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2018年9月16日(日)更新

企業内保育所

企業内保育所は、育児をしながら働く女性の活躍を後押しする策として注目されています。企業内保育所が与える優秀な人材の流出防止や企業イメージのアップなどのさまざまなメリットや、実際に導入した企業事例についてあますことなく紹介します。また、場所確保やコスト面の不安に対応するために国が行っているバックアップ体制の内容も伝授します。

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企業内保育所とは

企業内保育所とは、その企業に勤める従業員のために作られた保育施設です。場所は企業内もしくは近隣地で、「育児と仕事の両立を図る従業員が安心して働くことができるようにする」という目的で設置されています。女性従業員率が高い・または女性従業員が求められる職場に設けられることが多く、特に夜間勤務の必要性が生じる医療・介護の現場で効果を上げています。

従業員の目の届く場所に子どもがいるため、急な体調不良に対応できるなどの安心感が得られる効果があり、保育園に入所するための活動(いわゆる「保活」)の必要がないことから、企業内保育所の設置を求める者も多くいるようです。

企業内保育所をとりまく環境

男女雇用機会均等法が制定されたことで男女間の平等性が問われるようになり、また不透明な経済情勢を受け、さまざまな理由で社会進出をする女性が増え続けています。

しかし、結婚、出産にあたり、働き続けることを断念する女性も少なくないこともまた事実です。寿退社の風潮が残る会社や妊娠中の女性への風当たりの強さ、いわゆる「マタハラ」なども問題視され、結果的に退社を選択するケースが多く見られます。

待機児童問題

一方、働くことを望む女性の前には「待機児童問題」が大きく立ちはだかりました。保育園に入所することができず、職場復帰ができないまま子どもとともに入所を待ち続けるケースや、希望する施設ではなく自宅や職場から離れた保育園への入所が決まり、日々の生活に支障をきたすケースなどが発生しています。

企業内保育所の将来性

前述のさまざまな状況を受けて、政府はワーク・ライフ・バランスの推奨をはじめ、女性の社会進出を後押しするための支援策を打ち出してきました。その一つとして、内閣府は子ども・子育て本部を設置し「企業主導型保育事業」を創設するに至りました。事業を立ち上げると同時に資金調達として各企業から拠出金を徴収することで、日本の保育体制の整備を図り、待機児童の問題を解消することを目的とした事業です。

企業内保育所は、子どもを育てながら勤務をする女性を後押しするための存在として注目されており、より一層の発展が求められる存在といえるでしょう。

企業内保育所導入のメリット

企業内に保育所の導入にあたり生じる効果は、さまざまな形で現れます。主なメリット点としては、次のような内容が挙げられます。

社員の働きやすい環境づくりができる

子どもを預けて働く社員には、保育所と自宅、職場間の移動時間や費用、急な熱や台風時の対応など、多種多様な悩みがつきものです。しかし、企業内に保育所を設置することで、このような社員の悩みを解消することができます。

たとえば、外部の保育園の場合、閉園時間の都合から急な残業が発生した場合に対応してもらえないケースがあります。しかし、企業内保育所ならば会社の都合に対応できるような預け時間を設定している場合が多いため、延長保育に対する不安を感じず仕事を続けることができます。

仕事と育児を両立しながら働く社員が抱える悩みを取り除くことで、社員の育児休業からの早期復帰や業務へのフレキシブルな対応につながり、社内全体が風通しの良い、働きやすい環境へと変化していくのです。

親子の安心感が企業発展につながる

企業内保育所に預けることで、預ける側の親は、近くで子どもの存在を感じることができるという安心感を得ることができます。また、預けられる子ども側も、親が近くにいるという安心感を得ることができます。 親子の精神状態が安定することで、従業員の仕事に対する意識が強まります。そして、意識の高い従業員が集中して業務に取り組むことで、企業の発展へとつながるのです。

優秀な人材を逃すことなく、離職率の低下へ

企業内保育所は、育児をしながら働く従業員にとって非常にありがたい存在です。特に、近くに適した保育所がない従業員や、子どもを預けて働くことに不安を感じて退職や転職を考えている従業員の場合にとっては「この会社で働き続けよう」という気持ちが生まれやすくなります。

その結果、従業員の結婚や出産、育児をもとにした退職・転職を防ぐことができ、長期にわたり働き続けようと考える従業員が増加します。

企業のイメージアップに

近年では、テレビCMなどで企業内保育所の存在をうたう企業も見られますが、このような企業に対し、羨望のまなざしを送る女性就労者は少なくありません。企業内保育所を導入することは、働く女性が増加する中、従業員、特に女性従業員を大事にする企業として対外的なイメージがアップします。

特に、これから結婚や出産、育児期を迎える若い世代や、子どもを抱えながら働くことを検討する者にとっては、育児と両立できる職場は非常に魅力的です。求人情報に「企業内保育所あり」と記すことで、応募者に強く印象づけることが可能となります。

また前述のように、勤めている従業員が企業内保育所の恩恵を受けることで仕事意欲がアップし、企業の価値が上がる企画や行動を取るようになることで、さらに企業自体の価値が増す場合もあります。

企業内保育所導入にあたっての注意点

企業内保育所の導入にはさまざまな利点がありますが、その一方で検討すべきこと、注意すべきことも多々あります。実際に企業内保育所を設置するにあたって気をつけなければならない点や取るべき対策法としては、主に次の内容が挙げられます。

場所の確保やコスト面など企業の負担が大きい

新たに保育所を開設することは、楽なことではありません。一つの事業として、保育施設を立ち上げた上で、運営を行う必要があります。したがって、施設の場所を確保するための問題や、費用や収益などのコスト面にまつわる問題が浮上します。

企業内保育所の土地問題とは

近年、保育園の設置を希望する側と反対者側の間で生じるトラブルが取り上げられるケースがみられます。特に企業内保育所は、その会社の内部、もしくは近隣地に設置する必要があるため、場所の確保が非常に難しい問題となっています。保育所は預けられている間に子どもが生活をする場であり、ある程度のスペースを要します。会社の敷地内や近隣に確保できる土地がない場合、新たな方法を検討していく必要があります。

このような問題を受け、政府は2017年度の税制改正で保育士数など定める要件を満たした企業内保育所に対し、固定資産税や都市計画税などの地方税を優遇する方策を打ち出しました。新たに保育所設置のための土地を確保するにあたり、非常に有効な策といえるでしょう。

企業内保育所のコスト面の問題とは

一から企業内保育所の設置を試みる場合、当然ながらさまざまな費用がかかります。たとえば、施設の設置費用や月々の維持費、保育士に対する人件費などが挙げられます。企業内で運営を行わなければならないため、通常の会社経営に加えて保育所の経営費についても予算案に加え、検討していかなければなりません。運営如何によっては、会社の本体経営を圧迫させる可能性があるため、コスト面については入念に考えていく必要があります。

また、保育を行う保育士についても、ただ雇うだけではなくモチベーションやスキルをアップさせるための教育体制を敷く必要性が生じるため、賃金以外にもさまざまな経費がかかることを覚えておかなければなりません。

助成金について

このような企業にのしかかるコスト面の問題に対応するため、国では企業内保育所の設置・運営に関するさまざまな助成制度を打ち出しています。内閣府が立ち上げた、企業内保育所の拡大を後押しするための「企業主導型保育事業」では、一定要件を満たした場合、各設備や運営にかかる費用に関する助成を行っています。

たとえば、保育施設を新たに設けた場合、土地賃借料などの費用の4分の3にあたる部分の整備費が支給されます。また、利用人数に応じた運営費の支給も行われます。これは、保育所の職員の賃金アップや教育プログラムを行った場合や、延長保育や夜間保育、病児保育、一時的な預かりサービスなどを実施した場合に支払われるものです。

つまり、保育所の待遇を良くすればするほど、国からさまざまな金額を支援してもらえることになります。保育所の設置や充実を検討する場合、活用する価値は大いにあるといえるでしょう。

【参考】内閣府ホームページ:企業主導型保育事業の概要

利用者が定員に達しない場合がある

せっかく設置した保育所が、うまく活用されずメリットを生かすことができない場合があります。たとえば、利用者が定員に達せず収入が見込めなかったケースなどです。また、企業によっては保育所を抱えるだけの財政的余裕がない場合や、経営方法などのノウハウがなく、設置をためらう場合などがみられます。

なお企業内保育所は、厚生労働省により利用人数や保育士数、設備内容や広さなどの基準が設けられています。規模や場所、資金面の問題でこれらの基準を満たさないと助成を受けることができない場合があるため、企業の負担は大きなものとなります。

複数企業での共同設置

前述のような場合への対策法として、複数の企業や協同組合などで集まり、共同で保育所を設置する方法が挙げられます。複数の企業が集結することで、場所や人数の基準を満たすことが可能となり、内閣府の助成制度を受けることができるようになります。また、費用分担も複数の企業で行うことができるため、各社の負担が軽減されます。

設置の形としては、ある会社が立ち上げた保育所を複数企業で利用する方法や、複数企業で協力して一つの保育所を立ち上げる方法があります。

社外の子どもを受け入れる方法

より多くの者に保育所を利用してもらう方法としては、他の会社の従業員の子どもを受け入れる方法があります。この方法で実際に受け入れを行った場合、運営費の助成が行われるというメリットがあることに注目です。保育所の有効活用を行いながらコスト削減も行えるとあり、効果的な手段だといえるでしょう。

導入事例

国を挙げた支援制度の存在もあり、企業内保育所に注目する企業が増加しています。実際に導入し、成果を上げているケースも複数みられます。

資生堂は事業内保育所の運営受託を開始

大手化粧品会社である株式会社資生堂は、2017年2月を目途として、事業内保育所の運営に携わる事業を主とする合弁会社を立ち上げました。この会社では、企業内保育所を設置する際に抱える悩みを解決するコンサルティングや助言などを行い、仕事と育児の両立化を図るねらいがあります。

もともと資生堂は化粧品を扱う会社として、女性従業員が8割を超えていました。そのため、すでに90年代に育児休業の3年取得を認めるなど、女性のための制度を充実させており、その過程の一つとして2003年より企業内保育所を開設しました。自社の社員の子どもの他、他者からの受け入れも行う事で、現在も30名を超える子どもを預ける体制が整っています。その結果、結婚・出産・育児がもとで離職する女性の率は0.6%となり、また女性の管理職登用率も3割に迫る勢いとなりました。

【参考】SHISEIDO GROUP ニュースリリース:資生堂とJPホールディングス、事業所内保育所の運営受託を事業の柱とした合弁会社を設立
【参考】JIJICO:資生堂 事業所内保育所の運営参入から見えるもの

ローソンは企業内保育所で育児休業復帰を後押し

株式会社ローソンでは、2014年7月に事業所内保育施設を東京都の本社ビル内に開園しました。育児休業明けの従業員復帰を後押しし、待機児童問題を抱える従業員の不安を取り除くことがねらいです。特に都心など人口が密集している地域の場合、4月などの年度開始月を外した職場復帰を目論む場合、希望の保育園に入所することが困難となります。社内に専用の保育所が設けられていることで、安心して職場復帰をすることが可能となるのです。

ローソンは事業所内保育施設の充実化の他にも、子育て未経験者に対する育児講座も実施することで、男女ともに抱えている子育ての不安を解消し、職場で活躍できるような体制を敷いています。

【参考】LAWSON ニュースリリース:事業所内保育施設「ハッピーローソン保育園」開園
【参考】NIKKEI STYLE:あってよかった 社内保育所、女性復職の助けに

CMでおなじみ ヤクルトの充実した保育所経営体制

株式会社ヤクルト本社では、40年以上前となる1970年より企業内保育所の運営が開始されました。特徴としては、全国各地で活躍するヤクルトレディのニーズに応え、全国各地におよそ1,200箇所の保育所が点在していることです。ヤクルトの従業員以外も受け入れているため、地域に根差した保育園として有名になっています。

場所はヤクルトのセンター近隣にあり、安心の少人数体制を取っています。また、企業が費用を負担していることから毎月6,000円前後と他園と比較してもお値打ち価格で預けられるとあり、人気を博しています。

【参考】ヤクルト保育:ヤクルト保育所
【参考】みんなのスタンバイ:保育所・託児所完備!ママ注目の「ヤクルトレディ」がランクイン

まとめ

  • 企業内保育所は、育児と仕事の両立を図る従業員が安心して働くことができるよう設置された社内運営の保育所で、主に女性が多く活躍する企業で拡大している。
  • 企業内保育所には従業員のモチベーションアップや離職率低下、企業イメージ向上のメリットがある一方で、場所確保やコスト面の問題などのデメリットもある。
  • 企業内保育所の定員不足を解消するためには、複数企業による共同設置や社外の子どもを受け入れる方法などがある。また、助成金を活用しコスト削減を行う方法も有効。

<執筆者>加藤知美 社会保険労務士(エスプリーメ社労士事務所)

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