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2019年2月8日(金)更新

PPM分析

PPM分析とは、自社の製品・サービスや事業を、市場の成長率、占有率という視点で4つのポジションに分類するフレームワークです。経営資源の効率的な投資配分や長期的な利益を生み出す製品・サービス、事業の見極めに役立つ分析手法でもあります。今回はPPM分析の定義や分析方法、分析結果への対応からPPM分析の具体例も含めて、ご紹介いたします。

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PPM分析とは

企業が中長期的かつ持続的な成長を遂げる上では、成長性(利益率)の高い事業を選定し、効率的に投資を行うことが不可欠です。PPM分析の定義やメリット・デメリットを知ることで、理解を深めることができます。

PPM分析とは何か

PPM分析(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント分析)とは、「市場成長率」と「市場占有率(マーケットシェア)」の2軸から自社の製品・サービスや事業を4つの枠組みに分類した上で、経営資源の投資配分を決定し、それぞれの事業に見合った投資を検討する分析手法です。

米大手コンサルティング企業のボストン・コンサルティング・グループが発案したといわれるフレームワークであり、コンサルティング企業をはじめ、自社の事業価値の分析やマーケティングに活用されています。

※市場占有率は、「相対的市場占有率(相対的マーケットシェア):トップ企業と比べた場合のシェア率」が対象となります。

それでは、4つの枠組みについて解説していきます。

PPM分析における4つの枠組み

PPM分析では、自社の事業を「花形(スター)」、「金のなる木」、「問題児」、「負け犬」という4つの枠組みに分類し、分析が行われます。

新規事業を展開する際も、「問題児→花形(スター)→金のなる木→負け犬という順で移行させていく」と考えると、適切な投資配分を検討し、適切な経営判断を行えます。

花形(スター)

市場成長率、市場占有率ともに高い事業は「花形(スター)」に分類されます。花形(スター)となる事業は、投資を継続することで、「金のなる木」に移行していく事業であり、将来的に安定的な収益軸となる魅力的な事業(花形商品)です。

一方で、競争が激しいため、積極的に経営資源を投入し、適切な成長戦略を描かなければなりません。近年の「金のなる木」の例では、製造業の半導体事業(※)が花形(スター)に該当します。

※社会インフラを含むあらゆる分野で情報システムの活用が進む現代において、半導体は欠かせない部品と位置付けられており、グローバル市場で激しい市場獲得競争が行われています。

金のなる木

市場成長率が低く、市場占有率が高い事業は「金のなる木」に分類されます。金のなる木となる事業は、積極的な投資は控え、事業で生み出した利益を他の成長産業に分配することが望ましいでしょう。成長率が低いため、新規参入も少ないことから安定した利益を生み出せます。

IT企業を中心に展開されているプラットフォーム事業(SNSや通販プラットフォームなど)、またはスマートフォン向けの移動通信事業などが金のなる木に該当します。

問題児

市場成長率が高く、市場占有率が低い事業は「問題児」に分類されます。「問題児」となる事業は、競争が激しいにも関わらず、利益を生み出しにくい傾向が見られます。しかし、市場占有率を高めることで、将来的に「花形(スター)」や「金のなる木」になる可能性が高い事業でもあり、積極的な投資が求められます。

一般的に「問題児」の事業は、市場占有率を高める経営戦略が必要です。

AIや自動運転、IoT(モノのインターネット)などの次世代技術を使った産業が問題児に該当します。

負け犬

市場成長率、市場占有率ともに低い事業は「負け犬」に分類されます。「負け犬」となる事業は、短期的、長期的な利益が見込めない撤退すべき事業です。経営者には事業の解体や売却を行い、余剰となった経営資源を他の事業分野に投資するといった判断が求められます。

破壊的イノベーションにより、壊滅的な打撃を受けた既存事業などが負け犬に該当します。

自社の事業を「花形(スター)」、「金のなる木」、「問題児」、「負け犬」の4つに分類することで、選択すべき経営戦略を明確にできます。

PPM分析のメリット・デメリット

PPM分析は、中長期的な経営戦略や経営計画の立案に役立ちますが、同時にデメリットも存在します。

まずはメリットです。PPM分析のメリットは、以下が挙げられます。

  • 事業分野の強化、撤退、維持などの経営判断に役立つ
  • 財務指標を基準とした、自社および事業の将来性の把握
  • 競合企業との売上格差を可視化できる(市場における自社の売上を円で表現)
  • 経営資源の投資配分の優先順位をつけやすい

一方で、PPM分析のデメリットは、以下が挙げられます

PPM分析では、市場の成長率や占有率の2つの軸と財務指標(売上高)で判断されるため、生産面からの視点である経験曲線(累積生産量に応じて、総コストが低減していくモデル)が適用されている事業を正確に分析できない可能性があります。

また、事業単体を対象としているため、事業間の連携により生み出されるシナジー効果は考慮されないことも、デメリットとして挙げられます。

事業構造が複雑になっている現代では、事業単体のみの実績だけでなく、複数の事業が連携することで、強力な経済効果を生み出すことが珍しくありません。そのため、シナジー効果を前提とした多角化経営を手掛ける企業には適切でない可能性があります。

PPM分析のやり方

一般的なPPM分析は、市場成長率の算出、市場における市場占有率の算出、市場戦略の立案の順で行われます。

市場成長率の算出

市場成長率の計算式は、以下で算出できます。

市場成長率=本年度の市場規模 ÷ 昨年度の市場規模

市場規模のデータは、公的機関が発表している統計データを用いることができます。 よく用いられるデータとして、経済産業省が発表している工業統計調査、または各業界の推移動向報告書や、財務省が発表している法人企業統計調査などが適切です。

その他、各業界に精通したシンクタンクが有料で発行している市場規模データも有力な参考データとなります。

また、市場規模データが見当たらない、入手できない場合は、フェルミ推定(自社の売上高÷市場シェア)を用いて、市場規模を推測できます。

【参考】経済産業省:工業統計調査
【参考】経済産業省:平成 29 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)
【参考】財務省:法人企業統計

市場占有率の算出

市場占有率の計算式は、以下で算出できます。

市場占有率=事業部の売上高÷市場の規模

自社の事業部の売上に加え、競合他社の売上も把握します。上場企業(一部、非上場企業も対象)であれば有価証券報告書で公表されているので、抽出が可能です。また、最近では業界動向(市場シェア)を公開しているサイトも存在しているので、参考データとして活用できます。その他、業界団体のホームページ(協会など)や商品個別の売上販売数と販売単価から推測することも可能です。

自社・競合他社の立ち位置の確認と事業戦略の立案

自社が手掛ける事業の市場成長率と市場占有率を算出した後は、自社と競合他社との立ち位置(図1)、または自社が手掛ける各事業分野(図2)を配置します。

■図1

■図2

上記の図のように、自社と競合他社(または自社が手掛ける事業分野)の市場成長率と市場規模を可視化し、立ち位置を明確にすることで、自社が取るべき企業経営や競合他社に対抗した事業戦略を打ち出せます。

例えば、図1のA社の場合、「問題児」から「花形(スター)」への移行に成功(利益が出る事業に成長した)しており、今後も積極的な投資が行われると予想できます。そのため、自社としてはA社が行う事業戦略を注視しながら、対抗でき得る投資金額の判断や事業戦略の選定が求められます。

一方で、C社は既に「金のなる木」に事業を成長させており、今後、新たな成長事業への投資に動く可能性が高いことがわかります。そのため、C社の先見力を評価し、新たな投資先を注視し、自社も新規参入すべきかどうかの経営判断が求められます。

PPM分析結果への対応

PPM分析では、各事業における立ち位置を4つに分類し、その状況に合わせて、投資配分を変更できます。そのため、4つの分類における経営戦略も異なります。

花形(スター)への戦略

「花形(スター)」に位置する事業の戦略は、「現在の市場シェアを維持すること」が求められます。そのため、市場自体の成長率を見極めた上で、追加投資の判断を行います。

花形(スター)に位置する事業のプロダクトライフサイクルは、導入期から成長期に該当します。しかし、ようやく利益が確保できる状態の中で、業界トップの市場占有率を目指す必要があるため、積極的な設備投資や販売促進活動に経営資源を投入する戦略が求められます。

一方で、プロダクトライフサイクルの成熟期(市場成長率の鈍化)に指し当たった場合、ある程度、利益を確保できる状態となっているため、追加投資を行わずに「金のなる木」へと移行していく戦略をとるべきです。競合他社の追随や、新規参入からの脅威に耐えられるだけの市場シェア維持戦略に舵を切ります。具体的には、競合他社の差別化戦略を防ぐためのミート戦略(類似品・類似サービスの提供)が有効です。

金のなる木への戦略

「金のなる木」に位置する事業の戦略は、大きく分けて、「利益の最大化」と「その他の事業への投資」の2つの戦略を打ち出せます。

「金のなる木」に位置する事業は、会社全体を支える大黒柱となり得るため、「利益の最大化」が大きな役目となります。 プロダクトライフサイクルでは、成熟期から衰退期に当たります。

市場成長率が鈍化し、市場占有率が安定する傾向が強いため、少ない投資でも十分な利益確保、および市場占有率の維持が可能です。その分、確保できた利益を、その他の事業分野(問題児や花形)に投資を回す経営戦略を実施できます。

問題児への戦略

「問題児」に位置する事業の戦略は、市場占有率の拡大(もしくは維持)を優先した戦略が効果的です。

市場成長率が高いため、先行投資を行った上で、花形(スター)へと移行させる「選択と集中」を行えば、企業の安定的な収入源として期待できます。

しかし、「問題児」に該当する企業は、市場成長率が高い一方でなかなか収益に結びつきにくいという傾向も見られます。花形(スター)に移行することなく、「負け犬」に移行してしまう可能性があるため、先行投資の甲斐なく、収益性の向上がみられない場合は撤退を検討することも大事です。

負け犬への戦略

「負け犬」に位置する事業の戦略は、「利益の最大化」または「撤退」を目的とした戦略がふさわしいといえます。

「負け犬」に分類される事業は、市場成長率と市場占有率(目安は市場シェア率2位以下)も低くなることが見込まれ、積極的な投資をするべきではありません。

しかし、「金のなる木」から「負け犬」へと移行した場合、小額といえども安定的な利益を生み出している事業とも言えます。そのため、中長期的に撤退を考えつつも、投資をかけない形で「利益の最大化」を行うことも効果的です。事業運営のアウトソーシングや売却などが具体的な戦略といえます。

PPM分析の具体例

PPM分析は自社と競合他社のパワーバランスと自社が手掛ける事業の将来性を可視化できる優れた分析手法です。今回は、日本を代表する企業を例に、どのようなPPM分析が可能かどうかをご紹介いたします。

※BizHint独自の見解であり、該当企業が公式に発表しているものではありません。

ソニー株式会社のPPM分析

多国籍コングロマリット企業であり、日本を代表する企業のソニー株式会社(以下、ソニー)を、例にみてみましょう。

PPM分析として、わかりやすい事業分野が半導体分野(モバイル機器向けの向けイメージセンサーの増収と、カメラモジュール事業の撤退)とモバイル・コミュニケーション(MC)分野が挙げられます。PPM分析マップに記載すると以下となります。

現在の成長分野である半導体分野の中でも、モバイル機器向けの向けイメージセンサーはIoTを含めたさまざまな社会インフラでの活用が期待されている上、今後、花形(スター)の事業となる可能性が高いといえます(前年同期比241億円の大幅増収、4,567億円)。

一方で、スマートフォンなどの台頭により、カメラ市場全体の縮小に影響され、カメラモジュール事業は縮小傾向にあり、製造子会社の持分全部の売却を行い、撤退を決断しています。

また、携帯電話(ガラケー)で圧倒的なシェアを持っていたモバイル・コミュニケーション(MC)分野では、スマートフォンの販売台数の大幅な減少により、従来の「花形(スター)」もしくは「金のなる木」から「負け犬」へ移行している傾向が見られます。今後、モバイル・コミュニケーション(MC)分野では、積極投資を行わない「利益の最大化」、もしくは事業売却による撤退が考えられます。

【参考】株式会社ソニー 2018年度第2四半期

ソフトバンク

日本の通信大手事業者であるソフトバンクグループ株式会社(以下、ソフトバンク)では、大きく6つの事業を展開しています。中でもソフトバンク事業(日本国内での移動通信サービスの提供など)とアーム事業(半導体企業にプロセッサーデザインのライセンス供与)がPPM分析での分析がしやすいといえます。

ソフトバンク事業は「金のなる木」に分類されます。日本国内の携帯電話市場は既に飽和状態となっており、市場成長率が見込めない一方で、安定的な利益を生み出す事業と考えられるからです。そのため、市場占有率の維持をしつつ、生み出された利益はアーム事業などの成長産業への投資に回されていると考えられます。

一方、アーム事業は「問題児」の事業に分類できます。2018年度第2四半期の実績は、中国事業を合併事業化したことによる増益であり、売上自体は減収となっています。しかし、今後の成長産業である半導体事業に関係する事業でもあるため、ライセンス収益の拡大と研究開発の強化を継続していく積極的な投資先として認識されています。

【参考】ソフトバンクグループ株式会社 四半期報告書 2018年度第2四半期

まとめ

  • PPM分析は市場成長率と市場占有率の2つの視点から、自社の事業を「花形(スター)」、「金のなる木」、「問題児」、「負け犬」の4つに分類し、それぞれに応じた経営戦略が立案できる分析手法です。
  • PPM分析の実施方法は、市場成長率と市場占有率をそれぞれ算出し、競合他社との比較や自社内の事業間の売上・利益規模を可視化し、それぞれに適した経営戦略を打ち出します。
  • PPM分析で分類された事業は、「市場シェアの維持」、「利益の最大化」、「撤退」などを目的とした戦略を打ち出し、適切な投資配分を判断することができます。しかし、シナジー効果や経験曲線を考慮できないデメリットもあるため、注意が必要です。

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