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連載:第6回 [LINE WORKS×BizHint]変わる、中小企業の働き方

高卒採用成功の秘訣と、社員が辞めない会社作り。前社長の意思を継ぐ挑戦の日々

BizHint 編集部 2021年2月24日(水)掲載
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様々な業界で叫ばれる社員の高齢化。事業永続のためには次世代の採用・育成は不可欠です。しかし、そこに踏み込めず足踏みしている企業が多いのもまた事実。今回お話を伺うのは電気・通信工事業界において着実な成長を続け、高卒採用・職人育成では「ほとんど辞めずに戦力化できている」という株式会社ネクストの代表取締役・田所大さん。若手に選ばれる組織作り、若手との多くのギャップを乗り越えながら積み重ねた「理解しあうための日々」について聞きました。

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株式会社ネクスト
代表取締役 田所 大さん

東証一部上場建設会社、外資メーカー、大手電気工事会社にて一貫して営業職を務め、2013年ネクストに入社。その後、代表取締役に就任。


まだまだ若いと思っていても、会社は高齢化

――貴社では高卒採用の新入社員がほとんど辞めていないそうですね。

田所: そうですね。2013年ごろからほぼ毎年1~2名程度採用していますが、しっかり定着して成長してくれています。高卒採用第一号の社員は今26才ですが、すでに第一線でバリバリ活躍しています。

――高卒採用をはじめられたのは、どういった経緯からでしょうか?

田所: 我々がいる電気・通信工事業界というのはここ十数年、業界全体で高齢化が進行しています。高卒採用に取り組む以前、当社も例に漏れず平均年齢の上昇は進んでいたのですが、日々一緒に仕事をする同業に比べれば「まだまだ若い」という感覚がありました。

当時、私を含め社内の中心メンバーは40歳前後で、むしろ「脂が乗りきっている」と笑い飛ばしていました。一番若い社員で35才くらいだったと思います。

しかし、社員が受ける健康診断の結果は……年を経るにつれ残酷な現実を突きつけます。「…もしかして我々、そんなに若くない?」。徐々に笑い話では済ませられない雰囲気になっていきました。

これが社員それぞれの問題というだけであれば、食事や生活を改めれば済むのですが、『事業の継続』という視点に立つと、そうは言っていられません。

すっぽり抜けてしまっている 若手層の充実、会社全体の若返りが、経営における重要課題 となったのです。

若手への歯がゆい日々。マネージャーは「ほめ達(たつ)」にチャレンジ

――はじめての高卒採用はどこから手を付けられたのですか?

田所: 最初は高卒採用というより、地方の若手を採用することからチャレンジしました。上京のための費用をすべて支援するような形で。しかし、結局は辞めてしまう割合が高かったため費用対効果が薄いと判断し中止しました。

とにかく手探りでしたので、次は付き合いのあった先生がいた工業高校に直接声をかけ、なんとか1名入社してくれました。この1名が採用実績となり、7年経った今も退職することなく定着してくれていることが、結果的にその後の採用活動をスムーズにしたと思います。

現在では、社員数58名のうち6名が直近7年での新卒採用です。この4月(2021年)にも3名の新卒者が入社します。

――高卒採用第一号、受け入れ態勢はいかがだったのでしょうか?

田所: 今思えば本当に申し訳ないのですが、まったく整っていなかったですね。私を含め、年が離れたベテランの社員たちは若手の育成を長年やってこなかったわけですから、自分たちとしても何をどうすれば良いのかわかりませんでした。

工業高校からの採用ですので、例えば「体育会系」のようなくくりがあるわけではありません。おとなしい印象の子もいます。「背中を見て覚えろ」「二度言わせるな」といった一昔前の職人気質な雰囲気が当たり前だった我々としては、はじめは歯がゆい思いもしました。

とはいえ、みんな「何とかしてあげたい」 わけです。いろいろなアイデアを出し合いながら、どうすればスムーズに成長できるか?一緒に考え、一緒に成長していくような時間だったと思います。

――若手の成長のために、手ごたえを感じた施策はありますか?

田所: 最初は「ほめ達(たつ)」でしょうか。

高卒採用が2~3年目になったころ、数人の若手と接するうちに、それまでの自分たちのやり方では響かないことをはっきり自覚しました。声を荒げる叱責には、彼らは委縮してしまいます。

なので、我々が意識と行動を変えることにしました。「褒める」を徹底することにしたのです。まずはマネージャー層と、よく怒鳴っている人(私も率先して(笑))が、『ほめる達人検定』を受講し、検定に挑みました。こういった具体的なアクションから、ベテランの社員の意識や行動が変わっていったと思います。


ほめる達人検定「ほめ達」の認定カードと認定証

新人研修の3ヵ月は週休3日もOK。「慣れ」は自分のペースで

――制度として特徴的なものはありますか?

田所: 工業高校の先生に話を聞くと、就職した生徒は19~20才で辞めてしまう割合が相応に高いということです。高校生活と仕事では、どうしても大きなギャップがあります。

若手に限らず、社員の定着に寄与する当社の特徴的な制度としては、週休1日も多い電気・通信工事業界にあって、入社1年目社員は完全週休二日制を導入、入社2年目以降の社員についても積極的な代休取得の奨励やメモリアル休暇(有給休暇消化制度)など休暇取得を実現する制度を導入していることなどはあると思います。

さらに、新卒社員の入社後約3ヵ月の研修期間中は「週休3日も選択可」としています。

――週休3日、なぜでしょう?

田所: 18歳そこそこで高校を卒業して、いきなりビジネスの場に出て、最前線で活躍する年長者の職人さん達と接するのって……冷静に考えると大変じゃないですか?最初は、自分のペースで当社に慣れていただくことを優先しています。 長い目で見れば、研修期間に週休2日か3日かなんていう違いは、大した問題ではありません。

数ある仕事・職場の中から、インターンや職場見学などを通じ当社の社員と風紀に触れた上で、自分の意思で当社を選んでくれた社員です。目の前の新卒研修よりも、もっと長期的なスパンで考えています。

例えば、一つの現場作業を任せられる「職長・作業長」としての独り立ち。他所では『3年』という目安を耳にしますが、当社は倍の『6年』です。社員は一人ひとり違います。 それぞれが、自分のペースで、自分らしく成長してくれることを何より重視 しています。

――まずは慣れ、そして自分のペースでOKということですね。

田所: かといって、個人任せにしているわけではありません。結果的に若手への研修制度がとても充実しました。

ビジネスの基礎に始まり、定期的な社内・社外の研修を通じて、全社で成長をサポートする体制が整いました。こういったものの積み重ねが、若手を含めた社員の一体感、定着率の高さに繋がっていったのだと思います。

コロナ禍以前は、海外研修も行っていました。最近の若者は社員旅行に否定的という見方もあるようですが、当社では敢えて終日の集団行動でプログラムを組んでいます。参加した全員が「また行きたい!」とめちゃめちゃ盛り上がっていました。

日々の仕事はもちろん、こういった 仕事以外の取り組みを通じて、ベテランと若手の一体感が醸成されていった のだと思います。


ベトナムでの研修の様子

実は…先輩に電話がかけづらい。若手には当たり前だった感覚

――高卒採用、若手の定着が軌道に乗ってきた印象を受けますね。

田所: 結果的に成功していますが、若手育成においてはほかにも様々な課題がありました。 2017年ごろ、「清風会」という経営層と若手との定期的な食事会での出来事です。テレビで「最近の若者は家の電話に出ない」と報じられていたので、当社の若手に話を振ってみたところ『出ません』『自分宛であれば直接携帯にかかってくるので…』という答えが。宅急便の連絡にも『できれば出たくない』ということで、ギャップに驚きました。

そこで思い当たる節があり「事務所にかかってくる電話も、出にくい?」と聞くと、 『出たくない』『ギリギリまで出ない』 と。

――若手が「会社の電話に出たくない」と正直に言えるのはすごいですね。

田所: たしかにそうですね。そういった声をあげてくれたのも、社員との関係性を重視してきた社風があるからこそかもしれません。

「会社宛ての電話を取る」。たったそれだけのことでも、私たちの年代は「そういうものだ」という感覚で仕事に臨んできました。ただそれは、ベースに家の固定電話を取ってきたという日常があったから当たり前だったこと。最近の若者は、そこから違うのだとあらためて気付かされました。

さらに話を聞いていくと、まったく別の、より重大な課題が見えてきました。

――と、言いますと?

田所: 工事現場での作業時「わからないことがあるから先輩に相談したい」「作業の報告をしたい」といった場合に、その 『電話のタイミングがいまいちわからない』 と言うのです。

現場では先輩と遠く離れて作業をしています。相手が作業中なのか休憩中なのか、そもそも電話に出られる状態かどうかがわかりません。

双方が同じタイミングで電話できることのほうが珍しいのです。連絡が取れなかった結果、若手は先輩から「なぜ適切に連絡しないのか?」と突っ込まれることも起こっていました。

こういった電話連絡のすれ違いは、私たちの常識では(そんなものだ)と割り切ってやり繰りをしてきましたが、 忙しいかもしれない先輩相手に電話をするという習慣がそもそもない若手にとっては軽い不条理 です。年長者も若手も、ともにストレスなく連絡が取り合える体制を作る必要が出てきました。

現場でのLINE。気持ちはわかるが会社のセキュリティ的には…

――どうされたのでしょう?

田所: 答えはすでに、現場にありました。聞けば、若手は一部で個人的にLINEを交換してコミュニケーションを取っていました。LINEであれば、報連相はそれぞれのタイミングで送信・確認・返信ができます。みんな、効率が良い方法をわかって行動しているんですよね。

一方で、業務情報を個人のLINE でやりとりすることは、会社としては奨励できません。加えて、 プライベートに仕事が入り込んでしまっていることも、会社として本意ではありません。 なので、当社では、業務用途に特化した別アプリとして、LINEのビジネス版であるLINE WORKS を導入しました。

ちょうど、会社全体の生産性の向上・情報セキュリティの向上のために、社員全員に会社用のスマートフォンを配布したタイミングでしたので、そこにインストールした形です。「LINEのようなコミュニケーション手段を使えばうまく回りそう」というイメージはできていましたので、価格感だけ確認して、気軽な気持ちで使い始めました。


業務チーム・リーダーの岩田 直之さん。総務系の担当として、社員旅行をはじめとしたイベントの調整や、LINE WORKSの導入・定着も担当している。

――会社として「LINE WORKS」を導入したということですが、使ってみていかがでしたか?

田所: 送信する、確認するといった操作はほぼLINEと同じですので、若手以外の社員も皆スムーズに使えました。

プライベートはLINE、仕事はLINE WORKSと分けられたので、今では、本社から支店への連絡、材料や人員の調整、物品手配、稟議相談、集合の待ち合わせなど、ありとあらゆるやりとりに使っていますよ。部署やチーム、支店など組織図に合わせた括りでトークグループを作成していますが、それ以外でも各自が必要に応じて社内アドレス帳から自由にやり取りしていますね。

――現場のコミュニケーションは改善されたのでしょうか?

田所: とてもスムーズになったと聞いていますし、私自身もそう思います。 特に変わったのが、社員間の相談の仕方とそのレスポンス です。

例えば、以前は電話やメールで「誰かに質問して答えを求める、待つ」という形だったものが、 『みんなに聞いて、答えられる誰かが素早く回答する』という形に変わりました。 若手が作業をしていて、ちょっとわからないことがあった場合に、こういった聞き方ができると、すぐに答えを得ることができます。

これは誰かが「やろう」と言い出したわけではないのですが、LINE WORKSにより、必要なメンバー全員でメッセージを見れる場ができたことで、自然発生的にこのような使い方が生まれています。質問と回答が飛び交う、このスピード感の変化には驚きました。

また、LINE的なやり取りのほうがフランクになりますよね。当社の場合、現状では社外とはつながらず、社内用の閉じたコミュニケーション手段として使っていますので「身内感」が出て、これもやり取りのスムーズさに寄与していると思います。間違っても外部に流出することはなかなかない、というのは安心感にもつながります。


現場での報連相もスマートフォンで。自分のタイミングで確認や送信ができる。

――若手の方は何か仰っていましたか?

田所: 一番は「かしこまらなくて良いのがいい」と言っていましたね。待ち合わせや持ち物の連絡など、LINE WORKSでは日々細かい連絡が飛び交っていますが、以前は電話番号を使ってのショートメッセージ(SMS)でした。

ショートメッセージとLINE WORKS。伝える内容は一緒でも、不思議なことにLINE WORKSのほうがリラックスしてやり取りできるようです。使うもので変わるのはおもしろいと思いました。

また、もし電話とメールに戻すとしたら『正直、困る』と言っていましたね。


LINE WORKSでの業務連絡のやり取り。(画面はPC版)

メールあるある「あとでまとめて見る」がなくなった

――マネジメントの側面からの変化はありましたか?

田所: 全社連絡の周知が手軽で簡単になりました。 社員からのレスポンスがとても早く、見やすくなったのも大きな変化です。

また、私自身もLINE WORKSはこまめに見るクセがついています。というのも、メールはいちいち返信していたら一日中メール対応に追われてしまうので、「返信する時間ができた時にまとめて見よう」という気持ちになります。これは今でもそうです。

一方、当社のLINE WORKSは基本的に社員からの連絡です。 なので、こまめに確認して、ぱぱっと返します。それで社員の仕事が進むわけですから。かしこまらずに返事ができますしね。決済依頼もメールに紛れていたら開封するまでに時間がかかるであろうものが、LINE WORKSであれば、すぐに見ますし、すぐに返せます。

会社をより良くしていく素地・仕組みを作るのが、経営者の仕事

――その他、LINE WORKSの導入による変化はありますか?

田所: 若手はベテランとの同行を経て独り立ちしていくわけですが、LINE WORKSがあることで、 いざというときも連絡や相談できる手段が確立されているのはいいですね。

――成長に伴う、不安な気持ちのよりどころがあるということですね。

田所: それから当社ではコミュニケーションを深めるために「サークル活動助成金」や、個人の活動を支援する「特別報奨金」「特別支援金」をはじめとした、さまざまな制度があります。

「サークル活動助成金」は事前に社内全員に告知して、最低5人以上集まって行うイベントなら一人当たり1500円を支援するというものです。サッカーの試合を観に行くでも、食事に行くでもOK。社外のパートナーを巻き込むのも大歓迎です。

重要なのは「事前に全社に告知する」というルール。このルールがLINE WORKSの「掲示板」機能を使うことでスムーズに運用できると思います。


全社員か必ずみる掲示板でサークル活動を告知。(画面はPC版)

この制度の背景には、 社員に「自分から意思を示す」「能動的に動く」「仲間・同士を集める」ということの成功体験を積んでほしい という思いがあります。

理由は2つです。

まず当社は今後、周囲のパートナーと一緒に、より幅広い事業を展開していこうと考えています。社員にはそこで中核となってまとめていく働きを期待していますし、そういった人材が必要です。どんなことでも良いので「目的のために仲間を集める」という体験を積んでほしい。

そしてもう1つは社員の力で「会社をより良く変化」させてほしいということ。私は 組織の1割、10%が本気で同じ志を持てば、その組織を変えられる と思っています。たった一人で組織を変えようとしても、必ず壁にぶち当たります。その壁を越えられない大きな理由の一つは「一人だから」です。社員には、同じ志を持つ仲間を集めてほしいのです。

「サークル活動助成金」は一例ですが、全員の力で会社をどんどん良くしていきたい、というのが私の思いですし、そのための素地・仕組みを作るのが、経営者としての私の仕事だと思っています。

残念ながら「サークル活動助成金」を作った直後に世の中がコロナの状況下になり、サークル活動も活性化前に中止せざるを得ませんでした。コロナが明けたらLINE WORKSの掲示板が大いに賑わうことと思います。

高卒採用・育成・定着のノウハウを周囲に伝えていく

――若手の採用・育成が順調に回り出していますね。

田所: そういえば、高校生向けの説明会などで「ビジネス用のLINEを使っていて、先輩ともLINE WORKSでやり取り」というのは、当社の鉄板トークになりました。

高卒採用の先輩たちがほとんど辞めていないという実績、またこれまでお話ししたような様々な取り組みに加え、若手の意見を汲んでコミュニケーションにLINE WORKSを導入したことなども含めて 「若手に理解がある会社」「親近感」として魅力に感じてもらえている と感じます。

おかげさまで学校の先生からの評判も良いですし、若手社員と出身校の後輩との関係においても「ものわかりの良い会社」という噂が回っているようです(笑)。

――今後について教えてください。

田所: 実はコロナ禍の2020年、社員に対して「上場を目指す」と宣言しました。コロナ禍で思うような活動ができない中、「みんなで一緒に目指す場所」を示した形です。もちろん以前から考えてはいたのですが、社員に伝えるのは「このタイミングだ」と。

先ほどもお話ししたように、今後は周囲のパートナーを巻き込みながらの事業拡大を視野に入れています。そのためには、当社だけがうまくいくだけではダメで、パートナーの成長にも寄与・貢献していく必要があります。

建設業界において、現場で働く若手の採用・育成は、変わらず大きな課題です。そこで我々がコツコツと積み上げてきたノウハウが活きてきます。これを社内で閉じることなく、どんどん周囲に広げることで、業界全体を盛り上げていきたいですね。

LINE WORKS公式ホームページ

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