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2018年11月28日(水)更新

商圏

商圏とは店舗経営で重視される集客の地理的な範囲のことです。飲食店など店舗を持つ業態は周辺環境に影響されるため、商圏への正しい理解が欠かせません。この記事では、商圏の意味や商圏分析の方法、調査目的のほか、飲食店経営に活用できるおすすめのツールについてご紹介します。

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商圏とは

商圏とは、店舗に集客できる範囲のことです。飲食店など店舗に集客する業態では消費者が来店できる地理的な限界がありますが、一般的に商圏は消費者が日常的に来店可能な範囲を指します。

用語の意味はシンプルですが、消費者が来店可能かどうかは、移動手段や来店時間帯、来店動機などによって変わるため、商圏の使い方としては距離で区切る、移動時間で区切るなど様々な方法があります。

詳細は後述しますが、店舗経営ではこの商圏の中身を正しく理解して商圏の特性やデータを活用できるかどうかが、集客や業績に直結します。

エリアマーケティングとの関連性

商圏と近い意味で、エリアマーケティングという用語があります。

エリアマーケティングとは、マーケティング活動をエリアごとに細分化(セグメンテーション)し、エリア特性に応じてマーケティングの施策を変えることを指します。

商圏は集客の範囲を指す便利な用語ですが、必ずしも商圏内の消費者全員が同じような来店条件というわけではありません。

店舗からの距離は同じ1kmであっても交通機関や地理的な理由で店舗へのアクセスの良さは異なるほか、年齢や家族構成によって消費者ニーズは異なります。そこで商圏を地域の個別の事情で細分化し、その特性に応じて的確なアプローチを実施するのがエリアマーケティングです。

商圏は地理的な意味が強いのに対し、エリアマーケティングは実際の店舗開発など戦略策定の際に必要になる考え方です。

商圏分析を行う目的

飲食店など店舗を抱えるビジネスは、付近の商圏の状況が経営を左右します。商圏内の市場規模を見極めた上で、地域の消費者ニーズや競合店の特徴を把握すると飲食店経営の成功確率を高められますが、そのためには商圏分析が重要です。

ここでは、主な商圏分析の目的をご紹介します。

最適な新規出店や店舗開発の事前調査

商圏分析は、新規出店の最適化や店舗開発の事前調査のために実施されます。

新規出店の際は商圏の市場規模と地理的特性を把握する必要があります。出店を検討している立地で「どのくらいの消費ボリュームが期待できるか」と「地理的に有利・不利な条件は何か」は理解しておきたいポイントです。

一般的には、商圏の居住人口や交通量などの定量情報と、交通機関や幹線道路などの地理的な特性の調査が行われます。

また、店舗開発の際は商圏の消費者特性についても理解が必要です。ある程度の市場規模が見込める商圏であっても、自社が提供しようとしている業態やサービス内容が地域の消費者に受け入れられるものであるかどうかは別の問題になります。

商圏の定量調査だけでなく、消費者の年齢や顧客層などの質的情報を分析することで、店舗開発に役立てることができます。

将来の売上予測

将来の売上予測を立てる目的でも商圏分析は活用できます。

売上予測は、新規出店だけでなく既存店への追加投資や撤退の判断に必要な数値です。商圏分析のなかでも将来の売上を予測するために必要となる要素は、消費者動向と外部環境の動向です。

1つ目の消費者動向ですが、まずは既存顧客の年齢層や男女比などを細かく顧客分析し、現在は商圏内にその客層がどのくらい居住しているか、今後どのような動向が見込まれるかがわかれば、売上予測が立てやすくなります。さらに競合店舗のデータも活用できれば、より正確な分析が可能です。

2つ目の外部環境ですが、駅や商業施設など人の流れに影響する地理的変化や、競合店舗の増加・撤退など競争環境の変化について注目されるケースが多いです。地理的変化は大掛かりな工事を伴うため頻繁に起こることはない反面、消費者の移動の流れに大きな影響を与えます。また、競合店の動向はシェア争いに影響します。

このように商圏分析は売上の予測に活用できるほか、消費者や外部環境の動向を捉えて売上計画を実現する施策づくりにも役立てることができます。

競合店舗・販促対象エリアの把握

商圏分析は競合店舗を把握する目的でも実施されます。

消費者は常にサービスや価格を競合店舗と比較をしています。いくら商圏内に潜在顧客層が多かったとしても他にもっと格安で同じ品質のサービスがあれば、そちらの方が魅力的に見えるはずです。

そこで競合店舗がある中で集客するためには、競合よりも価格やサービスで競争力を高めるか、その商圏では代わりがないようなサービスを提供するなどの戦略が考えられます。競合店の動向を把握して、戦略を練る際にも活用できるのが商圏分析です。

また、販促対象エリアを把握するためにも商圏への理解は欠かせません。商圏の中でも駅近などの激戦区や人通りが極端に少ないなど、不利なエリアは存在します。最も効果が得られそうなエリアに優先的に販促をするのが望ましいですが、商圏分析をして競合店や人の流れなどの地域特性を把握しておけば、戦略策定にも役立ちます。

商圏分析の実施方法

ここでは、商圏分析を実施する具体的な方法をご紹介します。経営の採算が取れるかどうかを検討するためには、定量調査と現地での定性調査のどちらも重要です。

商圏範囲の特定

まずは商圏範囲を特定します。

限られた経営資源で集客するためには集客可能なエリアに集中してアピールするのが最も効率的なため、商圏範囲の特定は店舗運営の戦略策定や実施の成果に影響する重要なプロセスです。

商圏を特定する方法は、大別すると二つに分かれます。消費者が日常的に訪れることができる近隣エリアに絞る方法と、遠出をすれば来店可能な「日常的には行けないが、特別な時に行く候補に挙がる」エリアに広げる方法です。冠婚葬祭やリゾート関連など特別イベントを扱う業態でない限り、一般的には前者の日常的な商圏が重視されます。

前者の場合、まずは店舗からの距離で商圏を決めます。例えば半径500m以内、1km以内、2km以内など機械的に分けます。人口の密集度や都心あるいは郊外、主な移動手段によって分かれますが、一般的には距離、移動時間、人口規模に応じて商圏を特定します。

後者の場合も方法は同様ですが、距離や移動時間などはより広げて商圏を特定します。

商圏調査に必要な統計データの入手

商圏範囲が特定できれば、その範囲内の統計データを入手しましょう。

飲食店経営に役立つ代表的な統計データは人口、年齢分布、世代構成、昼夜間人口差、高齢者数、年収などです。業態に応じて優先すべきデータは異なりますので、必要に応じてデータの追加や取捨選択を行います。

統計データで調査する際のポイントは、定量的データと定性的データを組み合わせて消費者を深く理解することです。例えば商圏人口だけでなく年齢や男女比や職業分布も調査するなど、様々な角度から商圏調査をすることでより的確なアプローチを発見しやすくなります。

統計データは市区町村ごとではなく、あくまでも店舗を起点にした地理的範囲のデータを使うのが一般的です。また、より消費者の動きを正確に理解するために交通機関の有無や徒歩での移動のしやすさなど、物理的なアクセス性を考慮に入れて統計データを入手しましょう。

主な統計データは政府系のツール「jSTAT」などで入手することができます。データを入手できるいくつかのツールについては、後述します。

商圏調査の実施

商圏の範囲を特定し統計データが入手できたら、現場調査を行います。

調査対象は様々ですが、人口や地域特性、出店の際に非常に重要な立地、集客の時に意識する交通量の調査など、一般的な調査結果の活用方法についてご紹介します。

人口特性調査

人口だけでなく、年齢、世帯、男女比、年収データ、ペットの有無など、その地域の特徴も含めて調査するのが人口特性調査です。

飲食店に限らず消費者理解があれば売れる仕組みづくりがしやすく、人口規模があれば経営の持続可能性が上がるため、人口特性調査ではサービス設計と経営の両面から調査します。

調査の際は、統計データのような客観的な数値を事前に用意しておくことは必要ですが、それだけではわからない現場の細かいデータや、時には肌感覚も求められます。

例えば、いくつもの新規出店を経験していると、事前の統計データと現地調査での数字にギャップがあるケースがあります。また、エリアの住民の雰囲気や表情も参考になるでしょう。

このように、人口特性調査では客観的なデータの分析と現場での定性的な調査を共に活用しながら、消費者理解と消費ボリュームを見極めるのがポイントです。

立地・施設調査

立地調査は、主に新規出店場所のビジネスの魅力度を調べ、出店の可否を検討するために行われます。また、出店や店舗運営は商圏の外部環境にも左右されるため、周辺の施設の状況も調査することが必要です。

立地調査では付近の交通量や人通り、また店舗への立ち入りやすさなどを調査します。

例えば、駅から距離的には近い立地であっても、大きな道路を挟んでしまい通行人の流れが遮断される場所は集客に不利になるほか、ビルの1階と2階では集客力に差がつきやすい事実があります。このように、集客の可能性を現地レベルで探るのが立地調査です。

施設調査では影響力が強い近隣の施設を調査します。

商圏調査では「交通発生源」(TG: traffic generator)という用語が使われますが、駅やショッピングセンター、学校など人の移動の発生要因になる地点を指します。交通発生源を意識しながら立地を決めれば、ターゲットを効率的に集客することが可能性です。

交通量・導線調査

交通量調査とは通行人、車両の量や属性を調べる定量的な査ですが、「どのような道順で動いているのか」「その理由は何か」という導線調査も重要です。

交通量の調査は、車両別(大型車、普通自動車など)と歩行者別に分けられ、さらに曜日別、時間帯別、方向別、属性(年齢・性別)など細かく分けて調査します。

目的は、ターゲットとなる潜在顧客がいつ、何人ほど通行するかを把握して集客の予測を立てるケースと、新たなターゲットの発見に活用するケースがあります。目的に応じて調査項目が変わる点は注意が必要です。

導線調査は、交通の量や属性だけでなく、移動の流れとその理由を地理的な特性から分析します。

例えば、「月曜日の午後5時は駅から1分100人ペースで利用者が流出し、路線を挟んで東西に二分し、さらに東に移動した80%は大通りに向かう」など、人が集中する地点と移動するルートを具体的に調査しましょう。

同心円の作成

店舗から一定の半径で同心円を作成し、商圏を分割して調査する方法があります。

その目的は、同心円に対して画一的なアプローチを実施するためではなく、その円内の人口規模や地理的な特性を分析し、集客に役立てるためです。

仮に、店舗経営に必要な商圏人口が3万人なら、半径何kmをカバーすればよいのかがわかり、効率的に集客することができます。

また、一つの同心円の中でも便利な交通機関がない、大きな施設があり迂回して移動しなければならないなど、地理的な特性があるケースもあります。

このような商圏の特徴を把握するための分析に役立つのが同心円です。

同心円の半径は、都心あるいは郊外、住宅密集地あるいは過疎地など、場所によって異なりますが、短くて500m、長くても3~5km、さらに来店所要時間は10分程度までと考えるのが一般的です。

売上阻害要因の洗い出し

飲食店経営では売上を阻害する要因がいくつも存在しますが、地域特性に関する心配事は出店や店舗開発の前に商圏調査で洗い出して対策を立てておくことが、失敗のリスク回避のためのポイントです。

売上阻害要因の中でも地理的な事情に関するものの代表となるのが、線路や主要な道路、河川、商業施設などです。

上述の「交通量・導線調査」でも触れたように、店舗からの距離は同じであっても人の流れには偏りがあるのが一般的です。例えば、駅は線路・高架によって人の流れが分断され、日常的にまたいで移動する消費者は少ない傾向があります。

マーケティング戦略の策定と実施

商圏調査をして必要なデータや仮説が出揃い、出店の立地の目処が立てば具体的なマーケティング戦略を策定します。

マーケティング戦略の策定で特に重視すべき観点は、地域の消費者特性にマッチしているかどうか、競合店舗とは違う優位性があるかどうか、そして経営の採算がとれるかどうかです。

戦略の策定段階では、商圏調査の結果を柔軟に取り入れることが望まれます。商圏調査は何かしらの仮説を立てて取り組んだとしても、想定外の事実が発覚するケースがあります。

その際は当初の仮説に固執しすぎず商圏調査の結果を冷静に見極めて、上記の三点を満たすマーケティング戦略を策定することが必要です。

マーケティング戦略は限られた経営資源で実施するため、継続的に実行可能な戦略を策定することが望まれます。限られたコストと人員で持続可能で、かつ効果もある戦略作りは簡単ではないため、商圏調査の段階から効率的な戦略を意識しておくことが重要です。

商圏分析に役立つおすすめツール

商圏分析で全てのデータを自力で調査するのには手間も時間もかかります。ここでは、必要なデータを効率的に調べられるツールをご紹介します。

総務省 jSTAT MAP

総務省統計局が提供する「jSTAT MAP」とは、Web上で見られる地理情報システムです。

サービスの特徴は、人口統計調査、市場分析、施設整備など知りたいデータがほとんど揃っているため、例えば、エリアの15歳未満総数と75歳以上総数や、ある地点からの同心円の中にある世帯数など地図上に表示することができます。

地図上にデータが表示されるので視覚的に分かりやすく、ダウンロードも可能です。また、利用者の保有するデータを取り込んで分析する機能や、任意に指定したエリアにおける統計算出機能などがあります。

無料で使用でき、ログインするとデータが保存できるようになります。

【参考】総務省:「jSTAT MAP」

株式会社パスコ商圏大勝

株式会社パスコが提供する「商圏大勝」は、国勢調査、家計調査などの統計データと地図データを組み合わせて効率良く必要なデータを分析するためのシステムで、ブラウザ上で地図とグラフの分析結果について簡単な操作で閲覧することができます。

サービスの特徴は、中小企業・個人事業向けエリアマーケティング関連サービスで実績がある株式会社パスコが運営しているため、販促や出店・開業、売場づくりなど主に店舗運営に必要なデータを取り扱っている点です。

月額5,000円(税別)で基本機能を使うことができます。(2018年11月時点)

【参考】株式会社パスコ:「商圏大勝」

内閣府まち・ひと・しごと創生本部RESAS

内閣府のまち・ひと・しごと創生本部が提供する「RESAS」は、全国地域の人口、観光、産業などのデータを直感的に分析できるツールです。利用は地方自治体を想定していますが、店舗経営に必要な情報も数多く入手することができます。

ツールの特徴は、人口動態の分析に強みがあり、地域の人口、年齢世帯だけでなく、過去データから将来へ人口構成の推計データや人の地域間の移動も把握しやすい点です。また、観光客の動きや消費の傾向なども分析できます。

【参考】まち・ひと・しごと創生本部:「地域経済分析システム」

まとめ

  • 商圏とは、集客が可能な範囲を指し消費者理解に欠かせない用語です。
  • 商圏分析は、店舗開発や立地検討、売上予測など店舗経営に活用できます。
  • 商圏調査では、人口特性や立地、交通量など統計データや現地の詳細についても調査します。

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