連載:第5回 進め方いろいろ「中小企業の働き方改革」
理想の会社を作るため、変化の痛みは恐れない。旧態依然の組織が"誰でもチャレンジできる場所"になるまで
重労働にも負けず、残業もいとわず。そんな昔ながらの働き方を続ける裏には、社員の“変わりたくないマインド”が潜んでいるかもしれません。静岡県浜松市にある株式会社小沢精密工業も、以前はそんな旧態依然の組織でした。改革を進める度に人材が退職してしまう“痛み”を経験しながらも働き方を大きく改善し、現在は「若手がチャレンジできるメーカー」として人気を集める企業へと成長。昔ながらの中小製造業をどのように変えていったのか、代表取締役社長の小澤大祐さんに、お話を伺いました。
株式会社小沢精密工業(製造業/従業員数86名)
代表取締役社長 小澤 大祐さん
新卒にて国内屈指の光電子部品メーカーである浜松ホトニクス株式会社に入社。営業職として国内統括部門で業務に携わる。オーダーメイド品を多く扱い、一貫した顧客主義を身に付ける。先代の急逝により2013年10月に小沢精密工業に入社、3代目に就任。仕事の効率化と組織改革を進め、技術者全員が「エンジニア」の部品メーカーとして成長。
「小澤さんのところ、納期遅延で世界ワースト2位ですよ」
――まず、貴社の主力事業について教えください。
小澤大祐さん(以下、小澤): ひと言で言うと「金属加工」です。金属を削る「切削」や金属同士を接合する「溶接」などの加工技術によって、高精度部品を製作しています。創業のきっかけは管楽器の部品製作でした。そこから派生し、半導体製造装置の部品や光学・医療機器部品などを手がけるようになりました。
――小澤さんは2013年10月に社長へ就任されていますね。当時の状況はいかがでしたか?
小澤: 生産現場は散々な状況でした…。出荷期日を守らない、品質の不合格が出てもへっちゃら…。 「納期と品質を守らない状態」が当たり前 になっていたんです。
会社の今後のためにも、変えなければならないと思い、いろんな改善を提案しました。しかし、「前はこれでよかった」という声、私の前ではやると言っておきながら、実際にはやっていない、そんなことが日常茶飯事で…。
そんなある日、製品を納めているお客様から監査が入りました。 「小澤さんの会社、納期遅延で世界ワースト2位ですよ。」 監査で言われたそのひと言が、今でも忘れられません。納期遅延の世界ワースト1位は、船便で商品を送ってくる海外の会社だと言います。そのお客様と当社は車で行き来できる距離ですから、実質的にはうちが世界ワースト1位じゃないか…と思いました。
(これはまずい…どうにかしなくては…)と頭を抱えたのですが、結果的には、納期遅延はたったの3か月で大幅に改善できました。
――3か月で! 一体何をされたんですか?
小澤:製作から納品までの工程を明記する手順書に、ひとつの改良を加えました。
それまで手順書に書かれていた納期は、お客様に出荷する「最終納期」でした。しかしお客様に出荷するまでの間には、いくつもの工程が含まれます。そのため、それぞれの現場では、「自分の工程の納期をそれぞれが勝手に想像しながら」作業を進めていました。それにより、小さな納期遅延が積み重なっていたんです。
これを、各工程ごとに守ってほしい「加工納期」の表記に変更し、自部署の加工納期さえ守ってくれればOK、各担当が自身の納期にのみ責任をもつようにしました。従業員側としても自分の工程のことだけ考えればいいので、楽になります。たったそれだけで、9割以上の納期遅延が解消されたんです。
反発の声はまだまだありましたが、この改善の成功体験が大きな自信になりました。そして、 従業員の反発が怖くて改革できないなんて本末転倒。自分の意志を貫き会社を変えていこう と決意したんです。
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