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2018年11月28日(水)更新

エリアマーケティング

エリアマーケティングとは、対象とする市場を地理的な観点から捉えたマーケティングの考え方です。リアルな店舗で営業を行う業種・業態にとってターゲットである消費者の動態や嗜好を知り、それに対応したエリアマーケティングを行うことは最も重要なポイントになります。この記事では、エリアマーケティングの基本的な解説に加えて最新動向の概観についてもご紹介します。

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エリアマーケティングとは

生産から消費に至る道筋を統制し、コントロールすることで「売るための仕組み」を構築することがマーケティングです。

マーケティング戦略は4P(Product、Price、Place、Promotion)の観点から展開されます。このうち、Place(流通)=「どこで誰に売るのか」に関わる部分がエリアマーケティングです。

特に流通業やサービス業は販売拠点や店舗の立地が営業の前提条件になるため、商圏と地域特性の把握が不可欠であり、エリアマーケティングはマーケティング活動のなかで高いプライオリティが与えられます。

マーケティングの概念は1950年代に米国から輸入されたものですが、エリアマーケティングという言葉は1960年代から使われ始め、1970年代に理論化され、実践された日本独自のマーケティングの考え方です。

エリアマーケティングの日本での発展過程は以下の2つの流れに端を発してます。

  • 日本全国を市場とするメーカーが従来からのマスマーケティングから脱却して地域差に対応したマーケティング活動を行うようになった
  • 都市部と地方の消費者特性の違いに着目して家計調査年報をはじめとする各種統計と地理的条件により設定された商圏分析を基盤とするもの

現在のエリアマーケティングは、各種統計情報を地図に落とし込んだ様々なGIS(地理情報システム)が開発され、企業規模や業種を問わず様々なレベルで取り入れられています。

エリアマーケティングを行う目的

エリアマーケティングを採用する主体によりその目的と機能は異なります。

例えば、全国展開する消費財メーカーであれば、収集するデータはデモグラフィック(人口統計)データや地域の需要特性に関するデータが主なものとなり、地域に合わせた商品展開に活かされていきます。生産財メーカーであれば人口統計ではなく、事業所統計や産業構造に関するデータにもとづき新たな販売チャネルや優良顧客の発掘に優先度が置かれるケースもあるでしょう。

小売業・サービス業の場合は出店戦略とともに既存店の商圏を明確にし、競合店の存在を視野に入れながら、需要予測や販売促進計画を立てる際にエリアマーケティングが活用されます。

エリアマーケティングが活用される主な目的としては以下のようなものがあげられます。

商圏の設定

店舗の立地に対して顧客を集めることができる地理的な範囲が商圏であり、店舗を中心とする半径の距離で表されます。実際には交通インフラの状況や地形などの要因により複雑な形になります。一般的に最寄品は半径が小さく、買い回り品は半径が大きいとされます。

立地条件による市場ボリュームを把握し、店舗の集客範囲を明確に把握することはすべての営業政策のベースとなります。

売上予測・需要予測

商圏の市場ボリュームを明確にすることで、新規出店の候補地の選定や既存店の売上目標の設定などに活用することが可能です。

出店候補地が複数ある場合はそれぞれの市場ボリュームを比較することで意思決定の材料になり、市場ボリュームのあるエリアの既存店で売上が不足していれば新たな販促策やマーチャンダイジングの見直しなどを図る必要が出てきます。

大型商業施設の動員予測や売上予測に用いられる分析手法としてハフモデルがあります。これは「店舗の吸引力は店舗の規模に比例し、消費者からの距離に反比例する」という考え方に基づく確率モデルです。

家計調査のデータをもとにエリアごとの消費金額を推計しGISデータと合わせて需要予測を行うことができます。また、競合店が出店した際の影響度を数値化するといったことも可能です。

販売促進

折込チラシやポスティングなどエリア限定の販売促進を行う場合、施策の検証やその効果を高めるために、エリアマーケティングは重要な役割を果たします。

販促物の到達エリアを決めて反響をマッピングすることで効果が可視化され、販売促進の精度を高めていくことにつながって繋がっていきます。

顧客分析

顧客データをマッピングすることで顧客の分布状況が可視化され、さらに商圏データと併せて用いることで、より精度の高いエリアマーケティング施策を展開することが可能となります。また、顧客とエリアの関係性の新たな発見や潜在顧客の発掘にも有効です。

さらにRFM(Recency・Frequency・Monetary)分析を行うことで既存顧客へのマーケティング施策の最適化を行います。

上記にあげたエリアマーケティングの機能・目的はそれぞれ単独に果たされるものではなく、関連し重層的に展開されます。

さらに、競合店の出店やエリアの再開発など短期的なスパンでのエリアの環境変化や、長期的なスパンでの人口の増減傾向など、時系列的な変化や予測も分析に含められます。

エリアマーケティングの分析ポイント

市場ボリュームとして計測されるデータは何か、消費者の購買行動に結びつく要素には何か、競合店は売上にどの程度影響があるかなどを知るためには、分析対象とすべきデータを選択し収集する必要があります。

例えばコンビニエンスストア大手のチェーンでは出店判断をする際には、商圏の設定範囲を住宅地では半径500m、市街地・ビジネス街では半径300~400mと設定します。その上で駅前やオフィス街、歓楽街、住宅地、文教地区、郊外など地域背景を類型化し、立地調査を行います。

調査項目は人口や世帯数、男女比、年代別構成、主婦の数、人通り、交通量、駐車スペースの幅・奥行き、車道歩道の段差、カーブ・坂道の有無、道路からの店舗の視認性など数十に及びます。

これらのデータと蓄積された既存店のデータから、新規店舗の業績予想をシミュレーションします。これに加えて、買い物ルートや通勤ルートの確認、地域住民へのインタビューなど店舗開発部員による現地の質的調査も加えて立地判断が行われます。

これは一例であり、エリアマーケティングで分析対象とする要素やそれを知るための量的・質的データは業種や業態、商品・サービスによって異なります。

エリアマーケティングの分析対象となる主要指標

エリアマーケティングで分析対象とする主要指標は、デモグラフィックデータを中心とするエリアのマクロ環境、需要・消費傾向、既存の商業環境、競合の存在などが挙げられます。それに過去の自社の実績を加えて分析を行います。

デモグラフィックデータ

エリアマーケティングにおいて最も基本的な定量情報です。地域の人口動態統計を表したもので、多くは政府や自治体からオープンデータとして提供されています。

人口、世帯数、昼間人口、流出・流入人口、性、年齢、職業、家族構成、所得、資産と内訳、消費支出額、預貯金額、負債額など

地理的情報

地形や気象など地理的な環境はその地域に住む消費者の行動に影響する要因であり、商品やサービスの種類によっては、最も重要な情報である場合もあります。

地理・地勢、面積、気象、温度・湿度、季節性など

エリア特性

いわゆる土地柄を知るための情報です。県民性など地理的な要因や歴史的な要素、慣習も含めて地域の消費行動を分析する際に考慮する要素で、定性情報として把握します。

慣習、土地柄、県民性、歴史・文化所産、地域の特産物、象徴的なもの など

外部環境

都市の吸引力や事業所数、小売店数など、自社の営業に関わる環境要因を洗い出すための定量情報です。

都市・商店街の商圏範囲、産業構成、事業所数、従業員数、卸店・小売店数、金融機関数、卸店・小売店の販売額、商店街数、商店街の規模など

需要特性

消費者の購買行動そのものとその背景となるライフスタイルなどに着目します。ポイントカードなどの購入者は定量情報としてRMF分析が可能ですが、購買に至る動機や評価・満足度などサイコグラフィック要素と消費者のライフスタイルに関連する情報は、アンケート調査やパネル調査などが必要です。

購買方法、購買形態、購買履歴、購買誘因要素、商品評価、マインドシェア、ロイヤリティ、生活意識、生活満足度、ライフスタイル、情報接触度、ITリテラシーなど

自社・競合他社の競争力

上記のエリア環境のなかでの自社と競合他社の比較要素を検討します。

競合数、売上規模、マーケットシェア(市場占有率)、シェアポジション(競争的地位)、ストアカバレッジ(取扱店数)、インストアシェア(店内シェア)、主力商品・ブランド力、価格、営業力、チャネル力、広告・販促、営業ノウハウ、提案力、戦略・戦術、組織力、強み・弱み など

エリアマーケティングのプロセス

当該エリアの現状分析がエリアマーケティングの基本となりますが、それに影響を与える外部環境があればその影響の度合いにも留意が必要となります。

外部環境と当該エリアの基礎的な定量情報から商圏を想定し、商圏の定性的な情報を加えて当該エリアの特徴を明確にすることがポイントです。

当該エリアの消費者の需要特性を調査した上で自社と競合他社の競争力を比較検討し、マーケティング施策を計画・実行・検証していくことが基本の流れとなります。

エリアマーケティングに活用されるGISツール・サービス

前述の各種指標は、官公庁によるオープンデータとして提供されるものから、GIS情報サービス会社から販売されるパッケージデータやサービスのほか調査会社にオーダーして収集する独自の調査データなどがあります。こうしたデータに自社の過去実績を加えて分析を行います。

官公庁、公的機関が提供するGIS

官公庁や公的機関が公開している統計データやGISデータは無料で利用できます。これは、エリアごとの人口構成や地域経済の状況を概観するのに適しています。

jSTAT MAP

総務省統計局による「統計GIS」を使うと、各種政府統計を取り込んだGISデータを表示させることができます。Webブラウザ上で操作が完結するため、利便性の高いツールです。

国勢調査や経済センサスなど各種政府統計を地図上に表示させるほか、グラフの描画機能などもあります。政府統計だけでなく保有データを読み込ませることも可能なため、オリジナルのGISマップを作成することも可能です。

【参考】総務省統計局/地図で見る統計(統計GIS)

RESAS(地域経済分析システム)

経済産業省と内閣府(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供するGISです。地域経済に関わる様々なビッグデータを集約し地図上に可視化し、地域経済の活性化を目的に運用されています。

「1.人口マップ」「2.地域経済循環マップ」「3.産業構造マップ」「4.企業活動マップ」「5.観光マップ」「6.まちづくりマップ」「7.雇用/医療・福祉マップ」「8.地方財政マップ」の8分野81項目の統計データを利用することができます。

【参考】経済産業省・内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)/RESAS 地域経済分析システム

GIS情報サービス会社

GISデータを提供するサービス企業は数多くあり、様々な業界や業種ごとにパッケージ化されたGISや個別の企業ごとにカスタマイズされたサービスを提供しています。

ZENRIN GIS

「住宅地図」で知られる地図会社(株)ゼンリンのGISは住宅地図と同様な個別の建物情報や居住者名まで含んだGIS情報が入手できます。ユーザーの保有する業務データと重ね合わせることも可能で、GISを活用した顧客データベースを構築するといったことが可能です。

これ以外にも特定業種に向けたGISパッケージやユーザー企業の業務システムやWebサービスに地図情報を組み込むためのAPIなどがあります。

【参考】株式会社ゼンリン/ZENRIN GIS

ESRIジャパン

ESRIジャパンは、米国カリフォルニアに本拠地を置くGIS分野では世界的な大手企業の日本法人です。ビジネスや公的サービスだけでなく、危機管理、防衛、宇宙開発に至るまで幅広いGISの応用領域に対応する製品やサービスを提供しています。

【参考】ESRIジャパン株式会社/GIS ソフトウェア・地図システム・地図データ

スマートフォンの位置情報をビッグデータとして用いるGIS

マーケティングの領域においてもスマートフォンのGPS機能によってユーザーの位置情報をエリアマーケティングに活用する動きが進んでいます。

例えば、店舗周辺に近づいているターゲットを絞り込んだユーザーに対して店舗のクーポン情報をプッシュ送信するなど、よりダイナミックなエリアマーケティング施策を実現する仕組みが可能です。

2018年10月現在では、携帯電話大手キャリア3社それぞれ、モバイル空間統計(docomo)、Location Trends(au)、Agoop(ソフトバンク系列)という位置情報をビッグデータとして活用し、GISと連携させたエリアマーケティングサービスを展開しています。

ただし、Location Trends(au)とAgoop(ソフトバンク系列)は専用アプリのインストールと位置情報取得に対するユーザーの許諾が前提となるため、母数が小さいのが現状です。

なお、モバイル空間統計(docomo)では、国内7,500万台、訪日外国人500万台という大量のスマートフォンサンプルを保有しユーザーの基地局情報を活用していることから精度の高い人口動態を推計することが可能となっています。

【参考】モバイル空間統計 株式会社ドコモ・インサイトマーケティン
【参考】Location Trends KDDI株式会社 株式会社コロプラ
【参考】Agoop 株式会社Agoop

まとめ

  • 小売業界の大手チェーンでは、GISを活用して綿密な商圏調査をもとに出店計画を定め、広告や販売促進にエリアマーケティングを行っています。
  • 位置情報の採用によるGISの高度化などエリアマーケティングの分野における技術革新が進展したことで、より精度の高いエリア分析や投資効果の高いマーケティング施策が可能になっています。
  • エリアマーケティング担当者はGISの活用やモバイルマーケティング、SNSの影響など現在の社会状況に適応した広い知識が求められている。
  • エリアマーケティングは新しい技術や手法が次々と登場しているため、新しい可能性を秘めた注目すべき分野です。

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