くるみん
「くるみん認定」は子育て支援に積極的に取り組む企業に対し、厚生労働大臣が認定する制度です。くるみん認定を受けた企業は年々増加し、就職活動中の学生にも知られるようになりました。今回は、平成29年4月1日から適用になった「くるみん」の新しい認定基準やマークをはじめ、認定企業の取組事例などをご紹介します。
「くるみん認定」とは?
「くるみん認定」は仕事と子育ての両立支援に取り組んでいる企業に対し、「次世代育成支援対策推進法(次世代法)」に基づき、厚生労働大臣が実施している認定制度です。くるみん認定を受けるためには、10の要件からなる「くるみん認定基準」を満たす必要があります。
認定基準を満たした企業には、「子育てサポート企業」として認定マーク(通称「くるみんマーク」)が付与されるので、自社製品やホームページ、求人広告などにつけることができます。
【出典】厚生労働省:くるみんマーク・プラチナくるみんマークについて
なお、次世代法は当初、平成27年3月31日までの期限立法でしたが、平成26年4月23日に改正次世代法が成立し、有効期限が10年間、延長されました。有効期限の延長に伴い、くるみん認定制度も平成37年3月31日まで延長となり、次世代育成支援のさらなる充実を目指して新たな認定制度(プラチナくるみん認定)も誕生しました。
【参考】厚生労働省:次世代育成支援対策推進法が 10年間延長され、 新たな認定制度が創設されます!
くるみん認定企業は年々増加
くるみん認定企業について、各年度末の推移を見てみましょう。平成19年度末に428社だった認定企業は、平成22年度末には1,000社を超え、平成29年6月末には2,749社まで増加しました。くるみん認定企業は、一年に200~300社ほどのペースで増えています。
※厚生労働省:くるみん取得企業数の推移、 厚生労働省:次世代育成支援対策取組状況、【都道府県別一般事業主行動計画策定届の届出及び認定状況】の情報を基に作成
一般事業主行動計画について
くるみん認定を受けるためには、次世代法に定められた「一般事業主行動計画」の策定が欠かせません。
一般事業主行動計画とは、仕事と子育ての両立を支援するために職場環境を整備したり、子育て中の人だけでなく、すべての従業員にとって多様な働き方が可能となるような労働条件を整備したりするための計画のことです。一般事業主行動計画の中には計画期間や目標、対策の内容と実施時期などを定める必要があり、従業員101人以上の企業の事業主には計画の策定や労働局への届出が義務づけられています。
一方、100人以下の場合は努力義務です。しかし、くるみん認定は企業の規模に関わらず申請ができるので、次世代育成支援対策に積極的に取り組んで認定を目指すとよいでしょう。
【参考】厚生労働省:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!p1-3
「くるみんマーク」と「プラチナくるみんマーク」の活用例
「くるみんマーク」や特例認定企業に付与される「プラチナくるみんマーク」は、次のようなものにつけて子育てサポート企業であることをPRすることができます。
- 役員や社員の名刺
- 商品または役務
- 商品または役務の取引に使用する書類や通信など
- 一般事業主の営業所や事務所、その他の事業場
- 会社のホームページやCSR報告書などの広報誌
- ポスター
- 採用パンフレットや求人広告
- 社内報やイントラネット
- 社内向けの両立支援パンフレット
プラチナくるみんについては、後で詳細に説明します。
「えるぼしマーク」について
「えるぼしマーク」は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」に基づき、厚生労働大臣が認定した企業だけに付与される認定マークです。えるぼしの認定を受けると、女性の活躍を推進している事業主であり、職場環境が女性の活躍しやすい優良な状況にあるという証となります。
くるみんマークと同様、認定企業は商品や名刺、求人広告などに「えるぼしマーク」をつけて社外に取組をPRしたり、従業員に意識づけをしたりすることができます。
【関連】えるぼしの意味とは?認定企業例やくるみんマークとの違い / BizHint HR
【関連】女性の活躍を推進するには?「女性活躍推進法」の概要や企業事例もご紹介 / BizHint HR
「くるみんマーク」が生まれた背景
くるみんマークが誕生した背景を見ていきましょう。
日本の出生率の減少
くるみん認定制度が創設された背景には、日本における出生率の減少が挙げられます。まず、出生率の推移を簡単に説明しましょう。
日本の出生数は1973(昭和48)年の209.2万人をピークに減少が続き、2014(平成26)年には100.4万人まで減少しました。翌2015(平成27)年の出生数は100.6万人となり、若干は増えていますがおよそ100万人の状態が続いています。
【出典】内閣府:平成27年版 少子化社会対策白書(概要)、第1部 少子化対策の現状と課題、第1章 少子化の現状、1.出生数、出生率の推移
一方、合計特殊出生率はここ10年ほどをみると、わずかながら上昇傾向です。合計特殊出生率とは、15~49歳の女性における年齢別の出生率を合計したもので、1つの目安として2.07(人口置換水準)を上回ると人口増が見込まれ、下回ると人口が減少するといわれています。
1973(昭和48)年に2.14だった合計特殊出生率は徐々に下降し、2005(平成17)年には1.26まで下降したため、当時、人口減少の危機感を多くのマスコミが取り上げました。その後、国や地方公共団体などが子育て支援の取組を強化したことにより、合計特殊出生率はやや上昇し、2015(平成27)年は1.45になりました。しかし、いまだ2.07には及びません。
そのため、深刻な少子化、引いては労働力供給の減少が危惧されるようになり、企業においても労働者が子育てと仕事を両立しやすい環境整備の必要性がいわれるようになったのです。
妊娠や出産を機に退職する女性社員が多い
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが女性社員(正社員・非正社員)を対象に行った調査を基に、妊娠や出産、育児をしている女性を取り巻く実態を見ていきましょう。
調査によると、正社員は妊娠や出産を機に辞めることなく、「同じ会社で就業を継続した」という人が77.3%でした。しかし、パートや契約社員などの非正社員は、同じ会社で就業継続できたのは正社員のおよそ半数の39.5%に留まり、38.0%は妊娠中に退職していました。
※ 厚生労働省:平成28年度「仕事と家庭の両立支援に関する実態把握のための調査研究事業 労働者調査 結果の概要」、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、p13の情報を基に作成
また、妊娠や出産を機に辞めた人の理由をみると、もっとも多かったのは「自発的に辞めた」という理由です。次に多いのは、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで辞めた」で正社員は22.5%、非正社員では13.5%でした。
※ 厚生労働省:平成28年度 仕事と家庭の両立支援に関する実態把握のための調査研究事業 労働者調査 結果の概要(平成29年2月)、p14の情報を基に作成(退職理由の一部を記載)
両立が困難で辞めた人が具体的な退職理由として挙げたのは、正社員では「勤務時間が合いそうもなかった」がもっとも多く、47.5%。非正社員で多かったのは「育児休業を取れそうもなかった」で41.7%でした。
逆に、同じ会社で就業を継続できた人の理由をみると、以下のように経済的な理由の他、産前・産後休業や育児休業の制度、あるいは保育所や保育サービスなどに関する理由が上位を占めていました。この調査から、女性の就業継続を図るためには、非正社員を含めた育児休業制度や短時間勤務制度などの整備、また、保育所の整備や上司の理解などが重要と考えられます。
※ 厚生労働省:平成28年度 仕事と家庭の両立支援に関する実態把握のための調査研究事業 労働者調査 結果の概要(平成29年2月)、p13の情報を基に作成(主な理由を記載)
日本では夫の育児参加が少ない
夫婦間の家事や育児にかかわる時間の違いについて内閣府の調査をみると、妻は1日に7時間41分、夫は1時間7分で、日本の夫婦は1日あたり6時間以上の差がありました。しかし、欧米諸国では、妻は5時間30分~6時間程度、夫はおおよそ2時間30分~3時間で、夫婦間の差は3時間ほどです。家事や育児にかかわる時間は「妻より夫の方が短い」というのは欧米諸国も日本と同じですが、夫婦間の差は日本ほど大きくありません。
また、育児に限定すると日本では妻が3時間22分、夫は39分でした。欧米諸国の妻が2時間前後であることを考えると、日本の妻の育児時間は欧米諸国の妻より長く、夫との差も大きいことがわかります。一方、日本の夫(39分)と欧米諸国の夫(40分~1時間程度)との間には大きな差はありませんでした。
【出典】内閣府:平成29年版 少子化社会対策白書(概要)、第1部 少子化対策の現状、第1章 少子化をめぐる現状、4 出産・子育てをめぐる意識等
日本では、欧米諸国のようにベビーシッターを依頼するケースが少なく、家事や育児の負担感は妻の方に偏っている状況があります。夫が育児に「協力する」という意識ではなく、ともに育児を行うといった意識の変化も重要でしょう。また、企業としては女性に対する支援対策だけでなく、男性が育児に参加しやすい環境を整備し、男性の育休取得が特別視されるような社風も変えていく必要があります。
次世代育成支援対策推進法(次世代法)の制定
次世代育成支援対策推進法は、日本の急速に進む少子化の流れを変えるために、国や地方公共団体、企業に対し、次代の社会を担う子どもたちの健全な育成を支援する行動計画の策定などを求めるものです。次世代法における「次世代育成支援対策」は、次のように定義されています。
第二条 この法律において「次世代育成支援対策」とは、次代の社会を担う子どもを育成し、又は育成しようとする家庭に対する支援その他の次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備のための国若しくは地方公共団体が講ずる施策又は事業主が行う雇用環境の整備その他の取組をいう。
次世代法に基づき、企業における次世代育成支援対策を推進するために、くるみん認定やプラチナくるみん認定が創設されました。平成29年4月の法改正では、企業が独自に導入している休暇制度なども評価するなど、多方面から評価する認定基準へと変化しています。
なお、次世代法における取組の対象は正社員だけでなく、非正規社員も含まれるので注意してください。
「くるみん認定」を受けることのメリット
くるみん認定は、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
企業のイメージアップ
「くるみん」や「プラチナくるみん」の認定を受けると、自社の商品や会社のパンフレット、求人情報などに「くるみんマーク」や「プラチナくるみんマーク」をつけることができます。くるみんマークを表示した効果としては、「役員の名刺にマークをつけたところ、インパクトがあった」「企業イメージが向上し、信用度のアップにつながった」などの声があります。
また、都道府県労働局は「くるみん認定」の周知や啓発活動の一環として労働局のサイト内に認定企業を掲載したり、表彰の様子を広報誌に載せたりしています。くるみん認定企業の中には「労働局での表彰の様子がマスコミに取り上げられて認知度が上がり、直接受注も増えた」など、認定の効果を実感している企業もあります。
優秀な人材の確保
くるみんが誕生した背景のところで紹介したように、妊娠や出産、育児を機に退職する女性は少なくありません。くるみん認定を受けることで、仕事と家庭の両立をしたいと考える求職者へのアピールポイントとなります。
また、企業が次世代育成支援対策に取り組み、妊娠中や子育て中の社員が働きやすい雇用環境を整えることにより、優秀な人材の流出も防げる可能性があります。
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税制優遇措置を受けられる
くるみん認定やプラチナくるみん認定を受けた企業は税制優遇措置を受けることができ、「くるみん税制」と呼ばれることもあります。
くるみん認定の場合
青色申告書を提出し、一定の期間内に初めてくるみん認定を受けた企業では、認定を受けた事業年度(1年間)に新築や増改築した建物などは以下のような率で割増償却することができます。次世代法による義務づけのない100人以下の企業は、割増償却率が高くなっています。
【出典】厚生労働省:平成27年度税制改正で、くるみん税制が改正・延長されました
プラチナくるみん認定の場合
プラチナくるみんについては、企業の規模による義務づけはありません。そのため、企業規模に関係なく、すべての認定企業が以下の割増償却率が適用になります。
【出典】厚生労働省:平成27年度税制改正で、くるみん税制が改正・延長されました
公共通達による加点評価で有利に
厚生労働省をはじめ、各府省は女性が活躍できる社会にするために総合評価落札や企画競争で公共調達をする場合、「くるみん」などの認定企業には加点評価を行っています。加点評価が受けられるのは「くるみん認定企業」のほかに、女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定企業」や若者雇用促進法の「ユースエール認定企業」などがあります。
なお、国に準じて地方公共団体でも加点評価を実施したり、今後の実施に向けた検討を行ったりしています。
くるみんマークの認定基準
くるみんマークの認定を受けるには行動計画の計画期間が終了し、くるみん認定基準を「すべて」満たすことが必要です。
平成29年4月に改正された新しい認定基準は、以下10の要件があります。
●認定基準1
雇用環境について、一般事業主行動計画を適切に策定した
行動計画には、次世代法の規定により定められた「行動計画策定指針」の以下の事項の1および2に示された項目のうち、1項目以上を盛り込まなければなりません。
「六 一般事業主行動計画の内容に関する事項」の「1 雇用環境の整備に関する事項」
- 妊娠中の労働者及び子育てを行う労働者等の職業生活と家庭生活の両立等を支援するための雇用環境の整備
- 働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備
●認定基準2
計画期間が「2年以上~5年以下」
●認定基準3
行動計画を実施し、計画に挙げた目標を達成した
認定の申請には、目標達成を証明する資料の添付が必要です。証明する資料として、たとえば従業員の意識啓発を目標とする「研修会の実施」であれば、実施年月日がわかる研修会の開催通知や研修会の実施結果の写しなどが考えられます。
●認定基準4
平成21年4月1日以降に、新たに策定・変更した行動計画を公表し、従業員への周知を適切に行った
認定を受けるためには、行動計画の策定や変更を行った場合は外部への公表や従業員への周知が必要となります。公表や周知の時期は、策定や変更の日からおおむね3か月以内です。
●認定基準5
男性従業員の育児休業等の取得については、以下の1または2を満たしている
- 計画期間内において、男性従業員のうち育児休業等取得率が「7%以上」
- 計画期間内において、男性従業員のうち育児休業等の取得者、および育児休業等に類似した「企業独自の育児を目的とした休暇制度」の利用者の割合が「15%以上」、かつ、育児休業等の取得者が「1人以上」いる
「企業独自の育児を目的とした休暇制度」とは、小学校就学前の子どもについて次のような休暇制度を利用した場合が考えられます。
- 失効年休を育児目的で使用できる制度
- 育児参加奨励休暇制度 など
●認定基準6
計画期間内において、女性従業員のうち育児休業等取得率が「75%以上」
育児休業等取得率を計算するとき、計画期間内に出産あるいは育児休業等を取得した有期契約労働者のうち、育児・介護休業法において育児休業等の対象にならない社員は除外することができます。
注)上記の認定基準5と6は、従業員数が300人以下の企業には特例が認められています。
●認定基準7
3歳~小学校就学前の子どもを養育している従業員について、以下の制度や措置を講じている
- 育児休業に関する制度
- 所定外労働の制限に関する制度
- 所定労働時間の短縮措置
- 始業時刻変更等の措置に準ずる制度
始業時刻変更等の措置とは、フレックスタイム制度や時差出勤制度、保育所などの設置・運営、ベビーシッターの手配や費用負担などの措置をいいます。また、上記の制度や措置は、3歳~小学校就学前の子どもを育てる「すべての従業員」への適用が必要です。有期契約労働者などを対象外とすることはできません。
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●認定基準8
労働時間数について、次の1と2を満たしている
- フルタイムの労働者等における法定時間外と法定休日の労働時間の平均が「各月45時間未満」
- 月平均の法定時間外労働が「60時間以上」の労働者はいない
フルタイムの労働者等とは、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)第2条に規定する短時間労働者を除く、すべての労働者を指します。ただし、認定申請の時点で退職している労働者については、計算に含める必要はありません。
●認定基準9
次のいずれかについて、具体的な目標を定めて実施している
- 所定外労働の削減のための措置
- 年次有給休暇の取得の促進のための措置
- 短時間正社員制度や在宅勤務、その他、働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備などの措置
所定外労働の削減のための措置には「ノー残業デー」の導入や拡充、また、フレックスタイム制度の活用や36協定における延長時間の短縮などが考えられます。
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●認定基準10
法、および法に基づく命令、その他関係法令に違反する重大な事実がない
その他関係法令の違反とは、たとえば、次のような法令違反等を指します。
- 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などの法律による勧告を受けた
- 労働基準法や労働安全衛生法等に違反して送検・公表された
- 労働基準関係法令の同一条項に複数回、違反した など
【参考】次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!p9-15
改正によって法令違反に関する基準が厳しくなりました
平成28年11月、大手広告代理店の電通が「くるみん認定」の辞退を申し出たことに対し、厚生労働省が承認したことが公表されました。電通では、2015年に亡くなった女性社員の自殺は過重労働によるものと労災認定されていますが、電通はこれまでに3回(平成19年、25年、27年)、くるみんの認定を受けていたのです。
また、「プラチナくるみん」の認定企業の中には、過労死ラインといわれる月の残業時間が80時間を上回る企業も含まれているといった状況を問題視する意見もあります。そのため、平成29年4月の改正では認定基準10(法令違反に関する基準)に「労働基準関係法令の同一条項に複数回、違反した」などが追加され、厳しく確認することになりました。
「プラチナくるみん」とは?
【出典】厚生労働省:くるみんマーク・プラチナくるみんマークについて
プラチナくるみん認定は、改正次世代法に基づき平成27年4月1日から始まった認定制度です。厚生労働省は、くるみん認定を受けたことがある企業のうち、次世代育成支援対策に関する実施状況が優れている企業に対し、特例認定として「プラチナくるみん認定」を行っています。
プラチナくるみんの認定企業は、創設初年度の平成28年3月末には79社でした。しかし、平成29年3月末は118社に増え、平成29年6月末には138社になっています。
「プラチナくるみんマーク」は、より高い水準の子育て支援対策に取り組んでいる企業に付与されるマークです。そのため、プラチナくるみんマークは、くるみんマークよりバージョンアップし、王冠にスティック、そしてマントを身にまとっています。
プラチナくるみんマークは12色がラインナップ
マントの色は以下のように12種類もあるので、自社のイメージカラーなどに合わせて利用するとよいでしょう。
実施状況の公表
プラチナくるみんの場合、行動計画の策定や都道府県労働局への届出の義務はありません。しかし、以下のような次世代育成支援対策の実施状況を「毎年、少なくとも1回」公表する必要があります。
- 男性労働者の育児休業等取得に関する事項
- 女性労働者の継続就業に関する事項
- 3歳~小学校就学前の子どもを育てている労働者ための短時間勤務等の措置
- 時間外や休日の労働時間の実績 など
なお、労働時間に関する公表は平成29年4月1日の新基準で追加されたもので、経過措置として平成30年3月31日までは猶予されています。
プラチナくるみんマークの認定基準
特例認定であるプラチナくるみんの認定を受けるには、12の要件を「すべて」満たす必要があります。12の要件のうち、8つはくるみん認定基準と同じため、ここでは異なる4つの要件について紹介しましょう。
●特例認定基準1~4
くるみん認定基準の1~4と同様
●特例認定基準5
男性従業員の育児休業等取得について、以下の1または2を満たしている
- 計画期間内において、男性従業員のうち育児休業等を取得した者が「13%以上」
- 計画期間内において、男性従業員のうち育児休業等の取得者、および育児休業等に類似した企業独自の休暇制度の利用者の割合が「30%以上」、かつ、育児休業等の取得者が「1人以上」いる
●特例認定基準6~8
くるみん認定基準の6~8と同様
●特例認定基準9
以下の1~3(くるみん認定基準9の1~3と同様)のすべてに取り組み、かつ、1と2のうち少なくとも1つは定量的な目標を定めて実施し、目標を達成している
- 所定外労働の削減のための措置
- 年次有給休暇の取得の促進のための措置
- 短時間正社員制度や在宅勤務、その他、働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備などの措置
定量的な目標とは、たとえば、「年次有給休暇の取得率を〇%以上にする」といった成果にかかる数値目標のことです。
●特例認定基準10
計画期間において、次のいずれかを満たしている
- 子どもを出産した女性従業員のうち、子どもの1歳の誕生日に在職している者(育休中の者を含む)の割合が「90%以上」
- 子どもを出産した女性従業員、および出産予定だったが退職した女性従業員のうち、子どもの1歳の誕生日に在職している者(育休中の者などを含む)の割合が「55%以上」
上記2の「子どもの1歳の誕生日に在職している者」には、育児休業中の従業員のほか、企業が育児目的で独自に導入している休暇制度の利用者なども含まれます。
●特例認定基準11
育児休業等を取得し、あるいは、子育てをする女性従業員が就業を継続して活躍できるように、能力の向上やキャリア形成に向けた支援などについて行動計画を策定し、実施している
取組の例としては、以下のようなものが考えられます。
(1)女性従業員に対する取組
- 若手の女性従業員を対象に、子育てをしながら働き続けるキャリアイメージを形成できるように支援する研修を開催する
- 育児休業から復職した従業員や子育て中の従業員を対象に、能力向上のための取組を実施する など
(2)管理職に対する取組
- 女性従業員の活躍を推進し、十分に能力を発揮できるような職場風土の改革に関する研修を企業トップ自ら開催する
- 女性従業員の育成に関する管理職研修などを開催する など
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●特例認定基準12
くるみん認定基準の10と同様
注)上記、特例認定基準の5と10は、従業員数が300人以下の企業には特例が認められています。
【参考】厚生労働省:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!p16-21
「くるみんマーク」「プラチナくるみん」認定の手続き
「くるみん」や「プラチナくるみん」の認定に関する手続きの流れを見ていきましょう。
「くるみん」の認定を受けるには【行動計画の策定】から【実施】、そして行動計画の終了後に【認定を受ける】という大きな流れがあり、具体的な流れを見ていきましょう。
行動計画の策定
行動計画の策定に関係するものは、以下のように4つのステップがあります。
■ステップ1 : 現状把握
行動計画が自社の実情に合ったものにするためには、仕事と子育てを両立させるうえでの問題点など自社の現状や従業員のニーズなどを把握することが重要です。
■ステップ2 : 行動計画の策定
ステップ1で把握したニーズなどを踏まえて、一般事業主行動計画を策定します。行動計画には、計画の期間や具体的な対策、目標の設定なども必要です。
■ステップ3 : 行動計画の公表・従業員への周知
公表や周知をする時期は、ステップ2の策定の日からおおむね3か月以内です。公表方法としては自社のHPのほかに、厚生労働省のWebサイトである「両立支援のひろば」や県の広報誌への掲載などの方法があります。
また、従業員には社内の見やすい場所に掲示したり、電子メールで送付したり、個別に行動計画を配布するといった方法で周知を図るとよいでしょう。なお、くるみん認定の申請をする際に、公表や周知を行った日付がわかる書類が必要になります。そのため、自社のHPや社内のイントラネットにアップした日がわかるようにパソコンの場面を印刷し、保管しておくことをおすすめします。
■ステップ4 : 労働局への届出
ステップ2の計画策定から、おおむね3か月以内に行動計画を策定した旨を都道府県労働局に届出をします。届出の方法は「一般事業主行動計画策定・変更届」を郵送や持参のほか、電子申請も可能です。
届出先は、行動計画は「企業単位」で策定するため、本社がある都道府県の労働局となります。なお、行動計画自体の届出は必要ありません。
行動計画の実施
策定した計画を実施する段階です。
■ステップ5 : 実施
一般事業主行動計画に沿って実施します。
上記の1から5のステップでは、PDCA(Plan:計画 - Do:実行 - Check:評価 - Action:改善)サイクルを確立することが重要といわれています。目標を達成するための【計画】を立案し、【実施】する中で成果を【評価】して、必要に応じて【改善】するといった一連の流れを繰り返すことで、よりよいプロセスへと改善することが必要です。
くるみん認定を受ける
認定の申請からマーク付与まで大きくは2つのステップです。
■ステップ6 : 労働局へ認定の申請
くるみんの認定を受けるためには、行動計画期間の終了後に都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に認定申請を行います。
■ステップ7 : くるみん認定と認定マークの付与
労働局に申請し、先述した認定基準をすべて満たした企業は「子育てサポート企業」として認定され、くるみんマークが付与されます。
プラチナくるみん認定を受ける
プラチナくるみんも、申請と認定・マーク付与の2つのステップとなります。
■ステップ8 : プラチナくるみん認定の申請
プラチナくるみんの認定は、「事前に」くるみん認定を受けていることが必要です。くるみん認定後の行動計画期間が終了した段階で、都道府県労働局へ申請します。
■ステップ9 : プラチナくるみん認定と認定マークの付与
プラチナくるみんの認定基準(特例認定基準)を満たすと、優良な子育てサポート企業として認定され、プラチナくるみんマークが付与されます。
【参考】厚生労働省::次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!行動計画策定→実施→くるみん認定→プラチナくるみん認定の流れ、p3
くるみんマーク認定企業の取組事例
ここからは、厚生労働省の女性の活躍・両立支援総合サイト「両立支援のひろば」の情報を基に、くるみんマーク認定企業の具体的な取組事例をご紹介します。
株式会社 千葉銀行
- 本社の所在地:千葉県千葉市
- 事業内容:銀行・保険業
- 従業員数:4,280名 うち、女性1,732名(平成28年3月31日現在)
主な取組
- 「仕事も育児も!! すてきなパパ宣言」で男性の育児参画を推進
男性職員が育児休業を取得する計画を立て、育児に「どのように関わるか」を職場内で宣言し、職場全体で男性職員の育児参画を応援するといった取組を実施。 - 業務効率化や働き方の柔軟化で時間外労働を削減
業務プロセスを見直して効率化を図るなど、時間外労働の削減に積極的に取り組んだ。また、始業時間や終業時間を柔軟に変更できる勤務制度や振替休日を半日単位で取得できる制度などを導入、さらに、ITを活用した柔軟な働き方などの取組を実施した。 - 「管理職の役割こそが鍵!」イクボスの意識浸透を図る
副支店長を対象にした「イクボスセミナー」の開催をはじめ、係長や支店長代理などの各階層を対象に「イクボス講義」を実施してイクボスを推進。 - 他人事ではない!職場単位でのダイバーシティ推進
ダイバーシティ推進の取り組みとして「ダイバーシティ推進勉強会」を実施したり、所属長を「ダイバーシティ推進統括責任者」に任命したり、ダイバーシティを自分事として意識づけを図った。
取組の効果
- 「仕事も育児も!! すてきなパパ宣言」の提出率:100%
- 男性の育児休業取得率:平成27年度は、61.6%に上昇
- 女性の渉外担当者:男性中心から155名に増加(平成28年8月末)
社内の取組が、女性の活躍推進といった取組に留まらず、全職員が仕事と生活を両立させながら活躍できる取組へと変化した。
【参考】両立支援のひろば:両立支援に取り組む企業の事例 平成28年度、株式会社 千葉銀行
エヌ・ティ・ティ・データ・ジェトロニクス株式会社
- 本社の所在地:東京都千代田区
- 事業内容:IT・情報通信業
- 従業員数:608名 うち、女性130名(平成28年4月1日時点)
主な取組
- 有給の「妊娠休暇」など独自の休暇制度を導入
妊娠期間中に毎月、3日まで休暇を取得できる妊娠休暇制度を導入した。妊娠休暇は事由を問わず利用することができ、給与も支給される。
また、誕生日休暇を有給で付与するなど、家族と過ごす時間や自分のための時間を増やし、働きやすい職場環境となるような休暇制度を導入している。さらに、社内にある診察室を休憩のために利用することもできる。 - 短時間勤務でも給与は全額支給
育児・介護休業法で事業主の選択的義務となっている短時間勤務制度を、子どもの「3歳の誕生日前日」まで利用できるようにした。勤務時間の短縮は、1日に1時間半まで可能。
また、1歳未満の場合は短時間勤務であっても給与は減額されず、全額を支給している。
取組の効果
- 出産・育児を理由とする退職者はゼロに
妊娠休暇の取得率は、ほぼ100%。多くの従業員が妊婦健診のときや体調不良などの場合に利用している。 - 男性が育休を取得するようになった
男性が育児にかかわることが定着してきたことにより、男性社員の中にも育児休業を取得する人が出てきた。また、就活生が、社内の育休取得状況に関心を示すこともある。
【参考】両立支援のひろば:両立支援に取り組む企業の事例 平成28年度、エヌ・ティ・ティ・データ・ジェトロニクス株式会社
株式会社 服部モータース
- 本社の所在地:滋賀県大津市
- 事業内容:卸売・小売業(自動車小売業)
- 従業員数:50名 うち、女性9名
主な取組
- 「今年やりたいこと10選」を設定し、上司がサポート
企業方針の「従業員の幸せを支援する」をモットーに、育児と仕事の両立を希望する従業員が「働きにくい」と感じることがないように配慮を行っている。「今年やりたいこと10選」は、自分の成長のためにしたいことを年初に挙げ、上司が実現に向けてサポートするというもの。
10選は仕事だけでなく、プライベートも含まれるが、上司が上期と下期に面談をして目標が達成できるように適宜、助言などを行っている。従業員が目標を達成できない場合、マイナス評価はしないが、目標を達成すると人事考課でプラス評価となる。 - 電子申請の導入により休暇を取りやすく
自動車の小売業のため土日は営業日だが、家族の行事に参加できるように営業日でも休暇を取れるように取り組んでいる。その一つが電子申請の導入。電子申請にすることにより、対面では休暇の申し出を躊躇してしまうという人が申請しやすい環境を整備した。 - 子ども支援手当の支給
1971年の創業当初から、子ども1人に対し、月額5,000円を20歳になるまで支給している。
取組の効果(平成27年10月時点)
- 平均勤続年数:約11.3年、定着率が向上
- 年次有給休暇の取得率:64.2%に上昇
ここ数年は、出産や育児を理由に離職する人はいない。また、社内の雰囲気が変わり、以前よりも自由なコミュニケーションが取れるようになった。さらに、管理職を含め従業員が「自分の幸せ」と「相手の幸せ」を考えるようになり、自分の行動を律するといった面もみられる。
【参考】両立支援のひろば:両立支援に取り組む企業の事例 平成27年度、株式会社 服部モータース
認定企業一覧
「くるみん認定企業」と「プラチナくるみん認定企業」に関する情報は、厚生労働省のWebサイトで確認することができます。都道府県別に検索できるので参考にしてください。
【参考】厚生労働省:くるみん認定及びプラチナくるみん認定企業名都道府県別一覧
まとめ
- くるみん認定を受けた企業では、取組の効果として出産・育児を理由とした退職者が減少し、男性社員を含め育休取得率が向上したなどの変化がみられます。
- 次世代法が目指す子育てと仕事の両立、あるいは多様な働き方を可能とする職場環境の整備は、働き方改革でも取り上げられている課題の1つです。
- 次世代法で一般事業主行動計画の策定や届出が義務となっている企業も、現行では努力義務の企業も、くるみん認定の基準を満たすように子育てサポート支援に積極的に取り組みましょう。
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