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2019年4月26日(金)更新

高卒 採用

学生の売り手市場の続く採用活動で、再び高卒採用に力を入れ始める企業が増えています。1990年代の景気後退や大卒者の増加によってその枠が激減した高卒採用ですが、昨今の引く手あまたの大卒採用トレンドで後塵を拝する企業が、採用方針の見直しの一環として高卒採用に目をつけ始めました。今回は、高卒採用特有の流れやルールについて紹介していきます。

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高卒採用とは

高卒採用とは、一般的には新規高卒採用制度のことを指します。高校進学率が急上昇した1960年代以降、それまでの新規中卒者に代わり新規高卒者が激増しました。高度成長期の製造業における単純労働需要の高まりと相まって、高卒採用はブルーカラー層の大量採用に寄与してきました。企業は優秀な労働力を安定的に確保でき、学校は有名企業への就職者を安定的に確保できるという、相互にメリットを享受できる関係を築いてきたという歴史もあります。

1990年代からは、景気後退や大卒者の増加により高卒採用枠は激減しましたが、昨今の景気回復を受けて風向きは変わっています。平成30年2月の厚生労働省による労働経済動向調査によると、平成30年2月時点で「新規学卒者の採用計画・採用予定がある」と答えた事業所は47%(前年比1%増)と、引き続き高卒者需要が増えていくと考えられます。

【参考】労働経済動向調査(平成30年2月)の概況/厚生労働省

高卒採用のトレンド

平成30年3月、文部科学省より発表された「高等学校卒業者の就職状況に関する調査について」によれば、高校卒業者約10,615万人のうち就職希望者は約18.7万人、うち約18.4万人が就職、就職率においては98.1%(前年比0.1ポイント増)となっています。

男女別では、男子98.5%、女子97.4%で、引き続き高い水準を維持しています。専門学科別では、普通科96.3%に対して、工業科99.5%、福祉99.1%、看護98.4%、水産98.8%、商業99.2%、農業99.0%となっており、専門的な職種に直結した学科は普通科よりも就職率が高い傾向にあります。

しかし、高卒者の就職率や内定率は年々上昇しており、現在も「売り手市場」が続いていると言えます。

【参考】平成30年3月高等学校卒業者の就職状況(平成30年3月末現在)に関する調査について/文部科学省

スケジュール【2020年(令和2年)3月卒業予定者】

高卒採用では、求人活動による授業や学校生活への影響を最小限に抑えるために、採用スケジュールが定まっています。これは大卒採用とは大きく異なる点で、具体的には以下のような流れで進んでいきます。

日程 内容
6月上旬 求人申込説明会
6月1日 ハローワークよる求人申し込み受付開始
7月1日 企業による学校への求人申し込み、学校訪問開始
7月下旬 会社見学、職場見学の実施
9月5日 生徒の応募書類提出開始 (沖縄県は8月30日)
9月16日 企業の選考、内定開始
4月1日 雇用開始

【2020年(令和2年)3月卒業予定者の採用の流れ】

※スケジュールは「東京都における平成31年3月新規学校卒業者の募集・採用の流れ」を参考にしています。

【参考】2020年3月新規高等学校卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等について/厚生労働省

活動開始日が決まっている

高卒採用では、学内活動への影響を考慮して生徒への手厚い保護が施されています。たとえば、採用スケジュールにおける活動開始日が、厳密に決められていることが挙げられます。

6月1日に企業からハローワークへの求人票提出が始まります。そこで確認印を受けていないものは無効となり、学校へ提出することができません。7月1日から学校へ求人票を提出することが可能になり、ここから求人活動が開始となります。同時に学校訪問も解禁され、求人票を直接学校へ持参して、進路担当者への挨拶や企業説明などができるようになります。

高卒者の採用までの流れ

大卒採用とは異なり、定められた採用スケジュールで進んでいく高卒採用ですが、ここではその流れを4つのステップを見ていきます。

採用スケジュールが決められているために短期間で採用活動を終了できるという点は、高卒採用の特徴です。

ハローワークによる求人申し込み受付開始

6月1日より、一斉にハローワークでの求人申し込み受付が始まります。求人申込書、および青少年雇用情報シートを作成し、事業所を管轄するハローワークへ提出。確認印を受けたものが正式な求人票となり、学校へ提出が認められます。

なお、求人申込書はハローワークで配布されるものを使用する必要があり、コピーしたものやインターネットからダウンロードしたものは使用できません。

企業による学校への求人申し込み、学校訪問開始

7月1日より、企業から学校への求人票交付が解禁となります。ハローワークの確認印を受けた求人申込書と青少年雇用情報シートの写しを作成し、高校へ送付します。

また、同日より学校訪問も解禁されるため、進路担当者への挨拶に学校訪問をした際、それらの写しを直接高校側へ手渡すことも可能です。

生徒の応募書類提出開始

9月5日より、学校から企業への応募書類の提出が開始となります。生徒が作成した応募書類が学校経由で提出されます。

企業は、応募を受付次第、選考日程を速やかに高校、および応募者に連絡しなくてはなりません。また、応募者に対して、応募書類以外の用紙(社用紙等)の提出を求めることはできません。

企業の選考、内定開始

9月16日より、採用選考が開始され、順次内定の通知という流れで進んでいくことになります。選考は、書類選考だけでなく面接試験や適性検査なども実施しなくてはなりません。

有望な生徒を確保するために、9月16日の選考開始日、もしくは翌日に選考を行う企業が多いです。なお、採用選考の方法やスケジュールが応募者へ伝わるように、求人票には求人内容を詳細に記入しておくことが大切です。

高卒採用におけるルール・注意点

選考スケジュールのみならず、高卒採用では大卒採用とは異なり、さまざまな制約やルールが決められています。健全な学校教育を妨げず、応募者の適正な職業選択を阻害しないことを目的としたルールです。

ここでは、それらのいくつかをピックアップして、具体的な内容を見ていきます。

学校経由の就活

高卒採用における求人は、主に学校の進路指導部に対してインターネット(厚生労働省職業安定局「高卒就職情報WEB提供サービス」)を通して提供されているため、就職希望者が学校を経由せずに求人情報を入手することは困難です。

また、内定後であれば、企業と就職希望者および保護者が直接連絡を取り合うことが認められますが、慣習としては、内定後であっても卒業までの間は学校を通して連絡をすることが望ましいとされています。

一人一社の原則

高卒採用では、何よりも生徒の学内活動優先が謳われた制度・ルールが作られており、なかでも「一人一社の原則」は代表的なものと言えます。

これは、9月16日の解禁日から一定期間は一人一社しか応募が許されないというものです。一度に複数の企業へ併願することで就職活動に追われることになり、学校生活に支障を来す可能性が生じるとの判断から、この制約が存在しています。なお、一定期間が経過した後は、一ヶ月二社程度の応募が可能となります。

そのため企業としては、二社応募可能時期以降は、内定辞退が発生することも勘案しておかなければなりません。とはいえ、全般的には、大卒採用に比べ、複数内定を持つ生徒は少ないため、企業側は、内定辞退者の穴埋めといった臨時の採用業務に余分なコストを割く必要性は低くなるようです。

書類のみの選考はしない

高卒採用の場合、書類選考のみで不通過とするようなことはせず、面接試験や適性検査を実施することが望ましいとされています。

特に面接試験の際は、未だ成長過程にある高校生であることを考慮して、潜在的な能力や採用後の教育訓練による成長を視野に入れた選考を心がけることが望ましいとされています。

全国共通の履歴書・調査書の使用

企業へ提出される応募書類のうち、履歴書(応募者が記入)と調査書(学校が記入し校長印が押されたもの)については、全国高等学校統一用紙を使用しなくてはなりません。

選考の過程において、企業がそれ以外の書類を学校や応募者へ求めることは禁止されています。

法律の適用

高卒者の求人であっても、その他の求人と同じく法律の適用については注意を払わなくてはなりません。

たとえば、職業安定法における「労働者募集にあたり、業務内容・賃金・労働時間など労働条件を明示する義務」「採用活動において、個人情報を適切に収集・管理する義務」、男女雇用機会均等法の「採用の場面において、『男性のみ』『女性のみ』など特定の性別を対象として募集することを禁止」といったものの遵守が必要となります。

高卒採用のメリット

高卒採用のメリットについてご紹介します。

基幹的業務を担う人材の確保

高卒者も大卒者も職務経験がないことは変わりません。しかし、より若いうちから職務内容を教育できる高卒者は、長期的に育成する必要のある基幹的業務を担う人材確保の点でメリットがあります。

愛社精神、社会への適応

まだまだ成長段階にある高卒者は、企業や社会への先入観、固定観念からの影響を受けずに、純真に仕事と向き合うことができる傾向があります。

その結果、自らの所属する企業への愛着が育まれていくだけでなく、社会への適応を済ませ、そこで働く姿勢も強固なものとなっていきます。そしてゆくゆくは、それらが企業貢献へと還元されることにもなるのです。社員の定着率向上にもつながるでしょう。

専門性の体得

専門性の高い仕事の場合、早い段階からの知識や技術を修得することは有効です。

専門技能と関係の薄い学業を大学で収めるよりも、高校卒業直後から専門分野に特化する方が人材育成において効率的です。低コストで、大卒者に先んじて専門性を極めることができます。

人件費の抑制効果

大卒者よりも賃金を抑えることができるのは大きなメリットです。固定費を圧迫する人件費の抑制は効果的なコスト削減につながります。

ちなみに、独立行政法人労働政策研究・研修機構のまとめた「ユースフル労働統計2016」によると、男性大卒者の生涯賃金2.8億円に比して、男性高卒者は2.5億円と3千万円の開きがあり、女性においては、大卒者2.4億円に対し、高卒者1.9億円と5千万円の差が生じるといった結果が出ています。

【参考】ユースフル労働統計 2016/独立行政法人 労働政策研究・研修機構

採用コストで採用可能

高卒採用は大卒の新卒採用と比較して、採用にかかる工数が少なく、低コストでの採用が可能です。

大学卒業予定者を対象とした 新卒一括採用では内定辞退や早期離職に備えた大量の説明会や面接が必要で、多大な採用コストがかかります。高卒採用は媒体掲載費用が安く、ハローワークを通じた求人となるため、広告費用の削減が可能です。

また、高校採用の対象者は就職への本気度も高いため、大学卒業予定者よりも内定辞退や早期離職へのリスクが低く、多くの内定を通知する必要がありません。

高卒採用のデメリット

メリットがあれば、もちろんデメリットも存在します。この章についてはデメリットについてご紹介します。

育成時間の長期化

高校を卒業して一定の基礎学力を収めているとはいえ、まだまだ未熟な高卒者。潜在能力を引き出し、戦力となる人材にまで育成するために、必要以上に時間を要してしまうということも起こり得ます。

モチベーションの低さ

同じように、未成年で就職する高卒者は、精神的に成熟しておらず、労働意識が薄弱なこともあります。大卒者に比べて仕事に対するモチベーションが低くなることもあるでしょう。

モチベーションは、業務実績、企業貢献に大きく関与する要因です。モチベーションが低い高卒者を採用してしまうと、思うように活躍してもらえないと感じるかもしれません。

【関連】モチベーションの意味とは?低下の要因や上げる方法、測定手法や企業施策までご紹介/BizHint

ミスマッチの危険性

職務経験のないことで、高卒者、大卒者ともに潜在能力を予測した上での採用となってしまう現実があります。よって、その潜在能力の見極めが企業人事における至上命題の一つともなっています。

大卒者でさえ見極めは難しいものなので、未だ成長段階にある高卒者はそれ以上の難題となります。そのため、採用時の誤判断からミスマッチが生じる可能性が高まるということにもなります。

【関連】『ミスマッチ』とは?企業にとっての意味やアンマッチとの違い、原因・対策をご紹介/BizHint

高卒採用 導入企業事例

今後、高卒採用の導入、拡大を考えている企業の参考となり得るであろう、すでに積極的に高卒採用を導入している企業の例とその事例を紹介します。

JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)

新卒採用は、「総合職」「エリア職」に分かれ、高卒者のエントリーは「エリア職」のみでの受付となります。

職種

  • エリア職

職種内容

東日本の各エリアを軸にしたビジネスフィールドでの業務。現場第一線での業務で専門知識や技術を習得し、マネジメント業務にも活躍の場を広げていくことを期待されています。

【参考】新卒採用/JR東日本

オーケー株式会社

首都圏を中心に、ディスカウントセンターとディスカウントスーパーマーケットを展開しているオーケー株式会社では、「チーフコース」「店長コース」の2職種が高卒採用枠として用意されています。また、これまで大卒者を対象としていた「店長コース」へ、高卒者でもエントリーが可能となりました。

職種

  • 店舗におけるチーフ候補
  • 店舗における店長候補

職種内容

  • 店舗におけるチーフ候補
    精肉、水産、青果、惣菜、ベーカリー、食品、冷食品、雑貨、レジ等の部門があり、その責任者であるチーフとして、部下を指揮しつつ、部門の売上を創り、生産性向上とロス管理を図ることが業務
  • 店舗における店長
    部門チーフを指揮して、店舗の売上を創り、生産性向上を図ることが業務

【参考】採用情報/オーケー株式会社

まとめ

  • 平成30年の高卒就職率98.1%は、大卒就職率とともに好調を維持しており、売り手市場と言えます。
  • 売り手市場により大卒者採用が熾烈を極めるため、高卒者採用へ視点変換を図ることも一つの手段です。
  • 計算の立つ人件費抑制手段というメリットは大きな魅力です。
  • 長期にわたって熟成された愛社精神が、企業貢献の大きな原動力となります。
  • 一方で、人材育成期間の長期化による、低コストパフォーマンス化というデメリットも内包されています。

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