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2019年5月29日(水)更新

ワークシェアリング

ワークシェアリングとは「仕事の分かち合い」と訳され、労働者ひとり当たりの労働時間を短縮することにより、社会全体の雇用者数を増やそうとする政策の方法を指します。本記事ではワークシェアリングの意味と、メリットおよび問題点、日本とオランダを中心とした事例をご紹介します。

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ワークシェアリングとは

ワークシェアリングとは「仕事の分かち合い」と訳されることも多く、労働者ひとり当たりの労働時間を短縮することにより、社会全体の雇用者数を増やそうとする政策の方法です。

オランダやドイツ、フランスなどではすでに導入され、特にオランダでは失業率を大幅に低下させた実績もあります。

ワークシェアリングの誕生背景

労働市場の悪化により社会問題になっている労働者の過労死。その一方で失業による自殺が増加するなどの矛盾もあり、雇用問題の改善手段としてワークシェアリングを活用しようという意識が起きています。

ワークシェアリングの目的

労働時間を短縮し、仕事を分かち合うことで雇用が創出され、社会全体の雇用の安定化につながり、解雇規制緩和などの労働流動化や産業構造の転換により、経済全体の安定を目的とします。

ワークシェアリングのメリット

データブック国際労働比較によれば、圧倒的に多かった日本人ひとり当たりの労働時間は1988年の改正労働基準法の施行を機に着実に減少し、1914年にはアメリカに次いで2位の水準にまで落ち着いています。しかし、長時間労働者の割合については、2000年の28.3%から2014年には21.3%に減少したものの2位のアメリカ16.6%とは大きな差があります。

【参考】データブック国際労働比較2016 

日本は長時間労働の国と言われていますが、企業で働く正社員の方であれば、自分やまわりを見て納得する人も多いのではないでしょうか。

ワークシェアリングのメリットは、 仕事を分かち合う分、長時間働いている人は労働時間の削減、仕事を求めている人には労働の確保ができ、雇用創出の実現 となります。

また、ワークシェアリングが成功すれば、 高齢者雇用や女性の社会進出 にも大きなメリットとなるでしょう。

【関連】長時間労働の原因とは?削減に向けた対策・厚生労働省の取組をご紹介 / BizHint

ワークシェアリングのデメリット

日本では女性の社会進出が増える一方、社会保障費の負担からパート労働に留まる女性が多いのが実情です。

企業などでも、過去の景気後退期に削るのはパート労働者対象でしたが、現在では正社員の数を減らし、パート労働者を増やしています。

ワークシェアリングの推進に伴う雇用形態の多様化において、このようなパート労働者の位置づけが問題となります。それは賃金格差の問題があるからです。

正社員の給与と賞与を合わせるとパートタイマーとの格差は大きく、男女の賃金格差も含めるとパート労働者の賃金は、男性正社員の3分の1程度ともいわれます。

このような 格差の是正をしないままに雇用形態の多様化をすすめれば、低賃金労働者が増加する恐れがあります。

【参考】独立行政法人経済産業研究所 ワークシェアリングの現状と課題

【先進事例】諸外国におけるワークシェアリングへの取り組み

すでにワークシェアリングへの取り組みが進んだヨーロッパにおける事例を紹介します。

オランダ

前述したようにオランダは、1980年代前半に「オランダ病」と呼ばれる経済の危機を克服するために1982年、政労使で締結したワッセナー合意に基づき労働法の改正が行われました。

その後、労働時間調整法の制定により時短によるワークシェアリングが進み、企業は雇用確保のため労働時間短縮に努力し、労働組合は賃金の抑制に協力。政府は実質雇用者所得の減少を抑えるために減税と社会保障の負担削減等を実施しました。

1996年の労働法改正においては、「同一労働同一労働条件」という取り決めによりフルタイム労働者とパートタイム労働者間での時給、社会保険制度、雇用期間、昇進等の労働条件の格差が禁じられました。

さらに2000年の労働時間制定法では、労働者が自発的にフルタイムからパートタイムに転換、またはその逆も可能であるという権利や、週当たりの労働時間を自発的に決めることができる権利も定められています。

これらの効果が成功し、オランダの失業率は1983年の11.9%から、2001年には2.7%までに低下しました。これはワークシェアリングが大きな成果を上げた代表例としてオランダ・モデルと呼ばれています。

ドイツ

ドイツでは、1980年代から金属産業や自動車メーカーなどを中心に、失業者を出さないことを目的に時短の導入によるワークシェアリングが行われました。

これは労使協約によって自主的に行われたもので、業績の悪化による緊急避難型と位置付けられます。

政策としては2001年、パートタイム労働および有期労働契約法が定められ、同一労働同一賃金やパートへの差別の禁止を規定しています。

フランス

フランスでは、1982年の労働法改正により、週40時間だった法定労働時間が39時間へ短縮されましたが、短縮時間が少ないことからあまり効果がありませんでした。

悪化の続く雇用情勢に対し、1998年に成立した労働時間の短縮に関する指導・奨励法(通称オブリ法)に続き、2000年にオブリ法・第二次法が成立し、法定労働時間を週35時間と定め、早期実施の企業にはインセンティブとして社会保障負担の時限的な軽減措置がとられました。

時短の具体的な実施方法については労使間に委ねられていて、政府主導の時短を通じた雇用創出策でもあります。

【参考】第2章 ワークシェアリングの成果 /オランダ、ドイツ、フランス

ワークシェアリングの種類

ワークシェアリングは、その目的により分類されます。各目的と方法について解説します。

アメリカ合衆国内国歳入庁

アメリカ合衆国の連邦政府機関で連邦税の執行・徴収をつかさどる機関であるアメリカ合衆国国際入庁(IRS:Internal Revenue Service)によれば、ワークシェアリングは以下6種類の型にまとめられます。

  • 週あたりの労働時間短縮による雇用の創出
    ひとりの労働者につき一週間あたりの労働時間を短縮することにより、それに代わる雇用を生む
  • ジョブシェアリング
    通常はフルタイム勤務労働者が1人で担当する職務を2人以上の労働者がチームになって分担し、その職務においての評価や処遇もセットで受けるという働き方。より多くの人材に雇用機会を与えるとして注目されている
  • 早期退職措置としてパートタイム化
    定年により退職を迎えた労働者が再雇用される場合、嘱託やパート職員などとなる例はよくありますが、この方法は早期退職の措置としてパートタイム労働に切り替えるという方法
  • 自発的パートタイム化
    自発的にフルタイムからパートタイム労働者として働き方を転換する
  • 連続有給休暇時の代替要員
    病気などの諸事情により、連続して長期に渡り有給休暇を取得する正社員に代わる代替要員として、その間雇用される
  • キャリア・ブレーク時代の代替要員
    女性の社会進出に避けては通れない出産・育児という問題。その間の代替要員として採用される

日本(内閣府)におけるワークシェアリング

厚生労働省の掲げるワークシェアリングの方法としては、次のような分類ができます。

  • 雇用維持型
    不況などのために企業の業績が悪化した際、一人当たりの労働時間を減らすことにより、企業全体での雇用を維持する方法
    例)ドイツ:1980年代より進められたワークシェアリングは時短の導入により失業者を出さないという方法を採用
  • 雇用創出型
    様々な短時間労働を組みわせることにより雇用機会を増やす
    例)オランダ:「オランダ病」と形容されるほどの経済危機を短時間の雇用を生み出すワークシェアリングによって克服
  • 緊急対応型
    企業の業績に関係する生産や受注の一時的な減少に対応するための緊急措置で、雇用を維持するために勤務時間の短縮などを実施
  • 多様就業型
    多様な就業形態の導入により、企業のニーズと労働者のニーズを相互に充足。労働者は選択肢により、適切な働き方を選ぶことができるため雇用機会創出と維持に繋がる
    その就業形態として、短時間勤務・在宅勤務・兼業や副業などがあり、短時間勤務については、高齢者雇用の推進、キャリアを持つ労働者のワークライフバランスの調和、若年者の教育訓練、正社員とパートタイマーの均衡を図るなどの取り組みもみられます。

日本におけるワークシェアリングの現状

それでは日本のワークシェアリングの現状について解説しましょう。

普及の背景(取り組みの背景)

ワークシェアリングは就労時間を短縮することにより、その分賃金を下げ、雇用を維持する方法です。日経連の労働問題研究委員会報告(2000年)によれば、総人件費を抑制するために労使はあらゆる工夫を講じる必要があるとしています。

日本のワークシェアリングについては、多様就業型の推進を中心として取り組みつつあります。世代による働き方の均衡是正と労働者ひとりひとりのライフステージに応じた働き方の選択ができることを重点におき取り組む必要があります。

現状

最近の労働市場の状況は、若年層と高齢層で完全失業率が高く、労働時間については30歳代を中心に長時間労働者の割合が高い傾向にあります。

従業員の年齢構成は30歳代、40歳代が多く、そのために長時間労働やストレスによる健康上の問題、自己投資の機会を得られないなどの状況がみられます。

高齢者層については、豊富な経験や能力があるにも関わらず、その能力を発揮する機会を奪われているなど労働者の能力開発やキャリアの形成にも問題が生じています。

働く世代層の拡大に応じて、それぞれが能力を高め、積極的に能力を発揮できる労働市場の実現には、多種多様な働き方を選択できるワークシェアリングが求められます。

ワークシェアリングの取組みに関する5原則

日本におけるワークシェアリングの取り組みについては次の5原則が定められています。

  1. ワークシェアリングとは、雇用の維持・創出を目的として労働時間の短縮を行うものである。我が国の現状においては、多様就業型ワークシェアリングの環境整備に早期に取り組むことが適当であり、また、現下の厳しい雇用情勢に対応した当面の措置として緊急対応型ワークシェアリングに緊急に取り組むことが選択肢の一つである。
  2. ワークシェアリングについては、個々の企業において実施する場合は、労使の自主的な判断と合意により行われるべきものであり、労使は、生産性の維持・向上に努めつつ、具体的な実施方法等について十分協議を尽くすことが必要である。
  3. 政府、日本経営者団体連盟及び日本労働組合総連合会は、多様就業型ワークシェアリングの推進が働き方やライフスタイルの見直しにつながる重要な契機となるとの認識の下、そのための環境作りに積極的に取り組んでいくものとする。
  4. 多様就業型ワークシェアリングの推進に際しては、労使は、働き方に見合った公正な処遇、賃金・人事制度の検討・見直し等多様な働き方の環境整備に努める。
  5. 緊急対応型ワークシェアリングの実施に際しては、経営者は、雇用の維持に努め、労働者は、所定労働時間の短縮とそれに伴う収入の取り扱いについて柔軟に対応するよう努める。

【出所】ワークシェアリングに関する政労使合意(平成14年3月29日)

【出典】http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/06/h0630-2c1.html

ワークシェアリングを社内に適用させるための条件

ワークシェアリングを社内に適用させるためにはどのような条件が必要なのでしょうか。ここでは、従業員の目線から考えてみましょう。

従業員の思考性(安全志向の強さ)

企業で働く従業員にとって、安定的な収入や社会保障は安心安全だという思考が強くあるでしょう。平均寿命が伸び続け、労働者年齢の幅が広がる一方で、技術革新などで企業のあり方や職場の環境は大きく変わりつつあります。

労働者に求められる能力も変化し続ける中で、職業生涯といわれる長期間にわたり雇用の安定と充実を図っていくには、各世代にキャリア形成やさまざまな働き方を選択できる仕組みの整備が必要となってきます。

生活水準の一時的な引き下げに対する抵抗感

ワークシェアリングによって働き方が変わることにより、労働時間の短縮などで報酬の引き下げも行われることになります。 企業の業績悪化などによる緊急対応型の措置で、一時的に給与が引き下げられる場合などには、その間生活水準も下げなくてはならなくなり、これに抵抗感が少ない従業員かどうかも受け入れの条件となります。

従業員の年齢構成(高齢者比重)

従業員の年齢構成も受け入れに関係します。ワークシェアリングによって経験や能力が生かされていなかった高齢者をパート労働者として短時間勤務に転換するなど、企業と労働者双方の合意も条件となります。

具体例(企業事例)

緊急対応型ワークシェアリングの事例として、厚生労働省発表の資料をもとに取り上げます。A社は半導体製造装置メーカー、B社はコンピューターメーカーです。(厚生労働省の資料では、コンピューターメーカーはD社とされています)

1日あたり時間短縮、交替制勤務の再編、月あたり休日増による方法で、在籍している従業員の雇用維持・確保のための取り組みとして行われたもので、新規雇用はありません。

A社・・・平成13年のITバブル崩壊による緊急非常事態への対応

平成13年10月より3ヶ月間、国内すべての工場部門で「工場週3休制」を導入した。さらに、平成14年1月からは全社に導入して同年3月末まで実施。

この間、工場ラインにできた余裕時間を活用して若手従業員の研修カリキュラムを実施。従業員の能力開発による生産性向上に積極的に取組んだ。

給与の減額幅は3%、対象従業員の平均は1日あたり2,000円強、月あたり7~8,000円の減額となった。

取り組みの結果(従業員の理解)

  • 減額はあるものの余暇の利用拡大につながった。
  • 月4日の金曜日休業のうち、最終週のみ有給休暇付与とした。
  • 1時間当たりの賃金単価がアップした。
  • 希望退職よりも雇用確保を実行しているという会社の意思表示を感じられた。

会社側のメリット

  • リストラをしないことで需要が好転した時に対応できる体制が維持できた。
  • 社員の志気を保つことができた。
  • 雇用維持という方針に理解を得られ、社員との信頼関係の強化につながった。
  • 研修によりスキルの習得につながった。
  • 稼働時間削減による経費の削減、人件費削減に効果があった。

B社・・・交替制勤務の班直体制の組み換えにより、緊急避難的に労働時間短縮を実施し、雇用の維持を目指した

半導体製造の前工程を行う3工場の交替勤務オペレーター約4000名を対象に、4班2交替から6班3交替へ変更。一直あたり勤務時間を12時間から8時間に短縮した。

平成14年3月から実施し、その後の需要回復により3工場のうち1工場は1ヶ月で、他の2工場も3ヶ月間で終了となった。その後、交替勤務の体制は戻さず4班3交替の一直あたり8時間とし、勤務制度の見直しにつなげた。

賃金の取り扱い

時間当たり単価を変更せず、労働時間の削減率に応じて減額。ただし、労働時間は交替勤務の見直しにより3割以上減少。

賃金も3割減では生活が立ち行かなくなることも考慮して、協力手当を2万円支給。産業別最低賃金を下回らないようにするためという理由にもよる。

休日出勤1日につき協力手当から5000円を減じていく方式も取り入れた。

休日出勤を4日すると協力手当がなくなるが、労働時間が通常の9割になり、収入全体としてそれほど影響せず、労使で合意となった。

ポイント

休日を増やせば、突然の顧客のニーズに対応できないため、デバイス部門の仕事には不都合があるという結論になった。

導入後の状況

開始当初から工場によっては休日出勤を行なった。特に操業率が高かった工場を中止して残りの2工場も次いで中止した。

しかし、すべてを元に戻すと4班2交替の12時間勤務になってしまうため、4班3交替の8時間勤務に再度見直しを行い、実質的には賃金の減額等もなくなっている。

この取組みは、半導体不況による生産調整のための経験を、恒久的な交替勤務体制に改変した好事例ともいえる。

【参考】厚生労働省発表資料

ヨーロッパ諸国との違い

日本には、社会問題となっている他の先進諸国には考えられないサービス残業(不払い労働)という問題があります。

サービス残業は、労働基準法違反の犯罪行為であり、問題視されながらも未だ蔓延しているのが実情です。

また他の国では常識である年次有給休暇の完全取得も、日本では低い水準のままです。

完全週休2日制も実施していない職場があるなど、ヨーロッパ諸国との格差は大きく、この状況を解決しないままにワークシェアリングを実施すれば、労働時間の短縮がサービス残業にまわされるなどの問題が発生してしまいます。

課題

ワークシェアリングを実施するうえで、労働時間の短縮による収入の減少という課題もあります。

労働者の年齢層や個人的な問題など、さまざまな事情により生活に直接影響のある収入の減少は大きな課題です。

また、ひとつの業務を担当する正社員からジョブシェアリングによって分担される場合、個人の業務が不明確になるなどの問題もあります。

まとめ

  • 日本型ワークシェアリングを実施するには、問題となっているサービス残業や有給休暇取得に対する問題を解決する必要がある。
  • 同職種でありながら、正規雇用者とパートタイム雇用者との間で発生する賃金格差について検討する必要がある。
  • 企業経営者は、業種の違いや会社の状況によるワークシェアリングの方法を検討する必要がある。
  • 経営者だけでなく労働者もワークシェアリングについて学び、理解する必要がある。

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