保険労務士(エスプリーメ社労士事務所)

愛知県社会保険労務士会所属。愛知教育大学教育学部卒業。総合商社で11年、会計事務所1年、社労士事務所3年弱の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。


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