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連載:第5回 流通小売の未来

ウィズコロナで明暗。コンビニ3チェーン商品戦略の違い

BizHint 編集部 2020年7月20日(月)掲載
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新型ウイルス感染拡大に伴い、人々の生活様式は大きく変化しました。外食需要が激減し、居酒屋は大打撃、オフィス街のコンビニも客数が激減し、代わって生活圏の食品スーパーやドラッグストアは買物客で賑いました。そして、ウィズコロナに移行した今、人々の生活を支える主要チェーンストアは、どのような改革を迫られているのでしょうか。生活インフラの役割を担うコンビニの最新動向を軸に立地戦略と商品戦略を考えます。

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販促企画数が最少のセブンだけが6月前年比で売上増。その理由とは


図1:コンビニ3チェーン既存店前年比(増減率) 2020年1~6月

セブン-イレブンの6月度既存店前年比が1.1%増とプラスに転じた(図1)。2月以来の前年超えとなり、同社の過去の数字と比較して上げ幅は少ないものの、ファミリーマートが8.2%減、ローソンが5.8%減と前年を大きく割り込んでいる中で、セブンの数字は突出している。

コロナ禍の影響を受ける以前は1~2%の差に過ぎなかったが、3月以降は3チェーンともマイナスに沈んだとはいえ、セブンは5%減(台)にとどまり、6月度にいっきに戻した格好である。

セブンは6月度に何か大掛かりな販促を仕掛けたわけではない。販促の企画数でいえば、コロナ禍において3チェーンで最も少なかった。ではなぜ、他チェーンとの差が開いたのか。

前回の記事では、コロナ禍によるファミマの売上減少の要因として、都市部に多い出店立地を挙げた。これはテレワークなどで昼間人口・客数がが減少すること、大きなマイナスの影響を受ける要因になる。一方でセブンは、テレワークや自粛などで客数が増加する住宅立地への出店も進めており、その分が売上にはプラスに働いたことを指摘した。

ここではさらに分析を進め、セブンのコロナ禍における好調要因は、ここ数年の商品政策が寄与していると指摘しておきたい。


図2:セブン-イレブン、年齢別客数構成比

図2はセブンが公表している年齢別客数構成比である。比較として日本の年齢別人口構成比も加えておくが、この図表を見ると2015年から17年にかけて、50歳以上の利用が32%から37%へと急増していることが分かる。この間、日本の50歳以上の割合は45.6%から46.3%へと、わずか0.7%の伸長率でしかないので、セブンが戦略的に50歳以上を取り込んだと考えていいだろう。

少子高齢化、単身世帯の増加、共働き世帯の増加――、この3つの社会構造の変化はコンビニ業界には追い風になると10年以上前から各チェーンの幹部は口にしていた。

高齢者はもともと活動範囲が狭く、さらに免許を返納すれば、遠くのスーパーマーケットへの買物が困難になり、近くのコンビニを利用するようになる。単身世帯が増加すれば、基本は1人用の商品を揃えたコンビニは、家族用を単位とするスーパーマーケットよりも便利になる。共働き世帯が増加すれば、調理時間が不要の加工度の高い商品で固めるコンビニを、もっと利用してもらえるに違いない。

コンビニはそもそも、そうした変化にしっかりと対応していくことがテーマにあった。しかし実際には、上記のマーケットとは関連の薄い都市部の立地や観光立地、郊外ロードサイド立地、ホテルやイベント会場の立地など、さまざまな立地に出店している。限られたマーケットにのみ対応するわけにもいかないからだ。セブン-イレブンも近年は都市部の中心や特殊な立地(2005年1月の東京都庁第二本庁舎への出店がエポックだったが――)にも出店を重ねてきた。

高齢者を取り込む。数年来のセブンの商品戦略

そうはいっても、他チェーンに比較するとセブンは歴史的に住宅立地を押えてきた経緯があり、近年は長期保存できる惣菜パッケージを開発して、中高齢者に好まれる和惣菜や焼き魚、煮魚を提供している。さらに冷凍食品専用の平ケースを導入して、1~2人用の小容量の惣菜や1人分の主食を拡充するなどして中高齢者の支持を集めてきた。

あるいは、売上が急伸しているカット野菜、カウンターで販売する揚げ物惣菜、食パンやクロワッサンなどの食事パンも充実させて高齢者が買いやすい量と価格で提供してきた。

その中で、高齢者を意識した象徴的な商品が、本年6月4日より、たんぱく質を積極的に摂取したいとするニーズに応えた「高たんぱく質」シリーズである。商品は「たんぱく質が摂れる おつまみ冷奴 香り箱」330 円、「たんぱく質が摂れる おつまみ冷奴 蒸し鶏」330 円など3品目。さらに7月8日より「たんぱく質が摂れる 蒸し鶏とたまごサンド」338 円、「たんぱく質が摂れる チキン&たまご(チリ)」340 円を投入している。


セブンイレブンが2020年6月から発売している「高たんぱく質」シリーズ

日々の生活で不足する野菜や食物繊維を取り入れた商品は、セブンだけでなくファミマもローソンも同様に拡充する傾向にあり、コンビニ=健康系を訴求してきた。一方で、健康的な食事は若い女性だけでなく、年を重ねるごとに心身の活力が失われる高齢者の「フレイル※」予防にも意識されるべきである。

※…高齢者が筋力や活動が低下している状態。

一般に中年期まではメタボにならないように食事に気を付けるが、高齢になると痩せている人の方が病気になる確率が高いという。そのため65歳を過ぎると、筋肉の材料となるタンパク質の積極的な摂取がフレイル予防に役に立つ。セブンの高タンパク質シリーズは、近年増加する高齢の客層に訴求できる商品である。

コロナ禍においては感染予防の観点から外食需要が激減し、不要不急の外出自粛が要請され、またテレワークへの移行により、食の市場が大きく場所を変えた。東京のオフィス街や歓楽街に立地するコンビニは時短営業や休業を余儀なくされた。逆に住宅立地では売上が20%、30%も増えたコンビニもあった。売上前年比を1つの数字から見ると実態を把握しづらいが、ウィズコロナはコンビニの出店立地を見直す契機となるし、前述したように中高齢者に向けた惣菜やカット野菜、主食(米飯やパン、麺類など)などを充実させて来店を促していくことになる。

実は大都市部への出店に関して、セブン-イレブンは19年4月4日の決算発表時に出店基準の厳格化を表明している。セブン&アイ・ホールディングス(持ち株会社)の井阪隆一社長は09年5月にセブン-イレブン・ジャパンの社長に就任した当時まで振り返り次のように述べている。


セブン&アイ・ホールディングス代表取締役社長 井阪隆一 氏

「コンビニのパラダイムを変えようと考えた。マーケットを俯瞰すると、少子高齢化、働く女性の増加、遠くまで買物に行く不便が増している中で、小売り店舗数は1980年代から見ると3分の1以上が減ってしまっている。そこで“近くて便利”を提唱し、新たなニーズを掘り起こし成長させてきた」(井阪氏)

「外的な要因として、東日本大震災がきっかけとなり、それまでコンビニを利用する習慣のなかったお客様の支持を得たことも客数の増加につながった。12年7月以降からは既存店前年比を62カ月連続でクリアしている」(井阪氏)

「ところが成長・拡大路線を継続した結果、何が起きていたかというと、ワニの口のように販管費率が上昇し、営業利益率が低下してしまった。そこで今回、事業構造改革に着手して、ビジネスモデルを再点検したい。その意味で“意思のある踊り場”をつくりたい」(井阪氏)

その事業構造改革の1つである店舗政策については、低採算店の増加に対して、出店基準と閉店基準を厳格化していくとした。新規出店を抑制し、閉店を加速させることで「1店舗あたりの経営基盤をしっかりとしたものとし、加盟店が成長の糧をしっかりと感じてもらえる出店政策とし、また既存店に対する政策を見直していきたい」(井阪氏)とした。

販管費については、まず地代家賃の増加を問題視した。09年度の729億円が18年度で1811億円となり約2.5倍。店舗数は09年度が1万2753店舗、18年度が2万876店舗となり、約1.6倍。単純に比較はできないが、店舗数の増加以上に地代家賃の増加が著しい。

これは大都市部への出店が増加していることが要因として挙げられ、出店基準を厳格化していくとしている。

大都市部の一等立地に出店を果たせば「日販」は否が応でも上がる。人の数が圧倒的に多く、食品小売業の競合も少ない。売上を上げるだけなら、コンビニにとっておいしい立地になる。しかしながら家賃が高額になる。今はフランチャイズ契約のほとんどが、チェーン本部が物件を開発して、家賃を毎月支払い、その物件にオーナーをあてがうような仕組みとなっている。オーナーは家賃に関係せず、売上が高い立地であるので、普通に運営していれば、比較的安定した収入が得られる。

しかしながら、高額な家賃を支払い続ける、チェーン本部の収益性が問題となる。今後続くであろう「ウィズコロナ」の期間、大都市部への出店はさらに厳しい状況になると予測されるのだ。

ドラッグストアチェーンの明暗は「食品」と「化粧品」。注力する商品で差が出る

テレワークにより都市部に立地する店舗の売上は大きく減少した。さらにインバウンド需要がほぼゼロになり、百貨店が近年頼りにしたアジア各国からの観光客は売場から消えた。緊急事態宣言下により休業していた百貨店は、6月度に営業状況を元のかたちに戻すものの、軒並み大幅な売上減を余儀なくされた。

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