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2019年11月12日(火)更新

内定者研修

採用難や就職観の変化、少子化、グローバル化など様々な理由により、重要性が高まり続けている内定者研修。しかし、「周りの企業がやっているから」など、明確な目的意識を持たないまま内定者研修を実施している企業は決して少なくありません。重要性を正しく理解し、ノウハウを学ぶことで、内定者研修の精度は大きく向上します。今回は、株式会社グロービスで内定者・新人向けサービスの運営を担当する寺内健朗さんに、内定者研修の重要性が高まっている理由や研修内容、研修の設計方法、成功させるポイント、内定者研修のあるべき姿について語っていただきました。

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内定者研修の重要性が高まっている理由

なぜ、内定者研修が必要になってきているのか。日本経済と企業を取り巻く大きな環境の変化からお伝えします。

まずは「 働き手の減少 」です。少子化により若い働き手が年々減っていくなかで、多くのベテラン層が退職していきます。そのため、どの企業も限られた人材でどのようにビジネスを進めるかについて、大きな課題感を抱いています。

つぎに「 国内需要の変化 」です。高齢者比率の増加と、本格的な人口減少が進むことから、国内の消費全体も減少方向にあるため、今までとは違う顧客や事業を開拓していかなければ生き残れない経営環境が到来しつつあります。そのため、どの企業もITの活用や新規事業の開拓、グローバル展開に着手せざるを得ません。

働き手は減少し、ビジネスを取り巻く環境も複雑さを増しています。このような状況に対応するため、 若手人材を少しでもはやく一人前に育て上げ、一段高いマインド(心構え)やスキル(技術)を持った状態でビジネスに参画してもらうことが、企業が勝ち残るためのカギになるでしょう。

そのため、新人社員の早期育成が非常に重要な課題となっており、「これまでの入社後の研修だけではたりない、間に合わない」と感じている企業も増えてきていることから、内定者研修で育成のステップを一段階早め、しっかりとしたマインドやスキルの土台作りを行う必要性が高まっているのです。

近年の若者の志向性も要因のひとつ

内定者研修は内定辞退防止の役割も果たします。これは近年の若者の志向性に関係があります。

近年の若者の多くは「 物質よりも精神的な満足 」という考え方の傾向が強く、 企業に対し「自己成長」や「自己の価値感」の優先を期待しています。

そのため、内定者研修を通じて「この会社に入社したら自分は大きく成長できそうだ」と思ってもらえることや、「自分の価値感と合っている」と感じてもらうことが大事です。そのように感じてもらうことで、企業に対する信頼感や愛着も強まっていくでしょう。

このような「働き手の減少」や「国内需要の変化」「若者の志向性」といった背景から、早期育成や内定辞退の防止、早期離職の防止などの効果を期待できる内定者研修に、多くの注目が集まっているのです。

内定者研修の内容一例

では、内定者研修にはどのような内容を組み込むべきなのでしょうか。

2019年の春に企業に対して行ったグロービスの「内定者フォロー研修」に関する調査によると、業種・企業規模に関わらず「ビジネスマナー」「会社の基礎知識」「コミュニケーション」「論理思考」が、有効であると思うコンテンツとして、多数の声があがっていました。

多くの企業が内定者に対して、どの部署でも活用できる汎用的なスキルを習得させたいと考えているようです。

その中でも、内定者研修を構成する上で特に重要なのが、自分の頭で考える力の土台となる「 論理思考 」と、チームで物事を動かす力の土台となる「 コミュニケーション 」でしょう。これらの考え方は、限られた働き手の中で複雑なビジネス環境に対応していくために不可欠な能力といえます。

グロービスが提供する内定者研修のサービスでは、内定者がこれからのビジネス環境で活躍していくための土台として、「 ビジネスの基礎知識 」「 考える力 」「 動かす力 」「 ビジネスの心得 」という4つの要素が重要であると考えており、それらの要素を学んで頂く中で「論理思考(論理的に考える)」や「コミュニケーション(相手に合わせて伝える力)」は重要な内容として取り入れています。

また、「論理思考」や「コミュニケーション」といった基本的なスキルの向上だけでなく、自社理解の延長として企業側と内定者側の「 価値感のすり合わせ 」を取り入れるのも有効です。若手の転職も珍しくない現代社会において、今いる会社で長く、しかもお互いに納得した状態で活躍してもらうには、企業と個人がしっかりと対話を行い、お互いの価値観をすり合わせることが大切です。でなければ、「自分のしたい仕事じゃない」や「仕事が面白くない」といったギャップが生まれ、結果として離職につながることもあるでしょう。

忙しい人事担当者にとっては、時間的な難しさがあったり、取り入れる方法がわからないと感じられるかもしれませんが、大切なことは、内定者側の持っている将来の夢や生き方を引き出した上で、それを否定せずに働きながらどのように実現できるかを相手の身になって一緒に考えてあげることです。内定者研修の中では、自社理念の説明に絡めて対話をしたり、研修の場でなくとも懇親会の中で話すだけでもよいでしょう。

その中で相手の価値観を評価したり、先輩目線でアドバイスをするのは否定的にとらえられる場合があるので注意が必要です。

内定者研修の内容で悩んだ場合は……。

  • 論理思考とコミュニケーションといった汎用スキル
  • 自社理解と価値観のすり合わせ

この2つを押さえた上で、目的に応じた内容を追加していきましょう。

内定者研修の設計方法

内定者研修の設計プロセスは、「目的・ゴールの設計」「内容と提供方法の策定」「実行と結果検証」という3つのステップで構成されます。

STEP1:目的・ゴールの設計

最も重要なのは、内定者研修を設計する上での目的とゴールの設計です。

「競合他社がこんな研修をしているらしいから同じように研修をしている」と、目的意識を持たないまま実施している企業も多く存在していますが、 目的は企業規模や経営戦略、自社の状況によって大きく変わります。 例えば大企業やベンチャー企業は早期育成を主な目的としているのに対し、中小企業は内定辞退の防止や自社への期待感の醸成に対して優先的に取り組む傾向があります。

内定者研修の目的設計は、 企業の育成体系全体に繋がる大切な部分 です。正しく設計しておかなければ、具体的な研修方法を模索できなくなりますし、結果の良し悪しも判断できません。

まずはじめに、経営上の課題を元に「入社段階でどのような状態になっていて欲しいのか」について検討します。「入社時にどのような知識を持っていると人材を受け入れるチームが喜ぶか」や「どんな行動が取れると社内で評価が良いか」など、できるだけ具体的に目的を設定しましょう。

この際に気をつけたいポイントは「優秀な人」や「できる人材」といった抽象的な言葉を具体化する事です。「計算が早い」や「このツールが使える」など一段具体的に定義を行いましょう。

STEP2:内容と提供方法の策定

次は内定者研修でどのような内容をどのような形で提供するのかを検討します。

内容については社会人の心構えを中心としたマインド面の内容や、論理思考を中心としたスキル面の内容など、目的に応じて多くの選択肢があるため、ここでは提供方法についてお話します。

提供方法は主に以下の3つです。

  • 企業の会議室に集まって座学で受ける 「集合研修」
  • オンラインで受講できる 「eラーニング」
  • eラーニングや課題図書などの事前課題を踏まえて集合研修を行う 「反転型研修」

集合研修とeラーニングの2つは同じ効果を果たす打ち手として混同されがちですが、実は得られる効果が全く異なります。この点は、改めて見直してもよいかもしれません。

一般的に集合研修といえばインプット型の座学で行われることが多いですが、時間や手間をかけて集まってもらったにもかかわらず、一方的に企業側が話をするだけではもったいないと感じます。動画をはじめとしたeラーニングを活用することで、基本的なマインドやスキルなど座学で黙々と聞くような内容は事前にインプットしてきてもらうことが可能となり、効率的です。

そのような反転型であれば、より効率的で深い内容の集合研修ができるため、内定者同士の対話や業務に関わる質疑、価値感のすり合わせなど、顔を合わせてでしか行えない内容にフォーカスを当てることができます。双方向でやりとりできる場でお互いの考えを伝え合い、自分なりの答えを導き出し、視野を広げてもらうことで、眠たい目をしているような内定者も少なくなるのではないかと思います。

■内定者研修の提供方法

現在は内定者研修を提供する外部サービスも増加しており、「企業理念の説明や具体的な業務については内部の集合研修で行い、論理思考やコミュニケーションなどの汎用的なスキルについては外部サービスに任せる」といった、 足し算型の内定者研修も設計しやすくなっています。

大手企業では、人材育成の体系的な設計を目指して内定者研修を内製していることも多いですが、今後は柔軟な環境変化への対応や人事担当者の負担軽減のため、汎用的な内容やビジネススキルといった足し算型で実施できる内容は、ちょい足し感覚で外部サービスを併用する企業が増えていくでしょう。

また、目的や提供方法を考えていく上で、「そもそも内定者研修を行わない」という選択肢が挙がることもあります。目的によっては懇親会等の範囲に収め、研修そのものを実施しないという判断もあり得ることを知っておくことが大切です。

STEP3:実行と結果検証

内定者研修の目的や具体的な方法が決まれば、実行と結果検証のフェーズに入ります。

実行フェーズでは 「この研修は何のために行っているのか?」という目的を常に意識しながら柔軟に対応をしていきましょう。 忙しさのあまり内定者研修の実施自体をゴールにしてしまいがちですが、そうなると人事担当者自身も「これ意味あるのかな?」とどこかで感じてしまい、やる気がなくなってしまいます。

また、内定者研修の結果の良し悪しを検証するには、 数値化 が欠かせません。研修を実施した人事側の納得感など主観的な評価も重要ですが、数値化による客観的な評価に比べ、個人の意見に左右されたり昨年との比較がしにくいなど、効果測定の精度が一段劣ってしまいます。

数値化する上でのポイントは、目的とゴールを踏まえて数値を設定することです。知識のインプットが目的であれば事後のテストを行ったり、懇親が目的であれば内定者へのアンケートをとるなど、変化を感じ取れる要素を数値として設定しましょう。数値化は手間もかかりますので、実施できる簡単な所から始め、内定者研修を何度か実施するなかで調整していくのが現実的です。

検証のための数値が取れたら、達成度や課題の有無を数値で可視化することができるため、「ゴールに対してどれほど進んだのか」や「どこに問題があったのか」を確認することができ、継続的に内定者フォローしたり、次回の改善点を洗い出していく事ができるようになります。

以上のように、企業の規模や立ち位置、戦略によって、内定者研修の目的やゴールは大きく異なりますので、実施方法にも様々なパターンが存在します。少し視野を広げる意味で2つの事例を紹介いたします。

事例:新人と内定者が学びあう

1つめは、内定者だけでなく 「入社1年目の新人も巻き込んで行う内定者研修」 です。

とある会社では、内定者に対して大きな課題感があるというより、入社1年目の新人社員に対して「やる気を出して欲しい」や「もっと学んで欲しい」などの課題がありました。 そこで、「後輩社員に追いつかれてしまう」という危機感を持たせ、自己成長を感じることによるモチベーション向上を図るために、SNS付きのeラーニングを導入し、内定者と新人が一緒に学べる環境を構築しました。

内定者は、入社後の働き方や会社の事業内容について新人社員からリアルな話を聞けます。一方、新人社員はこれまでに社内で教わった内容を教える立場となり、自身の1年間を振り返って成長を実感することができます。eラーニングと先輩社員から多くを学び、1年後に現場で学んだことを自分の言葉で内定者に伝えるこの学習環境は、単なる内定者向研修ではなく新入社員に対するフォローアップ研修も兼ねています。

事例:他の企業と一緒に研修を行う

2つめは、 「他社と合同で実施する内定者研修」 です。

この研修では、会社間の関係構築や内定者の視野を広げることに目的を置いており、他社との対話や関係を持つことで新しい気付きを得たり、これから自分が入社する会社を第三者の視点から捉えられるなど、自社単独での内定者研修にはない数多くの効果を得られます。この研修スタイルは、ベンチャー企業などを中心に実施されています。

内定者研修の3つの成功ポイント

内定者研修は企業を取り巻く大きな環境の変化から企業にとって非常に重要な取り組みとなってきていますが、忙しい人事担当者にとっては手間や時間がかかる作業です。

最後に私が感じている内定者研修の押さえるべきポイントをお伝えいたします。

適切な実施時期

内定者研修を成功させるうえでポイントの1つとなるのは実施時期です。

適切な実施時期は目的により異なりますが、内定者の心理的な切り替わりとして、 内定式のある10月、年の開けた1月、入社直前で学業の落ち着いた3月 がありますので、それらに合わせて実施していくのが効果的でしょう。

eラーニングの場合には時間と場所の成約が少なく、進捗状況の可視化ができるため、内定式のある10月から利用を開始して1月に進捗状況をみながら一度フォロー、コンパクトに実施をしたい場合には、1月に開始して入社前の3月にフォローするのが効果的かつ効率的です。

達成可能な目的・ゴールの設定

ポイントの2つめとなるのは、達成可能な目的・ゴールを設定することです。

多くの業務が並行して進む人事担当者にとって、達成できる範囲でゴールを設定することは非常に大事です。 大きなゴールを目指す事も大切ですが、それ以上に内定者研修の目的を見据えながら着実にゴールに近づくことが重要です。 そのため、「どの程度の内容なら達成できるのか」を考えながら、「これなら出来そう」という所から目的・ゴールを設定しましょう。

例えば論理思考やコミュニケーションのようなスキルは、ビジネスマナーなどと比べてその効果が見えにくい傾向にあります。そのため、いきなり「論理的で説得力のある会話ができる」といった大きなゴールを設定するのではなく、「自分なりの意見を言ってみる」や「論理思考の基本的なステップを暗記する」など、実現可能で具体的な一歩を設定するのが良いでしょう。ゴールが簡単すぎると感じた場合には少しづつ調整し適切な範囲を見つけていきます。

人事のサポート

最後のポイントは人事のサポートです。

近年、効率的に内定者研修を行う事のできるeラーニングや、それを使った反転型研修が注目されていますが、これらは集合研修と比べて内定者自身で取り組む必要があるため、本人のやる気に左右されやすいという懸念があります。特に反転型研修は事前の課題を踏まえた場となるため、課題にしっかりと取り組んだ内定者とそうでない内定者とで大きな差が生まれてしまいます。そのため、 内定者自身で主体的に取り組んでもらうためにも、人事側のサポートが求められるのです。

人事のサポートとなると大変そうなイメージもありますが、「1月までにここまで終らせてください」など、口頭やSNSを通じて「何をいつまで」に行うべきかをきちんと伝えたり、取り組みの中で内定者自身の意見や考えの表明、提出物のようなアウトプットがある場合には、その内容に一言触れて全体に共有してあげるだけでも「見てくれている」「考えを受け入れてくれた」と感じ、やる気につながります。

また、eラーニングでは、内定者一人ひとりの受講状況や進行度が可視化され一目で分かりますので、アカウントを付与してからまったくログインしていない内定者に対し、「内定辞退もあり得る」と考えて人事からサポートすることができるのも強みです。 実際にeラーニングを内定辞退の防止施策のひとつとしている企業も多数存在しています。

内定者研修のあるべき姿とは

我々を取り巻く社会環境が多様化、複雑化して「答えのない時代」と呼ばれる中、経営戦略や自社の状況も常に変化していくようになります。今後はそのような変化への対応ができる柔軟で自律的な人材が求められるようになることから、内定者研修も「マナーだけやっておけばOK」という時代ではなくなってくるでしょう。

さらに働き手の減少や需要の変化といったこれからの時代に向き合うためには、新人~若手の頃から、自分で考えて自分で決めらながらビジネスを推し進めていかなければなりません。

そのため、これまでのような「内定者にはまだ早い」といった考え方を捨て、一人のビジネスパーソンとして向き合い、その価値観を尊重しながら積極的な成長機会を提供していくことが、これからの内定者研修のあるべき姿なのではないでしょうか。

株式会社グロービス グロービス・デジタル・プラットフォーム チームリーダー
寺内健朗

~グロービスについて~
1992年創業。「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会に創造と変革を行う」というビジョンのもとに、ビジネスリーダーを育成する「グロービス経営大学院(MBA)」や、累計150万部以上のロングセラー「グロービスMBAシリーズ」の刊行、採用・育成に新たな価値を創出する「グロービス・デジタル・プラットフォーム」の開発などを行う。法人向け育成サービスの累計受講者数は約100万人。

自分で考えて自分で動くことのできる自立型人材の育成を目的とした内定者/新人向けの育成サービス「グロービス学び放題フレッシャーズ」の事業責任者である寺内氏は、内定者向けサービスの立ち上げから運営まで行っている。

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