ファミリーデー
ファミリーデーとは、社員の家族が職場を訪れ、企業や仕事内容についての理解を深めたり、同僚家族との親睦を深めたりする取り組みの事を言います。これは、主にワークライフバランスの推進活動の一環として開催されるケースが多くあります。今回は、このファミリーデーについてご紹介します。
1.ファミリーデーとは
ファミリーデーとは、社員の家族などが職場を訪れ、企業や仕事内容についての理解を深めたり、同僚家族との親睦を深めたりする取り組みの事を言います。
この取り組みは、働きやすい環境づくりやワークライフバランスの推進を目的として開催される事が多く、結果的には社員のモチベーションアップや、最終的に企業力のアップにも繋がります。近年注目を集めており、東京都では、従業員300名以下の中小企業に対して、ワークライフバランスの推進費用の一部として、この「ファミリーデー」等の実施経費を、補助金として負担するなどの施策も行われました。(現在は終了)
実際に、大手企業やベンチャー企業を問わず、様々な企業で取り入れられています。
【参考】TOKYOはたらくネット「ワークライフバランス推進助成金 / 東京都中小企業ワークライフバランス実践支援事業」
2.ファミリーデーの目的
それでは、具体的なファミリーデーの目的を見てみましょう。
企業目線
まずは、企業目線での目的です。
社員の家族の職場理解を深める
まずは社員を支える家族の、職場や仕事に対する理解を深める事です。これらの理解を深める事で、家族に安心感や社員を応援する気持ちが生まれます。そうする事で、社員自身のモチベーションのアップにも繋がります。
同僚家族との交流を深める
ふだん触れ合う事のない同僚家族とコミュニケーションを取る事により、まずは社員同士の結束の強化。そして、「お互いに大切な家族を持っている」という事を理解し合い、例えば家族に関する急な休暇や早退などにも、快く対応できるようになります。結果、ワークライフバランスの推進に繋がるだけでなく、結果的に、働きやすい環境を作る事ができるのです。
社員の家族に感謝の気持ちを伝える
日頃、企業の最も大切な経営資源である人材を支える家族に、感謝の気持ちを伝える貴重な場でもあります。社員だけでなく家族にも感謝を伝える事で、より会社と人材の結束が深くなります。
企業イメージの向上
ファミリーデーを開催している企業は、自社HPやブログ、求人媒体などで自社のファミリーデーについて告知しているケースが多く見られます。この取り組みを広く周知する事で、企業のイメージ向上に繋げる狙いもあり、結果的に優秀な人材の採用にも繋がります。
社員目線
次に、社員目線での目的です。
︎家族の仕事に対する理解が得られる
まずは、仕事に対する家族の理解が得られる事です。普段は全く見えない仕事内容が、どんな仕事をどのように行っているのか、会社でのポジション、同僚との関係などが見える事によって、結果的に安心感や感謝の気持ちが生まれます。
そうする事で、家族で仕事の事を話すなどのコミュニケーションが増加したり、時期やトラブルなどによって多忙になる場合でも、一定の理解を得られるようになります。
子どもに貴重な体験を与えられる
小学校などで社会科見学なども行われますが、実際に自分の親が働く場所を見たり体験したりする事は、普段触れる事の無い大人の社会に接する貴重な機会となり、子どもの経験値を増やす事にも繋がります。
同僚同士の働き方への理解が得られる
「企業目線」でも触れましたが、同僚家族との触れ合いにより、「お互いに大切な家族が居る」と認識する事で、家族の都合での勤務調整などが行いやすい雰囲気となります。結果、働きやすい環境が生まれ、勤務に関するストレスの軽減やお互いの思いやりの気持ちの醸成などが期待できます。
【出典】東京都 TOKYOはたらくネット「ファミリーデーとは:東京しごとの日」
3.ファミリーデーのイベント・企画事例
ファミリーデーで開催する、具体的なイベントや企画の事例をご紹介します。
- 企業紹介…どんな会社なのか、どんな事業を行っているのか等を分かりやすく紹介
- 職場見学ツアー…実際に社員が働いている職場や工場などの見学
- ワークショップ…事業に関する事柄について考えたり、実際に職業体験する機会
- 製品体験コーナー…企業の製品(ゲーム等)を、実際に操作するコーナー
- 子ども向けの遊び場…事業とは関係なく、誰でも楽しめるゲーム等のコーナー
- 社員食堂の利用体験…普段は社員しか入れない食堂で、特別にランチなどを実施
- フォトスポットや記念撮影…企業ロゴやキャラクターをあしらったフォトスポットの設置や、参加者全員での記念撮影
- 社風を表した室内装飾…ロゴ入りの風船やキャラクター等を使った、オリジナルの室内装飾
- オリジナル名刺・社員証の配布…オリジナルの名刺を作成し他の社員・家族と交換、当日限定の社員証を配布して社員の気分を味わう
- オリジナルグッズの配布…企業オリジナルグッズ等の配布(Tシャツ、バッグ、文房具等)
4.ファミリーデー開催のステップ
次に、ファミリーデー開催までのステップです。
①担当スタッフの決定
まずは、運営するスタッフの選定です。リーダーを1人確定し、運営するスタッフ、前日や当日に準備を行うスタッフなど、役割毎に人員を振り分けましょう。
②社内ヒアリング
ファミリーデー開催の肝となるのが、この事前の社内ヒアリングです。アンケートを実施し、「開催時期」「実施したいイベント」や、「招待する家族の人数」「招待する家族の年齢」までヒアリングできればベストです。
人数が分かれば、食事やグッズなどの準備の際に非常に参考となり、参加する子どもたちの年齢が分かっていれば、その年齢に合ったコンテンツ選びができます。
③開催日時の決定
ヒアリング結果を元に、開催日時を決定します。日程調整する場合は、会場や社内の繁忙期などを考慮し、なるべく多くの家族が集まれる日程を選びましょう。会社側の都合だけで日程を決め、結果、家族が集まれなくては本末転倒です。
④イベントや企画の決定
ヒアリングの結果を参考に、イベントやプログラムを企画します。その際、その企業の特色が出ていて、かつ参加者が誰でも楽しめるようなものである事が理想です。
ファミリーデーの大きな目的は「仕事について家族に理解してもらう事」。どんな事業を行っている会社なのか、どんな仕事内容なのかが分かりやすく理解できるコンテンツや、社内見学などがあると、より普段の社員の仕事ぶりを理解してもらえるでしょう。
⑤準備物の手配や制作
イベントが決まれば、そのための準備物を揃えます。各コンテンツに関わる物、食事、オリジナルのお土産やグッズ、説明に使用するスライドや資料など、各項目を分担して進めます。
⑥動線とスタッフ配置の確認
ある程度準備ができれば、当日のスタッフ配置や、参加者の動線などについて確認します。スタッフミーティングを行い、準備に不備が無いか、当日のスケジュール確認、トラブル対応などについて決定・共有しておきましょう。
⑦振り返り
ファミリーデー実施後には、可能なら参加者アンケートを実施しましょう。イベントの反省点が見えてくるだけではなく、翌年の開催の参考にもなります。
5.ファミリーデー開催にあたっての注意点
それでは、ファミリーデーを開催するにあたって注意したい点を見てみましょう。
セキュリティ面
まずは、セキュリティ面です。普段パスカードを持った人物しか入れない建物である場合など、事前の調整が必要です。また、社内見学などを実施する場合には、機密文書や内部資料などの置き場の変更なども必要となる場合があります。
食事などの衛生・安全面
次に、食事等の安全面です。小さな子どもも多く参加すると思われるため、食事の提供がある場合には、まず時期の選定、そして社員食堂などの専門スタッフが居ない場合には、メニューや業者の選定なども注意して行う必要があります。可能なら、参加者のアレルギー等の有無も確認できると良いでしょう。
開催日時の選定
ファミリーデーであるため、なるべく多くの社員と家族が集まれなければ意味がありません。先ほども触れましたが、事前にアンケートを取り、時期や日程の希望、そして参加の有無を確認しましょう。日程の候補を決める際には、全ての部署において繁忙期は避ける方が好ましいでしょう。また、開催が休日の場合には、その勤務の扱いをどうすべきかも検討しておく必要があります。
子ども向け設備の用意
子どもも多く参加するイベントであるため、体験や遊びのスペース以外にも、例えば乳幼児向けのスペース(ハイハイ移動が可能な場所)、授乳スペース、ベビーカー置き場などを準備しておくと、乳幼児およびその親も安心して楽しめるイベントになります。
服装や準備物の指定
最後に、当日の服装や準備物などの事前告知です。用意するコンテンツによっては、服装が限定されたり(動きやすい服装であったり)、自宅から持参する準備物がある場合もあります。なるべく開催直前にならないよう告知しておきましょう。
6.ファミリーデーの取り組み企業事例
最後に、各企業の具体的な取り組み事例を見てみましょう。
日本マイクロソフト株式会社
マイクロソフト社の日本法人である同社のファミリーデー(2015年)は、369家族1,382名が参加する大規模なものとなりました。応接フロアおよび、社員食堂でイベントが開催され、オフィス見学なども実施されました。同社の平野社長も自ら家族と参加し、話題を呼びました。
同イベントでは、オリジナル名刺の作成・交換や、同社の製品であるSurfaceを使った天体観測、チームラボとコラボレーションしたお絵描き水族館、同社のゲーム機であるXbox Oneの体験コーナーなど、同社ならではの様々なコンテンツが用意されました。食事は社員食堂「One Microsoft Cafe」で用意され、普段はメニューにない「お子様プレート」も用意されました。
【参考】PC Watch「日本マイクロソフトが職場に家族を招待するファミリーデーを開催 ~社長室や会長室も就任後初披露」
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
ゲームやエンターテインメント大手DeNAのファミリーデーは、渋谷にある本社において実施され、社員とその家族300名以上が参加しました。
冒頭の社長の自己紹介等の後、元オリンピック選手である「DeNAランニング倶楽部」の監督がゲストとして招かれるなどのサプライズがありました。社内カフェスペースでは、焼きそば・フランクフルトなどの出店や、「DeNAベイスターズ」の本拠地である横浜スタジアム名物のかき氷も特別に用意されました。縁日のようなボールすくいコーナー・射撃コーナーも用意され、子ども達も楽しめる場となりました。
他にも、子ども向けプログラミング教室や、森林再生活動支援に関する展示、DeNAのゲーム体験など、同社ならではのコンテンツが満載のイベントとなり、オリジナル風船やロゴTシャツとバッグ、オリジナル名刺なども配布されました。
【参考】株式会社ディー・エヌ・エー「300人の家族が参加!DeNAならではのファミリーデー」
株式会社メルカリ
2013年のリリースからわずか4年足らずで日本におけるダウンロード数5,000万件を超えた、フリマアプリ「メルカリ」。今や月間の流通額は100億円以上とも言われ、現在はグローバル展開が進められています。
メルカリのファミリーデーの構造はシンプルで、あらかじめコンテンツを確定しすぎない、当日の自由度を持たせるものである事が特徴です。最初に社長から挨拶があり、メルカリについてや組織図の説明、その後はフリータイムの歓談という流れで実施されました。用意されたのは、塗り絵やお絵描きなどが楽しめるキッズズペース、オリジナル風船、フォトブース、写真のデコレーションスペース、オフィスを利用した宝探し、お土産コーナーでした。
参加者は社員と家族などを含めて100人ほど。メルカリのファミリーデーでは、配偶者や子供だけではなく、両親や兄弟、友人やパートナーも参加できます。
【参考】mercan(メルカン)「メルカリ流・ファミリーデーのすすめ」
株式会社マネーフォワード
お金に関するインターネットサービスなどを手がける、マネーフォワードのファミリーデーです。まず受付で家族写真を撮影し「あなたがいるから、はたらける」と書かれた専用台紙に貼り付けてプレゼントされました。同社の福利厚生のテーマである「社員が仕事に集中できるのは、それを支えてくれる存在があるから」という考えを体現している企画であると言えます。
小さな子ども向けのコンテンツが多く、絵本コーナー「キッズまねふぉ図書館」や「ASOBIBA」と称した輪投げや宝探しが楽しめるコーナー、落書きコーナー等も設けられました。懇親会では、子ども向けに特製の名刺が配られ、社長・役員を始めた名刺交換が実施されました。食事は、ブッフェ形式でのランチで実施され、会社のロゴマークの入った特製ケーキも振る舞われました。参加者は、20家族68名にのぼりました。
【参考】MoneyForward’s ROOM「マネーフォワードのファミリーデーを紹介します」
日本オラクル株式会社
最後に、ソフト・ハードウェア製品の販売や、各種サポートサービスなどを展開する、日本オラクルのファミリーデーです。2008年にスタートした「Oracle Japan Family Day Summer 2017」は、2017年で10年目となりました。社内のカフェテリアの一部を貸し切り実施され、社員と家族合わせて150名が参加しました。
まずは、日本オラクルの仕事内容やブランド紹介、企業方針などについての分かりやすい説明。また、グローバル企業である事から、日本で働く外国人社員からそれぞれの国の食べ物等の紹介が行われました。また、イベント的な要素としてはプログラミング教室やサーバー室でのサーバー構造教室などが開かれました。食事については、サンドイッチ等のランチボックスや特製クッキーなどが振る舞われました。
【参考】ZDNet Japan「狙いは”社員の成功”–日本オラクルのファミリーデイ」
7.まとめ
- ファミリーデーは、社員の家族が職場や仕事内容について理解を深める機会であり、ワークライフバランスに繋がると期待されている
- ファミリーデーは、社員目線でも、働きやすい環境の獲得や、同僚の理解、子どもに貴重な体験を与えるなどの様々なメリットがある
- ファミリーデーは、大手企業からベンチャーまで様々な企業で開催されており、各社オリジナルの企画やグッズ、社員食堂を使った懇親会等で家族へ感謝の気持ちを伝えている
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