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2018年5月1日(火)更新

HRM

HRM(人的資源管理)とは、組織内人材をコストや労働力ではなく人的資源として扱い、戦略的に計画、開発、活用することによって、従業員の組織コミットメントやエンゲージメントなどを高めながら経営戦略の実現を目指す人事管理手法です。HRMへの理解を十分に深め、組織内で最大限に活用するために必要となる知識や情報を、HRMという言葉の意味や日本語訳、類似用語や関連用語、ミシガン・モデルとハーバード・モデルという2つの基本的概念の特徴や差異、HRMの課題や問題点、タレントマネジメントとの関連性などの項目に整理して分かりやすく解説致します。

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HRMとは

HRMとは、人材を貴重な経営資源の1つ(人財)として扱い、組織全体で戦略的かつ計画的に育み、最大限に活用していく人事管理手法です。HRMを正しく活用することによって、個々の従業員は思い描く理想の自分の実現を、組織は長期ビジョンや経営戦略の実現を果たすことができます。

HRMはそれまでの人事管理手法と異なり、企業戦略や事業戦略との一貫性を強く求められます。そのため、人事担当者だけではなく企業経営者やトップマネジメント層も興味を示し、積極的に関与する必要があります。

HRMの意味と日本語訳

HRMとはHuman Resource Managementの略称です。構成する英単語がそれぞれ『Human=人間』、『Resource=資源』、『Management=管理』という意味を持っていることから、日本語では一般的に『人的資源管理』と訳されています。

また、人的資源が組織内人材を指すことから『人材マネジメント』と訳すこともあります。

HRMの類似用語や関連用語

HRMにはPM、HCM、HRP、HRD、HRUなど数多くの類似用語や関連用語が存在します。ビジネスシーンで誤用することがないように、HRMとの違いや関連性を正しく理解しておきましょう。

HRMとPMの違い

HRMに非常によく似た意味を持つ言葉にPM(Personnel Management=人事労務管理、人事管理)があります。

PMは本来、ホワイトカラーを対象として行う『人事管理』だけを示す言葉でした。しかし、時代の変化と共にブルーカラーを対象者とする『労務管理』の意味も含まれるようになり、近年では『人事労務管理』と一括りにして扱うことが一般的となりました。

PMもHRMも『組織の更なる飛躍に向けて活用するため、組織内の人材を管理する』という共通の目的を持っています。ただし、PMが人材をコストや労働力として捉え、『組織が常に最大限の利益を得られるように従業員を管理、統制する』ことに重点を置いているのに対し、HRMは人材を価値ある経営資源として捉え、『個々の従業員が持つ個人特性を尊重し、育成、開発、活用することで経営戦略の実現を目指す』ことに重点を置いているという点で大きな違いがあります。

人材が組織を支える貴重な資源(リソース)であることは今や常識です。人材の持つ本当の力を組織の更なる成長や経営戦略の実現に活かし、個々の従業員が望む希望や理想を実現させるため、『人財活用』や『人材マネジメント』などの言葉を表面的に用いるのではなく、言葉の意味や人事管理手法の違いを正しく理解し、組織内で効果的に活用していく必要があるでしょう。

HRMとHCMの違い

HCM(Human Capital Management)は日本語で『人的資本管理』と呼ばれています。人材育成や人材開発、人材活用などの場においてHRMとHCMが同意語として扱われることは少なくありません。しかし、これら2つの管理手法は人材に対する視点が大きく異なります。

人材を経営資源として捉えるHRMに対して、HCMではヒューマン・キャピタル(HC)という教育経済学の概念を基に、人材が持つ能力やスキル、経験を資本として捉えます。そのため、HRMでは人材を経営資源として最大限に活用することで人材と組織双方の利益獲得を目指しますが、HCMでは社内教育や研修参加、職業訓練などの教育を施すことで人材という資本を拡大し、その資本を実験的プロジェクトの実施やイノベーションの創出などの組織内活動に対して積極的に投資することでリターン(業績)の最大化を目指します。

このように説明すると2つの管理手法を個別に扱う必要性を感じますが、HRMもHCMも『人材を価値ある存在として認識し、組織が計画的に開発、活用する』という点では同じです。HRMとHCMの違いを正しく理解し、当記事でHRMに対する知識を十分に深めることによって、HCMの概要も掴むことができるでしょう。

HRMとHRP、HRD、HRUの関連性

ビジネスシーンにおいて、HRMと共にHRPやHRD、HRUといった用語を耳にすることがあります。これらはいずれも従業員を経営資源として大切に扱い、管理していくために必要不可欠なものです。

HRMへの理解を深めるためにも、HRMとの関連性や個々の意味について覚えておきましょう。

  • HRP(Human Resource Planning=人的資源計画)
  • HRD(Human Resource Development=人的資源開発)
  • HRU(Human Resource Utilization=人的資源活用)

HRMの2つの基本的概念

HRMには『ミシガン・モデル』と『ハーバード・モデル』という2つの基本的概念が存在します。

これら2つの基本的概念に共通する点と異なる点を把握することによって、HRMをより深く、本質的に理解することが可能となるでしょう。

ミシガン・モデル

ミシガン・モデルとは、ミシガン大学のノール・M・ティシー(Noel M. Tichy)氏、コロンビア大学のチャールズ・J・フォンブラン(Charles J. Fombrun)氏、ペンシルベニア大学のメアリー・アン・ディバナ(M. A. Devanna)氏などから構成される研究グループ(ミシガン・グループ)が行った研究を基に生み出されたHRMの基本的概念です。

同研究グループのメンバーで『Strategic Human Resource Management(戦略的人的資源管理)』というタイトルの本を発表していることから、『SHRMモデル』と呼ばれることもあります。

ミシガン・モデルの視点と社会的意義

ミシガン・グループは、戦略的経営(Strategic Management)の構成要素として『使命と戦略(mission and strategy)』、『組織構造(organization structure)』、『人的資源管理(human resource management)』の3つをあげています。また、これら3つの基本要素は互いに深く関係し、大きな影響を受け合う相互依存的な関係であると論じています。

ミシガン・モデルでは、経営戦略の実現や企業目標の達成を重視し、そのために人材を経営資源としてどのように活用することができるか考え、開発、管理を行います。ミシガン・モデルの『企業利益ありきで人材力を活用する』という考え方はPMとよく似ています。

しかし、業績アップや企業目標の達成という表面上の部分だけではなく、そこに至るまでの経営戦略や経営環境、組織構造の見直しなど幅広い領域を人的資源管理と関連させることでこれまで以上に高い戦略性を生み出したミシガン・モデル(SHRMモデル)は、従来のものとは一線を画す新たな管理手法であったといえるでしょう。

ミシガン・モデルによる人的資源管理

【出典】ミシガン・モデル|人事のための課題解決サイト|jin-jour(ジンジュール)

ミシガン・モデルによる人的資源管理では、『採用・選抜(selection)』、『人材評価(appraisal)』、『報酬(rewards)』、『人材開発(development)』の4つの機能が循環的なシステムとして組織内に存在し、個人や組織のパフォーマンスに対して重要な影響を及ぼしていると考えられています。また、この4つの機能はそれぞれ『戦略レベル(strategic level)』、『管理レベル(managerial level)』、『業務レベル(operational)』の3つの観点から把握することができます。

この3つの観点の中でも『戦略レベル』に含まれる『戦略的選考(strategic selection)』、『戦略的評価(strategic appraisal)』、『戦略的報酬(strategic rewards)』、『戦略的開発(strategic developme)』という4つの要素はミシガン・モデルの戦略的姿勢を顕著にあらわしている重要なものとなります。

  • 戦略的選考 … 選考システムや事業戦略と一貫性のある人員配置を実施することによって企業戦略の実現を全面的にサポートする
  • 戦略的評価 … 既存の従業員のパフォーマンス(顕在実力)とポテンシャル(潜在能力)を客観的に評価することで、今後必要となる人材の質や量を予測(人的資源予測)し、その解決に向けた計画(人的資源計画)を立案する
  • 戦略的報酬 … 昇給やボーナス、昇進昇格、福利厚生など金銭や地位に関わる具体的な報酬(外的報酬)だけではなく、従業員自身が感じる達成感や充実感、社会的貢献、やりがい、自己成長への手応えなどの精神的な報酬(内的報酬)も与えることによって、中長期戦略の実現と目標の達成を目指す
  • 戦略的開発 … 人的資源計画に基づき、戦略的な観点から社内外での教育訓練やキャリア形成の実施(人的資源開発)を行う

4つの基本的機能の循環的関係性とそれぞれの戦略レベルが意識している内容や実施目的についてしっかりと押さえることで、ミシガン・モデルの全体像を正しく理解することができるでしょう。

ハーバード・モデル

ハーバード・モデルとは、ハーバード大学の経営大学院であるハーバード・ビジネス・スクールで経営学修士(Master of Business Administration、MBA)課程の必修科目に『人的資源管理』を追加することが決定した際、同校の教授らによって作成されたテキストブック『Managing Human Assets』の中で展開されたHRMモデルの通称です。

実務的に扱われているHRMの多くはハーバード・モデルであるため、流通しているテキストや書籍の中には注釈などを付けずに『ハーバード・モデル』を『HRMモデル』と記載していることもあります。

ハーバード・モデルの視点と社会的意義

ハーバード・モデルでは、企業経営者やトップマネジメント層、人事部の積極的な関与によって協調的な労使関係を構築し、良好な関係性から生まれるポジティブな感情や新たに顕在化された能力を最大限に活用することで、組織全体の生産性や品質、競争力の更なる向上を図ります。

世界最高レベルの知名度と実力を誇るハーバード・ビジネス・スクールの教授たちが従来の一方的かつ管理的な労使関係を全面的に否定し、『従業員あっての組織』という考えを最新の人事管理手法としてテキストブックにまとめたという衝撃的なニュースはすぐに世界中に広まることになりました。

また、組織コミットメント(愛社精神、忠誠心)やモチベーション(勤労意欲)の向上など従業員のメンタル面に配慮することの重要性や、組織行動論や組織開発論、人事労務管理論、労使関係論など、これまで人事や人材開発の分野において個々に扱われてきた各分野と人的資源戦略との統合の必要性について論じたことで、その後の人材マネジメントに多大な影響を与えました。

ハーバード・モデルによる人的資源管理

【出典】ハーバード・モデル|人事のための課題解決サイト|jin-jour(ジンジュール)

ハーバード・モデルのHRMシステムは、『従業員の影響(Employee Influence)』、『人的資源のフロー(Human Resource Flow)』、『報酬システム(Reward Systems)』、『職務システム(Work Systems)』という4つの領域から構成されています。

【従業員の影響】

  • 他領域を補完し、補強することを目的とした領域
  • 従業員の意見や想いをHRMシステムに意識的に反映させることで、HRMシステム全体の最適化や従業員の組織コミットメント向上を目指す
  • 現場の声に積極的に耳を傾けることで、協調的労使関係の構築に必要な要素の洗い出しが容易となる

【人的資源のフロー】

  • 人材募集、採用選考、人材配置、人材開発、昇進昇格、キャリア育成、雇用保障など、入社から退社までの一連のフローが含まれる領域
  • 従業員を『先行投資を行うことで多くの利益を生み出してくれる財産』として扱う
  • 様々な環境変化に対応できるよう、長期的かつ戦略的視点が求められる

【報酬システム】

  • 他領域と一貫性を持たせたシステムを構築することで全体の強化を目指す
  • 外的報酬と内的報酬の両方を見直し、必要に応じて調整する
  • 従業員の動機付けを行うためには業績給(能率給)の設定よりも内的報酬に目を向ける必要がある

【職務システム】

  • 従業員の自発性や組織コミットメントを高めることを目的とした領域
  • 個々の従業員に対して魅力的な目標と適量の責任を与え続けることで、尊厳欲求(承認欲求)や自己実現欲求を満たすことができる
  • 組織目標と個人欲求を統合させることによって、賞罰によるアメとムチでは実現することのできない多くの効果を期待することができる

『状況要因』や『ステークホルダーの利害』などから受ける影響を踏まえながら4つの主要領域に対して戦略的な働きかけを行うことで、従業員のコミットメントや能力などを効果的に高め、『従業員の幸福感』や『組織の有効性』、『社会全体の反映』といった長期的成果を得ることが可能となるでしょう。

HRMの課題や問題点

HRMは人材を経営資源として扱うことによって多くの効果や成果を生み出す素晴らしい管理手法です。しかし、HRMモデルそのものに対する問題点や日本の企業が活用していく上での課題もいくつか存在します。

HRMモデルとしての問題点

ミシガン・グループの生み出したミシガン・モデルとハーバード・ビジネス・スクールの教授たちが生み出したハーバード・モデル。そのどちらも非常に優れたモデルであり、多くの社会的意義を持っています。

しかし、同時に以下のような問題点も指摘されています。

【ミシガン・モデル(SHRMモデル)の問題点】

  • 企業戦略の実現や企業目標の達成を最重視するため、従業員の意思や希望が反映されにくい
  • 企業戦略との一致性や競争優位性を維持するため、人的資源を物的資源と同等に扱ってしまう場合がある
  • 従業員一人ひとりのポテンシャルを客観的かつ正確に把握、評価することが難しい
  • 情報の正確性が保障されていない人材評価データを基に、人的資源の予測や計画、開発を進めなければならない

【ハーバード・モデル(HRMモデル)の問題点】

  • 企業戦略との一致性や競争優位性を維持するため、人的資源を物的資源と同等に扱ってしまう場合がある
  • 従業員が不平や不満を表面上に出さずに溜め込むことで、協調的労使関係が保てていると誤認する可能性がある
  • 企業リード型の協調的労使関係の構築により、労働組合の存在が軽視されやすい

日本企業がHRMを活用する上での課題

日本企業がHRMを活用する上で解決するべき課題について解説する前に、日本的経営や日本型雇用システムが人事管理手法の進化に及ぼした影響について把握しておく必要があります。

日本的経営や日本型雇用システムが世界の人事管理手法を変えた

1970年代から1980年代、日本は高い技術力と生産力を武器に自動車産業をはじめとする多くの産業分野において世界市場を牽引してきました。その際、世界市場で成功を収めた日本企業の多くが高い組織力を持ち合わせていたことから、『組織成長の鍵は日本的経営や日本型雇用システムに隠されているのでは』という予測が世界各国の企業経営者や経営学者たちの間で広まり、世界規模での日本的経営ブームが巻き起こりました。

経営学者たちが研究を重ねた結果、『長期にわたる安定雇用の保証(終身雇用)』や『協調的な労使関係の構築と維持を行える環境(企業別組合)』、『小グループによる自発的な改善活動(QCサークル)』などの要素が高い国際競争力の源泉であることを突き止めました。そして、従業員の生活や感情を重視し、大切に扱う日本人独自の姿勢や雇用システムをPMと組み合わせることでHRMという概念を生み出したのです。

戦略的思考を苦手とする日本人経営者

このようにHRMと日本企業の間には密接な関係があるため、日本企業がHRMを活用することは容易なように思えます。しかし、多くの日本人経営者はモラルや協調性の維持向上を得意とする反面、ライバル企業や同業他社を出し抜くための戦略構築を苦手としています。

HRMは戦略的思考によって構築された企業戦略と人事管理が一貫性を持つことで大きな効果を発揮します。日本企業がHRMを最大限に活用するためには、企業経営者やトップマネジメント層が自らの意思でスキルアップを行い、様々な環境変化に迅速かつ的確に対応できる戦略的思考力を身に付ける必要があるでしょう。

HRMの知識はタレントマネジメントにも必要となる

昨今、人事管理や人材活用の分野ではタレントマネジメント(Talent Management、TM)という手法が主流となっています。タレント(talent)という英単語には『能力』や『才能』、『素質』、『技量』などの意味が含まれており、タレントマネジメントでは全従業員のスキルや性格、経験などの個人特性を可視化して一元的に管理することで適材適所な人材配置や最適な人材育成プラン構築の実現を目指します。

『タレントマネジメントが主流である』という説明を行うと、『今更HRMという古い人事管理手法を学ぶ必要性はなかったのではないか』と感じる方もおられるかと思いますが、それは大きな間違いです。なぜなら、タレントマネジメント実施の根底にある『限りある人的資源をいかに育成(人的資源開発)し、組織内で最適に配置(人的資源活用)していくか』という考え方はHRMそのものであり、HRMへの理解なくしてタレントマネジメントを成功させることは不可能だからです。

タレントマネジメントシステムをはじめとした多くの人事管理システム(人事情報システム)や人事管理ソフトウェアの機能説明には『人的資源』や『人財』など、HRMに関する言葉が数多く用いられています。HRMに対する深い知識を身につけておくことで、自社の経営戦略や企業理念に適合する人事管理手法やソリューションの選択と組織内導入、継続的実施が容易となるでしょう。

【関連】タレントマネジメントの意味とは?定義や目的、事例をまとめてご紹介 / BizHint HR
【関連】タレントマネジメントシステムとは?導入メリットや注意点・お勧めシステムもご紹介 / BizHint HR

まとめ

  • HRMとは従業員をコストや労働力ではなく貴重な経営資源として認識し、戦略的に計画、開発、活用することによって、従業員と組織の双方に対して長期的な効果やメリットを生み出す人事管理手法である
  • HRMには『ミシガン・モデル』と『ハーバード・モデル』という2つの基本的概念が存在し、ビジネスシーンで一般的に用いられているHRMモデルは『ハーバード・モデル』である
  • HRMは終身雇用やQCサークルなど当時の日本企業から多くのヒントを得て生み出された人事管理手法であるため、HRMと日本企業との相性は非常に良い
  • 企業経営者やトップマネジメント層が戦略的思考力を磨き上げ、積極的にHRMシステムの構築と最適化に関与することによって、HRMの効果や成果は飛躍的に向上する
  • HRMに対する知識を深めておくことによって、タレントマネジメントへの移行や応用、各種ソリューションの組織内導入が容易となる

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