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2018年12月18日(火)更新

企業内保育所

企業内保育所は、育児をしながら働く女性の活躍を後押しする策として注目されています。本記事では、企業内保育所が与える優秀な人材の流出防止や企業イメージのアップなどのさまざまなメリットや、実際に導入した企業事例についてあますことなく紹介します。また、場所確保やコスト面の不安に対応するために国が行っているバックアップ体制の内容についても解説いたします。

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企業内保育所とは

企業内保育所とは、その企業に勤める従業員のために作られた保育施設です。

「育児と仕事の両立を図る従業員が安心して働くことができるようにする」という目的で、企業内もしくは近隣地の場所に設置されています。女性従業員率が高い・または女性従業員が求められる職場に設けられることが多く、特に夜間勤務の必要性が生じる医療・介護の現場で効果を上げています。

従業員の目の届く場所に子どもがいるため、急な体調不良に対応できるなどの安心感が得られる効果があり、さらに保育園に入所するための活動(いわゆる「保活」)の必要がないことから、企業内保育所の設置を求める者も多くいるようです。


企業内保育所には認可保育所である事業所内保育事業、認可外保育所である企業主導型保育事業などがありますが、本記事では 「企業に勤める従業員のために作られる保育所」 として、解説していきます。


企業内保育所をとりまく環境

男女雇用機会均等法が制定されたことで男女間の平等性が問われるようになり、また不透明な経済情勢を受け、さまざまな理由で社会進出をする女性が増え続けています。しかし、結婚、出産にあたり、働き続けることを断念する女性が少なくないこともまた事実です。

働くことを望む女性の前には「待機児童問題」が大きく立ちはだかります。保育園に入所することができず、職場復帰ができないまま子どもとともに入所を待ち続けるケースや、希望する施設ではなく自宅や職場から離れた保育園への入所が決まり、日々の生活に支障をきたすケースなどが発生しています。

また、寿退社の風潮が残る会社や妊娠中の女性への風当たりの強さ、いわゆる「マタハラ」なども問題視され、結果的に退社を選択するケースが多く見られます。

企業内保育所の将来性

優秀な女性労働者の離職は企業としても避けたいため、現在では、福利厚生として企業内保育所を開設することで子育て世代が働きやすい環境を整え、人材確保につなげようという動きが、上場企業を中心に高まっています。

日本政府の動き

日本政府もワーク・ライフ・バランスの推奨をはじめ、女性の社会進出を後押しするための支援策を打ち出しています。その一つとして、内閣府は子ども・子育て本部を設置し「企業主導型保育事業」を創設しました。事業を立ち上げると同時に資金調達として各企業から拠出金を徴収することで、日本の保育体制の整備を図り、待機児童の問題を解消することを目的とした事業です。

企業内保育所は、子どもを育てながら勤務をする女性を後押しするための存在として注目されており、より一層の発展が求められる存在といえるでしょう。

企業内保育所の種類

「企業内保育所」には、は認可の有無・管轄が異なるなど、いくつかの種類があります。導入を検討されている企業の方は、違いをきちんと理解することが重要です。

企業主導型保育事業(認可外)

2016年に内閣府が開始した「企業主導型保育所」は、設置等の基準は認可外保育施設の基準に準ずるとされており、認可保育所に比べると設立の基準が緩いことが特徴です。自由度が高く、24時間対応・病児保育なども任意で行うことができるため、柔軟な保育サービスの実現が可能となっています。

また、雇用する従業員の保育料については、福利厚生の一環として会社が一部負担し、通常よりも安い保育料とすることも可能であるため、従業員にとっては保育料の負担が軽減され、とても魅力的な福利厚生になります。

助成金制度について

内閣府では、多様な就労形態に対応ができる保育サービスの拡大によって、保育所の待機児童の解消を図り、仕事と子育ての両立を支援するため、企業主導型保育所を開設する事業実施者に対して助成制度を設けています。

たとえば、保育施設を新たに設けた場合、土地賃借料などの費用の4分の3にあたる部分の整備費が支給されます。また、助成を受けた場合には、固定資産税といった税金の減税措置も用意されています。保育所の職員の賃金アップや教育プログラムを行った場合、延長保育や夜間保育、病児保育、一時的な預かりサービスなどを実施した場合は、利用人数に応じた運営費の支給も行われます。

つまり、保育所の待遇を良くすればするほど、国からさまざまな金額を支援してもらえることになります。保育所の設置や充実を検討する場合、活用する価値は大いにあるといえるでしょう。

【参考】内閣府ホームページ:企業主導型保育事業の概要

事業所内保育事業(認可)

認可保育所とは、地方自治体が管理する保育所で、施設の広さ、保育士の人数、給食設備、防災・衛生管理など、自治体ごとに厳しい認可基準が設定されており、その基準をクリアした保育所のみが認可を受けることができます。無事認可を受けることができた際には、保護者の安心感も高く、とても人気がある保育所です。

事業所内保育所は、2015年に待機児童解消のために創設された地域型保育事業の認可保育所にあたるため、厳しい市町村の認可を受ける必要があり、従業員だけではなく、定員の1/4程度は地域へも開放しなければならないとされています。また、対象年齢が0歳から2歳と限定されているところも大きな特徴です。

助成金制度について

事業所内保育所については、以前は「事業所内保育施設設置・運営等支援助成金」によって、厚生労働省から補助が行われていましたが、平成28年4月以降は受付を停止しています。地域によっては独自の財政から助成を行っているところもあるため、一度、開設予定地域の助成について調べてみても良いでしょう。

認可外保育施設(認可外)

上記のどちらにもあてはまらない場合には、認可外保育所を開設することもできます。

認可外保育所は認可保育所に比べると設立の基準が緩く、認可保育所の選考に漏れた方の受け皿としての役割を持つとともに、開所時間に制限がある認可保育所では預かってもらえない時間帯での保育なども行っている場合があり、多種多様な働き方の現代ではあえて認可外保育所を選ぶ人も少なくありません。

企業内保育所導入のメリット

企業内に保育所を導入するにあたり生じる効果は、さまざまな形で現れます。主なメリットとしては、次のような内容が挙げられます。

社員の働きやすい環境づくりができる

子どもを預けて働く社員には、保育所と自宅、職場間の移動時間や費用、急な熱や台風時の対応など、多種多様な悩みがつきものです。しかし、企業内に保育所を設置することで、このような社員の悩みを解消することができます。

たとえば、外部の保育園の場合、閉園時間の都合から急な残業が発生した場合に対応してもらえないケースがあります。しかし、企業内保育所ならば会社の都合に対応できるような預け時間を設定している場合が多いため、延長保育に対する不安を感じず仕事を続けることができます。

仕事と育児を両立しながら働く社員が抱える悩みを取り除くことで、社員の育児休業からの早期復帰や業務へのフレキシブルな対応につながり、社内全体が風通しの良い、働きやすい環境へと変化していくのです。

親子の安心感が企業発展につながる

企業内保育所に預けることで、預ける側の親は、近くで子どもの存在を感じることができるという安心感を得ることができます。また、預けられる子ども側も、親が近くにいるという安心感を得ることができます。 親子の精神状態が安定することで、従業員の仕事に対する意識が強まります。そして、意識の高い従業員が集中して業務に取り組むことで、企業の発展へとつながるのです。

優秀な人材を逃すことなく、離職率の低下へ

企業内保育所は、育児をしながら働く従業員にとって非常にありがたい存在です。特に、近くに適した保育所がない従業員や、子どもを預けて働くことに不安を感じて退職や転職を考えている従業員の場合にとっては「この会社で働き続けよう」という気持ちが生まれやすくなります。

その結果、従業員の結婚や出産、育児をもとにした退職・転職を防ぐことができ、長期にわたり働き続けようと考える従業員が増加します。

企業のイメージアップに

近年では、テレビCMなどで企業内保育所の存在をうたう企業も見られますが、このような企業に対し、羨望のまなざしを送る女性就労者は少なくありません。

企業内保育所を導入することは、働く女性が増加する中、従業員、特に女性従業員を大事にする企業として対外的なイメージがアップします。特に、これから結婚や出産、育児期を迎える若い世代や、子どもを抱えながら働くことを検討する者にとっては、育児と両立できる職場は非常に魅力的です。求人情報に「企業内保育所あり」と記すことで、応募者に強く印象づけることが可能となります。

また前述のように、勤めている従業員が企業内保育所の恩恵を受けることで仕事意欲がアップし、企業の価値が上がる企画や行動を取るようになることで、さらに企業自体の価値が増す場合もあります。

企業内保育所導入のデメリット

企業内保育所の導入にはさまざまな利点がありますが、その一方で検討すべきこと、注意すべきデメリットも多々あります。実際に企業内保育所を設置するにあたって気をつけなければならない点としては、主に次の内容が挙げられます。

場所の確保やコスト面など企業の負担が大きい

新たに保育所を開設することは、楽なことではありません。一つの事業として、保育施設を立ち上げた上で、運営を行う必要があります。したがって、施設の場所を確保するための問題や、費用や収益などのコスト面にまつわる問題が浮上します。

企業内保育所の土地問題とは

近年、保育園の設置を希望する側と反対者側の間で生じるトラブルが取り上げられるケースがみられます。特に企業内保育所は、その会社の内部、もしくは近隣地に設置する必要があるため、場所の確保が非常に難しい問題となっています。

保育所は預けられている間に子どもが生活をする場であり、ある程度のスペースを要します。会社の敷地内や近隣に確保できる土地がない場合、新たな方法を検討していく必要があります。

企業内保育所のコスト面の問題とは

一から企業内保育所の設置を試みる場合、当然ながらさまざまな費用がかかります。たとえば、施設の設置費用や月々の維持費、保育士に対する人件費などが挙げられます。企業内で運営を行わなければならないため、通常の会社経営に加えて保育所の経営費についても予算案に加え、検討していかなければなりません。運営如何によっては、会社の本体経営を圧迫させる可能性があるため、コスト面については入念に考えていく必要があります。

また、保育を行う保育士についても、ただ雇うだけではなくモチベーションやスキルをアップさせるための教育体制を敷く必要性が生じるため、賃金以外にもさまざまな経費がかかることを覚えておかなければなりません。

利用者が定員に達しない場合がある

せっかく設置した保育所が、うまく活用されずメリットを生かすことができない場合があります。たとえば、利用者が定員に達せず収入が見込めなかったケースなどです。また、企業によっては保育所を抱えるだけの財政的余裕がない場合や、経営方法などのノウハウがなく、設置をためらう場合などがみられます。

なお企業内保育所は、厚生労働省により利用人数や保育士数、設備内容や広さなどの基準が設けられています。規模や場所、資金面の問題でこれらの基準を満たさないと助成を受けることができない場合があるため、企業の負担は大きなものとなります。

企業内保育所導入を検討する場合のポイント

企業内保育所の開設には、様々なメリットがある一方で、上記のようなデメリットも多く存在します。デメリットに加えて、子どもを預かるということは命を預かるとても責任の重いことであり、導入前には事前に十分な検討を重ねる必要があります。

目的を明確に

なぜ企業内保育所を設置する必要があるのかを改めて検討してみましょう。

「人手不足で子育て世代の力が欲しい」という目的であれば、企業内保育所を設置し、人材募集の際に福利厚生としてアピールすることで人材確保という目的は達成されます。女性の多い職場では、働きやすい環境としての魅力も高まり、企業内保育所を設置する意義も増します。

また、企業のイメージアップを目的に設置する企業も増えています。

大きな病院では、夜勤の多い看護師などのために企業内保育所を導入し、普通の認可保育所では預かってもらえない時間帯に子どもの受け入れを可能とすることで労働者の離職防止を実現するとともに、病院の近くに設置することで、施設を利用する地域の方にも従業員を大切にする病院、理解のある病院であることを印象付けることができます。

運営方法の検討

目的を明確化した次は、運営方法を検討します。もちろん自社のみで開設することもできますが、少子化が問題となっている現在、せっかく企業内保育所を開設したものの、保育児童の定員割れによる閉鎖が相次いでいることが問題となっています。

対策として、複数の企業や協同組合などで集まり、共同で保育所を設置する方法が挙げられます。複数の企業が集結することで、場所や人数の基準を満たすことが可能となり、内閣府の助成制度を受けることができるようになります。また、費用分担も複数の企業で行うことができるため、各社の負担が軽減されます。

設置の形としては、ある会社が立ち上げた保育所を複数企業で利用する方法や、複数企業で協力して一つの保育所を立ち上げる方法があります。

運営コストの把握

コスト面の洗い出しも事前に検討すべきです。企業内保育所を運営するためには、本業の運営とは別に保育所の運営費だけではなく、固定資産税、事業所税などの税金の負担ものしかかります。

このような企業にのしかかるコスト面の問題に対応するため、国では企業内保育所の設置・運営に関するさまざまな助成制度を打ち出しています。

導入事例

国を挙げた支援制度の存在もあり、企業内保育所に注目する企業が増加しています。実際に導入し、成果を上げているケースも複数みられます。

資生堂/事業内保育所の運営受託を開始

大手化粧品会社である株式会社資生堂は、2017年2月を目途として、事業内保育所の運営に携わる事業を主とする合弁会社を立ち上げました。この会社では、企業内保育所を設置する際に抱える悩みを解決するコンサルティングや助言などを行い、仕事と育児の両立化を図るねらいがあります。

もともと資生堂は化粧品を扱う会社として、女性従業員が8割を超えていました。そのため、すでに90年代に育児休業の3年取得を認めるなど、女性のための制度を充実させており、その過程の一つとして2003年より企業内保育所を開設しました。自社の社員の子どもの他、他者からの受け入れも行う事で、現在も30名を超える子どもを預ける体制が整っています。その結果、結婚・出産・育児がもとで離職する女性の率は0.6%となり、また女性の管理職登用率も3割に迫る勢いとなりました。

【参考】SHISEIDO GROUP ニュースリリース:資生堂とJPホールディングス、事業所内保育所の運営受託を事業の柱とした合弁会社を設立
【参考】JIJICO:資生堂 事業所内保育所の運営参入から見えるもの

ローソン/企業内保育所で育児休業復帰を後押し

株式会社ローソンでは、2014年7月に事業所内保育施設を東京都の本社ビル内に開園しました。育児休業明けの従業員復帰を後押しし、待機児童問題を抱える従業員の不安を取り除くことがねらいです。特に都心など人口が密集している地域の場合、4月などの年度開始月を外した職場復帰を目論む場合、希望の保育園に入所することが困難となります。社内に専用の保育所が設けられていることで、安心して職場復帰をすることが可能となるのです。

ローソンは事業所内保育施設の充実化の他にも、子育て未経験者に対する育児講座も実施することで、男女ともに抱えている子育ての不安を解消し、職場で活躍できるような体制を敷いています。

【参考】LAWSON ニュースリリース:事業所内保育施設「ハッピーローソン保育園」開園
【参考】NIKKEI STYLE:あってよかった 社内保育所、女性復職の助けに

ヤクルト/充実した保育所経営体制

株式会社ヤクルト本社では、40年以上前となる1970年より企業内保育所の運営が開始されました。特徴としては、全国各地で活躍するヤクルトレディのニーズに応え、全国各地におよそ1,200箇所の保育所が点在していることです。ヤクルトの従業員以外も受け入れているため、地域に根差した保育園として有名になっています。

場所はヤクルトのセンター近隣にあり、安心の少人数体制を取っています。また、企業が費用を負担していることから毎月6,000円前後と他園と比較してもお値打ち価格で預けられるとあり、人気を博しています。

【参考】ヤクルト保育:ヤクルト保育所
【参考】みんなのスタンバイ:保育所・託児所完備!ママ注目の「ヤクルトレディ」がランクイン

まとめ

  • 企業内保育所は、育児と仕事の両立を図る従業員が安心して働くことができるよう設置された社内運営の保育所で、主に女性が多く活躍する企業で拡大している。
  • 企業内保育所には従業員のモチベーションアップや離職率低下、企業イメージ向上のメリットがある一方で、場所確保やコスト面の問題などのデメリットもある。
  • 企業内保育所の定員不足を解消するためには、複数企業による共同設置や社外の子どもを受け入れる方法などがある。また、助成金を活用しコスト削減を行う方法も有効。

<執筆者> 加藤知美 社会保険労務士(エスプリーメ社労士事務所)

愛知県社会保険労務士会所属。愛知教育大学教育学部卒業。総合商社で11年、会計事務所1年、社労士事務所3年弱の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。


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