はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2018年3月1日(木)更新

サバティカル

日本人の働き方の見直しが叫ばれるなか、欧米先進国で進んでいる長期休暇制度「サバティカル休暇」を、導入する国内企業が少しずつ増加すると考えられます。今回は、「サバティカル休暇」についての取り組みを解説します。

サバティカル に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

サバティカル休暇とは

「サバティカル休暇」とは、一定の長期期間勤続者に、少なくても1ヶ月以上の休暇を与える長期休暇制度です。通常の有給休暇などの年次休暇とは違い、休暇理由に決まりがなく、場合によっては1年にわたる連続休暇のケースもあります。

その間、基本的には無給となりますが、通常に認められていた有給休暇分の積み立てを利用した補てんや、「サバティカル休暇」期間を利用して、大学院や研究機関で専門知識を学ぶ費用を援助する場合などがあります。使途に決まりがない休暇ですので、同様に使途制限のない、援助金を付与して経済的に支援するケースも見られます。

また、企業側が制度化した休暇制度ですので、長期休暇明けの生活が保障されていることから、労働者は安心して、長期の休暇を取得することができます。

近年、ワークライフバランスの概念が重要視されてきていることから、長期休暇制度は労働者の健康を守り、個人のスキルアップやキャリアアップに繋がる制度として注目されています。労働者の長時間労働による、過労防止の観点からも、通常の年次休暇が取りづらい、日本の労働者の環境を、改善する効果が期待されます。

【出典】厚生労働省平成28年就労条件総合調査の概況 

サバティカル休暇のメリット

それでは、「サバティカル休暇」を導入することにより、どのようなメリットがあるか、社員側、企業側、それぞれのスタンスからまとめます。

社員が新しい経験を得ることができる

長期休暇制度により、例えば海外留学や海外ボランティアなど、通常の短期休暇ではできない経験を得ることができます。これまでの日本では、終身雇用制度が主流のなか、入社以降は定年まで長期の休暇を取るという発想すらありませんでした。

退職しなければ得ることが出来なかった長期間を要するような経験が、「サバティカル休暇」の導入により若い世代から経験できることは、それからの人生に与える影響は大きいと言えます。

また、協業禁止の制約はありますが、長期休暇を利用して、別の仕事に従事するケースも考えられます。他業種での新たな経験は、その後の会社に戻った際には、大きな財産として新たな発想を生む原動力にもなり得ます。会社側にとっても、キャリアアップした社員を戻すことで、優秀な人材確保ができることになります。

専門性をさらに向上させることができる

長期休暇を利用して、大学院や専門機関で学ぶことにより、その後のスキルアップにも繋がります。日本の国立大学を中心に、教員に対して本来の職場を離れての研究を認める規程を設け、研究休暇と位置付けるサバティカル制度が、近年多く導入されています。休暇終了後には、スキルアップした能力を活かすことで、さらなる会社への貢献も期待できます。

創造的な休養をとることができる

身体を休めたり、趣味を楽しんだりする通常の休暇とは異なり、長期休暇を利用して、新たな経験をすることは、自己形成においても影響を与えると考えられます。新たな価値観をもって、自分を見つめ直すことにより、これまでになかった発想や、未来への可能性を広げることにつながります。

例えば、芸術的な感性を高めたり、新たな技術を身に付けたり、グローバルな知識を学んだりと、クリエイティブなスキルを高めるには、「サバティカル休暇」のような長い時間が必要となります。

介護離職や病気による離職を防ぐことができる

社会問題にもなっている介護離職。平成24年度の総務省統計局の発表では、介護離職者は1年間に10万人を超え、介護をしながら働いている従業員数は、230万人を超えています。

【出典】総務省統計局平成24年就業構造基本調査結果 

企業側にとっても、人材の確保は大きな問題です。「サバティカル休暇」による、長期休暇制度は、このような介護問題において、当事者の身体的負担と精神的負担の双方を軽減できる可能性があります。

従業員本人の健康問題においても、長期入院時の対応や、突発的な事故などにも対応できる長期休暇制度は、離職率を下げることになり、雇用の確保が期待できます。また、長時間労度などによる過労死や健康被害から従業員を守る制度としても効果があり、有給休暇など通常年次休暇が、実質取りづらい環境のなか、総労働時間抑制等の長時間労働是正にも繋がる制度として、導入が期待されます。

サバティカル休暇を導入する上での懸念点

どちらかといえば、従業員側にメリットが多い「サバティカル休暇」ですが、先進欧米国と比べ、日本の導入企業は未だ少ないのが現状です。今後、「サバティカル休暇」を導入していくにはどのような懸念点があるのか、まとめてみます。

そもそもサバティカル休暇をとる社員が出てくるか

日本では、「サバティカル休暇」のような長期休暇以前に、通常の年次有給休暇すら取得率が低いのが現状です。下の図より、平成27年の年次有給休暇取得状況は47.6%と、二人に一人しか有給休暇を取得していません。

【出典】厚生労働省 平成28年版厚生労働白書 

欧州の先進国と比べても、休日以外に休暇を取るという意識は低いと言えます。

【出典】独立行政法人労働政策研究 データブック国際労働比較2016 

業務の遅れの懸念や上司や同僚への遠慮といったことから、長期休暇が取りづらい状況が生み出されていると予想することができます。また、研究や介護、傷病などの具体的な理由がない場合、使途が自由な「サバティカル休暇」という制度への認知が低く、社員も長期休暇を取得することへの、意味も希薄になってしまっていると思われます。

長期休暇制度を導入しても、制度の重要性や啓発・告知を十分行わないと、希望取得者が現れず、無力化する恐れがあります。

キャッチアップができなくなるかもしれない

1ヶ月以上の長期休暇の後、業務に戻った時の遅れをどうするのかは、休暇を取得する社員も、会社側にとっても懸念するポイントです。「サバティカル休暇」が、未だ一般的に認知されていない日本では、業務上のバックアップ体制を整備することが急務と言えます。

長期休暇制度は、会社に復帰した後の、立場や生活を保障するという大前提の上に成り立つわけですから、復帰した後、スムーズに通常業務に戻る仕組みを作る必要があります。この点は、育児休暇など他の長期の休暇制度にも同様のことがいえます。

サバティカル休暇導入例

日本企業で先駆的に「サバティカル休暇」と取り入れている企業と、先進諸外国の実例を紹介します。

導入企業

ヤフー株式会社

  • 勤続10年以上の正社員を対象に、最長2~3カ月の範囲で取得可能。
  • 「休暇支援金」として基準給与1ヶ月分支給。
  • 年次有給休暇、積立有給休暇(最大30日)との併用可能。
  • 業務上、変化のスピードが非常に早いIT業界において、2~3ヶ月ものあいだ、会社を離れてしまうことへの不安から、取得者が増えるのかが懸念点といえます。

【参考】>Yahoo! JAPAN - プレスリリース

株式会社リクルートテクノロジーズ

  • 勤続3年以上の社員を対象に、3年ごとに最大連続28日間取得できるSTEP休暇。
  • 応援手当として一律30万円が支給。
  • 有効期間内(発生日より2年間)に未消化となった年次有給休暇は、ストック休暇として40日を上限に積み立てられます。

【参考】休暇・休職|制度・環境|採用情報|リクルートテクノロジーズ

ココデ・グローバル株式会社

  • 入社の約1年後に、最大1ヶ月間のサバティカル休暇取得可能。
  • 有給休暇、年俸維持。

【参考】福利厚生 : 採用情報 / ココデ・グローバル株式会社

株式会社ぐるなび

  • 「プチ・サバティカル」と称して、勤続5年で3日間の連続休暇を付与。
  • 活動支援金として2万円が支給されます。

【参考】福利厚生/株式会社ぐるなび

導入国

フランス

1930年代には全ての労働者が毎年連続2週間の有給休暇を付与される、通称「バカンス法(正式名称:マティニョン法)」と呼ばれる法律が制定されるほど、長期休暇制度が歴史的に根付いています。

現在のフランスでは、勤務する企業における勤務年数が3年以上であり、かつ通算の勤務年数が6年以上であること、また過去6年間に当該企業において同制度を利用していないことを条件に、6~11ヶ月の「サバティカル休暇」を取得することができます。

また、当初無給だった「サバティカル休暇」ですが、2003年に導入された「休暇積立口座制度」により、年間最大で22日の有給休暇を積み立てることができ、原則2ヶ月以上の休暇取得の際に、給与補償として充てることができます。

【参考】第10号 :ワーク・ライフ・バランス/ 内閣府男女共同参画局

ドイツ

世界的にみても労働時間が少ないドイツには、より効率的に長期休暇を取得する方法として、「労働時間貯蓄制度」というものがあります。この制度は、労働者が口座に労働時間を貯蓄しておき、休暇等の目的で、好きな時にこれを使えるという仕組みで、現在企業全体の約2/3が、何らかの形で「労働時間貯蓄制度」を導入しています。

労働時間を、まるで銀行口座のように貯蓄することができ、労働時間を変動的に配分することができる、柔軟性のある仕組みです。

【参考】ドイツの「労働時間貯蓄制度」(ドイツ:2008年7月)|フォーカス|労働政策研究・研修機構(JILPT)

スウェーデン

2005年から試験的に行ってきた「サバティカル休暇制度」を全国に拡張。勤続 2年以上の労働者が賃金の68%の手当を支給されながら, 最長 1 年間の休暇を取得できます。

移民や障害者などの長期失業者が、休暇取得者の代替要員として仕事に就くことが規定されているため, 失業対策としての効果も期待されています。

【参考】サバティカル休暇制度の導入(スウェーデン:2005年3月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

イギリス

欧州各国の中でも慢性的に長時間労働の問題が深刻化しているイギリスですが、長期休暇制度を国家では、法制化、制度化はしてはいません。その分、企業カルチャーとして各社が独自の制度を展開しています。

英国通信会社大手のブリティッシュ・テレコムでは、「タイムアウト」 と呼ばれる制度があり、目的を限定しない長期休暇で、延べ2年間で4回までの分割取得が可能です。 例えば1回に 2年間取ることも可能ですし、4回に分けて取ることも可能な仕組みとなっています。

【参考】欧州における長期休暇制度

まとめ

  • これまでの日本では、定年退職を迎えるまでは、長期の休暇は取得できないものと思われてきました。しかし、価値観の変化や、労働環境などの働き方の見直しが議論される今、欧米で採用されていた「サバティカル休暇」が注目を浴びています。
  • 「モーレツ社員」という言葉がある日本の働き方の歴史上、長期休暇の導入には、未ださまざまな懸念点、障害がありますが、これからの時代、このような変化こそが、労働者を守るために重要なことではないでしょうか。
  • 欧米のような長期のバカンス休暇がとれる時代が来ることが、日本のビジネスマンをさらなるグローバル化へと進むことになるのではないかと考えます。

注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計60,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 厳選されたビジネス事例が毎日届く
  • BizHint 限定公開の記事を読める
  • 実務に役立つイベントに申し込める
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

この記事の関連キーワード

フォローボタンをクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードについて

ビジネス事例や製品の情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次