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戦略・経営

2019年6月4日(火)更新

ここ10年で3割の業者が後継者難で廃業、衰退する盆栽業界の未来を描く若手の奮闘

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盆栽職人は住み込みで5年間の修行が必要な世界です。ですが、業界でも職人の高齢化が進み、継ぎ手の減少が課題となっています。また、顧客の高齢化、新規顧客数の伸び悩む現状も問題です。歴史ある大樹園では最近まで「一見さんお断り」を貫いてきましたが、このままでいいのでしょうか? 業界の常識にとらわれず盆栽の魅力を発信し、新たな顧客層を開拓しようとしているのが愛知県岡崎市にある大樹園の次期園主鈴木卓也さん。飲食業から転身した彼は、なぜ「大樹園」という歴史あるブランドを継承し、業界全体をも発展させようと考えているのか。職人として技術を磨く一方、業界の次世代の担い手として、経営者として、古い体質の盆栽業界内でどのように信頼と協力を得ながら事業を展開しているのか、鈴木さんにお話を伺いました。

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盆栽大樹園

鈴木卓也さん

1932年開園の老舗盆栽園「大樹園」の次期園主、4代目。大学で建築工学を学んだ後、地元の建築ディベロッパーでの営業職や、イタリアンレストランでの調理・接客、従業員管理等の職に従事した経歴を持つ。2011年、妻の実家の大樹園に婿入り。当初は盆栽と無縁であったものの、結婚3年目に後を継ぐことを決意。腕を磨き、大樹園の後継者と目されるように。国内外の盆栽展に積極的に参加し、受賞実績もあり。自分のやりたいことに挑戦、盆栽業界を引っ張る存在になりつつある。


大樹園を継承する重みを背負い、職人として経営者として生きる決意

――盆栽を始め、大樹園を継ぐまでには、どのような経緯があったのでしょうか?

鈴木卓也さん (以下、鈴木):私は婿養子で鈴木家に入りましたが、キャリアの最初は料理人です。イタリアンレストランに勤めているなか、東日本大震災がありました。子どもにも恵まれ、家族との将来を考えました。これから数年下積みを積めば自分のお店は持てる。ただ、その分家族と過ごす時間の確保は難しい。そこで浮かんだのが義父の大樹園です。

義父はどれだけ忙しくても家族の身近で仕事をしています。義父の仕事ぶりを見ていたら、自然と選択肢に挙がったのです。実は結婚後、盆栽とは距離を置いていました。元々私も凝り性で、「楽しさを義父に聞いたら絶対、盆栽にハマる……」と薄々思ってましたから(笑)。一大決心して「継ぎます」と義父に伝えたら、予想していなかったようでびっくりされましたね。

盆栽業界では、5年間の修行が必要です。 修行先では「大樹園は盆栽業界の一大ブランドだ。帝王学を仕込んでやる」と言われて戸惑いました。後から、大樹園が業界では5本の指に入ると聞き……。そもそも伝統や歴史のスゴさを理解していたら「自分が継ぎます」なんて大それたことを言えません。現在の自分ならば、そのおこがましさがよくわかります(笑)。でも、逆に気負う部分もなかったからよかったのかなとも思います。

修行中から数年間はカルチャーショックの連続でした。そもそも、 盆栽業界自体は年々縮小しており、ここ10年で全体の3割近い業者が後継者難で廃業をしています。私のように新規参入する人もほとんどいません。 メインのお客さんは50~70代です。お客さんの高齢化による自然減を考えると、今から10年、20年後の先のことを見据えながら、活動していく必要があると思います。

「新しくお店に来る人を増やし、楽しんでもらって、リピートしてもらうための努力をする」というのは料理の世界では普通のこと としておこなっていたのですが……。盆栽業界では全然、営業活動をしないんです。

例えば、展示会のポスター。デザインは10年以上変わっていませんでしたし、各園の軒先に貼ってあるだけです。そもそも盆栽ファンの常連さんたちはポスターを見ずとも毎年来てくれているわけですから、ポスターの打ち出す方向性がこれでいいわけがありません。

それに盆栽業では、よく分からない商慣習? も多いですね。今盆栽に慣れ親しんでいる方は比較的、富裕層の方々です。その方々に支えられてこれまで業界が成り立ってきたのは分かるのですが……。例えば大樹園では昔から盆栽の預かりサービスもやっています。「自宅が手狭で置き場所もないし、育てるのもプロに任せた方が安心だからだろう」と思っていたら、別にそうでもなかったりします。盆栽を預けているだけでまったく見にすら来ない方もいます。どうやら、「大樹園に盆栽を預けている」という事実を一つのステータスに感じて頂けているようです。その気持ちが理解できないままでは、「お客さんの心をつかんで支え続けていただけるのかな」と不安になりました。

あと、大樹園では昔から毎日「休業日」の看板を掲げていたそうです。これは一見さんが来ないようにするため。大樹園の先代も先々代も毎日樹と向き合うのが本当に好きな人ですから、いちいちお客さんが来てその都度「この樹は……この枝は……」なんて説明するのが本当に面倒だったのでしょう。業界全体の調子がよかったバブルの頃ならば、そんな対応でも成り立ったのでしょうが……。 今、接客業でそんな敷居の高いことをしている業界はありませんよね。

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