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2018年11月21日(水)更新

マーケティング戦略

資本の規模に限らず、自社の開発した商品(製品)・サービスを市場に普及させるためには、マーケティング戦略の実施が欠かせません。近年では顧客の価値観が多様化したことにより、ビジネス課題も高度化・複雑化しており、同時にマーケティングに求められる知識や技術の難易度も上がっています。今回はマーケティング戦略に必要な基礎知識やフレームワーク、代表的なマーケティング戦略からおすすめの書籍までご紹介いたします。

マーケティング戦略 に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

マーケティング戦略とは

多種多様な価値観や志向が尊重される現代において、顧客のニーズや市場動向、購買心理を把握した上でビジネス展開することは、もはや常識となりつつあります。

本章では、マーケティング戦略の定義や重要性、経済戦略の関連性を解説いたします。

マーケティング戦略の定義

マーケティング戦略とは、市場や顧客を把握・分析した上で、自社が提供する商品(製品)・サービスをどのようにアプローチするかを策定・実行するための戦略を指します。具体的なマーケティング戦略は多くの識者によって数多く提唱されており、資本規模や取り扱う商品(製品)・サービス、業界に応じて実施する内容が異なります。

また、マーケティング戦略の策定には、自社の強みや市場における競争優位性を確保するための分析や調査が欠かせません。そのため、マーケティング戦略に対応したフレームワークや、根拠となる調査データを取得するマーケティングリサーチなどの調査も重視されます。近年では、顧客の価値観や消費に対する意識の変化に加え、インターネットやSNSの発展により、マーケティング活動自体が高度化・複雑化している傾向がみられ、高度なマーケティングリサーチに基づくマーケティング戦略の立案が目立つようになってきています。

マーケティング戦略の重要性

マーケティング戦略の重要性が高まっている背景には「企業と顧客との接点の増加」と「精度の高いセグメンテーションとターゲティングの実現」が考えられます。

従来、商品(製品)・サービスを顧客に認知し、購買行動に強く影響をもたらしたのはテレビや新聞、雑誌といった媒体に限られていました。しかし、インターネットやSNSの発展に加え、スマートフォンなどの小型通信デバイスの登場により、企業と顧客の接する機会が増えることとなりました。その結果、市場細分化が進行し、広告やコンテンツのあり方も大幅に変化したため、セグメントを特定した上でマーケティング戦略を実施しなければ、企業や事業の成長につながらないという認識が広がったと考えられます。

また、顧客の価値観や消費に対する意識が変化したこともあり、マーケティング戦略が解決すべきビジネス課題が高度化・複雑化している傾向がみられます。そのため、マーケティング分析に活用されるフレームワークやツールも同時に高度化・複雑化していったこともあり、マーケティング戦略の立案には精度の高いセグメンテーション(市場細分化)やターゲティング(ターゲット顧客の選定)が可能となりました。

これらの背景により、マーケティング戦略自体が企業の業績や成長に大きく関与することとなり、今後もマーケティング戦略の重要性は高まっていくと考えられます。

経営戦略との違い

マーケティング戦略の成功は、企業の売上・利益の確保に強く影響します。そのため、マーケティング戦略は、経営戦略と深く関わる重要な戦略のひとつとして認識されています。

一方で、マーケティング戦略と経営戦略は重複する部分も多く、しばしば同一視されることも珍しくありません。しかし、経営戦略は会社が安定的・持続的成長を遂げるために経営資源(ヒト・モノ・カネ)を最適に配分するための戦略であり、マーケティング戦略は会社が提供する商品(製品)・サービスの届け先である顧客や市場の創出に特化した戦略と定義することができます。

また、マーケティングリサーチによって得られた情報の活用について、経営戦略では新規参入の機会や事業撤退の経営判断に役立てます。一方マーケティング戦略では、具体的な顧客や市場へのアプローチの策定に活用されます。どちらも会社を安定的かつ継続的に存続させる目的を担っている一方で、土台となるマーケティングリサーチで得られた調査データの活用方法が異なります。

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マーケティング戦略の基本的な考え方

マーケティング戦略では、以下の4つの基本的な考え方を押さえておくことが大切です。

誰に:セグメンテーションとターゲティング

マーケティング戦略では、「誰に」商品(製品)・サービスを訴求するべきかを明確にすることが、その後のマーケティング戦略の成功を左右します。

セグメンテーションは、潜在する市場ニーズや価値観を、単体またはグループに細分化(市場細分化)する作業を指します。このプロセスにより、自社が提供する商品(製品)・サービスが想定する顧客と整合性が取れているかを判断できます。また、顧客の属性をカテゴリー化することは、具体的なマーケティング戦略の施策にも影響を与えます。

一方、ターゲティングとは、セグメント化された市場において、自社の商品(製品)・サービスの強みを活かせる標的市場を選定する作業を指します。競合企業の存在や参入障壁、市場の規模や動向などさまざまな視点から勝負すべき市場を選択します。これらのプロセスを踏むことで、その後のマーケティング戦略の具体案が生まれやすくなり、「誰に」届けたいのかを明確にすることが可能です。

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価値:ベネフィット

マーケティング戦略では、提供する商品(製品)・サービスが顧客にどのような価値を与えるかを考えることが重要です。企業が想定する顧客の価値と、その商品(製品)・サービスを触れたときに顧客が感じる価値にずれが生じていた場合、マーケティング戦略は失敗に終わってしまいます。

そのため、自社の商品(製品)・サービスの価値がどのように顧客に影響するかまで細かく分析し、明確にしなければいけません。

どのように:差別化の実現

想定される顧客や市場と、自社の商品(製品)・サービスが提供できる価値を特定した次のプロセスとして、競合他社の商品(製品)・サービスとの差別化をいかに実現するかを考えなければいけません。

差別化の創出はマーケティング戦略の核となる要素であり、顧客にわかりやすく伝える重要な要素にもなります。商品(製品)・サービスの利便性や販売価格、顧客との接点、機能向上はもちろん、原材料の調達活動や生産・販売・流通といった各工程を競合他社とは異なる体制にすることでも差別化を創出することができます。自社の強みを最大限に発揮し、どのように顧客に伝わるようにするかを意識して、差別化ポイントを決定していくことが大切です。

具体的に:4P分析の実施

4P分析とは、マーケティング戦略の策定に用いられるフレームワークのひとつで、製品・価格・流通・プロモーションの4つのマーケティング要素に分解し、最適なマーケティング戦略を練る分析方法です。

4P分析では、マーケティング戦略の基本となる考え方の「誰に」、「どんな価値を」、「どのように」というポイントを具体化するプロセスでもあります。「製品」では商品(製品)・サービス自体の内容や品質、デザインなどに着目し、自社のそれの強みと弱みを分析・把握することができます。同様に、「価格」では商品(製品)・サービスの販売価格、支払方法に、「流通」では流通経路や流通範囲、展開範囲、販売形態に、「プロモーション」では販売促進施策や広報宣伝に着目し、分析することでマーケティング戦略を具体化していきます。

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マーケティング戦略に役立つフレームワーク

マーケティング戦略を策定するためのフレームワークは数多く存在し、目的や業界によって活用するフレームワークの種類も数も異なります。

本章では、資本規模に関係なく、どの企業にも汎用性が高いフレームワークに焦点をあててご紹介いたします。

SWOT分析

SWOT分析とは、企業戦略やマーケティング戦略を策定するにあたり、自社を取り巻く環境を、内部環境(強み、弱み)と外部環境(機会、脅威)に大別し、自社にとっての競争優位性の確立やリスクマネジメントを整理するフレームワークです。

内部環境のひとつである「強み」は企業が掲げる目標を達成しうる組織の特性を指します。一方で、「弱み」は目標達成を阻害しうる組織の特質を指します。外部環境である「機会」は、組織目標の達成に貢献する外部の環境要因を指し、「脅威」は組織目法の達成を阻害する外部要因を指します。具体的な要因としては、政府主導の規制緩和・強化といった政治動向や、事業を展開する市場の変化などが該当します。

これら、4つの環境要因に自社が展開する事業や商品(製品)・サービスを当てはめることで、マーケティング戦略の立案(ブレストミーティングや仮説の検証・構築など)だけでなく、市場における競争優位性の確保、事業からの撤退など、経営戦略の判断材料としても活用できます。

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PEST分析

PEST分析とは、企業や業界を取り巻くマクロ環境を以下の4つのトレンドに分けて、自社の事業や商品(製品)・サービスの置かれた状況や影響度を分析するフレームワークです。

  • 政治
  • 技術
  • 社会
  • 経済

それぞれのトレンドの関連性を見極め、自社を取り巻くマクロ環境の全体構造を把握できます。その結果、積極的に複数の仮説を打ち立て、さまざまな状況のシミュレーションが可能となり、中長期的なマーケティング戦略やリスクマネジメントの策定につながります。

また、標的市場への新規参入のためのマーケティング戦略の立案や市場機会の発見にもつながるフレームワークとして認知されています。標的市場のマクロトレンドを把握し、その時流を逃さずにビジネス展開ができた場合、その市場において、圧倒的なシェアの拡大を狙うことが可能です。

破壊的イノベーションによる市場シェアの損失が珍しくなくなっている現代において、PEST分析によるマクロ環境の把握は事業撤退の経営判断を迅速に行えます。今後、あらゆる分野で技術革新の影響が出始め、それに伴った規制改革や経済動向の変化も活発となるため、PEST分析はあらゆるマーケティング戦略において、重要なフレームワークとなることが予想されます。

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イノベーター理論

イノベーター理論とは、企業が新商品(製品)・サービスを市場に投入する際に、消費者を以下の5つに分け、商品(製品)・サービスが市場に浸透するまで流れをまとめた普及理論学です。

  • イノベーター(革新者)
  • アーリーアダプター(初期採用者)
  • アーリーマジョリティー(前期追随者)
  • レイトマジョリティー(後期追随者)
  • ラガード(採用遅滞者)

イノベーター理論では、「商品(製品)・サービスの爆発的普及」の鍵を握る消費者をアーリーアダプター(初期採用者)と結論付けており、イノベーター(革新者)とアーリーアダプター(初期採用者)の市場に占める割合の合算値を「普及率16%の論理」と定義し、市場シェア拡大の目標値として活用されています。

一方で、アーリーアダプター(初期採用者)とアーリーマジョリティー(前期追随者)の間には、容易に超えられない「大きな溝」があると提唱しているキャズム理論が存在します。この「大きな溝」を超えるためには、アーリーマジョリティー(前期追随者)に特化したマーケティング戦略を実施する必要があると提唱されており、商品(製品)・サービスを市場に浸透させるための着目点を、消費者と市場に占める消費者の割合に設定することで、具体的かつ精度の高いマーケティング戦略を打ち出すことが可能となります。

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ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、5つの競争要因を分析することで、自社が所属する業界や市場の収益性や魅力の度合いを測るためのフレームワークです。

  • 新規参入企業の脅威
  • 売り手の交渉力
  • 買い手の交渉力
  • 代替品の脅威
  • 既存企業同士の競争

市場における自社の立ち位置を知る有効なフレームワークとして、長年活用されています。

一方で、インターネットやSNSの発展によりマーケティング分析自体が高度化しており、ファイブフォース分析は今の時代に合っていないという指摘も存在しますが、プロダクトライフサイクルの短期化や異業種からの新規参入が相次ぐ現代において、自社が提供する商品(製品)・サービスの競争優位性の度合いを測れ、事業の維持・撤退の判断材料を導きやすいファイブフォース分析は、現代のマーケティング戦略においても重要なフレームワークとして認知されていることも事実です。

ファイブフォース分析では、自社の収益性向上、新規参入・事業撤退の経営判断、効率的な経営資源の投入配分の算出に必要なデータを取得できます。いずれもマーケティング戦略において深く関わる項目があるため、今でも活用している日本企業が数多く存在します。

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MECEの活用

MECEとは、経営戦略やマーケティング戦略で活用されるロジカルシンキングのひとつであり、主張と根拠をピラミッドのように積み重ね、結論を導き出す思考方法です。MECEは、企業が解決すべき課題や問題点をマーケティングの分野でどのように解決していくかを導き出すことに長けている思考方法でもあります。

MECE分析には全体から要素を分解し、体系的に物事を考えるトップダウンアプローチ分析と、一つひとつの項目をグループ化していくことで問題や課題を把握するボトムアップアプローチ分析の2種類が存在します。いずれも要素分解による全体像の把握、時系列・ステップ分けを前提とした要素の分解、「質と量」という対象概念を用いた課題分析、因数分解(単価や購入頻度など業績を構成する要素を複数に分解)による現状分析・解決案を導き出せます。

また、MECEは3C分析や4P分析、AIDMAモデル、SWOT分析など他のフレームワークと併用することで、精度の高い結論を導き出せます。そのため、MECEの考え方はマーケティング戦略の立案において、欠かせない思考方法として認識されています。

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マーケティング戦略策定に役立つ情報収集の手法

マーケティング戦略の策定には、その根拠となる競争環境や市場動向を数値化したデータが必要です。

本章ではマーケティング戦略の策定に役立つ、代表的な情報収集の手法をご紹介いたします。

アンケート調査

アンケート調査とは、マーケティングリサーチで用いられる定量調査(顧客の人数、性別、地域などの属性を数値化し、データとして取得する調査)のひとつで、企業側が構成したアンケート項目に調査対象者(回答者)が回答する形で、顧客ニーズを抽出する調査手法です。

紙面、インターネット、電話、店舗、会場など幅広い場所で実施が可能なことからマーケティングリサーチで最も活用されている調査手法としても知られています。企業が知りたいリサーチ課題や疑問に対して、直接回答が得られ、統計学的に分析を行ないます。調査対象者の属性毎の商品(製品)・サービスの顧客満足度や要望を抽出することにも長けており、マーケティング戦略における仮説検証や実態把握などに活用できます。

また、統計学的に分析するためのデータとなるため、統計学上の誤差を許容できる範囲のサンプル数が必要となります。近年では、データの集計・分析のかかる費用を抑えながら、さまざまなインターネット媒体に出稿できるインターネット(Web)によるアンケート調査が主流となっています。

ヒアリング調査

ヒアリング調査とは、マーケティングリサーチで用いられる定性調査(定量調査では得られない調査対象者の考えや意見を抽出する調査)のひとつで、聞き取り、面接・対談型でデータを抽出する調査手法です。グループインタビュー調査やパネル調査、訪問面接調査などもヒアリング調査に含まれます。

仮説構築や原因究明などに優れており、商品開発(製品開発)や既存商品の改善などに活用され、ターゲット顧客のライフスタイルや消費動向、消費意識などの数値化しにくい顧客データを収集することにも長けています。新規顧客の獲得や潜在ニーズの発掘、自社製品に対するイメージ、さらにはヒアリングの過程で明らかになった、企業側の新たな疑問や問題点をその場で抽出できるメリットを得られます。

ヒアリング調査で得られた情報を分析することで、具体的な顧客層を絞り込み、商品(製品)・サービスの顧客価値を最大限に打ち出したマーケティング戦略の実施が可能です。ブランドの育成や固定顧客の獲得といった効果を得られるほか、市場シェアの拡大を狙ったイメージ戦略にも活用することができます。

店頭調査

店頭調査とは、店舗に来店する訪問者の反応や、店舗で行なわれるプロモーション活動の状況、売り場のレイアウトを、訪問者を装った調査員が調査する調査手法です。自社の店舗だけでなく、競合他社の店内状況を調査することにも使われ、視察と比べて普段の営業状況や顧客の流れをつかめるため、現場の状況に応じたマーケティング戦略の策定に活用できます。また、外観や店内状況の維持活動やスタッフの顧客対応なども調査できるため、効率的な経営資源(ヒト、モノ、カネ)の配分や人材育成戦略にも応用することが可能です。

実店舗の展開を主力事業とする飲食・アパレル業界において、店舗の立地条件や導線、販売促進施策、販路拡大における多店舗化などを主としたマーケティング戦略の実施可否の判断材料としての活用も期待できます。

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代表的なマーケティング戦略をご紹介

マーケティング戦略は、取り組むビジネス課題や取り扱う商品(製品)・サービス、企業が経済活動を行う市場や業界によっても、その内容が異なります。

本章では、マーケティング戦略の中でも認知度の高いマーケティング戦略をご紹介いたします。

高価格と低コストの実現が見込める『ブルーオーシャン戦略』

ブルーオーシャン戦略とは「市場競争」という概念に着目し、新規・既存の商品(製品)・サービスに高い付加価値を設けると同時に低コストを実現させ、競合他社のいない市場(ブルーオーシャン)を創出する戦略です。買い手に対して、高価格の商品(製品)・サービスを提供できる一方で、企業側は低コストで商品(製品)・サービスを投入できる魅力的な戦略として認識されています。

既存の商品(製品)・サービスを、代替可能な業界や補完サービスとして成り立つ分野に投入することで、新たな顧客の獲得や市場における価格決定権を獲得でき、競争優位性の確立などのメリットが得られます。また、「規模の経済」を活かしやすく、長期的なブランド育成にも長けた戦略でもあり、主力事業のマーケティング戦略に応用・活用されやすい戦略です。一方で、圧倒的な差別化が見当たらないビジネスモデルや、低コストでの生産・販売・流通チャネルを確立できていない場合、競合他社に摸倣されやすいというデメリットが存在します。

マーケティング戦略としてブルーオーシャン戦略を採用する際は、高付加価値・低コストを実現するためのバリューイノベーションの実現や、新たな価値・差別化ポイントを導き出すためのフレームワーク(アクション・マトリックスや戦略キャンパス)を活用することでブルーオーシャン戦略の成功率を高められます。

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多様化する顧客の価値観に対応する『差別化戦略』

差別化戦略とは、ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱したマーケティング戦略のひとつで、顧客価値に重点を置き、競合が簡単に摸倣できない付加価値をつける戦略です。

付加価値をつける対象は商品(製品)・サービスだけにとどまらず、ブランドや商品・企業イメージ、自社の独自技術、販売チャネルなど顧客に関連するさまざまな分野にわたります。そのため、差別化戦略は業界や標的市場において製品価値を高め、競争優位性を確保できるマーケティング戦略として認識されています。

また、資本規模に限らず中小企業を含む多くの企業が取り組めるマーケティング戦略でもあるため、顧客の価値や意識が多様化する現代において、効果が出やすいと期待されています。一方で、高い顧客価値の付与はコストがかかり、一部の固定客の囲い込みに終始してしまいがちです。その結果、爆発的な市場シェアの拡大が見込みにくいマーケティング戦略としても知られています。

差別化戦略を実施する上では、キャズム理論で提唱されている「大きな溝(アーリーアダプターとアーリーマジョリティーとの間に存在する容易に越えられない壁)」を攻略することに特化した、別のマーケティング戦略を打ち出す必要があります。

コスト削減により競争優位性を目指す『コストリーダーシップ戦略』

コストリーダーシップ戦略とは、差別化戦略と並ぶ、マイケル・ポーター教授が提唱したマーケティング戦略で、生産量の増加による固定費の削減や経験曲線による生産性向上の追求によって実現されたコスト削減戦略を指します。

コストの削減は、同じ業界や市場で競合する企業よりも競争優位性を確保しやすく、他社が展開する商品(製品)・サービスと同価格で販売したとしても高い利益率を見込めます。さらに経営の自由度が広がり、事業の多角化による新たな収益源の確立が可能となり、新規事業や既存事業の拡大といった経営戦略にもつなげやすいマーケティング戦略として知られています。

中小企業が注力したい『STP戦略』

マーケティング戦略は、企業の規模に関わらず必要な企業戦略です。しかし、マーケティングには膨大な時間と費用がかかります。そのため、経営資源が少ない中小企業にとっては取り組みにくい企業戦略といえます。

しかし、経営資源が限られマーケティング経験が少ない中小企業や小規模事業者でも、費用対効果を最大限に発揮できる『STP戦略』というマーケティング戦略が存在します。

STP戦略について

STP戦略とは、アメリカの経済学者フィリップ・コトラー氏が提唱した、マーケティング戦略の基本フレームワークです。

マーケティング・プロセスの6つの流れのうち、「セグメンテーション」、「ターゲティング」、「ポジショニング」に注力するマーケティング戦略であり、この3つのプロセスへの注力は、ブランディングやプロモーション施策、製品戦略・流通戦略などその他の経営戦略の成功率を高めることができます。

このSTP戦略の重要性が増している背景には、国内市場の成熟化や顧客(消費者)のニーズ・価値観の多様化が進み、同時にマスメディアの影響力が低下していることが挙げられます。そのため、幅広い顧客層へのアプローチは既に効果が少なく、ターゲット市場を特定することが勝敗の分け目となっています。

STP戦略は、自社の強みを行かせる市場を細分化し、明確なターゲットを絞り込んだ上で競争優位性の高いポジションを確立することに長けたマーケティング戦略であり、中小企業が取り組むべきマーケティングといえます。

【関連】マーケティングの基本『STP分析』のポイントや戦略、書籍をご紹介 / BizHint HR

セグメンテーションによる強みの発揮

セグメンテーションは地理的変数(規模や都市の発展度、人口、気候など)や人口動態変数(年齢、性別、職業、家族構成など)、心理的変数(ライフスタイルや価値観)、行動変数(購買状況や購買メリット、使用頻度、購買プロセスなど)によって、市場を細分化できます。

中小企業や小規模事業者にとって、広域に渡るビジネス展開では、経営資源が豊富な大手企業に勝つことは難しいといわれています。そのため、自社の限られた経営資源でカバーできる範囲(大手市場の100分の1程度が目安といわれている)まで市場を細分化することで、自社が持ちえる経営資源でも十分に対抗できるようになります。

この市場細分化の考え方はランチェスターの法則に基づいており、顧客ひとり一人に手厚い価値を提供し、競合企業と差別化を図れるため、中小企業や小規模事業者に最適といえます。

セグメンテーションは多種多様な切り口で市場を細分化できるため、自社の強みを見つけやすいこともメリットとして知られています。

【関連】中小企業が選択すべき『ランチェスター戦略』とは?事例やおすすめ本もご紹介/BizHint HR

ターゲティングによるニッチ市場の発見

ターゲティングは、市場の成長性や規模、影響力、リーチ力(見込み客への到達力)などさまざまな要因を分析し、ターゲットとなる市場を選定します。

経営資源が豊富な大手企業が得意とする「規模の経済(生産量を増大させることで、必要コストの削減と収益率の向上を狙う企業活動)」では、市場規模の大きさが重要な要因となります。そのため、中小企業や小規模事業者が競争優位性を確立するためには、大手企業が進出できないニッチ市場を特定し、絞り込むことが重要です。

特定の顧客へのターゲティングは、今まで発見できなかった新たな顧客(消費者)のニーズの発見や新たな商品(製品)・サービスの創出につながる可能性があり、商品(製品)・サービスの差別化も行ないやすいため、マーケティング・プロセスの中でも重要なプロセスとして位置付けられています。

ポジショニングによる差別化

ポジショニングは、選定した市場における自社の立ち位置を顧客に認識してもらう重要なプロセスです。

立ち位置を明確にすることで、顧客は企業から提供される価値を見出しやすくなり、顧客の購買意欲を高めるメリットがあります。そのため、企業は提供する商品(製品)・サービスの価値を一方的に発信するのではなく、顧客にどのような場面で価値をもたらしくれるかをイメージ付けさせることが大切です。

中小企業や小規模事業者にとって、自社と競合企業のポジショニングを明確にすることは、自社の強みを活かし顧客に認知されやすくなることにつながります。また、ポジショニングを決定するポジショニングマップでは、自社の技術を元に立ち位置を決定できるため、大手企業が参入していたとしても、自社でしか対応できない価値を明確に打ち出すことが可能です。

マーケティング戦略を学べる、おすすめの書籍(本)をご紹介

マーケティング戦略は、展開する商品(製品)・サービス、市場(業界)、ターゲット層によって実施される内容が異なるため、マーケティング戦略の知識や経験はビジネスの現場で培うことができますが、基本知識や成功事例を学ぶのには書籍は最適の手段といえます。

本章では、マーケティング戦略の理解を深めるのにおすすめの書籍をご紹介いたします。

わかりやすいマーケティング戦略

マーケティング理論と実例を結び付けて、わかりやすく解説してくれているマーケティング戦略の書籍です。マーケティング戦略の基本でもある4Pの解説から、プロダクトライフサイクル戦略やマイケル・ポーターの競争戦略といった具体的なマーケティング戦略も紹介してくれています。

市場に軸足を置いたマーケティング戦略の紹介が中心となっているため、具体的なマーケティング戦略を学びたい方には少し物足りない内容となっています。しかし、マーケティング戦略の基礎知識を中心に学べるため、マーケティング担当者や経営者だけでなく、新入社員を含むビジネスパーソン全般に役立つ書籍として、読者から高い評価を得ています。

【参考】amazon わかりやすいマーケティング戦略

図解 実戦マーケティング戦略

中小企業向けのマーケティング戦略を学べる書籍です。著者である佐藤善典氏は、米国MBAで経営戦略を学び、数多くの日本企業のマーケティング課題を解決してきた経験の持ち主で、そのノウハウを紹介してくれています。日本企業に焦点を合わせたマーケティングコンセプトを掲げ、日本流にアレンジされた独自の戦略ピラミッド構想によって、日本企業が抱えるマーケティング課題の解決方法を学べます。

具体的なマーケティング戦略を打ち出す立場にあるマーケティング担当者におすすめの書籍です。実践しやすい具体的なマーケティング戦略の打ち出し方や個別の手法の解説、マーケティング戦略に必要な基本知識まで解説されているので、マーケティング担当者の教科書としても活用できます。

【参考】amazon 図解 実戦マーケティング戦略

世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略

インターネットとリアルの融合が進みつつある現代において、企業のチャネルシフト戦略に着目した、最新のマーケティング戦略を学べる書籍です。インターネット通販プラットフォームを手掛ける企業を引き合いに出し、来たるチャネルシフトに備えた、3つのフレームワーク(チャネルシフト・マトリクス、顧客時間、エンゲージメント4P)を解説しています。

本書は店舗至上主義からの脱却を目指す企業の経営者やマーケティング担当者向きの書籍であり、さまざまな企業の具体例を紹介しながら、今後のマーケティング戦略のあるべき姿を紹介してくれています。高度化・複雑化しているマーケティング戦略の担い手とし、知っておくべき情報が多く掲載されているため、経営者やマーケティング担当者は読んでおくべき書籍といえます。

【参考】amazon 世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略

まとめ

  • 経営を取り巻く環境は、どんどん変化しており、市場動向や顧客の購買心理・行動を常に把握しておかなければ、企業として生き残ることが難しい時代に突入しました。
  • そのため、業績に直結しやすいマーケティング戦略は、資本・事業規模に関係なく、全ての日本企業に求められる戦略として位置付けられています。
  • 資本の少ない中小企業でも優れたマーケティング戦略を実践した結果、競争優位性を確保できた事例も数多く、報告されています。

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