連載:第3回 経営者が読むべき労務解説
2021年春に経営者が知っておきたい、6つの法改正
春は年度が代わり法律が改正されるシーズンでもあります。2021年(令和3年)4月1日に施行された人事労務分野に関する6つの法改正についてと、近々法改正が見込まれる事項、そして、法改正に関連した注目すべき動きの3つについて、社会保険労務士法人シグナル代表の有馬美帆さんが解説していきます。
1.人事労務分野に関する法改正
人事労務分野で2021年(令和3年)4月1日に施行された法改正事項のうち、「経営者が読むべき」という観点からピックアップしたものをご紹介します。
(1)パートタイム・有期雇用労働法
すでに大企業対象では2020年(令和2年)4月に施行済みの「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下、「パート・有期法」とします。)が、2021年(令和3年)4月1日から中小企業に関しても施行されました。 パート・有期法は、パートタイム労働者と有期契約労働者と「通常の労働者」(以下、「正社員」とします。)との待遇差について、第8条で「不合理な待遇差」を禁じ、第9条では従事する業務とその責任、及び人事異動の有無とその範囲(以下、「職務内容等」とします。)が同一の正社員との差別的取扱いを禁止しています。
【パート・有期法】
「賃金」だけでなく、あらゆる待遇が対象
- 第8条 「均衡待遇」=正社員との不合理な待遇差の禁止
→「職務内容等」の違いに応じて不合理とまではいえない範囲の待遇差である必要 -
第9条 「均等待遇」=職務内容が同一の正社員との差別的取扱いの禁止
- 第14条 「説明義務」=正社員との待遇差について説明する義務(2項) 説明を求めた非正規雇用者に対する不利益取扱いの禁止(3項)
今回の法改正は、いわゆる「同一労働同一賃金」の実現と言われていますが、
- 「賃金」の話にとどまらず、待遇、すなわち労働条件の全般にわたっての規制であり
- 判断はそれぞれの労働条件ごとに行われ
- 「職務内容等」が同じであるならば同じ待遇とする必要がある(同法第9条)
というだけでなく「職務内容等」に違いがあればその違いに応じて不合理でない待遇とする必要がある(同法第8条)という点に注意してください。
さらに、使用者の説明義務についても法改正が行われました(同法第14条2項)。パートタイム労働者や有期雇用労働者からの求めがあった場合、正社員との待遇差の内容とその理由について説明をする必要があります。この場合に、説明を求められたことを理由とした不利益取扱いをすることは禁止されています(同法第14条第3項)。実務的には、非正規雇用者に関する既存のあらゆる待遇について、説明義務の観点から説明可能な待遇差かどうかという視点での確認作業をまず行う必要があります。
なお、派遣労働者については、特に中小企業に関する猶予措置が設けられていないため、すでに2020年(令和2年)4月1日から労働者派遣法で派遣先労働者との不合理な待遇差が禁止されています。
同一労働同一賃金については、これまで労働契約法旧20条の問題として訴訟の場等で、非正規雇用者の待遇について争われてきましたが、今後はパート・有期法の問題となって行きます。
パート・有期法の問題として考える際に、まず気をつけるべきは「同一労働同一賃金ガイドライン」が存在するという点です。中小企業もこのガイドラインに沿いつつ、労働契約法旧20条に関する最高裁判例などを併せ考慮して、自社のあらゆる待遇について見直すことが急務といえます。
(2)労災保険の特別加入制度の改正(労働者災害補償保険法)
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