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2019年4月9日(火)更新

定年後再雇用

社員の定年年齢を65歳未満にしている企業は、法律により65歳までの雇用が義務付けられています。定年後の再雇用については、労働条件などにおいてトラブルになりやすいものですが、今後は対象者の増加も予想されますので、これまで以上に社内基準の明確化が必要です。各企業担当者においては、関係法を正しく理解し、適切に対処していくことが求められます。

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定年後再雇用制度のしくみ

定年後も雇用する制度としては、再雇用以外に勤務延長もありますが、それぞれ法律により原則として65歳までの雇用が義務付けられています。

定年後再雇用とは

社員の希望により、定年退職後に新たに雇用契約を結ぶことで、継続雇用制度のひとつです。

継続雇用制度とは

上記の定年後再雇用も含めて、社員の希望により、定年後も引き続き雇用する制度の総称で、これには次の勤務延長制度というものもあります。

勤務延長制度との違い

勤務延長制度とは、社員の希望により、定年に達したあとも退職させることなく、引き続き雇用する制度です。定年後再雇用とは、定年時に退職させない点において異なります。

改正高年齢者雇用安定法の内容

高年齢者雇用安定法(正しくは、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」)については、平成18年4月に大幅な改正があり、その後、平成25年4月の改正を経て、現状の整理になっています。

【参考】平成25年4月1日から希望者全員の雇用確保を図るための高年齢者雇用安定法が施行されます!/厚生労働省

定年年齢の制限

高年齢者雇用安定法第8条において、定年を定める場合には60歳を下回ることはできないとされていますので、法律上の最低基準は60歳です。

ただし、次の制限があります。

高年齢者の雇用確保措置

平成18年4月の法改正時に、定年を65歳未満にしている事業主は、以下のいずれかの措置を講じなければならないとされました。これらの措置を高年齢者雇用安定法では「高年齢者雇用確保措置」と定義しています。

  1. 65歳までの定年の引上げ
  2. 65歳までの継続雇用制度の導入
  3. 定年制の廃止

以下図表1は、平成27年に厚生労働省が、約15万企業(従業員規模31人以上)のうち、高年齢者雇用確保措置を実施済とした企業(全体の99.2%)に対してその導入内訳を調査したものですが、「継続雇用制度」を導入している企業が81.7%と最も多く、「定年の引上げ」は15.7%、「定年制の廃止」は2.6%にとどまっています。これは、「継続雇用制度」が最も人件費を抑制できるからだと考えられます。

【図表1】高年齢者雇用確保措置の制度別導入内訳

【出典】【厚生労働省】平成27年「高年齢者の雇用状況」(6月1日現在)

労使協定による継続雇用対象限定制度の廃止

平成18年4月の法改正時には、継続雇用制度を導入する場合、労使協定により対象者の基準を定めれば、継続雇用者を限定することが可能でしたが、平成25年4月改正時に、この取り扱いが廃止され、原則として希望者全員を継続雇用しなければならないことになりました。

ただし、平成25年3月31日までに対象者の基準を定めている場合には、以下の各期間に対応する年齢の者に対して、対象者の基準を適用できる経過措置が認められています。これは厚生年金の支給開始年齢に合わせた措置です。

  • 平成28年3月31日まで:61歳以上
  • 平成31年3月31日まで:62歳以上
  • 平成34年3月31日まで:63歳以上
  • 平成37年3月31日まで:64歳以上

再雇用先の企業範囲拡大

平成18年4月の法改正時には、継続雇用制度を導入する場合、自社内での継続雇用が前提でしたが、平成25年4月の法改正時に、グループ内の他の会社(子会社や関連会社など)での継続雇用も可能になりました。

なお、子会社とは、議決権の過半数を有しているなど支配力を及ぼしている企業であり、関連会社とは、議決権の20%以上を有しているなど影響力を及ぼしている企業とされています。

定年後再雇用までの流れ

定年前から再雇用の決定までは、対象社員への案内不足などないよう、十分にコミュニケーションを取りながら、継続希望の意思を確認することが必要です。

制度導入の手続き

継続雇用制度の導入にあたっては、就業規則(加えて別規定の作成もあり。)に記載が必要です。改正法の内容とも照らして就業規則を変更後、労働基準監督署に届け出て、社内に周知します。

【関連】就業規則の変更が必要となるケースとは?ケース別対応法や必要な書類、手続きのポイントをご紹介/BizHint HR

社員本人の意思確認

まずは、対象社員の再雇用についての意思確認が必要になります。

社内ルールに従って確認することで問題ありませんが、例えば定年の数カ月前に、定年退職の案内とともに再雇用の希望の有無に関する申出書を配布し、文書で回答させたあと面談を実施することなどが考えられます。

面談の実施

対象社員の意思を確認したあと、実際に面談を実施します。

再雇用を希望している場合には雇用条件を提示し、その内容の確認を行います。再雇用を希望していない場合には、その再確認を行います。会社側の対応(例えば、短時間勤務にするなど)によっては、あらためて再雇用を希望する場合もあります。

定年後再雇用または定年退職の決定

対象社員との面談の結果、再雇用または定年退職の決定を行います。

再雇用が決定した場合

面談を経て再雇用が決定した場合には、雇用契約書などの締結手続きに入りますが、いったんは定年退職扱いになりますので、退職金の支払い準備も進めます。

再雇用を希望しない場合

面談を経て再雇用しないことが決定した場合には、定年でそのまま退職となります。退職金の支払い準備とともに退職全般にかかる手続きを進めなければなりません。

再雇用条件の折り合いがつかなかった場合

結論から言えば、この場合も定年でそのまま退職となります。面談において、対象社員が提示した雇用条件に応じなかった場合には、本人が再雇用を希望していても、雇用条件がその他の再雇用者と同様であるなど不当なものでない限りは、会社側は拒否することもできます。高年齢者雇用安定法は、定年退職者の希望条件に合わせて雇用することまでを義務付けているものではありません。

この場合には、先に提出のあった再雇用希望申出書とは別に再雇用辞退申出書として残しておくべきです。

定年後再雇用契約書で定める条件とは

再雇用契約書の内容は、対象社員との面談の際には既に決まっているべきものですが、雇用形態、契約期間などの考え方は以下のとおりです。

【関連】「雇用契約」とは?労働契約との違い、雇用契約書の雛形や注意点も解説/BizHint HR

雇用形態

1年毎に契約を更新するフルタイム有期雇用契約社員(嘱託社員)の雇用形態が多く見受けられますが、パートタイムにすることもできます。いずれの場合でも、就業規則や社内規定で明確にしておくことが必要です。

なお、有期雇用契約とする場合には、以下、労働契約法の内容に注意する必要があります。

  1. 有期雇用契約について5年を超えて反復更新した場合は、対象社員から申込みがあれば、無期雇用契約に転換しなければならない。(労働契約法第18条)
  2. 正社員と比較して、賃金、労働時間その他の労働条件において、不合理に低いものにしてはならない。(労働契約法第20条)

1については、いわゆる「無期転換ルール」と言われるものですが、定年後の再雇用については特例制度があり、都道府県労働局に「雇用管理に関する計画」を提出し、認定を受けることで、対象外にすることができます。手続きの詳細については、厚生労働省のホームページでご確認ください。

2については、後述する賃金の決定などにおいても十分な配慮が必要です。

【参考】労働契約法の改正について/厚生労働省
【参考】高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について/厚生労働省

【関連】嘱託社員とは?契約社員の違いや給与について説明します/BizHint HR

契約更新期間

前述のとおり、多くの場合は契約期間を1年として、毎年対象社員の継続意思と心身面の確認したうえ更新していきます。複数年の契約にすることもできますが、定年後の再雇用に関しては、健康面など様々な問題が出てくることも予想されますので、1年契約にしておくことが後々のためと言えます。

なお、65歳までは年齢のみを理由として契約を解除することはできませんが、勤務状況が著しく不良であるなど就業規則の退職事由に該当した場合には、一般社員と同様に契約を解除することはできます。

賃金(給料・給与)

賃金の決定方法としては、以下が考えられます。

  1. 定年前の賃金から一定割合で下げる。
  2. 定年後に担当する業務内容や雇用形態に応じて新たに設定する。

上記、1、2のいずれの方法でも構いませんが、会社としての負担を下げるためにも、対象社員に支給される年金額や、雇用保険制度の高年齢雇用継続給付の活用なども視野に入れながら決定することも有効な方法です。

なお、再雇用後の担当業務を定年前と同様にする場合には、雇用形態が変わるとはいえ、同種業務を担当している正社員の賃金も考慮して決定すべきものと考えられますので注意が必要です。このケースで争われている裁判もあります。

【参考】「定年後再雇用」の賃下げめぐる控訴審、従業員が逆転敗訴「賃金差別、納得いかない」/弁護士ドットコム

定年後再雇用時の給与水準

再雇用時の給与水準をどうするかについての参考資料があります。

以下図表2は、平成24年に東京都が都内の約3,000事業所(従業員規模30人以上)のうち、継続雇用制度を導入している事業所(全体の86.1%)について調査したものです。継続雇用者の定年後の賃金が、定年前の賃金と比べてどのくらいの割合になっているのかについては、「5~6割未満」が23.3%と最も多く、次いで、「6割~7割」が22.6%という結果になっています。定年前の賃金からおおむね6割前後の低下になっていることがわかります。

【図表2】所定時間内賃金額(対定年時)

【出典】【東京都】平成24年度 高年齢者の継続雇用に関する実態調査(概要版)

また年収については、以下、図表3があります。平成27年に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が、定年後継続雇用者約1,000人(60歳以上・正社員暦20年以上・従業員規模31人以上の企業勤務者)について調査したものです。

50歳代の最高年収を見ると、約半数が800万円以上であることに対し、現在の年収は「300~400万円未満」が22.9%、「200~300万円未満」が22.2%と、「200~400万円未満」の間でほぼ半数を占める結果になっています。年収で見ると、定年前から5割以下になっている場合もあると推測できますが、これは、賞与がなくなったことによるものだと考えられます。

【図表3】現在の勤務する会社からの年収と、50歳代の最高年収(( )内は件数)

【出典】【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 】2015年 高年齢者調査:60歳以上の雇用者と対象とした就業に関する調査

待遇

契約社員、嘱託社員という身分であれば、定年前の役職も解かれます。

会社によっては定年前の役職に応じて、相談役、調査役、審議役などの呼称を用意していることもありますが、対象社員のモチベーションを維持させるためにも必要な配慮と言えます。

責任度

給与を定年前と同じ水準にする場合を除いては、定年前に担当していた業務の範囲内で、より責任度を軽減した業務に見直す必要があります。

営業であれば、これまでの人脈・経験を活かした対外調整、折衝担当など、製造であれば、技術・技能指導担当などが考えられます。会社としても、経験のある社員をうまく活用することで、利益につながるように考えていく必要があります。

有給休暇

再雇用の場合は、これまでの勤続年数がリセットされると思われがちですが、同じ会社で継続雇用される場合は、勤続年数は通算されます。ただし、再雇用後に所定労働日数が減るような場合には、付与日数が変わってきますので注意が必要です。

【参考】Q5.定年退職後、再雇用した場合、勤続年数を通算して年休を与えなければならないでしょうか。 /東京労働局
【参考】年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています/厚生労働省

健康保険・厚生年金

再雇用後の所定労働時間および日数が、通常の社員と比較しておおむね4分の3以上であれば、健康保険については75歳まで、厚生年金については70歳までは継続して被保険者となります。手続き的には、年金事務所に資格喪失届と資格取得届をあわせて提出する必要があります。これにより、再雇用後の標準報酬月額が決定されます。

在職老齢年金制度

60歳以降になると、年金受給資格がある者には年齢に応じて年金が支給されますが、再雇用者のように収入を得ていたり、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受給している場合には、年金はその一部または全額が停止になる場合があります。

その仕組みを簡単に整理すると以下のようになります。

  • 60歳から65歳までの在職老齢年金
    以下の計算額が28万円以下の場合には年金は全額支給され、28万円を超える場合には全額停止または一部停止となります。
  • 65歳以降の在職老齢年金
    以下の計算額が46万円以下の場合には年金は全額支給され、46万円を超える場合には全額停止または一部停止となります。

〔計算式〕
(1月あたりの年金額)+(該当月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12

なお、上記では考慮していませんが、高年齢雇用継続給付を受給している場合には、さらに標準報酬月額の最大6%にあたる額の年金が支給停止になります。停止額など細かな部分については、日本年金機構のホームページでご確認ください。

【参考】老齢年金ガイド 平成29年度版/日本年金機構

労災保険

年齢、所定労働時間および日数にかかわらず、引き続き適用となります。保険料も変わらず会社の全額負担です。

雇用保険

週所定労働時間が20時間以上、かつ、31日以上の雇用の見込みがある場合には、継続して被保険者となります。なお64歳到達後の4月1日以降の保険料は、本人、会社とも免除されます。

(法改正により、平成32年4月からは納付が必要になります。)

【参考】雇用保険の適用拡大等について/厚生労働省

高年齢雇用継続給付

雇用保険制度には、60歳から65歳までの仕事に就いている被保険者を対象とした高年齢雇用継続給付というものがあります。

これには、再雇用者のように基本手当(いわゆる失業保険)を受給しない被保険者が対象の「高年齢雇用継続基本給付金」と、会社を辞めて基本手当を受給したあとに再就職した被保険者が対象の「高年齢再就職給付金」の2つがあります。

前者の「高年齢雇用継続基本給付金」を前提に説明すると、下記の条件に該当する場合には、各月賃金の15%を上限として65歳になるまで給付金が支給されます。

  1. 60歳以上65歳未満の被保険者であること。
  2. 被保険者であった期間が5年以上あること。
  3. 60歳時点の賃金と比較して、60歳以後の賃金が75%未満になっていること。

細かな部分については、厚生労働省やハローワークのホームページでご確認ください。

【参考】高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて/厚生労働省
【参考】雇用継続給付/ハローワークインターネットサービス

「65歳超雇用推進助成金」について

高年齢者の雇用に関係する改善措置を講じた場合には、国から助成金を受けられる場合があります。

65歳超継続雇用促進コース

定年年齢の引上げ(65歳以上)や定年制を廃止するなどの取り組みを行った場合には、一定の条件のもと、最大で145万円が支給されます。

【参考】65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)H29.5.1以降の申請分/独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

高年齢者雇用環境整備支援コース

機械設備や雇用管理制度の導入など、高年齢者のための雇用環境整備を実施した場合には、一定の条件のもと、最大で1,000万円が支給されます。

【参考】65歳超雇用推進助成金(高年齢者雇用環境整備支援コース)/独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

高年齢者無期雇用転換コース

50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた場合には、一定の条件のもと、最大で600万円が支給されます。

【参考】65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)/独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

まとめ

  • 定年後再雇用は、労働条件などにおいてトラブルになりやすいため、人事・総務担当者においては、年々改正される高年齢者雇用安定法やその他関係法令を正しく理解し、適切に対処していくことが求められる。
  • 定年後再雇用者を有期雇用契約にする場合には、労働契約法で禁止されている「正社員と比較して不合理な条件」に抵触しないように注意し、かつ、契約が5年を超えた場合の無期転換ルールの仕組みや対象外にする手続きも理解しておく必要がある。
  • 定年後再雇用者の賃金を決定する際には、経費的負担を抑えるためにも、本人に支給される年金額や、高年齢雇用継続給付の活用などを視野に入れることも有効である。
  • 定年後再雇用者は、社内の業務に精通した者であるので、企業としてもモチベーションを下げない配慮をしつつ、うまく活用していくことが望まれる。

<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士

関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。


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