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連載:第5回 組織作り その要諦

「ブラックサンダー」で46億円から100億円企業に伸びた有楽製菓の秘密

Logo markBizHint 編集部 2019年5月29日(水)掲載
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東京都小平市に本社を構える有楽製菓株式会社は、義理チョコやご当地お菓子の定番としても人気を博し、年間でシリーズ累計2億本以上を売り上げる大人気お菓子『ブラックサンダー』の製造元として知られています。 この10年間で売上規模は拡大。一気に100億円企業にまで昇り詰めました。その裏側には、綿密なマーケティング&PR戦略がありました。2011年にマーケティング部門を立ち上げた責任者であり、2018年2月からは代表取締役社長を務める河合辰信さんに、成長戦略について伺いました。

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有楽製菓株式会社

代表取締役社長 河合辰信さん

1982年11月30日生まれ。2007年横浜国立大学大学院工学部物理情報工学専攻修了。世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社シスコシステムズを経て、2010年4月に有楽製菓に入社。マーケティング部門の立ち上げなどを行なった後、2018年2月に代表取締役社長に就任。


ターニングポイントになった義理チョコキャンペーン

——御社はマーケティングやPRに力を入れている印象があります。これまでの中で特に印象に残っている企画は何ですか?

河合辰信さん(以下、河合): 数年前の企画になりますが、狙い以上に大きな反響があった2013年の義理チョコキャンペーンです。

私は2010年に有楽製菓に入社し、2011年からマーケティング部門の担当者になったのですが、その 当時はチョコレート菓子を主力商品としているにもかかわらず2月の売上が突出して高いわけではありませんでした。 考えてみても「ブラックサンダー」を本命チョコとして渡すイメージは浮かばないですよね(笑)。とはいえ、売上を伸ばす方法はあるはず。それならばということで考えたのが、義理チョコキャンペーンでした。

新宿駅に大きな駅広告を掲出するとともに、2月4日から1週間ほど「義理チョコマシーン」を設置して、1日限定1000個で「義理チョコの素」を無料で配ったんです。初日にテレビで取り上げられたこともあり、毎日数時間で品切れ状態に。SNSでも大きな反響を集め、義理チョコ=ブラックサンダーという認知を広く獲得することに成功しました。

ところが反省もありました。キャンペーンの盛り上がりとは裏腹に、2月の売上には直結しなかったんです。そこで2014年からは、東京おかしランドに場所を移して義理チョコの販売を行うようになりました。

——2011年にマーケティング部門を立ち上げたとのことですが、いきなりPR活動に力を入れていくのは難しかったのでは?

河合: 確かに最初の頃は、現会長をはじめとする役員陣を説得するのが大変でした。マーケティング部門は私ともう一人の担当者の2名に顧問の先生を加える形で発足したのですが、会長と私たちの間で認識にズレがありまして……。会長は新商品の企画開発のためという思いが強かったんです。ところが、私たちはブランディングに注力すべきだという考えのもと、PR活動に力を入れることにしてしまいました。

私も社長の立場になってから理解したのですが、確かに「ダイレクトに売上につながらない企画に大きなお金を投資できるか」と言われるとなかなか決断が難しい。特にマーケティング部門はできたばかりのチームだったのでなおさら。しかも当時は決まった予算がなかったので、ひとつずつ提案して承認を得ていきました。やはり、100万円を超える提案になると「そんなに使ってはたして効果はあるのか?」と異論も強く、なかなか首を縦に振ってくれないことも多かったです。足蹴にされながら何度も何度も提案と修正を繰り返し、最後は熱意で押し切るような形でさまざまな企画を実現していきました。

売上が70億~80億の時期はPRで話題を作りながら「さすがブラックサンダー!」と言われるような新商品を開発し、それをきちんと小売店に取り扱ってもらえたことが功を奏したのだと思います。

——社内の反応が変わったのはいつ頃でしたか?

河合: 2~3年してからですね。 PRが話題になったからといってすぐに売上に繋がったわけではなかった ので、こちらとしては「もう任せてよ」という思いがあったのですが……。なかなか変わりませんでした。これは反省でもあるのですが、社内へのインナーマーケティングはやっていなかった。実際に何をしているのかわからなかったんだと思います。社員も家族や友人から「ブラックサンダーの義理チョコキャンペーンが話題になっているね」と聞いて知る人も多かったので。そもそも、「マーケティング部門って何してるの?」と思っている社員も多かったはず。もっと全社を巻き込んでいれば、動きやすかったかもしれません。

——とはいえ、多くの商品が誕生しています。遠回りではありますが、現会長が目指していた新商品を増やすことも実現できていますよね。

河合: それについては、半分イエスで、半分ノーかもしれません。会長が望んでいたのは、ブラックサンダーの新商品を増やすことではなく、ブラックサンダーに代わる主力商品の誕生だったからです。ブラックサンダーの派生品が増えているので、そんなに増やしてどうするんだという気持ちかもしれません(笑)。というのも、あまりに種類が増えすぎるとコントロールが難しくなってしまうんですね。本来であれば、主力商品が複数ある状況が理想と言えます。商品の入れ替えが激しい現在の状況では、なかなか難しいところもあるのですが。

——現在、マーケティング部門はどのように動いているのでしょうか?

河合: 現在は3つの組織に分かれています。PR・Promotionを行うコミュニケーション戦略に加え、マーケット情報・消費者動向からブランディングやシリーズ全体の構成を考える商品戦略、新しい品質コンセプトや新規技術開発を行う研究開発、それぞれが独立した組織ではなく相互に絡み合いながら顧客ニーズを捉えられるように編成しております。特にデジタルマーケティングについてはノウハウのある人材が必要なので。

KPIはメディアに取り上げられた件数や商品の売上の変化などを見て総合的に考えるように しています。また、認知度調査を毎年3月に実施しており、認知度と購買数をデータ化して施策の効果も測定。課題が見つかれば、次のプロモーション施策に活かすようにしています。健康診断のようなものですね。

無理をして売上を伸ばすより、健全な企業体質を保つ方が大切

バックナンバー (18)

組織作り その要諦

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  3. 第16回 ゴールを決めた瞬間、控えの選手たちは本気で喜んでいるか?【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
  4. 第15回 史上最強チーム・バルサにはなれないけど、学ぶことはできます【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
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