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2019年1月9日(水)更新

労務管理

労務管理とは、企業における管理業務の1つであり、人事管理とともに従業員を管理するものです。これらを適切に行うことで、生産性の向上や従業員に関するリスクの回避、軽減を図ることができますが、その多くは労働基準法などの法令に基づくものであるため、法令への十分な理解が必要であり、個人情報の取り扱いについても細心の注意が必要です。

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労務管理とは

労務管理は、企業の管理業務の中でも従業員を管理する業務であり、人事管理と一体となって行うものです。

従業員を適切に管理できてこそ、企業活動は円滑なものとなり、生産性を向上させて利益を伸ばすことができるため、その他の管理業務の中でも重要度の高い業務であると言えます。

【関連】労務とは?/BizHint HR

管理業務の種類

企業の経営資源は、一般的に「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」の4つからなると言われていますが、これらの各経営資源に対応する主な管理業務は、一般的に以下のように整理できます。

  • ヒト…人事管理、労務管理
  • モノ…生産管理、販売管理、在庫管理
  • カネ…財務管理
  • 情報…情報管理

上記のとおり、労務管理は、人事管理とあわせて「ヒト」(つまり、従業員)に関する管理業務という整理になり、「人的資源管理」とも言われます。(もともと、アメリカで「Human Resource Management(HRM)」と言われていたのを日本語に訳されて使われるようになったものです。)

【参考】人的資源管理論/独立行政法人労働政策研究・研修機構

【関連】「経営資源」とは?ヒト・モノ・カネ・情報について解説/BizHint HR
【関連】HRM(人的資源管理)とは?日本語訳や意味、関連用語をご紹介/BizHint HR

労務管理の範囲

歴史的に、人事管理とは本社などで事務系として働く従業員の管理、労務管理とは工場などの現場で働く従業員の管理を指し、それらをまとめて人事労務管理と言われるようになったという経緯がありますが、現状においては、「人事管理」を人事業務、「労務管理」を労働事務と、本来の意味に分けて考える傾向にあります。

それぞれに対応する主な業務として、明確な基準はありませんが、一般的に以下のように整理できます。

  • 人事管理…採用活動、人員配置の検討、研修の実施、人事考課制度の運用 等
  • 労務管理…労働条件・就業規則等の管理、勤怠の管理、給与・賞与の計算 等

人事管理が主に従業員を採用してから退職までの従業員そのものの管理であるのに対し、労務管理は従業員が仕事をしていくうえでの労働条件や社内の規律などの管理であると言えます。

なお、これらの業務を担当する部署については、人事管理・労務管理をまとめて人事部としつつも、給与・賞与の計算については経理部としていたり、人事管理は人事部、労務管理は総務部、うち、給与・賞与の計算については経理部とするなど、企業により様々です。

いずれにしても、人事管理と労務管理は分離して機能するものではありませんので、連携して進めていくことが必要になります。

労務管理の目的

営利企業である限り、多くの業務は生産性の向上やリスクの回避などを目的としています。

労務管理については、法令に則った(あるいはそれ以上)労働環境を整備し、従業員のモチベーションを向上させることで、生産性の向上・効率化を図り、従業員に各種法令や就業規則その他の社内規程を遵守させることで、従業員に関するリスクの回避、軽減を図るものです。

労務管理の主な業務

労務管理の主な業務は前述のとおりですが、具体的な内容は以下のようなものになります。

労働契約の締結

従業員の雇い入れの際には、まずは、会社と採用者は双方の合意により労働契約を締結することになります。

この際、採用者に対しては労働条件通知書というものを交付しなければなりませんが、これには、賃金や就業時間、休憩時間など、必ず記載しなければならない事項が労働基準法などにより定められていますので注意が必要です。雇い入れの際には、労働条件通知書だけでなく、従業員の氏名や生年月日、性別、住所、雇い入れ日などを記載した労働者名簿も作成しなければなりません。

なお、労働基準法は、労働条件通知書を採用者に交付するところまでしか求めていませんが、契約書の形で2部作成し、双方押印のうえ、それぞれで保管しておいた方が後々のトラブルを避けられます。これを一般的に雇用契約書と言います。

【関連】労働条件通知書とは?雇用契約書との違い、記載事項や交付時期まで徹底解説/BizHint HR
【関連】労働者名簿とは?記載事項やテンプレート、保存期間などもご紹介/BizHint HR
【関連】「雇用契約」とは?労働契約との違い、雇用契約書の雛形や注意点も解説/BizHint HR

労働条件の変更・管理

各従業員の労働条件は当初契約時から退職時まで同じ内容ではありません。昇給のほか人事異動など様々なタイミングで変更になるため、その履歴については正確に把握しておく必要があります。

労働条件の変更

各従業員の労働条件は採用時から日々変更されていきます。昇給などにより賃金の変更もあれば、転勤や出向などによる就業場所の変更や法改正により労働条件のルールそのものが変更になる可能性もあります。

労働条件を変更する場合には、当初契約時と同様に、原則として会社と採用者の合意が必要ですが、昇給などであれば特に問題になることはなく、転勤や出向の場合も就業規則などに詳細規定があれば、必ずしも従業員の同意を得る必要はないとしている判例もあります。

しかしながら、一方的に賃金を減額することなどは認められませんし、仮に合意があったとしても労働基準法や就業規則で定める基準に達しない労働条件に変更することはできませんので注意が必要です。

【参考】労働契約法第3条、第8条、第12条/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕
【参考】労働基準法第13条/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕
【参考】Q16 配転・出向・転籍についてどのような法的問題がありますか。/独立行政法人労働政策研究・研修機構

労働条件の管理

労働基準法は、当初契約時の労働条件が変更になった場合に、あらためて労働条件通知書を交付することまで求めていません。(できる限り書面により確認することとされています。)このため、各従業員の労働条件の変更について、漏れのないように注意する必要があります。

例えば、給与計算においては、各従業員の最新の賃金額を把握しておかなければなりませんので、昇給などがあった場合には、その旨の通知を従業員に交付するとともに控えを保存、給与ソフトにも入力しておくなどが考えられます。

【参考】労働契約法第4条第2項/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕

就業規則等の管理

労働条件通知書に記載された労働条件は従業員個別のものであるのに対し、就業規則やその他の社内規程は、全従業員に共通する労働条件を定めたものであると言えます。(就業時間、休憩時間など重複して記載があるものもあります。)

このため、就業規則等を変更するに当たっては、従業員毎の労働条件を変更する場合と同様に十分に注意しなければなりません。

【関連】就業規則とは?作成~届出までの手順・ポイントをご紹介/BizHint HR

就業規則等の作成・届出

就業規則は、労働基準法により、常時10人以上の従業員がいる場合に作成しなければならないこととされているものですが、前述の労働条件通知書と同様に、就業時間、休憩時間など必ず記載しなければならない事項があらかじめ定められているため、その整理に沿った作成が必要です。

また、会社に従業員の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、なければ、従業員の過半数を代表する者の意見を聴いたうえで労働基準監督書に届け出なければなりません。

就業規則とは別に給与規程や出張旅費規程などを作成することも考えられますが、ごく一部の限定された従業員に適用するものでない限りは就業規則の一部とみなされますので、こちらも労働基準監督書に届け出が必要です。

就業規則等の変更

従業員毎の労働条件と同様に、就業規則やその他の社内規程についても会社の実態に合わせて変更しなければならないことや法改正に合わせた変更が必要になることがあります。

就業規則等を変更する場合の注意点としては、個別の労働条件を変更する場合と同様に、賃金の減額につながるような不利益変更は従業員の合意が必要になるということです。

例外として、変更後の就業規則を従業員に周知させ、かつ、その変更の必要性や合理的な理由(例えば、会社に経営上の危機が差し迫っているなど)がある場合には、社員の同意を得なくても認められる可能性もありますが十分な配慮が必要です。

【参考】労働契約法第9条、第10条/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕

【関連】就業規則の変更が必要となるケースとは?ケース別対応法や必要な書類、手続きのポイントをご紹介/BizHint HR

就業規則等の周知

就業規則等を新たに作成あるいは変更した場合には、従業員へ周知しなければなりません。周知の方法は、各従業員に書面で配布するほか、職場の見やすいところに備え付けたり、ネットワーク内でデータとして確認できるようにするなどです。

なお、従業員の採用時にもその時点での就業規則等について、個別の労働条件とは別に説明が必要です。

【参考】労働基準法第106条/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕

社会保険・労働保険の手続き

社会保険には、健康保険や介護保険、厚生年金保険があり、労働保険には、雇用保険や労働者災害補償保険(いわゆる労災保険)があります。

従業員の採用時やその他該当のある時に届け出、申請の手続きが必要になります。

社会保険の手続き

社会保険は、採用する従業員の1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が、通常の従業員(正社員)と比べて4分の3以上でなければならないなどの加入要件がありますが、それを満たしている従業員である場合には、雇い入れた日から5日以内に管轄の年金事務所(会社によっては健康保険組合)に届け出なければなりません。(一定の要件を満たす場合には、週の所定労働時間が20時間以上あれば加入できる場合もあります。)

この届け出により、健康保険と厚生年金保険の加入手続きが完了します。以降は、従業員の給与額により各保険料を算出し、給与から控除していきます。

なお、採用に伴う届け出以外にも従業員の扶養家族、住所・氏名に変更があった場合、また、出産した場合や産前産後休業、育児休業を取得した場合、退職した場合にも年金事務所に届け出が必要になります。

【関連】社会保険とは?加入条件や社会保険料の計算方法、扶養のしくみまで徹底解説/BizHint HR

労働保険の手続き

雇用保険についても、採用する従業員の1週の所定労働時間が20時間以上でなければならないなどの加入要件がありますが、それを満たしている従業員である場合には、雇い入れた月の翌月10日までに管轄のハローワークに届け出なければなりません。届け出により雇用保険の加入手続きが完了します。以降は、従業員の給与額により雇用保険料を算出し、給与から控除していきます。

なお、採用に伴う届け出以外にも従業員の氏名に変更があった場合、また、育児休業を取得した場合や退職した場合にもハローワークに届け出が必要になります。

労災保険については、保険料を全額会社で負担しますので採用に伴う手続きはありませんが、業務中や通勤途中に怪我をした場合などには、療養や休業のための給付を受けるために労働基準監督署に届け出が必要になります。

勤怠管理

勤怠管理とは、従業員の出退勤時間、休憩時間、休暇の取得状況などを管理するものです。勤怠管理の方法は、タイムカードやICカードによる記録であったり、各自、社内のシステムに入力するものであったりと様々ですが、いわゆる「出勤簿」として、賃金台帳(賃金の支払い記録)とともに適正に整備しておかなければなりません。

この勤怠管理は、給与計算や年次有給休暇の管理のためのものですが、各従業員の労働時間を適正に把握し、長時間労働があれば是正する目的もあります。残業が多い部署、従業員については、健康管理の面や生産性向上の観点からも是正させる取り組みを実施していかなければなりません。

【関連】勤怠管理とは?基礎をきちんと理解し、働き方改革推進へ/BizHint HR

給与・賞与の計算

各従業員の給与については、前述の勤怠管理データに基づいて計算し、賞与については、会社の業績や人事考課などを踏まえ、定められた基準により計算していくことになります。

給与の計算

給与の計算は、基本的には、給与算定期間の勤怠管理データに基づいて行います。

時間外労働、休日労働、深夜労働があれば、下記の表に基づく割増賃金の計算が必要になりますし、遅刻や早退、欠勤があれば、その時間・日数分の賃金控除が必要になる場合(日給月給制の場合など)もあります。また、4月や10月には定期昇給や人事考課などを反映させた給与改定が実施されることもありますので、漏れのないように十分注意しなければなりません。

なお、従業員への給与の支払い記録は「賃金台帳」として整備しておくことが義務付けられています。

【割増賃金の計算】

【出典】【厚生労働省】割増賃金の基礎となる賃金とは?

【関連】給与計算とは?計算方法をはじめ、手順や年間スケジュールまで徹底解説/BizHint HR
【関連】賃金台帳とは?記載事項や様式、保存期間、記入例・ひな形もご紹介/BizHint HR

賞与の計算

賞与の計算は、会社によって様々ですが、就業規則や賞与規程、人事考課規程などに定められた基準により行います。

一般的には、会社の業績を踏まえて賞与支給可能額がまず決定され、その後、各従業員への配分について、一定の計算式により人事考課結果や部署毎の営業成績などを反映させていくことになります。このため、人事考課の担当部署と賞与計算の担当部署が異なる場合には十分な連携が必要です。

【関連】賞与とは?定義や計算法、社会保険料などの算出法、手続きについて解説/BizHint HR

健康管理

従業員の健康管理は会社(経営者)の義務でもあり、これを行うことで、生産性の向上にもつながるものです。法的な実施義務があるものとしては、健康診断やメンタルヘルスケアの実施、また、過重労働者に対する医師による面接指導などが挙げられます。

【関連】健康経営とは?企業の取り組み事例を交えご紹介/BizHint HR

健康診断の実施

会社は、常時使用する従業員に対して、主に以下の健康診断を実施しなければなりません。(有害な業務に常時従事する従業員がいる場合には特殊健康診断などが別にあります。)

【健康診断の種類】

【出典】【厚生労働省】労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~

健康診断の対象となるのは「常時使用する労働者」とされていますが、パートタイムやアルバイトでも以下の要件をいずれも満たす場合には対象になりますので注意が必要です。

  1. 期間の定めのない労働契約により使用される者であること。
    ※期間の定めのある労働契約により使用される者である場合は、契約期間が1年以上である者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者、1年以上引き続き使用されている者のいずれかであること。(特定業務従事者(上記の表の※1を参照)である場合には、「1年以上」を「6か月以上」に読み替える。)
  2. その者の1週間の労働時間数が当該事業場(本社、支店などの単位)において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

【参考】短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について/独立行政法人労働政策研究・研修機構

メンタルヘルスケア対策

会社は、健康診断だけでなく、従業員のストレスチェックや面接指導も実施しなければなりません。これは、ストレスの蓄積がうつ病などのメンタルヘルスの不調へとつながる可能性があるとして、平成27年12月に改正施行された労働安全衛生法により義務付けられたものです。(従業員50人未満の事業場では当分の間は努力義務とされています。)

対象となる従業員は、原則として健康診断と同様で、具体的には、毎年1回、以下の図のような流れでストレスチェックを実施し、その報告書を労働基準監督署へ提出しなければなりません。

【ストレスチェックの実施手順】

【出典】【厚生労働省】ストレスチェック制度導入マニュアル

【関連】ストレスチェック義務化の対象者・スケジュールを徹底解説 /BizHint HR

長時間労働者への面接指導

会社は、一定の労働時間を超える従業員に対して、医師による面接指導を実施、あるいは、医師による面接指導またはそれに準ずる措置(保健師による保健指導など)を実施するように努めなければなりません。従業員50人未満の事業場についても平成20年4月1日から適用になっています。

面接指導の流れは以下の図のとおりですが、簡単にまとめると、月100時間を超える時間外・休日労働があり、疲労の蓄積が認められる従業員から申し出があった場合には必ず面接指導を実施しなければならず、月80時間を超える時間外・休日労働があり、疲労の蓄積が認められる従業員から申し出があった場合や、その他会社独自で定めた基準に該当する場合には、面接指導またはそれに準ずる措置(保健師による保健指導など)を実施するように努めなければなりません。

その後、会社は医師から意見を聴取し、該当労働者の就業場所や担当業務の変更などの事後措置を講じることが求められます。

【長時間労働者への面接指導の実施手順】

【出典】【厚生労働省】長時間労働者への医師による面接指導制度について

【関連】過重労働の定義とは?企業で行う対策~過重労働撲滅特別対策班や相談窓口もご紹介/BizHint HR

職場環境の改善

生産性の向上を図るためには、従業員が働きやすい職場環境にしていく必要があります。これには様々な取り組みが考えられますが、主なものとしては、残業時間の削減、年次有給休暇の取得促進、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントの防止などが挙げられます。

残業時間の削減

残業が常態化している場合には、従業員の健康管理面やワークライフバランスの観点からもその状況を改善しなければなりません。

残業時間の削減のためには、以下のような取り組みが考えられます。

  1. 残業時間の多い部門、従業員を特定し、業務分担を見直す
    →業務を分散させることで、特定部門、特定従業員への負荷の軽減を図る
  2. 各業務について、適正のある従業員を配置する
    →より適正のある従業員を配置することで、業務効率化、生産性向上を図る
  3. ノー残業デー・ウィークを導入する
    →計画的な業務遂行を習慣づけることで、全体として残業時間の削減を図る
  4. 衛生委員会などでの残業時間の状況について定期的に確認する
    →労使間で定期的に残業時間の状況を確認することで、早期の対策を図る

【参考】長時間労働の削減に向けて/厚生労働省

【関連】長時間労働の原因とは?削減に向けた対策・厚生労働省の取組をご紹介/BizHint HR

年次有給休暇の取得促進

残業時間の削減とあわせて実施すべきことが、年次有給休暇(以下、「休暇」とします。)の取得促進です。従業員に休暇を取得させることは、心身の疲労を回復させるだけでなく、生産性の向上にもつながります。

休暇の取得促進のためには、以下のような取り組みが考えられます。

  1. 休暇の取得促進について、経営トップ、役職者から呼びかける
    →会社として休暇の取得促進を表明することで、従業員はより取得しやすくなります。
  2. 役職者も積極的に休暇を取得するよう努める
    →直属の上司が休暇を取得することで、部下はより取得しやすくなります。
  3. 休暇を取得する従業員の業務をカバーできる体制を整備する
    →各部署内において、ある程度どの業務でもカバーできるように各従業員を多能化して おくことで、従業員はより取得しやすくなります。
  4. 従業員別に年間の休暇取得計画表を作成する
    →あらかじめ取得計画を立てておくことで、各部署においては業務体制を整備することができ、従業員もより取得しやすくなります。

その他にも様々な取り組みが考えられますが、休暇の取得促進のためには、従業員がより休暇を取得しやすいように、会社として全面的にバックアップしていくことが必要です。

【関連】有給休暇とは?付与日数や義務化への改正情報、買取りについてなど詳しく解説/BizHint HR

セクシャルハラスメントの防止

会社は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(いわゆる「男女雇用機会均等法」)により、従業員がセクハラにより不利益を受けることがないよう従業員からの相談に応じ、適切な措置を講じなければならないこととされています。

具体的にどのような措置を講じなければならないのかについては、厚生労働省から「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」というものが発出されており、そこでは以下が示されています。

  1. 会社としての対応方針を明確化し、全従業員にそれを周知・啓発すること
  2. 従業員からの相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること
  3. 従業員から相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、該当従業員および行為者に対して適正に対処するとともに、再発防止に向けた措置を講ずること
  4. 相談があった従業員や行為者のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したことなどを理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、全従業員に周知・啓発すること

なお、妊娠、出産などに関するハラスメント(マタニティーハラスメント)や、育児休業・介護休業に関するハラスメントなどについても同様の指針が厚生労働省から発出されていますが、セクシャルハラスメントと複合的に生じるものでもありますので、一元的な相談窓口を設置することが望まれます。

【関連】【社労士監修】セクハラの意味とは?定義とどこから基準を超えるか/BizHint HR

【参考】事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針/厚生労働省
【参考】事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針/厚生労働省
【参考】子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針/厚生労働省

パワーハラスメントの防止

パワーハラスメントは、前述のセクシャルハラスメントやマタニティーハラスメントよりもその定義付けが難しいものであり、厚生労働省も「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」として、その類型を示してはいるものの、会社に防止対策を義務付ける指針などはありません。

しかしながら、そもそも、加害者は名誉棄損罪や侮辱罪(刑法)に問われる可能性がありますし、会社としても加害者の使用者責任(民法)を問われる可能性もあります。

セクシャルハラスメントやマタニティーハラスメントなどと同様に相談窓口を設置し、同様の対応を行うことが望まれます。

【関連】「パワハラ」と「モラハラ」の違いは?対処法や防止法、判例を交えてご紹介/BizHint HR

【参考】職場のパワーハラスメントについて/厚生労働省

労務管理の注意点

これまで、労務管理の具体的な業務内容などについて説明してきましたが、これらの業務を進めていくうえでは、以下のような点に注意しなければなりません。

基本的な取り組み姿勢

労務管理の目的には、職場環境の改善なども含まれますが、実際に携わる立場になると、どうしても経営者や役員が決めたルールをただ社内に周知し、実践するだけの役回りになってしまう場合があります。

経営者や役員が全従業員の意見を吸い上げる意識を持っていればよいですが、そうでない場合には、自身が全従業員を代表する、経営陣とのパイプ役であることを意識し、正しい意見は積極的に吸い上げて経営陣に報告、相談する意識が必要です。

各種法令への理解

労務管理業務の多くは、基本的に労働基準法やその他の法令に基づくものであるため、専門家とまではいかないまでも、十分な理解が求められます。

また、就業規則や社内の各種規程、従業員の労働条件などは、法改正により変更を求められることがありますので、日々、法改正情報にも留意しておかなければなりません。

個人情報管理の徹底

労務管理業務の多くは、各従業員の賃金その他の労働条件やマイナンバーなど、個人情報に関係するものであるため、その管理については細心の注意を払う必要があります。

また、業務を離れたところでの個人情報に関する不用意な発言や自宅へのデータの持ち帰りなども、個人情報流失につながる危険性があるため厳禁です。

労務管理サービスの利用

労務管理業務の一部を外部に委託することで、業務負担の軽減を図ることができます。

ただし、少人数の会社の場合には、一般的に費用対効果が低いため、自社の状況により検討が必要です。

外部への委託

社会保険関係の届け出や就業規則の作成・変更、また、給与計算などについては、社会保険労務士事務所に委託することができます。(給与計算については、社会保険労務士の独占業務ではありませんので、税理士事務所や会計事務所、その他の給与計算サービス提供会社でも可)

これにより、業務負担の軽減を図ることができますが、当然費用が発生しますので、費用対効果を勘案のうえ検討することが必要です。

システム・ソフトウェアの導入

専門家に委託しないまでも、社会保険関係の届出システムや人事管理や就業管理、給与計算に関するソフトウェアを導入することで、業務負担の軽減を図ることもできます。

社会保険関係の届出システムを導入すると、電子申請を簡単に利用できたり、上記ソフトウェアを導入すれば、労働条件の管理、勤怠管理、給与計算は大幅に作業量を減らすことができますが、こちらも費用対効果の検証が必要です。

【関連】人事システムとは?目的や種類、導入ステップやポイントまでご紹介/BizHint HR

労務管理に関連する資格

労務管理業務を行っていくうえで、取得しておいた方が良い資格、あるいは、合格しておいた方が良い検定試験などがいくつかあります。

主なものとしては、以下が挙げられます。

衛生管理者

衛生管理者とは、労働条件や労働環境の衛生的改善など、会社の衛生全般の管理を担う国家資格で、労働安全衛生法により、常時50人以上の従業員がいる事業場では、この衛生管理者の選任が義務付けられています。

過労死や残業未払い問題などの影響もあり、社会的なニーズも高まっており、労務管理担当としては、取得が求められる機会が多い資格であると言えます。

【参考】受検資格/安全衛生技術試験協会

労務管理教育センターの対策講座

どの資格試験でも同じですが、短期合格を目指すためには、各団体の試験対策講座を受講することが効率的です。

例えば、この衛生管理者試験の対策講座であれば、労務管理教育センターのものが有名(ただし、会場は東京のみ)ですが、資格専門学校などであれば、WEB講座を実施しているところもあります。

【参考】衛生管理者試験対策講座 スケジュール&申し込み/公益財団法人労務管理教育センター

社会保険労務士

労務管理業務に直結する資格と言えば、国家資格である社会保険労務士が挙げられます。

この資格を取得することによる最大のメリットは、試験に合格後、各都道府県の社会保険労務士会に入会、登録することで、労働および社会保険に関する法令に基づく書類の作成や提出を代行できる、あるいは、各種相談に応じて指導できるようになることです。

このため、この資格を取得した従業員が自社だけの社会保険関係の届け出や給与計算をしている限りにおいては、手続き的なメリットはありませんが、社内にこの資格保有者がいることで、労務管理業務の安定化、効率化が期待できます。

【参考】試験情報/社会保険労務士試験オフィシャルサイト

労務管理士との違い

社会保険労務士と混同されることも多い「労務管理士」という資格がありますが、こちらは社内の労務管理担当者の労働関係法令などの専門的知識の向上をねらった民間団体の資格です。

この資格を取得することで、将来的に労務管理士として開業できるものではありませんので注意が必要です。

【参考】資格試験受験に関して 労務管理士 Labor Management Adviser (LMA)/一般社団法人日本人材育成協会

ビジネス・キャリア検定試験

この検定試験は、「人事・人材開発・労務管理」や「経理・財務管理」のほか計8分野別、また、部長クラスから新入社員クラスまでの等級別に受検することができる、民間団体が実施するものです。

比較的有名な試験であるため、合格すると、それぞれの分野について求められる実務能力を対外的に証明することができます。会社全体として受検することも多い試験です。

【参考】ビジネス・キャリア検定試験とは/中央職業能力開発協会

メンタルヘルス・マネジメント検定試験

この検定試験は、メンタルヘルス対策の推進について、人事労務管理スタッフ(I種)、管理監督者(Ⅱ種)、一般社員(Ⅲ種)のコース別に受検することができる、民間団体が実施するものです。

労務管理担当者としては、前述のメンタルヘルスケア対策の推進のためにも取得しておくことが望まれます。

【参考】試験のご紹介/メンタルヘルス・マネジメント検定試験センター(大阪商工会議所)

マイナンバー実務検定

この実務検定は、マイナンバー制度の理解を問うもので、そのレベルにより1級、2級、3級の中から受検することができる、民間団体が実施するものです。さらに、1級合格者を対象としたマイナンバー管理士認定講習会や2級以上の合格者を対象としたマイナンバー実務主任者認定講習会などもあります。

労務管理担当者としては、社会保険関係のほか各手続きにおいてもマイナンバーが導入されていることもあり、理解を深めるためにも取得しておくことが望まれます。

【参考】マイナンバー検定試験/一般財団法人全日本情報学習振興協会

労務管理に関する情報提供

厚生労働省では、労務管理のうち最も重要とも言える労働条件などに関するパンフレットを作成、公開するとともに、ポータルサイトも開設しています。

パンフレット

細かな単位のパンフレットが数多くありますが、労務管理としてまとめたものには次のものがあります。

やさしい労務管理の手引き

このパンフレットは、主に従業員の雇い入れから退職や解雇までに関係する労働関係法令、手続きを解説したもので、労働契約、労働条件の基礎知識を習得できます。

【参考】やさしい労務管理の手引き/厚生労働省

適切な労務管理のポイント

このパンフレットは、労働条件の変更や雇用調整を検討しなければならない場合であっても守らなければならない法令の概要や労務管理上、参考となる主な裁判例をまとめたもので、法令に則った適正な労務管理が理解できます。

【参考】適切な労務管理のポイント/厚生労働省

ポータルサイト

パンフレット同様、いくつかのポータルサイトがありますが、労務管理(主に労働条件)に関するものには次のものがあります。

確かめよう労働条件

このポータルサイトは、労働条件に関する労働者と事業主・労務管理担当者別のQ&A、関係法令や裁判例の解説、相談窓口の紹介、各種セミナー情報などを掲載している労働条件に関する総合情報サイトです。労働条件に関する情報はほぼここから入手できます。

【参考】確かめよう労働条件/厚生労働省

スタートアップ労働条件

このポータルサイトでは、「募集・採用、労働契約の締結」、「就業規則・賃金・労働時間・年次有給休暇等」、「母性保護・育児・介護」、「解雇・退職」、「安全衛生管理」、「労働保険・社会保険、その他」の6項目について、各設問に回答することで、自社の労務管理と安全衛生管理状況の評価を受けることができます。設問別にどのような問題があるのかを確認できますので、改善に向けた参考になります。

【参考】スタートアップ労働条件/厚生労働省

まとめ

  • 労務管理は、人事管理と一体となっているものであり、適切に行うことで、生産性の向上や従業員に関するリスクの回避、軽減を図ることができるものである。
  • 労務管理業務の多くは、労働基準法などの法令に基づくものであるため、十分な理解が必要であり、個人情報の取り扱いにも細心の注意が必要である。
  • 労務管理業務のうち、一部を社会保険労務士事務所などに委託したり、関連するシステムやソフトウェアなどを導入することで、業務負担の軽減を図ることができる。
  • 労務管理業務に関連する資格や検定はいくつかあるが、担当者自身の業務に直結するものは積極的に取得や合格を目指すべきである。

<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士

関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。


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