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2019年4月9日(火)更新

勤務間インターバル

長時間労働による過労死や健康被害が取り沙汰されるなか、厚生労働省では、労働環境の待遇改善の取り組みとして、勤務間インターバル制度の導入を企業に奨励しています。働き方改革関連法の成立により、平成31年度からはこの制度の導入が努力義務とされるなど、さらに注目が集まる勤務間インターバル制度について解説します。

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勤務間インターバル制度について

勤務間インターバル制度とは、 勤務の終業時間と翌日開始の間を一定時間空けることにより、休息時間を確保し、実質的に労働時間を短縮させる という制度です。

例えば、9:00~17:00の就業企業で、仮に23:00まで残業した場合、その11時間後の翌日10:00までは、9:00の始業時間を過ぎたとしても、労働させてはならないという決まりです。これにより労働者は休息時間を確保することができ、過重労働による健康被害から労働者を守ることになります。

EU諸国では既に導入されている制度で、1993年に制定されたEU労働時間指令では、24時間につき最低連続11時間の休息が定められています。

【出典】厚生労働省 労働基準局 

【関連】長時間労働の原因とは?削減に向けた対策・厚生労働省の取組をご紹介 / BizHint

勤務間インターバル制度の必要性・努力義務化

近年に入り、労働者の長時間労働の問題が指摘されるようになると、国家的課題として、労働時間短縮に向けての施策が行われるようになりました。

2005年には「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(労働時間設定改善法)が改正され、時間の短縮のみならず、働き方、休日、休暇の設定など、労働者の生活や精神的健康についての取り組みが推進されるようになりました。日本の年間総労働時間は減少方向にあるものの、国際比較を見てみると、ヨーロッパ各国より依然として長時間労働を行っています。

【出典】厚生労働省

政府は「一億総活躍社会の実現」に向け、働き方改革を重要視して対策を進めているなか、総労働時間抑制等の長時間労働是正について明言化して取り上げています。

厚生労働省では、この対策の1つである勤務間インターバル制度について、普及促進のための有識者検討会の設置や導入企業に対する助成金の整備などを行っており、平成30年6月29日に成立した「働き方改革関連法」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)では、 平成31年4月1日から制度の導入を企業の努力義務とする など、普及促進に力を入れています。

【関連】働き方改革関連法案とは?概要や成立までの流れ、施行時期などをご紹介/BizHint

勤務間インターバル制度がもたらす効果

長時間労働がもたらす労働者への影響で、最も深刻なのは健康被害です。過労死や過労による自殺などは、社会問題としてこれまでも大きく世の中に取り上げられてきました。

厚生労働省の統計からも指摘されるように、時間外労働数1か月当たり80時間を越えると、労働者に与える健康被害が顕著となり、過労死ラインと言われることもあります。

【出典】厚生労働省

勤務間インターバル制度により、休息時間を確保することは、 実質労働時間の短縮に繋がり、過労死などの健康被害から労働者を守ることになります 。また、これにより労働者のストレス軽減に繋がることが、 仕事へのやる気や生きがいへの向上 にもなりますので、メンタルヘルスの観点でも、精神的健康の期待が見込めます。

一方、企業側にとってみても、労務改革により、企業の魅力が高まることで、 長期安定雇用の確保へ繋がり、生産性向上も期待できます 。また、過労による人的被害も削減できることから、労働安全・衛生面におけるリスクアセスメントの向上にもなると期待されています。

勤務間インターバル制度導入の課題

勤務間インターバルの導入にあたり課題にあがるのが、「休息時間の設定」と「義務化するのか努力目標にするのかの定義」です。

EU諸国と同様に11時間のインターバルを設ける場合は、23時まで残業すると、11時間後の10時までがインターバルとなり、始業時間が9時の会社の場合、始業時間には出社できないことになります。休息時間を9時間、8時間と短くすれば、導入は容易になりますが、制度の効果が薄れてしまいます 。

逆に形式にこだわり無理な休息時間を設定しても、会社の業務に支障がでたり、規則を守れないなどのストレスが生じたりすることにより、制度の崩壊に繋がりかねません。

会社の業務に合った休息時間の設定と制度化が必要 となります。

勤務間インターバルの現状

本章では、平成29年就労条件総合調査より、勤務間インターバルの導入状況などを見ていきます。

勤務間インターバル制度の導入状況

長時間労働の改善策として注目されている勤務間インターバルですが、導入状況別の企業割合をみると、「導入している」は1.4%に留まっており、「導入の予定はなく、検討もしていない」が 92.9%を占めています。

【出典】厚生労働省/平成29年就労条件総合調査

導入していない企業の理由

勤務間インターバル制度の導入の予定はなく、検討もしていない企業の理由を見てみましょう。

最も多かったのが、40.2%の「当該制度を知らなかったため」と、まだまだ認知度が高くないことが伺えます。また、次いで多かったのが、38.0%の「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」です。

【出典】厚生労働省/平成29年就労条件総合調査

政府が掲げる数値目標

2018年7月、勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標を政府として初めて設定いたしました。具体的な数値は以下です。

  • 2020年までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする
  • 2020年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする

厚生労働省では中小企業向けに助成金などの環境整備と、導入事例を周知することにより、導入を加速化させるための取り組みを始めています。

【参考】厚生労働省/「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更が本日、閣議決定されました

勤務間インターバル導入企業への助成金

2017年度より、職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)が新設されました。この助成金は、中小企業を対象に、過重労働の防止及び長時間労働の抑制に向け、勤務間インターバルの導入に取り組んだ際に、その実施に要した費用の一部を助成して、成果目標を設定したものです。

具体的には、支給対象となる事業主には、その導入にかかる、研修費や、システム構築費、社会保険労務士などの有資格者によるコンサルティング費用、労務管理機材費などが助成されます。

《支給対象》

【出典】厚生労働省 

助成金の支給は、事業実施期間中(事業実施承認の日から平成30年2月15日まで)に、設定した成果目標の達成状況により支払われます。

支給対象となる成果目標は、事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」又は「11時間以上」の勤務間インターバルを導入することと定められています。また、支給額は事業の実施に要した経費のうち、その合計額に補助率(3/4)を乗じた額、もしくは上限額を支給します。

【出典】厚生労働省 

【出典】厚生労働省

勤務間インターバル制度の導入企業例

日本における勤務間インターバル制度の導入は、三菱重工が労組の働きかけにより制度導入の検討に入ったのを皮切りに、KDDI、JTB、三井住友信託銀行やユニ・チャームが導入を開始しています。また、2017年度にはニトリホールディングスやヤマト運輸、ゼンショーホールディングスなどが導入予定を発表しました。

24時間体制の企業が早くから導入を開始していますが、長時間労働が問題視されている人材派遣会社や配送業、新3Kと言われるIT企業においても、制度の導入が期待されています。また、電通の過労死問題に端を発し、広告代理店やマスコミ、TV局などのエンターテイメント業界の労使でも制度導入の検討を始めています。

ユニ・チャーム株式会社

2017年1月から導入を開始したユニ・チャーム株式会社での勤務間インターバル制度の概略は、 全社員対象に最低8時間以上、努力義務として10時間というインターバル時間を、就業規則の中に規定 しました。インターバル時間が守れない場合、就業規則違反に該当することになりますが、具体的な罰則等は設けず、上長の管理責任として指導強化を行っています。

具体的な管理方法としては、勤務表におけるアラーム機能を新たに導入し、パソコン画面上にポップアップで、警告メッセージが表れるようにします。これにより、時間を意識した働き方を促すとともに、会社としての取り組みの本気度を表すことになります。

これらの制度導入のためにかかる費用としては、勤務表のインフラ改定費用や、説明会や社員の研修受講費用などが挙げられます。まだ始まったばかりの制度導入ですが、同社では中長期的な観点で目標を定めています。一人ひとりが健康でいきいきと働くことができる環境をつくることにより、生産性が高まり、より優秀な人材も集まりやすい態勢をとれるのではないかと、ユニ・チャームでは考えています。

【参考】厚生労働省:勤務間インターバル

KDDI株式会社

KDDIは、コールセンターや休むことのできない通信インフラの業務ということから、慢性化した長時間労働に陥っていました。これは脱却するためにKDDIが取った勤務間インターバル制度は、 規制と目標の2段階による設計 です。

一つ目は11時間のインターバル。これには拘束義務はありませんが、継続して11時間未満の休息時間が続く社員には、医療検診をさせて労働者の健康管理を行います。二つ目は8時間のインターバル。これは就業規則に定め、翌日の始業時間を調整することを厳守するものとしています。

【参考】厚生労働省:勤務間インターバル

まとめ

  • 勤務間インターバル制度は、労働者の健康と安全を守り、過重労働からの脱却に有効な手立てのひとつです。しかし、始まったばかりの制度ですので、導入時には労務管理上、検討しなければいけない項目があります。
  • 例えば、各社での最低限確保するインターバル時間とは、EU諸国同様の11時間休息が日本企業に有効なのか、また、通勤時間の長い日本企業において、休息時間に通勤時間を含めるのか否か。自社において有効的な勤怠管理システムとは、どんなものか、などが大きな検討事項になることと予測されます。
  • これまでの日本特有の企業戦士的思考は、プライベートよりも仕事を重要視してきました。現代の様々な環境の変化に対応するためにも、働きかたを考える時代に来ています。長時間労働を抑制して、労働者の幸福を高める新しい就業規定のひとつとして、各企業は勤務間インターバル制度導入を、積極的に取り組んでいくことが今後、期待されます。

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