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2017年11月16日(木)更新

新卒一括採用

新卒一括採用とは、新卒者を対象として決められた期間にのみ求人を行い、採用試験を在学中に行った上で内定を出し、卒業後にすぐ入社するといった日本独自の雇用慣行です。今回は、新卒一括採用のメリット・デメリットと、国内・海外における新たな潮流についてご説明します。

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新卒一括採用とは?

新卒一括採用とは定期採用とも呼ばれており、海外では類を見ない独自性の高い日本固有の雇用戦略です。

長きに渡って多くの企業で取り入れられてきた方法だけに、企業側と新卒者それぞれに対するメリットを有しており、日本の国民性やビジネスシーンにもマッチした合理的な採用方法であるという高い評価を得てきました。

しかし、現在もなお続いているといわれる就職氷河期の影響やビジネス全体の欧米化という環境変化から、この新卒一括採用を見直す時期に入ったのではという意見も多く耳にすることとなりました。

新卒一括採用の成り立ち

新卒一括採用はどのような時代背景を経て、日本独自の雇用慣行として定着するまでになったのでしょうか。

ホワイトカラー層に限定した一括採用

新卒一括採用の起源はとても古く、明治時代に管理職や事務職などのいわゆるホワイトカラー層の採用方法として一部の企業において取り入れられていたことが始まりだといわれています。

人材不足をきっかけに在学中に採用する雇用慣行が拡大

経営力を高めることによって企業の土台を固め、安定した経理を行うことを目的として始まったホワイトカラー層の一括採用でしたが、1914年から始まった第一次世界大戦による大戦景気の影響によって深刻な人材不足が発生し、各企業が一人でも多くの高卒者を自社に採用しようと力を入れたことがきっかけとなり、在学中に入社選考と採用を行うという雇用慣行が広まりました。

その後、昭和金融恐慌や世界恐慌の影響から学生の就職難が社会問題となり、1929年に学生の定期採用については在学中に行わないものとする協定が結ばれることとなったのです。

卒業後に採用者を決めて、雇用を行う。 これが現在まで続いている新卒一括採用の原型です。 しかし、実際には多くの企業が卒業前の段階で採用する新卒者を確定させていました。 これは一体どういうことなのでしょうか。

協定締結によって採用戦争に落ち着きを取り戻すかと思われましたが、魅力的な人材にいち早く接触して自社への入社を確定させてしまいたいと考えた多くの企業によって新しい採用方法が生み出されました。

在学中に面接で採用者を決定しながらも、正式な採用は卒業後に決定するという建前を取ることによって、協定を破ることなく雇用者の確保を行う形態を取り始めたのです。 この在学生に対して行われた採用の確約は、採用内定制度として今も根強く残っています。

在学中に入社選考と採用内定を済ませておき、卒業後にすぐ正式雇用が行われる現在の新卒一括採用は、このように様々な歴史的影響を受けながら変化を遂げて完成に至っているため、日本企業にとって使い勝手の良い採用方法として慣行化されたのです。

【参考】新卒採用はいつ始まりどう変わってきたか?日本独自スタイルの歴史と背景

日本型雇用システム(日本的雇用慣行)との関連

新卒一括採用は『終身雇用』『年功序列』『企業別組合』の3つの柱で構成される日本的雇用システムとも大きな関わりを持っています。

新卒一括採用を行う企業側の思惑の1つに長期的な教育があり、それを支えるための前提条件として『終身雇用』が、そして長期的教育による成果に応えるために『年功序列』が必要とされるのです。

新卒であるということだけを唯一の応募条件として未経験者に対しても門戸を開くという新卒一括採用は、その職種や業種におけるスキルを持っていることを応募条件とする海外の企業からすると理解し難い採用方法ですが、日本人固有の時間をかけて育成するという考え方に見事にリンクした、理にかなっている採用方法だといえるのです。

【参考】日本型雇用システムの特徴とメリット・デメリット

【参考】年功序列の意味とは?メリット・デメリットを含め徹底解説

新卒一括採用のメリット

今現在も多くの企業が取り入れている新卒一括採用ですが、この採用方法は企業に対してどのようなメリットをもたらしてくれるのでしょうか。

より多くの人材に一括してアプローチを行える

新卒一括採用が一般化している日本では、日本経済団体連合会(経団連)の作成する指針に従って企業へのエントリーが可能となる就活解禁日というものが設定されています。

そのため、就活生達はこの就活解禁日に合わせて企業情報の収集や応募する企業の検討を行っていくのです。

企業側からすれば同時期に多くの人材が自社への興味を示してくれるということであり、このタイミングに合わせてアプローチを行うことによって非常に効率の良い自社PRが可能となります。

その結果、採用検討対象者の母数となるエントリー数の増加にも期待ができ、多くの人材を必要としている企業や優秀な人材を探している企業において、採用目標の達成率を高める好環境が形成されているのです

人事管理の一本化

新卒一括採用では採用時期が毎年1度しか訪れないため、面接や試験の実施と採用判断にかかる手間や人事部への負担を最小限に抑えることができています。 全ての新入社員の入社時期も同じになるため、採用年度毎のグルーピングによって人事評価や待遇の変更などの管理も容易なものとなるのです。

グルーピングによる人事評価の容易化は年功序列制度の管理の容易化にも直結するため、日本的雇用システムの4本目の柱として新卒一括採用をあげる声も少なくありません。

教育コストの軽減

社会経験がほぼ皆無となる新卒者を卒業と同時に自社へ雇用するということは、経験やスキルを活かした即戦力としての活躍を期待するのではなく、時間をかけて教育を行い、自社の求める人材へ成長してもらう道を選択するということです。

教育係の選定から始まり研修の準備や実施、研修後の成長評価と、新入社員の教育コストは決して低いものではありません。

しかし、新卒一括採用により決められた入社時期にまとめて新入社員が入ってくることによって、社員研修を一括化できるだけでなく、その後の成長過程についての評価も予め定めておいた基準に照らし合わせることで容易に行うことが可能となるのです。

全国各地で採用した新入社員を一ヶ所に集めて研修を行うなど、広範囲において採用を行う企業ほどこの効果を実感することが出来るでしょう。

また、終身雇用制度と年功序列制度による長期雇用を前提として入社しているため、若手社員の短期退職率は減少し、育成した社員が自社において長期的に活躍してくれることで余計な教育コストの削減を更に削減できるのです。

同期社員間での競争力の上昇

同年度における新入社員達はいずれも同じタイミングで入社し、研修を受けて現場に送り出されるため、互いの成績や評価の差が数字として表面化してしまいます。

この表面化により、同期社員は仲間であると同時にライバルでもあるのだという意識が生まれ、互いに刺激し合い、相乗効果によって大きく成長することが出来るのです。

企業への忠誠心と個人の組織への同化

新卒者は他企業の就業規則や就業倫理に対する知識が乏しく、先入観の無い状態で入社するため社風の受け入れに大きな抵抗を感じることがなく、組織への同化がスムーズに行える傾向があります。

また、長期的雇用を前提としていることから、企業への忠誠心も育むことが出来るのです。

新卒一括採用のデメリット

新卒一括採用には多くのメリットがあることが分かりました。 では、新卒一括採用のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

応募段階で弾かれてしまう人材の存在

新卒一括採用では年度毎に決められた時期にしか入社タイミングを用意していないため、以下のような人材に対しては応募の機会すら与えられていません。

  • 新卒一括採用の時期に海外留学中で就職活動を行えない人
  • 新卒一括採用の時期に病気などのやむを得ない事情により就職活動を行えない人
  • 大学の卒業時期が9月であり、4月入社などの入社条件に合わない人

どれだけ素晴らしい能力を持っていたとしても、年に一度しか設定されていないタイミングに合わせて入社出来ない人材は対象外とされてしまうのです。

景気変動により採用が変動

求人数は景気の変動に大きな影響を受けます。 好景気であれば多くの求人が世の中に溢れることとなりますが、不景気に入ると途端に求人数は減り、有効求人倍率も激減してしまいます。

このような景気の変動による恩恵と負担の全てを受けるのが、その年度に卒業する新卒生達なのです。

新卒一括採用の場合、自分が卒業する年の景気の状態によってスタートラインの難易度が大きく変動することとなり、前年度や翌年度の新卒生達との平等性に欠けてしまうことが指摘されています。

やり直しのきかない社会

新卒のタイミングでの就職に失敗してしまった若年層の求職者は、その後も定職に付くことが出来ずに就職難に陥るケースが多いことが調査の結果からも判明しています。

この問題の背景には、新卒一括採用によって入社することの出来た新卒生達が企業の教育によってスキルを高めキャリアを形成していく一方で、派遣労働やアルバイト、パートなどの非正規雇用の場ではスキルの習得やキャリアの形成がほとんど行われないため、双方の持つスキル量の差は日に日に拡大することとなり、定職確保のハードルがどんどん高くなっていってしまっているという現状があります。

学業への悪影響

採用は卒業後に行わなければならないという協定を掻い潜るために生み出された内定制度が長年問題視されてきましたが、その内定を出すことを約束する内々定という制度まで誕生したことによって、近年における就職活動は以前よりも更に早い時期から開始することが暗に求められています。

その結果、内定や内々定を獲得することに意識が集中してしまい学業が疎かとなり、中には必須単位の取得が行えなかったことによって内定が取り消しされてしまったという本末転倒の事態も起きてしまっているのです。

就職活動の早期化の原因として様々な説があげられていますが、企業側が学生の学業における成績についてはそこまで重要視しておらず、卒業時のスキルよりも学生自身の持つポテンシャルを重視して採用を行う日本古来の採用方法が大きな影響を与えているのではないかという説が有力です。

新卒ブランドを維持するための留年

新卒者という条件だけで求人に応募することができる新卒一括採用は、在学生にとってこれ以上ない大きなアドバンテージを生み出してくれます。

そのため、卒業年度の採用試験に失敗してしまった学生の中には、新卒者という肩書きを翌年度に持ち越すために留年という道を選ぶ者もいるのです。

社会人としての時間を1年失ったとしても留年するだけの価値が今の新卒採用現場にはあります。

それは新卒者と既卒者の間に努力だけでは埋めることの出来ない大きな差が生まれているということであり、在学中に就職先を決めなければその後の人生に大きなダメージを残してしまうというプレッシャーを背負いながら就職活動を行っている学生達が多いことを示すでしょう。

特定期間に選考負荷が集中

昨今は経団連加盟企業の採用開始が名目上遅くなり、ベンチャー企業など非経団連加盟企業で採用に主体的な企業は前倒す動きが強まっていますが、依然として新卒採用においては特定の期間に面接・面談などの選考活動が集中し、何より人事関係者が忙殺されます。

特に最近では採用手法の多岐化し、求人倍率も高騰し続けているため、自社に即した人材を採用するためには主体的な採用活動が求められ、更に困難を極めています。

テクノロジーの利用有無による選考負荷の乖離

こうした状況下において、テクノロジーの利用有無により更に負荷のかかり方に差が生じています。

具体的には採用管理システムなどの採用オペレーションを効率化するシステムを導入し負荷を軽減している企業と依然全てマニュアル(人力)で行う企業では、候補者を口説くことや採用手法の最適化などコア業務に投下できる時間が異なり、採用力に差が開きつつあります。

採用管理システムの効果について、人事向けニュースサイト「BizHint HR」編集部では、中立的な立場で独自調査を行い、国内で提供されている採用管理システムの比較一覧を作成しましたので、ご参考ください。

近年の「新卒一括採用」を巡る指摘

このような様々な問題に対して以前より多くの指摘や批判がなされてきましたが、新卒一括採用そのものに大きな影響を与えるまでの力とはなりませんでした。 しかし、最近になって多くの有識者や国の重要人物などがこの問題に対して追求を始めたことによって、やっと変化の兆しが見えてきたのです。

近年の新卒一括採用を巡る一連の流れを振り返ってみましょう。

就職協定の廃止

1929年に一部企業間で結ばれた新規採用についての協定は、1953年に大学、日経連、文部省、労働省を中心とする就職問題懇談会によって就職協定という正式な協定へと生まれ変わることになりました。

しかし、この就職協定には罰則規定が一切なく、紳士協定だったために多くの企業が守らず、 形式だけのものとなってしまったのです。

その結果、幾度もの内容変更や一時廃止を繰り返し、1996年ついに完全廃止が決定してしまいました。

守られない倫理憲章

廃止されてしまった就職協定に代わる新たなガイドラインとして翌年の1997年に登場したのが『新規学卒者の採用・選考に関する倫理憲章』です。 この倫理憲章は経団連が中心となって定めたものであり、今現在も使用されています。

しかし、この倫理憲章においても企業に対する強い制限を行う文面は見られず、『尊重』や『自粛』といった表現が多く使用されていたため、就職協定の頃と大きな変化が見られることはありませんでした。

そのような現状に対し、2003年の改定時に『卒業学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む』という一文を盛り込むことによって、就職活動の早期化による学業への悪影響を無くしたいという強い意思表示が行われました。

そして、この改定内容について当時の日本経団連加盟企業の約半数に当たる644社の企業が賛同の意思を表したのです。

この改変によって選考活動開始時期を遅らせ、在学時の学業集中へ繋げることが出来るのではと期待されましたが、賛同表明を行った644社という企業数は日本全国に存在する企業全体からみれば僅かなものでしかなく、国全体に影響を与えるほどの革命的な変化を起こすことは出来なかったのです。

それどころか、近年では面接ではなく面談という形式を取るリクルーター制度をはじめ、これまでとは異なった採用方法の導入によって更なる就職活動の早期化を図る企業も増えてきています。

【参考】リクルーターの意味とは?制度の全貌と、取り入れている企業について

安倍内閣による労働ビッグバンの閣議決定

就職活動の早期化によりポテンシャル採用思考が高まった結果、新卒者と既卒者の間にある大きな壁は更に厚いものとなっていきました。 同じ大卒者でありながらも新卒か既卒かという僅かな違いだけで採用機会に差が出てしまう採用事情は日本特有のものであり、世界で同じような採用方法をとっている国はほとんどありません。

本人の努力ではどうしようもない差を解消し、やり直しのきかない社会を一新することを目的として、2007年に第1次安倍内閣は労働ビッグバンを提唱しました。

労働ビッグバンでは長期のデフレなどの影響による就職難や経済的困窮状態からの再チャレンジが行えるよう、新卒一括採用システムの根本的見直しや平等な雇用機会の確保など様々な目標を掲げました。

しかし、国が率先して行った構造改革をもってしても、新卒者優先の採用事情を変えることは出来なかったのです。

この構造改革に大きく関わっていた竹中平蔵氏は著書において『既得権益を失う労働組合や、保険や年金の負担増を嫌う財界の反対で頓挫した』と当時を振り返っています。

3大臣が連名で通年採用を呼びかけ

新卒一括採用システムが進まない現状を受けて、2010年に青少年雇用機会確保指針が改正され、その文面内に「卒業後、少なくとも3年間は新卒者として応募できるように」という内容が盛り込まれることとなりました。

さらに翌年の2011年には厚生労働大臣と文部科学大臣、経済産業大臣が連名にて主要経済団体などに対して通年採用の拡大を図っていくように要請を出したのです。

3省連携による未内定就活生向け集中支援の開始

2013年度より、厚生労働省、文部科学省、経済産業省の3省連携による未内定就活生支援策として『未内定就活生への集中支援』が開始されました。

既卒者の支援も先々での視野に入れ、まずは新卒者の大学卒業時就職率を高めようという目的から実施された政策であり、毎年多くの未内定就活生が新卒応援ハローワークの利用やジョブサポーターの支援によって就職先を決めることができています。

厚生労働省、文部科学省、経済産業省の3省は『未内定就活生への集中支援』の成果がしっかり出ている現状を確認した上で、次なるステップへと政策を進めることにしたのです。

世耕弘成経済産業大臣が新卒一括採用見直しを強く要請

2016年8月4日、世耕経済産業大臣はNHKのインタビューに対し、新卒一括採用を見直す時期にきているという見解をはっきりと示しました。

世耕経済産業大臣はその理由として、新卒一括採用による影響で短期退職率が増加しており採用側も採用される側もともに負担を感じているとしましたが、実際の入社3年以内における離職率を見てみると企業規模と離職率が反比例しており、新卒一括採用と短期退職率に確かな因果関係が存在しているとは言い難い状況であることが分かります。

しかし、経済産業大臣が新卒一括採用という問題について、メディアを通じて直接的な見解を述べることはこれまでになかったため、この一連の発言が大きな波紋を呼び、日本経済全体に大きな刺激を与えることになったのです。

新卒一括採用が無くなった際に生じる学生側への影響

新卒一括採用から通年採用へ変えていこうという声が高まっていますが、新卒一括採用を完全に廃止した場合に就活生達はどのような影響を受けることになるのでしょうか。

メリット

多くの企業が通年採用を取り入れることによって次のようなメリットが生まれます。

自分に都合の良いタイミングで就職活動を行える

これまでは採用情報が公開される就活開始や採用内定が与えられる選考開始の時期を意識し、前倒しする形で就職活動の開始時期や活動予定を組み立てることが一般的でした。

しかし、通年採用となりいつでも求人応募が可能となることによって、自分自身のペースで企業や業界の研究を行うことができ、就業意欲をしっかりと高めた上で就職活動を開始することが出来るようになるのです

それによって自己形成や学業に重点を置くことができ、より充実した学生生活を送ることが出来るのです。

就職前の留学など、長期的な活動を行えるだけの自由が手にはいる

学生時代とは本来、自分の可能性を自由に模索するための時間であるべきですが、新卒一括採用においては自由を選ぶためにとても大きな権利を自ら捨てなければならなかったのです。

グローバル社会においてこの考え方は古くなりつつあり、若者達から柔軟さを奪う悪しき慣例ではないかという声も上がっています。

新卒一括採用という新卒者限定の特権を逃したくないという理由から在学中の留学や長期的活動を諦めていた学生達も、通年採用であればそのような心配をすることなく自分らしい生き方を選ぶことが出来るようになります。

これは個性を持つ新社会人を生み出すという観点からみても、日本経済に大きなメリットとなるでしょう。

積極的な転職によるスキルの構築

新卒一括採用という最大規模の就職機会を逃してしまった新卒者達は、その後の就職活動において数々の不利な条件を受けることになります。

その一方、新卒者として採用された場合においても会社のカラーにしっかりと染まり、レールからはみ出さない様に走り続けることでしか社会人としての平穏を保つことが出来なかったのです。

一つの会社でしか通用しないスキルではなく汎用性の高いスキルを身につけたいと思っても、再就職の難しさを知っているために二の足を踏んでしまい、自己の成長を諦めている人は決して少なくありません。

この現状こそが新卒一括採用最大の問題点であり、日本全体を覆う社畜体質の根源なのだという厳しい意見もあります。

しかし、通年採用になれば採用応募の機会が拡大されるため、更なるステップアップを目指して転職するという選択肢を選ぶことも出来るようになるのです。

デメリット

新卒一括採用から通年採用へと変わることによって多くのメリットが生まれる一方、次のようなデメリットも発生します。

企業側のコスト増大により、採用枠が減る可能性がある

通年採用の導入により、採用情報の周知、候補者集め、選考、採用、教育という採用プロセスをその都度行うことになるため、企業側の新規採用コストの増大が容易に想像できます。

これまで以上に新規人材枠への予算を割くことは簡単ではないため、多くの企業は予算内で採用出来る人数に減らすことで妥協し、結果として採用枠が減少することが予測されます。

採用合格率の低下

新卒一括採用であれば年度毎に何人採用するという採用目標を掲げた上で採用活動を行うため、応募者総数という母数が何人であろうと上位何名という形で採用者を決定していました。

しかし、通年採用により1人あたりの採用コストが増加するとなると、これまでのように安易な判定基準で採用通知を出すわけにはいかなくなるのです。

採用活動が長期化すればするほどに企業の負担は大きくなるため、際限なく求人を出し続けておくわけにはいきません。

ですが、それ以上に短期退職やリストラチャリング(=リストラ)よる採用活動の繰り返しの方が大きな負担となるため、人材の厳選を行う必要があるのです。

一定の知名度を誇る企業であれば、今月応募してきた求職者全員を不合格にしたとしても、また来月には別の求職者が応募してくるでしょう。

そのため、採用コストと人材への期待度のバランスを重視した採用ラインの設定を行う企業が多くなり、どれだけ応募してもなかなか合格することの出来ない状況が発生する可能性が怪訝されています。

中小企業の採用情報の埋没

決められた期間にのみ採用情報を提供することで十分に情報が周知できていた新卒一括採用に対し、通年採用では情報公開に関するコストだけでも大きな負担となるため、予算に余裕のある大手企業の採用情報がより目に付く場所に並び、中小企業の採用情報が埋没してしまう危険性が指摘されています。

そのため、これまで以上に求職者側の情報収集スキルが求められることになるでしょう。

複数の企業を並行して比較検討しにくくなる

企業側に大きな負担がかかることとなる通年採用においては採用に関する情報が常に入手できるとは限らず、同業種内で比較検討を行いたくても情報が揃わないというケースが発生することが予測されます。

これにより業界研究の効率が大幅に低下し、正確に比較を行えないために企業選択における決断力を鈍らせてしまうというデメリットも生じることとなるのです。

人材の流動化により、キャリアがなくとも即戦力を求められる

新卒一括採用の目的は長期間育成による人材の熟成でしたが、通年採用の場合には主に空いているポストの穴埋めを目的とすることになり、従来のようなポテンシャル型の評価制度から豊富なスキルと経験を持つ即戦力型の評価制度に変化していくと考えられています。

そのため、これまでは新卒者という肩書きさえ持っていれば誰でも応募することが出来た企業であっても、大学卒業時では満たすことの出来ない経験年数や資格などの応募条件が追加されてしまう可能性があるのです。

非正規雇用期間やインターンシップの長期化

新規雇用の対象者として即戦力を求める企業が増えることにより、専門的な職種においては一定の経験が必須条件となってきます。 しかし、新卒者だけでなく既卒者であっても、同業種において十分な経験を積んでいる人はそう多くありません。

そのような求職者事情を逆手に取り、長期に渡っての非正規雇用やインターンシップを正規雇用応募の最低条件とすることで、即戦力レベルまで育った求職者のみを正式に雇用し、期待するラインにまで至らなかった求職者については容赦なく切り捨てるといった採用方法を取る企業も出てくると考えられます。

【参考】新卒採用とは?メリット・デメリットを徹底解説

日本と海外における新卒採用指標の差異

新卒採用指標(新卒採用基準)とは、企業が就活生に対して求める基準や項目のことを指します。 大きな変化を遂げようとしている日本の新卒採用市場ですが、現在の日本と海外における新卒採用指標の差異はどのようなものとなっているのでしょうか。

日本:ポテンシャル採用

日本における新卒採用指標は完全なるポテンシャル型であるといわれています。 しかし、新卒者の採用を検討する際に応募者の将来性についてどのように評価や判断を行っているのでしょうか。

学歴をポテンシャルとして評価する日本社会

まだ社会経験の少ない新卒者の評価を行うにあたり1番有力となる情報は学歴です。

日本では多くの企業において、すでに一定のスキルを保有している低学歴の労働者よりも未経験者で高学歴の在学生の方により高い将来性を見出し、高評価を行うといった傾向があります。

コミュニケーション能力や言語能力など、仕事を行う上で有益とされる能力と学歴に一定の相関関係が存在しているという研究結果もあり、企業もこれまでの経験則から高学歴の人材ほど長期的な視点でみた場合に企業に貢献するであろうという認識を持っているのです。

このように、日本社会において学歴は将来に向けたポテンシャルとして評価しているため、採用基準の最優先事項として用いられることが多いのです。

責任の所在を曖昧にしたい日本人の性質にもマッチしている

採用決定を行う際にスキルを重視する場合には、各専門部署トップなどスキルを正しく評価できる人材を用意する必要があります。 しかし、学歴をベースとしたポテンシャル採用においてはそのような必要性はなく、採用基準さえしっかりと定めていれば誰でも同じ評価を行うことが出来るのです。

そのため、採用後の成長速度に問題があった場合においても各部署のトップは「そもそものポテンシャルに問題があったのだろう」と責任を逃れ、人事側の人間もまた「採用基準に沿って選んだのだから自分が悪いわけではない」と責任を逃れることが可能なのです。

ポテンシャルという実体の無い評価基準を用いる背景には、責任の所在を曖昧にしたいという日本人の性質も大きく関わっているのかもしれません。

海外:即戦力採用

日本における新卒採用指標がポテンシャル型であるのに対し、海外で多く採用されているのが即戦力型です。

その名の通り即戦力としての活躍を期待しているため、求人応募の条件にスキルや経験といった項目が追加されます。 その反面で学歴に対する評価は日本に比べて低く設定されており、学歴が無くてもスキルでカバーすることが出来るといった点で何歳からでもやり直しがきく社会であるといえます。

しかし、努力や経過については一切評価の対象として扱わないというシビアな一面も有しているため、結果を残すことが出来ない人にとってはいつまでも報われることの無い社会であるともいえるでしょう。

世界各国の新卒者採用事情

世界の各国において、新卒者の採用はどのように行われているのでしょうか。

アメリカ

アメリカでは大学や大学院在学中に学内で開催されているキャリア・デベロップメント・セミナーに参加することからキャリア形成が始まります。

エリート職については学力に特に大きなウェイトをおいて評価を行うアメリカですが、一般職や技術職については職歴やスキルの評価が高く、何度も転職を繰り返しながらキャリアアップを目指すという考え方が根付いているため、ジョブインタビュー(面接)の練習によって、様々な面接形式に対応できる準備も行っておく必要があるのです。

在学生の場合はインターンシップの経験を職歴として記入するため、企業側のインターンシップに対する理解も非常に深まっており、多くの企業が前向きに学生を受け入れる体制を整えています。

採用時期についてはほとんどの企業が不定期となっており、ポジションに空きが出次第随時募集を行うという形を取っています。 また、日本のような終身雇用といった考え方は存在しないため、雇用されたとしても企業の求めている人材ではないと判断された場合にはすぐに解雇されてしまうという厳しい一面もあります。

ドイツ

ドイツでは大学だけではなく中学や高校の教育の一部に企業での職業研修が組み込まれていることも多く、インターンシップに対して非常に力を入れています。 その一方で教育も疎かにすることのないよう、就職活動は卒業後に開始するのが一般的となっています。

新卒者用の求人というものは特に用意されておらず、全ての求職者が同じ土俵で争うこととなります。 そのため、新卒者の多くはトライアル雇用のような形で1、2年の期限を設けた雇用契約を結び、その間の働きぶりによって雇用契約の延長や正式雇用へと段階を踏んでいくのです。

フランス

フランスでは学校公認のスタージュと呼ばれるインターンシップ制度があり、学校側に手数料を支払い(学校によっては無料の場合や割引がある場合も)スタージュ証明書を発行してもらうことによって、立派な職歴として扱うことが出来るようになります。

このスタージュは早ければリセ低学年(日本で16歳前後)から開始することもあり、学校によっては1日の半分以上をインターンシップに費やすこともあります。

学業の一環としてスタージュによって職務経験を積むことが一般的となっているため、基本的に給料は無給または低賃金で設定されており、インターンシップ先の企業によっては繁忙期を乗り切るための労働力として学生を使用するなどの問題も出ています。

また、インターンシップを通じて正式採用されることもありますが、ほとんどの場合には期限付きでの雇用契約となるようです。

韓国

韓国では一部の企業により新卒一括採用が行われていますが、日本の就職事情と大きく異なる点として人材募集時の年齢制限禁止があります。

2009年に施工された施行された年齢差別禁止法によって、『○歳以下』『○年度新卒者のみ』『大学卒業後○年以内』などの一切の年齢条件が禁止となり、新卒者と既卒者の差を無くすことに成功したのです。 ただし、日本のように厳しい解雇規制による完全雇用が保証されているわけではないため、突然の解雇による失業者の増加という別の問題が存在しています。

国内における新卒者の就職事例

これまでほぼ全ての企業が行っていた新卒一括採用ですが、グローバル化にともない新しい採用方法を取り入れる企業が増えてきました。 採用方法の多様化は新卒者や既卒者達の就職活動にどのような影響を与えていくのでしょうか。

ヤフー株式会社

大手検索エンジンYahoo! JAPANでおなじみのヤフー株式会社では、新卒一括採用を廃止し『ポテンシャル採用』という独自の採用方法を実施していくことを発表しました。

『ポテンシャル採用』では2016年10月以降に応募する全ての職種において通年採用を行い、対象年齢も18歳以上30歳未満、新卒や既卒は一切問わないなど積極的な採用姿勢を示しています。

就業未経験者の入社時期は4月と10月に限られますが、就業経験者であればいつでも入社できるというのも求職者側にとって大きなメリットであるといえるでしょう。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社では2015年より『ユニバーサル採用』を取り入れています。 『ユニバーサル採用』は従来のポテンシャル採用の対象者や選考時期、対象年齢などを拡張して継続しつつ、即戦力採用も取り入れるといった非常に柔軟性の高い採用方法となっています。

ポテンシャル採用では入社後の育成を前提とするために応募条件は入社時に30歳未満という年齢制限のみとなっており、給与や待遇は一律。 それに対し、即戦力採用ではポジションにあったスキルや能力を求められる一方で、能力に応じて給与や待遇にも差がつくようになっているのです。

明確に分けられた異なる性質の採用方法を提示することによって、求職者達は今の自分の持ち合わせるスキルと照らし合わしながら応募方法を選ぶことが出来るようになっています。

株式会社ファーストリテイリング

ユニクロで知られる株式会社ファーストリテイリング社では、グローバルリーダーとなる社員を育成するべく、独自の通年採用システムを取り入れました。 このシステムには『大学1年生からでも応募できる』『一年に一度、何度でも応募できる』『最終面接まで最大3年間の猶予をもてる』という3つの大きな特徴があるのです。

一次選考の合格者を対象として複数回の面接や適性検査を行い、その後店舗と本部にてそれぞれ1日ずつのインターンシップを実施し、最終面接という採用プロセスを踏むこととなりますが、インターンシップ終了時に『ユニクロパスポート』が発行され、それを持っていれば3年以内の好きなタイミングで最終面接から参加することができるようになるのです。

大学1年生から参加できるという部分に対して賛否が分かれるところではありますが、就活生に対する選択肢が増え、早い段階からインターンシップに参加することで仕事に対する意識改革を行えるという面では非常に優れた制度だといえるのではないでしょうか。

株式会社リクルートライフスタイル

2017年1月23日、リクルートライフスタイル社が『新・新卒採用』という新しい採用方法を発表しました。 『新・新卒採用』では、大学3年の3月から27歳までという年齢制限を設けながらも通年採用を取り入れ、更にファーストリテイリング社と同様の『2Year パスポート』というパスポート制度も取り入れているのです。

ただし、ファーストリテイリング社と大きく違うのは『最終面接パスポート』と『入社パスポート』の2種類を用意している点。 『最終面接パスポート』はその名の通り、2年以内であれば最終面接から再開が行えるというもの。 そして『入社パスポート』は内々定受諾者に対して、2年以内であればいつでも入社することができるという権利を与えるものとなっているのです。

その間の2年間を使用して何を行うかは完全に内々定受諾者の自由となっています。 旅行や勉強、趣味、スキルアップと個々の充実した時間を過ごすことによって、入社後の活躍やモチベーションアップに繋がると考えているのです。 最終面接から入社までにタイムラグを生むことは、企業にとって大きなリスクとなるでしょう。

だからこそ、この挑戦的な採用方法に対して大きな注目が集まることとなったのです。

また、リクルートライフスタイル社はこれまでにも就活に関する斬新な提案を多く行ってきました。 大学1年生から30歳の人であれば誰でも、そして365日いつでもエントリーすることの出来る、最低2ヶ月間からの本格インターンシップ『DESHIP』。

そして、実際の現場で働く個性豊かな社員から給与や社内恋愛まで包み隠さず本音で話を聞かせてもらうことの出来る『Worker ZOO』。 通年採用の導入を検討している人事や経営者達は、『DESHIP』や『Worker ZOO』などの就活施策や『新・新卒採用』がどのように日本の新卒採用市場に影響を与えていくのか注視していく必要があるでしょう。

まとめ

  • 新卒一括採用は日本人と非常に相性の良い雇用慣行だといえる。
  • 世界のスタンダードである通年採用を導入する動きが強まっている。
  • ポテンシャル採用と即戦力採用を併用する企業も登場している。

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