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2019年1月25日(金)更新

高度プロフェッショナル制度

2018(平成30年)年7月6日、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が公布されました。この法律に基づき、2019年(平成31年)4月1日からは労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法などの関連法でも大きな法改正が行われる予定です。本記事は、この中でも、多様で柔軟な働き方の実現のために創設された「高度プロフェッショナル制度」についてご紹介します。

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高度プロフェッショナル制度(高プロ)とは?

高度プロフェッショナル制度とは、特定の専門職で、一定の年収を有する労働者に対して、労働時間・休日・深夜の割増賃金等の規定を適用除外とすることができる制度です。

制度が適応される労働者については、以下のような条件が付されています。

  • 高度の専門的知識を必要とする業務
  • 職務の範囲が明確
  • 一定の年収(現時点では1,075万円以上)を有する

また、同制度を適用する場合は年間104日の休日を取得させることを義務化し、さらにその他の健康確保措置を講じることも条件とされています。

高度プロフェッショナル制度のような脱時間給の制度は、海外ではすでに導入されており、第一次安倍政権時代にも「ホワイトカラー・エグゼンプション」という名で法案提出が試みられましたが、国会で野党や労働組合などから多くの批判を受け、流された過去もあります。

「高プロ」と略されることもありますが、制度創設までに多くの批判を浴びた際には、「残業代ゼロ法案」「脱時間給制度」などと呼ばれたこともありました。

高度プロフェッショナル制度の対象職種・対象者は?

では、具体的にどのような職種が高度プロフェッショナル制度の対象となるのでしょうか?以下で詳しく解説します。

なお、実際に高度プロフェッショナル制度を導入する際には、労使委員会で対象労働者の範囲を決議する必要があります。

対象業務

高度プロフェッショナル制度の対象となり得るのは、高度の専門的知識等を必要とするとともに、従事した時間と成果の関連性が高くないと認められる業務とされています。

対象業務については議論が続けられており、対象とされる予定の業務は以下の通りです。

  • 金融商品の開発業務
  • 金融商品のディーリング業務
  • アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)
  • コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)
  • 研究開発業務

この業務の中から、対象になる業務、ならない業務が現在も引き続き議論されています。

対象労働者

上記対象業務(予定)の中でも、対象となるのは以下の労働者です。

  • 使用者との間に合意に基づいた、職務が明確に定められている労働者
  • 1年間に支払われると見込まれる賃金の額が、「平均給与額」の3倍を相当程度上回る水準として、厚生労働省令で定める額(1075万円を想定)以上である労働者

【参考】厚生労働省:「高度プロフェッショナル制度」の創設について

医師や会計士など「業務独占資格」保有者は対象になる?

高所得な職種であり、高度で専門的な職種の代表といえる医師については、制度の対象外とされています。

2017年に行われた「医師の働き方改革に関する検討会」において全国医師ユニオンは「医師は仕事に対して時間的な裁量をもっていない」という主張をされ、事実、勤務時間を本人の裁量で決められる職種ではないことから対象外となりました。ただし、一部の研究医などは、研究開発業務の部分で対象となる可能性もあります。

同様に、公認会計士・弁護士なども高度で専門的な職種ではありますが、労働時間を自由な裁量に任せることができる業務とは言い難いため、対象外とされています。ただし、彼らの業務の中には、対象業務とされるコンサルタント業務に当てはまるものもあるため、今後の議論の中で、対象業務の1つとされる可能性もあります。

高度プロフェッショナル制度の目的

高度プロフェッショナル制度は、労働時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするために創設されました。

一般労働者の年間総実労働時間が2,000時間を上回る水準で推移し、過労死なども問題視される昨今。長時間に渡る労働を抑制し、仕事と生活の調和のとれた働き方を拡げていくことを目的として、様々な対策が講じられてきました。

その一方で、「ジタハラ(時短ハラスメント)」という言葉が生まれたように、作業内容はそのままに表面的な労働時間を短縮するだけの対策を講じた企業も多くあり、労働者に対してより大きく負担がのしかかったケースも問題となっています。

特に、研究職や高度なコンサルティング業務など、労働時間を固定して残業を削減すれば効率があがるわけではない業種について、時間にとらわれない新たな選択肢が求められていたのです。

高度プロフェッショナル制度の問題点

しかし、高度プロフェッショナル制度には、多くの問題点が指摘されています。

「残業代ゼロ法案」と揶揄されたように、労働時間の対価として残業代や割増賃金の対象外となるため、残業代を支払わなくてもいいことを都合よく捉えて制度を悪用する企業が出てくる可能性も否定できません。「過重業務を課して長時間労働を助長することになる」「働かせすぎによって過労死につながる」などの懸念から、今も多くの批判を浴びています。

さらに、今後、対象範囲が拡大する恐れもあり、そこまで多くの報酬を受け取っていない労働者まで対象になってしまう可能性もあります。

高度プロフェッショナル制度のメリット

多くの批判を浴びている制度ですが、正しく運用すれば多くのメリットがあります。

企業にとってのメリット

まずは企業側から見た、高度プロフェッショナル制度のメリットを紹介します。

1.生産性向上が見込める
2.残業代の計算や支払いなどが不要になる

1.生産性向上が見込める

高度プロフェッショナル制度を導入すると、残業代が発生しない上に早く業務を完了しても賃金は変わりません。短時間で効率の良く業務をこなすようにインセンティブが働くため、生産性の向上が見込まれます。

労働時間=賃金 の現状では、「給与を増やしたいから残業する」というような間違った働き方をする人も少なくありません。

会社にとって残業をされるということは、時間外割増賃金という人件費の増加だけではなく、だらだらと仕事をすることによる集中力や業務効率の低下、生産性の悪化などの弊害をもたらします。これらを防ぐ効果が期待できます。

2.残業代の計算や支払いなどが不要になる

残業代の計算・支払いを行わなくていい点は、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。

高度プロフェッショナル制度の一番の特徴は、労働基準法に定める労働時間が適用されなくなることです。高プロ制度に類似した裁量労働制の場合、法定休日や深夜労働を行った場合には割増賃金の計算が必要でした。この違いは大きいでしょう。

個人にとってのメリット

次に、労働者側から見た高度プロフェッショナル制度のメリットを紹介します。

1.労働時間や休日日数の自由度が高まる
2.報酬への納得感が高まる

1.労働時間や休日日数の自由度が高まる

高度プロフェッショナル制度は成果に対する報酬契約のため、成果を上げられれば月曜から金曜まで毎日出社する必要も、朝9時から夜6時までというような定時で勤務する必要もありません。1時間で成果を上げられたのであれば、その時点で仕事を終了させて帰宅することもできるのです。

本当の意味での自由な働き方が実現できる制度と言えるでしょう。

2.報酬への納得感が高まる

高度プロフェッショナル制度は、これまでのような労働時間ではなく、成果に対して報酬が支払われる制度です。これまで労働時間で拘束されてきた雇用契約を、業務委託契約に近い形で受けることができるようになります。

自分の成し遂げた成果に対して報酬が支払われるため、成果をあげる能力がある労働者の仕事に対するやりがい・報酬に対する納得感が高まります。

高度プロフェッショナル制度のデメリット

メリットが多く存在する反面、法案成立までに多くの批判を受けたように高度プロフェッショナル制度には懸念されるデメリットも多く存在します。

企業にとってのデメリット

残業代の支払いが免れるとういう点ばかりがクローズアップされているため、企業側にはメリットしかないように見えますが、デメリットも存在します。

1.導入のハードルが高い
2.制度の対象者と非対象者の間に不公平感が生まれる可能性がある
3.長時間労働の歯止めが効かない

1.導入のハードルが高い

高度プロフェッショナル制度を導入するために必要な段取りがとても多く、手続きが面倒だと言えます。

まず、第一ステップの労使委員会の設置が必要です。さらに労使委員会で定めるべき項目がとても多く、議論する労使委員会のメンバーは制度を理解しておく必要があります。設置・決議の時点でハードルが高いと感じる企業は多いでしょう。

2.制度の対象者と非対象者の間に不公平感が生まれる可能性がある

高度プロフェッショナル制度の対象業務は限定されているため、社内に対象労働者・非対象労働者が混在することになります。

対象労働者は成果型の勤務形態のため、仕事が終わり次第帰宅する者も現れます。短時間労働・高収入が実現できる高度プロフェッショナル制度の対象者は、労働時間に拘束されて勤務する非対象労働者にとって嫉妬・僻みの対象になる可能性もあり、不満が生まれ、社内の環境が悪くなる恐れがあります。

3.長時間労働の歯止めが効かない

対象労働者には労働時間の規定が適用されなくなるため、長時間労働も個人の裁量に委ねることになってしまいます。

会社側が適度な業務量を与えたとしても、労働者がより完璧なものを、より良いものを…と成果にこだわり突き詰めて業務を行ってしまった場合、意図せず長時間労働になってしまう恐れがあります。

残業代を支払わなくてもいいとはいえ、労働者の労働時間は適度に管理しておかなければ、会社の知らないところで長時間労働をして、最悪の場合、過労死につながるというリスクを秘めています。

個人にとってのデメリット

次に、この制度が批判を受ける原因となっている対象労働者に対するデメリットです。

1.長時間労働することになっても残業代が支払われない
2.成果が正しく評価されず、報酬に結びつかないことも

1.長時間労働することになっても残業代が支払われない

高度プロフェッショナル制度では、過度な業務を与えられたせいで時間が余分にかかったとしても、残業代は請求できません。

長時間労働も自己責任なのです。「職務の範囲が明確」という条件があるとはいえ、求められる成果が高すぎる場合には長時間労働、サービス残業が強いられる可能性もあります。

2.成果が正しく評価されず、報酬に結びつかないことも

高度プロフェッショナル制度では成果に応じて報酬が支払われますが、成果が出るまで時間がかかったり、すぐには評価できなかったりする業務もあるでしょう。そういった場合、労力に見合う報酬を設定してもらえない可能性があります。

使用者側がその業務に携わっていない場合、業務に係る労力や重要度、正しい評価方法を把握していないことも多く、実態と不釣り合いな成果報酬を提示されかねません。 正しい評価と報酬を得るために、事前の綿密な調整が必須です。

高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の違い

高度プロフェッショナル制度と同じように、労働時間に縛られない働き方はすでに労働基準法に規定されています。

1つは、管理監督者と呼ばれる責任ある立場の労働者に適用されており、その職務内容から、労働基準法の労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。

2つ目は、裁量労働制と呼ばれる制度です。裁量労働制も、限定された業務に携わる労働者のみに適用できる制度で、高度プロフェッショナル制度に似た制度になっています。

裁量労働制とは?

裁量労働制は、一定範囲の専門的な業務に従事する労働者について、実労働時間にかかわらず、労使協定や労使委員会の決議で定めた労働時間分労働したものとみなす制度です。 「企画業務型裁量労働制」と「専門業務型裁量労働制」があり、それぞれ、対象業務が限定されています。

裁量労働制についての詳細は以下の記事もご参照ください。 【関連】[裁量労働制とは?専門業務型・企画業務型それぞれの対象や問題点について解説] (https://bizhint.jp/keyword/39655)

裁量労働制と高度プロフェッショナル制度の共通点

一定の範囲の専門的な業務に従事する労働者に対して、業務遂行の手段や時間配分の裁量を委ねる点では、裁量労働制と高度プロフェッショナル制度はとてもよく似ています。

また、制度導入についても、高度プロフェッショナル制度では、裁量労働制と同様に労使委員会を設置し、その委員会の5分の4以上の多数による議決を行い、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

このあたりの制度導入の流れ、労使委員会の構成等は、企画業務型裁量労働制と同様です。

職種や年収など、制度の対象となる条件の違い

裁量労働制と高度プロフェッショナル制度は、適用業種、年収条件の有無など、適応条件に違いがあります。

たとえば、専門業務型裁量労働制の場合には、19業種と幅広い業種が対象とされており、導入方法も労使協定の締結・届出と比較的取り入れやすい制度です。

一方、高度プロフェッショナル制度の場合には、現状、限定5業務、年収要件も1,075万円以上とかなり高額です。制度として取り入れることのできる対象労働者はかなり狭められています。

残業代や休日出勤・深夜労働の扱い

時間外労働・休日出勤・深夜労働の扱いも異なります。

裁量労働制の場合、みなし労働時間が適用されますが、通常かかるとみなされる労働時間が法定労働時間の8時間を超えて設定される場合には、残業代として時間外労働の割増賃金が必要となります。また、休日労働・深夜労働についても、別途割増賃金の支払いが必要です。

一方、高度プロフェッショナル制度では、労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金に関する規定が全て適用されません。

高度プロフェッショナル制度の導入手続き・満たすべき条件

実際に高度プロフェッショナル制度を導入する場合、様々な要件を満たす必要があります。以降で必要な手続きや条件を詳しく解説します。

高度プロフェッショナル制度の導入に必要な手続き

高度プロフェッショナル制度を導入するためには、賃金・労働時間等の労働条件に関する事項を調査・審議します。そして事業主に意見を述べることができる「労使委員会」で制度の内容について委員の5分の4以上の多数決による決議を行い、その決議を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

高度プロフェッショナル制度を適用・運用するための条件

高度プロフェッショナル制度を適用・運用するためには労使委員会で以下の事柄を決議します。

対象業務

高度の専門的知識等を必要とし、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるもの

対象労働者

  • 書面等による合意に基づき職務の範囲が明確に定められている労働者
  • 一定の年収(現時点では想定1,075万円以上)を有する労働者

健康管理時間を把握する措置

労働者が事業場内に所在した時間と事業場外で業務に従事した場合の労働時間との合計の時間(健康管理時間)を把握するための措置

対象労働者に付与する休日

決議し、就業規則等で次の休日を規定する。

  • 1年間を通じ、104日以上の休日
  • 4週間を通じ4日以上の休日

対象労働者に講じる措置

決議し、就業規則等で次のいずれかの措置を規定する。

  • インターバル措置と深夜業の回数制限
  • 1カ月又は3カ月の健康管理時間の上限措置
  • 2週間連続の休日を年1回以上(または1週間連続の休日を年2回)
  • 臨時の健康診断

健康及び福祉を確保するための措置

有給休暇の付与、健康診断の実施などの厚生労働省が定める事項の中から労働者の健康管理時間の状況に応じた健康及び福祉を確保するための措置

同意の撤回

対象労働者の労いの撤回手続き

苦情処理

対象労働者からの苦情の処理に関する措置

不同意労働者

同意しなかった労働者に不利益な取り扱いをしてはいけない旨の決議

【参考】厚生労働省:「高度プロフェッショナル制度」の創設について

まとめ

  • 高度プロフェッショナル制度は、2019年(平成31年)4月1日に導入される予定の制度です。
  • 労働時間=賃金のこれまでの働き方と大きく異なる制度で、成果=賃金となる自由な働き方を実現できます。
  • 労働者の裁量で業務を進めることができるメリットと、残業代が支払われないというデメリットが混在するため、現在も賛否両論が繰り広げられています。

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