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2017年9月12日(火)更新

限定正社員

限定正社員とは、勤務地・労働時間・職務内容に制約があるけれど正社員と待遇が同じ社員のことです。多様な人材・働き方の可能性が広がりつつも正社員と同様の福利厚生を受けられるというメリットを持つ限定正社員ですが、限定正社員に関する労働問題の可能性も指摘されています。本稿では限定正社員のメリット・デメリットと導入事例や諸問題について紹介します。

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限定正社員制度

限定正社員は、その名の通り「正社員」の一種です。ただし、通常の正社員とは異なり、雇用の内容を限定して雇用契約する点に特徴があります。限定される部分には、労働時間や勤務地、職種・職務などが挙げられます。

労働時間に関する限定正社員は、通常の正社員と比較して短い所定労働時間で働く者のことで、短時間正社員とも呼ばれます。育児・介護と両立して働く者や資格取得のための時間を要する者、持病などを抱えている者で、フルタイム勤務や残業が難しい状況にある労働者に適しています。

一方、勤務地に関する限定正社員は、居住地から通勤をすることが可能な部署に限定して働く者のことで、勤務地限定正社員とも呼ばれます。家庭の事情などで単身赴任や転勤が難しい労働者に適しています。

また、職種・職務に関する限定正社員は、職種の中途変更なく働く者のことで、職種・職務限定正社員とも呼ばれます。仕事の内容を区分けすることで、労働者が業務に集中し経験を積むことが可能となり、その道のプロフェッショナル育成へとつながります。

正社員や契約社員との違い

限定正社員は、労働時間・勤務地、職種などの限定される部分を除き、正社員と同様の待遇を受けることができる部分が、嘱託社員や契約社員などの非正社員と異なります。

「嘱託社員」/BizHint HR

正社員と同様の待遇とは、たとえば「雇用期間の定めを設けない」などの内容です。契約社員やパート・アルバイトの場合、雇用契約の期間を1年とし、毎年契約の更新をする方法が多く使われていますが、限定正社員の場合は通常の正社員と同じく無期で契約することになります。また、労働時間数によっては正社員と同じく雇用保険や社会保険へ加入させる必要があり、福利厚生なども利用する権利を持ちます。

つまり、正社員や非正社員と限定正社員の違いは、次のように表されます。

  雇用期間の定め 職種 労働時間 勤務地 その他
正社員 なし 限定なし 制限なし(フルタイム・残業あり) 転勤あり 最も責任ある仕事を任され、定年までの雇用が前提とされる
限定正社員 なし 限定あり(個々の契約による) 制限あり(個々の契約による) 転勤なし 限定部分を除き、正社員と同待遇
非正社員 あり 限定あり(個々の契約による) 制限あり(個々の契約による) 転勤なし 臨時の理由で採用され、給与形態も異なる

限定正社員制度のメリット

限定正社員制度は、長期的な仕事を求めているものの、正社員のようにフルタイム勤務や残業、転勤として働くことができない労働者や配置転換を望まない労働者にとって、理想ともいえる働き方です。

そして、この制度を活用することで、企業側にとってもさまざまな可能性が生まれます。つまり、限定正社員制度は、労使ともにメリットがある制度ともいえるのです。

優秀な人材の確保

これまで日本で多く活用された雇用形態の場合、人事担当者が人柄や経験値をもとに応募者を厳選し、採用後は会社の求める業務や勤務地に労働者が応じる、という形を取っていました。一方、限定正社員制度では労働時間や業務内容、勤務地が限定されることで、知識や経験が豊富で、その分野で力を発揮していきたいと考える専門スキルの高い労働者の心をつかむことができます。

専門分野に明るい労働者が集まりやすい環境になることで雇用のミスマッチを避けることが可能となり、企業全体の能力が向上し、生産性の上昇へとつながるのです。

雇用のミスマッチの意味とは?現状を踏まえた原因と対策・解消法 / BizHint HR

多様な人材を雇うことができる

働く意欲や能力がありながら、家庭の事情などによる時間の制約により仕事をすることを諦めていた者にとって、勤務地や労働時間が限定されている限定正社員制度は、非常にありがたい存在です。採用活動にあたり、応募者の分母が多いに越したことはありません。限定正社員制度を導入することで多種多様な人材が集まり、企業側もより多くの応募者の中から適した人材を雇うことができます。

非正社員から正社員へと移行する際の受け皿

限定正社員制度が確立された理由の一つに、アベノミクスにおける「三本の矢」政策の一環として勧められた、2013年の改正労働契約法が挙げられます。この改正により、期間の定めがある非正社員と通算5年を超えて契約した場合、労働者本人が望めば無期での契約に変更することがルールづけられました。

希望する非正社員をすべて無期契約に転換させた場合、人件費を初めとしたコストが増大し、企業に重くのしかかる存在となります。このリスクを抑えるため、無期契約にかわる新たな雇用形態として、限定正社員の制度が確立されました。

すでに勤務地や時間、業務内容が限定された状態で働いていることの多い非正社員を、同様の条件で長期的に雇うことが可能となる限定正社員制度は、非正社員から正社員へ移行させる際の新たな「受け皿」的な存在であるといえるでしょう。

限定正社員制度のデメリット

限定正社員は、正社員と非正社員の良い部分をそれぞれ採用した制度であり、前述したようにさまざまなメリットがあります。しかし、実際に導入するにあたり、注意しなければならない点もあることを覚えておく必要があります。

次の項目では、限定正社員制度で懸念される点について説明していきましょう。

解雇が容易ではなくなる

有期雇用者や派遣労働者に対する突然の契約終了、いわゆる「雇止め」や「派遣切り」は、社会問題にもなりました。これは、企業側が事業縮小やコスト削減などの理由から、通常の正社員と比べて解雇しやすい立場である非正規労働者との契約を一方的に終了させたことで問題視されることとなりました。派遣切りにあい、所属している人材派遣会社に泣きついたところでどうすることもできず、泣き寝入りした社員も数多くいました。

人材紹介会社とは?メリット・デメリットと利用時のポイント / BizHint HR

限定正社員の場合、限定された内容を除き、通常の正社員と同様の待遇が求められます。したがって、非正社員に比べて解雇に制限が生じ、かんたんに辞めさせることはできなくなります。労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。つまり、限定正社員はよほどの理由がない限り簡単に解雇をすることはできず、配置転換や出向、労働組合との交渉、やむを得ず解雇となった場合の再就職への手助けなど、正社員の場合と同じような対策を取ることが求められるのです。

出向の意味とは?契約書の重要性や派遣との違いは? / BizHint HR

雇用管理が煩雑になる

限定正社員制度を新たに導入する場合、さまざまな観点から自社に沿った内容で制度づくりを行っていく必要があります。まず、何を限定するのかを想定し、給料体系も限定の内容に沿ったものに作り替えなければなりません。

正社員とパート・アルバイトなど、複数の雇用形態の労働者が混在して働く会社の場合、人事・労務担当者は、雇用形態ごとに異なる管理を続けていく必要があります。したがって、労働者ごとに複数の限定内容を定める限定正社員が加わった場合、管理担当者の作業が煩雑になり、負担の増加へとつながります。

正社員が不公平感を持つ可能性がある

複数の雇用形態で働く労働者が混在する会社の場合、異なる雇用形態同士で比較し、不満を持つパターンが多く見られるものです。たとえば、正社員の残業が多い職場の場合、時間が限定された短時間正社員を羨む気持ちが芽生えやすくなります。また、全国・海外展開された多くの支店を抱える会社の場合、転勤族の正社員が勤務地限定正社員に対して不公平感を持つ可能性が生じます。

このような事態を避けるためには、限定正社員の給与体系や待遇を限定内容に適したものに設定し、通常の正社員との均衡を取らなければなりません。これは、正社員と限定正社員それぞれにかかる負担の差をどのように反映させるかが問題となります。

たとえば、正社員と同等の給与額を支給する場合、正社員が不満を抱えてしまいます。一方、正社員と大幅に差のある額を支給する場合、限定正社員が不満を感じる結果に陥ってしまいます。毎月の給料に反映させる方法や昇給・昇格の待遇に差をつける方法など、正社員・限定正社員ともに腑に落ちる、バランスの取れた内容に設定することが社員同士の不均衡を解消する重要な策となるでしょう。

導入事例

実際に限定正社員を導入し、一定の結果を出し続けている企業もいくつか存在します。

たとえば、アパレルブランドで有名な株式会社ユニクロでは、2007年4月より「地域限定正社員制度」を導入しました。導入前は各地域のショップで販売に携わる労働者の7割がパート・アルバイトでしたが、そのうちフルタイムで働くパート・アルバイトが正社員待遇を希望していたことから、優秀な人材を確保するための一環として導入に踏み切りました。具体的には「転勤なし」の条件つきの正社員待遇で募集することで、転勤を望まない者の注目を集め、地域に根差したショップの確立へとつながりました。

また、2014年には「地域正社員制度」へ変革させ、中途の地域正社員の採用も開始するなど、地域ごとのハイレベルな店舗運営を目指して邁進を続けています。

【参考】@type キャリアデザインタイムズ:ユニクロの【地域正社員制度】から紐解く、「働き方の多様性」を実現するために必要な3つの要素

また、外食産業を展開するサトレストランシステムズ株式会社では、2014年に新たな人事制度を導入し、約40名のパート・アルバイト社員を勤務地限定正社員として、約290名のパート・アルバイト社員を短時間正社員として登用しました。うち短時間正社員の場合、所定労働時間は1日6時間、1週30時間とし、通常の正社員と同様の福利厚生、賞与などの待遇を受けることが可能となり、昇格制度も導入されたことから、特に時間に制約のある女性層の勤務意欲をかきたて、満足度を高めることがねらいとされています。

【参考】JCAST会社ウォッチ:人手不足に「パート正社員化」は効くか 「和食さと」、新制度を導入
【参考】サトレストランシステムズ株式会社:新人事制度導入に関するお知らせ

限定正社員に関する解雇

前述の項目で、限定正社員の解雇は容易ではないとの説明を行いましたが、それでも世間では「限定正社員は解雇されやすい」と言われているのが事実です。というのは、勤務地や労働時間、職種・職務が限定された社員の場合、限定内容を超えた形態で働くことが難しくなるため、会社の存続に関するやむを得ない状況に陥った場合、通常の正社員と比較して解雇の対象になりやすい傾向があります。

もちろん、正当な理由なく解雇を進めることはできないため、限定正社員に対しても解雇を回避するための対策を取る必要がありますが、解雇回避のための配置転換を労働者側が受け入れることができない場合などは、やむを得ず退職という結果になりかねません。また、会社によっては、通常の正社員と限定正社員で解雇事由を区分している場合があります。このようなケースでは、限定正社員が通常の正社員と比べ、解雇対象とされる可能性が増加する場合があります。

なお、限定正社員が解雇されるにあたっての理由が、労働契約法における「社会通念上相当」であるかどうかについては、会社の状況や解雇回避に関する努力、社内の制度内容、過去の判例などをもとに総合的に判断されます。限定正社員制度を導入する際には、入念に検討の上、解雇や事業縮小時の取り決めを的確に行うことが重要となります。

まとめ

  • 限定正社員とは、労働時間や勤務地、職種・職務の部分で限定された正社員で、限定部分外の待遇は通常の正社員と同様である。
  • 限定正社員制度は、優秀・多彩な人材確保や人件費削減のメリットがある一方で、解雇の困難性や雇用管理の煩雑さ、正社員との待遇バランスの難しさなどのデメリットもある。
  • 限定正社員の解雇は容易ではないものの、通常の正社員より解雇されやすい点については依然として懸念されている。

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