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2019年8月16日(金)更新

社会保険

社会保険とは、加入者や被扶養者が生活上で直面する様々なリスクに備え、公的機関が費用の一部を負担する制度です。今回は、社会保険制度の概要と加入要件、さらに適用範囲が拡大されたパート・アルバイトの具体的な要件内容を紹介します。また、保険料の計算方法や被扶養者の要件、加入・喪失の手続き方法についても順を追って紹介していきます。

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社会保険とは

社会保険とは、 日本の国民が日常生活を送るにあたり、直面するさまざまな懸念リスクに備えて事前に保険制度を設け、いざという時になったらその生活を保障するための仕組み です。

一般的に社会保険と呼ばれる制度は、主に健康保険や厚生年金保険など、一般の会社で加入をすることができる制度を指すケースが多く見られます。これらの制度を 「狭義の社会保険」 といいます。一方で、社会保険には 「広義の社会保険」 という概念も存在します。

狭義の社会保険

狭義の社会保険には「健康保険制度」「介護保険制度」「厚生年金保険制度」の3つが該当します。

健康保険制度

健康保険制度とは、 業務外、つまり仕事とは別の理由で事故や病気にかかり、怪我をした場合やそれによって休業した場合に、かかった医療費の一部を負担する公的な医療保険制度 です。前述のケースのほか、加入者の出産時や死亡時に対処するための制度も設けられています。

なお、社会保険制度に加入する企業で勤務する者は、健康保険制度に加入することになります。加入者が会社から支払われる給与額に応じた保険料を支払うことで、いざという場合に保険の給付を受けることができます。

一方、自営業者など、何らかの事情で健康保険制度に加入できない場合は、国民健康保険制度に加入します。

介護保険制度

介護保険制度とは、 要介護認定を受けた65歳以上の高齢者や、40歳以上64歳以下で特定疾病による要介護認定を受けた人が安心して日常生活を送ることができるような保険医療サービスや福祉サービスを受けることができる公的な給付制度 です。

40歳以上の者には加入をすることが義務づけられており、65歳未満の者の場合は健康保険制度や国民健康保険制度と同時に保険料が引き落とされます。一方、65歳以上の者の場合は、主に支給される年金から保険料の引き落としが行われます。

厚生年金保険制度

厚生年金保険制度とは、すべての国民が加入しなければならない基礎年金制度である国民年金制度に上乗せされる形で、 加入者の老齢・障害・死亡時の保障として年金の給付が行われる制度 です。

主に会社員などが保険の加入者、いわゆる被保険者となり、年金の給付は被保険者や被扶養者である家族を対象に行われます。

広義の社会保険

広義の社会保険制度は、狭義の社会保険制度に加え、いわゆる「労働保険制度」も加えられます。つまり、健康保険制度・介護保険制度・厚生年金保険制度に加え、 労働保険制度と呼ばれる労災保険制度・雇用保険制度の2種類を加えたもの が、広義の社会保険制度なのです。

労災保険制度

労災保険制度とは、 労働者が仕事中や通勤中に災害にあい、病気やケガをした場合やそれにより障害状態や死亡をした場合に、その労働者本人や遺族に保険給付を行う公的な制度 です。

労災保険料は全額を会社が負担するため、加入者である従業員の負担がないことに特徴があります。保険料は従業員の数や年齢、会社の業種ごとに定められた労災保険料率によって算出され、毎年決められた時期に国に対して支払いを行うことが義務づけられています。そして、万が一の事態を迎えた場合、国が会社にかわって治療費等の補償を行います。

労災保険制度に加入することで、従業員側は確実に補償を受けることが可能となり、会社側は不意の多額な出費を抑えることができます。

雇用保険制度

雇用保険制度とは、 会社で働く人が安定した職業生活を送るための保障や、働く意欲のある人を補助するための公的な保険制度 です。主なものとして、会社を退職し失業した者の生活を保障のための給付である求職者給付、いわゆる「失業保険」が挙げられます。

その他、育児や介護を行う労働者の生活保障や、働く高齢者の雇用が継続される場合に支給される給付金制度、職業能力を高めるための教育訓練を受けた従業員に対して支給される給付金制度など、雇用保険制度には雇用に関するさまざまな場面で受けることができるサポート体制が整っています。

雇用保険料は、業種に応じた割合で求められ、会社と労働者が一定の割合で負担をすることになります。

本記事では一般的な概念とされる「狭義の社会保険」、つまり健康保険制度、介護保険制度、厚生年金保険制度、という3つの制度に照準をあてて解説をしていきます。

社会保険の加入条件

社会保険制度である健康保険、介護保険制度、厚生年金保険制度は、すべての者が一律に入ることのできる保険制度ではありません。たとえば、健康保険制度に加入できない者が国民健康保険制度に加入するケースなどが挙げられます。

社会保険制度に加入するためには、 まずは勤め先の会社が社会保険制度に加入しているかどうかで決定されます 。そして、社会保険に加入する会社に勤める従業員のうち、 加入要件を満たした者が社会保険制度に加入することになります

社会保険制度に加入することができる会社(適用事業所)

適用事業所には、具体的には強制適用事業所と任意適用事業所の2種類があります。

強制適用事業所:社会保険に必ず入らなければならない会社

国や地方公共団体、会社などの法人の場合は、業種に関係なく従業員が一人でもいる場合は強制適用事業所となります 。なお、ここでいう法人とは、私法人、公益法人、営利法人、社団法人、財団法人など、内容を問わずすべて含まれます。また、法人の代表者は「法人に使用される者」と考えられるため、社長1人で運営する法人も、強制適用事業所になります。

なお、個人事業主の場合でも、製造業や建設業など、国で定められた16種類の事業に携わり、事業主を除く5人以上の従業員を雇っている場合は、強制適用事業所に含まれます。

任意適用事業所:社会保険への加入が任意とされる事業所

強制適用事業所に含まれない事業所が、厚生労働大臣の認可を受けた場合 に任意適用事業所となり、社会保険に加入することができます。

任意適用事業所となる場合は、社会保険に加入した場合に加入者となる従業員の2分の1以上の同意を得た上で、申請を行わなければなりません。なお、認可を受けた任意適用を取り消す場合は、加入者の4分の3以上の同意が必要です。任意適用が取り消された場合は、社会保険への加入を希望する従業員も含め、全ての者が社会保険の資格を喪失することになります。

社会保険制度に加入できる従業員(被保険者)

社会保険に加入した会社に勤務し、社会保険制度に加入する従業員のことを「被保険者」と言います。従業員の雇用形態に応じて、社会保険に加入するための要件が異なる点に特徴があります。

一般の被保険者

社会保険の適用事業所(強制適用事業所・任意適用事業所問わず)で働き、給与を受け取る70歳未満の者 は、一般の被保険者として社会保険制度に加入します。

具体的には、正社員や試用期間中の者、短時間就労者であるパートタイム労働者やアルバイト、契約社員、法人における代表者、役員、労働組合で専従する者などが含まれます。

日雇特例被保険者

社会保険の適用事業所で臨時的に働く人が社会保険に加入する場合 は、一般の被保険者ではなく日雇特例被保険者となります。なお、日雇特例被保険者が加入することができるのは、健康保険制度・介護保険制度のみとなる点に注意が必要です。

加入する場合は、次の要件のいずれかに該当する必要があります。ただし、該当要件を超える期間で継続雇用された場合は、その従業員は一般の被保険者扱いとなります。

  1. 1ヶ月以内の期間で雇用される日雇労働者
  2. 2ヶ月以内の期間で雇用される者
  3. 4ヶ月以内の季節的業務で雇用される者
  4. 半年以内の臨時的事業による事業所で雇用される者

【被保険者とならない適用除外者も】

社会保険の適用事業所で働く70歳未満の従業員の中でも、被保険者とされない者が存在します。これを、適用除外者といいます。適用除外者に該当する従業員は、日雇特例被保険者として健康保険制度に加入するケースを除き、被保険者となることができません。

適用除外者とされる要件には、次の内容が挙げられます。

  1. 船員保険の被保険者
  2. 1ヶ月以内の期間で雇用される日雇労働者
  3. 2ヶ月以内の期間で雇用される者
  4. 巡回興行業務のような、所在地が一定ではない者
  5. 4ヶ月以内の季節的業務で雇用される者
  6. 半年以内の臨時的事業による事業所で雇用される者

パート・アルバイトの加入要件

正社員よりも短い期間や曜日を限定して働くパートタイム労働者やアルバイトの場合、社会保険へ加入する際には前述の「 一般の被保険者」 扱いとなります。ただし、これらの パート・アルバイトが社会保険に加入するには、一定の要件を満たす必要性が生じます

ここからは、パート・アルバイトが社会保険へ加入するための要件や、それに伴う法律の改正情報について説明をしていきます。

法改正における加入義務者適用拡大

平成28年10月より、健康保険や厚生年金保険などの社会保険制度への加入適用範囲が拡大されました。

具体的には、社会保険制度の適用要件となる一週間あたりの労働時間がこれまでより短縮され、より多くのパートやアルバイトが対象範囲に加えられることが定められました。

この制度は、導入当初は従業員数が500人を超える会社に対して義務づけられていましたが、 平成29年4月以降は、従業員数が500人以下の会社でも、労使間での合意が成立すれば適用対象 となり、社会保険へ加入できることになりました。

具体的な加入要件

以下 すべて の要件に該当したパート・アルバイトなどの短時間労働者は、社会保険への加入が可能となります。

  1. 労働時間:20時間以上
    今回の適用拡大により、上記の時間が一週間あたり20時間以上の者も新たに適用対象者になりました。この20時間以上の時間はあくまでも所定労働時間のことです。残業時間は含まれません。
  2. 賃金:月88,000円以上
    この賃金の中には通勤手当や残業代、休日出勤代、賞与などは含まれません。雇用契約書などで明確に確認ができない場合は、「時間給×週あたりの所定労働時間×52週÷12ヶ月」という数式により算出します。
  3. 1年以上の継続雇用見込み
    1年以上の契約で勤務する者や、1年以上の継続雇用が約束されている者などが対象となります。
  4. 会社の従業員数:501人、または500人以下で労使間の合意がなされている
    パート・アルバイトといった短時間労働者の社会保険適用要件の中は、会社の従業員数に応じた条件設定が存在します。具体的には、次のいずれかの要件に該当しなければなりません。
    ・従業員数501人以上の会社で働く短時間労働者
    ・従業員数500人以下で、社会保険への加入にまつわる労使間の合意がなされている会社で働く短時間労働者

学生は対象外

労働時間や賃金、雇用期間などで要件を満たしている場合でも、学生アルバイトなどは適用対象外となります。ただし、夜間学生や通信制、定時制の学校に通う者については、適用対象となるため注意が必要です。

社会保険の加入手続き

適用事業所に勤務する従業員が新たに社会保険に加入する場合、所定の方法による手続きを行う必要があります。

手続き法は社会保険の運営団体により異なります。


【社会保険の運営団体(保険者)】

社会保険制度には、 各種社会保険料の徴収を行い、いざという際には保険給付を行う運営団体があり、 この団体を「保険者」と言います 。社会保険の保険者には、全国健康保険協会、健康保険組合、社会保険事務所の3種類が挙げられます。

保険者 概要 保険料率の設定
全国健康保険協会(協会けんぽ) 健康保険組合が存在しない中小企業がメインに加入する健康保険制度の運営団体 都道府県別に設定された保険料率
※算出された保険料は会社・従業員が折半負担し、従業員の給与から保険料を天引きした上で、会社が一括して納める
健康保険組合(組合健保) 大企業やそのグループ会社がメインに加入する健康保険制度の運営団体 組合に応じて料率が定められている
※健康保険法で定められている法定給府に加え、組合で独自に設定した付加給付を上乗せすることができる
社会保険事務所 都道府県ごとに設置された年金制度を扱う機関
健康保険や厚生年金にまつわる書類一式の受付や保険料の徴収業務を行う

健康保険制度の保険者が協会けんぽである会社の場合、健康保険(介護保険)と厚生年金保険への加入手続きを一括して行うことができます。保険者が健康保険組合である会社の場合、健康保険への加入手続きは健康保険組合が指定する方法で行いますが、厚生年金保険への加入手続きは、協会けんぽの場合と同様の手順で行うことになります。

今回は、保険者が協会けんぽである会社の場合に照準を当て、健康保険と厚生年金保険への加入手続きを一括して行うケースを紹介していきます。

必要書類

社会保険の加入手続きにまず必要となる書類は「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」です。一般の被保険者用の書類と、パート・アルバイト用の短時間労働者用の2種類の書類フォーマットが、日本年金機構のホームページで無料提供されています。

なお、添付する書類としては、通常のケースにおいては特に指定されたものはありません。ただし、資格取得年月日が書類受付日よりも2ヶ月前にさかのぼる場合は、賃金台帳または出勤簿のコピーが必要となります。また、加入者が会社役員の場合は、株主総会の議事録または役員変更登記について記載された登記簿謄本のコピーが必要です。

【参考】日本年金機構ホームページ:従業員を採用したときの手続き(3.申請及び届書様式・添付書類)

提出先・期限

書類の提出先は、事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センターです。

提出方法は、電子申請・郵送などが挙げられます。または、所轄の年金事務所へ直接持ち込む方法も認められています。

提出期限は、加入の事実が発生してから5日以内と、比較的短時間での届け出が必要となります。発生の見込みが発生した時点で書類の準備をしておく方法が有効でしょう。

手続きにおける注意点

社会保険の加入手続きにおいて重視される点の一つに、加入者が間違いなく加入者本人であるという、本人確認の徹底が挙げられます。本人確認は、保険証の偽装や不正取得を防ぐために求められるものであり、具体的な確認行為としては、本人確認の証として、届出書へ基礎年金番号を記載することが必須とされています。

加入者本人が年金手帳を紛失したなどの理由で基礎年金番号の確認が不可能な場合は、「年金手帳再交付申請書」をあわせて提出することになります。

住所変更時の手続き

社会保険に加入している被保険者や被保険者に扶養されている者の居住地に変更があった場合は、すみやかに保険者に対して住所変更の手続きを行わなければなりません。手続きの際に提出する書類は、「健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届」です。こちらも書類フォーマットを日本年金機構のホームページで入手することができます。

なお、この変更届は3枚つづりの書類になっています。加入する社会保険の制度に応じて、提出書類の枚数が異なる点に注意が必要です。

【参考】日本年金機構ホームページ:従業員及び被扶養配偶者の住所に変更があったときの手続き(3.申請及び届書様式・添付書類)

社会保険加入における罰則

ここまでの内容から、社会保険制度にはさまざまな決まりが設けられていることがお分かりいただけたかと思います。

ここでは、社会保険の加入に基づく罰則規定について説明をしていきましょう。この社会保険の加入に基づく罰則には、主に加入しなければならない者が加入していないという 「未加入」 の問題と、未加入によって本来は支払わなければならなかった社会保険料を支払っていないという 「未納」 の問題の2種類に分類されます。

社会保険未加入における罰則

社会保険に加入するべきものがしていなかったという未加入時に科せられる罰則には、まず追徴によるものが挙げられます。

これは、未加入者が本来ならば支払わなければならなかった社会保険料を、過去にさかのぼって支払うことです。さかのぼり期間の時効は2年のため、最大2年前までの社会保険料を追徴金として払う必要があります。

また、健康保険法208条によると、社会保険の未加入者を生じさせたとして、 会社側に6か月以下の懲役または50万円以下の罰金 が科せられる可能性もあります。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:健康保険法(大正十一年法律第七十号)

保険料未納における罰則

本来は支払わなければならなかった社会保険料を納めなかったことへの罰則としては、延滞金の制度が科せられることになります。

社会保険料は、支払期日が明確に定められています。その期日に保険料を適切に納付しなかった場合、会社に対して督促状が送付されます。

督促状には指定期限日と期日までの完納に関する指示が記されていますが、その期日に保険料を納めなかった場合は、 「本来納付しなければならない期限日の翌日」から「完納した日の前日」までの期間に応じた延滞金を支払う 必要性が生じます。

【参考】日本年金機構ホームページ:延滞金について(概要)

社会保険の被扶養者とは

社会保険制度では、加入者(被保険者)が扶養する者も保険の給付を受けることができる点に特徴があります。これを、被扶養者制度といいます。

被扶養者の要件

被保険者が扶養する者であっても、被扶養者として認められるには一定の要件を満たす必要があります。ここからは、被扶養者の要件について、種類に応じて順に説明をしていきましょう。

なお、すべての要件を満たしている場合でも、後期高齢者医療の被保険者の場合は被扶養者になることはできないため、注意が必要です。

同居が必要ない者の範囲

まずは、加入者と別の場所に住んでいる場合(同居する必要がない)でも、被保険者が生計を維持していれば被扶養者として認められるケースです。

具体的には、次の者が該当します。

  • 配偶者
  • 子・孫・兄弟姉妹
  • 直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母)

なお、養子縁組をした養父母や養子も、父母や子として認められます。

同居が必要な者の範囲

次は、被保険者が生計を維持しており、なおかつ同居していることが条件となるケースです。ただし、この場合の「同居」とは、戸籍を同じくしているか、被保険者が世帯主である必要性については問われません。また、病気で入院中など、一時的な別居状態であれば、同居と認められる場合があります。

具体的には、次の者が該当します。

  • 3親等内の親族(伯叔父母・甥姪などの3親等内の血族・姻族)
  • 内縁関係の配偶者の父母・子
  • 配偶者が死亡した後におけるその父母・子

なお、上記の「3親等内の親族」には、いとこは含まれません。

収入要件

被扶養者としての要件を満たすためには、被保険者が生計を維持しているという事実が必要となります。これには、具体的な収入要件が設けられている点を覚えておきましょう。

1.同居している場合

  • 被扶養者の年間収入が130万円未満(60歳以上の者・障害者は180万円未満)、かつ被保険者の収入の半分未満である場合
  • 被扶養者の年間収入が130万円未満(60歳以上の者・障害者は180万円未満)、かつ被保険者の収入の半分以上で年間収入を上回らない場合であり、被保険者が生計維持の中心的役割を果たしていると認められる場合

2.同居していない場合

  • 被扶養者の年間収入が130万円未満(60歳以上の者・障害者は180万円未満)、かつ被保険者の仕送り額未満である場合

被扶養者の加入手続き

新たに被扶養者として社会保険へ加入する場合、所定の方法による手続きを行う必要があります。

必要書類

被扶養者の加入手続きにまず必要となる書類は「健康保険 被扶養者(異動)届」です。こちらについても、書類フォーマットと記入例が、日本年金機構のホームページにおいて提供されています。

添付する書類として、まずは収入要件を満たしているかを確認するためのものが必要です。ただし、控除対象配偶者や扶養親族の場合は、事業主の証明を得られれば添付書類の提出必要はありません。

具体的な書類の内容としては、退職により被扶養者になった場合は退職証明書や離職票のコピー、無職で失業給付を受給中の場合は雇用保険受給被保険者証のコピー、年金受給中の場合は年金受取額が確認できる書類のコピー、自営や不動産収入がある場合は確定申告書のコピーなどです。その他、課税(非課税)証明書を求められる場合もあります。

さらに、続柄を確認するための被扶養者の戸籍謄本や、同居を確認するための住民票の原本、内縁関係を確認するための書類を求められるケースもあります。

【参考】日本年金機構ホームページ:従業員が家族を扶養にするときの手続き(3.申請及び届書様式・添付書類)

提出先・期限

書類の提出先は、被保険者が勤務する事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センターです。提出方法は、電子申請・郵送などが挙げられます。または、所轄の年金事務所へ直接持ち込む方法も認められています。提出期限は、被扶養者加入の事実が発生してから5日以内です。

手続きにおける注意点

結婚により配偶者を被扶養者として加入させる場合で、引越しにより住所が変更となった場合は、被扶養者加入手続きの際に「健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届」の提出も必要となります。

また、被扶養者の加入年月日が書類受付日よりも2ヶ月前にさかのぼる場合は、賃金台帳または出勤簿のコピーが必要となります。また、加入者が会社役員の場合は、扶養されているという事実を確認することができる書類の提出が必要です。

社会保険料の計算方法

ここからは、社会保険の各制度における実際の保険料計算方法について、解説をしていきましょう。

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険、つまり社会保険料の計算を行うにあたり必要とされる金額です。一定金額ごとに区分され、区分ごとに等級が定められており、これを標準報酬等級といいます。従業員に支払った月当りの報酬額をこの等級に当てはめ、実際に社会保険料の計算を行う、という流れを取ります。

なお、健康保険制度と厚生年金保険制度では、区分額と等級数が異なる点に特徴があります。

報酬の範囲

被保険者の標準報酬月額における等級を算出する場合、まずは被保険者ごとに基準となる報酬額を固めなければなりません。報酬には、賃金や各種手当、賞与など、労働の対価として被保険者が受け取る額をすべて含みます。ただし、臨時の収入や年に3回以下の賞与は除外されるため、注意が必要です。

標準報酬月額の決定方法

標準報酬月額による等級決定は、一定の要件に応じて実施されます。主に、次のケースでは等級区分の決定または改定が行われることになるため、覚えておきましょう。

  1. 資格取得時決定:入社した時など、被保険者の資格取得時に実施されます。
  2. 定時決定:毎年7月現在に在籍する被保険者に対して、4月・5月・6月の3ヶ月間に支払った報酬の平均額を区分に当てはめ、その年の9月から1年間の標準報酬月額を定めます。
  3. 随時改定:昇給などの理由で2等級以上の高低が生じた場合に、4ヶ月目より標準報酬月額を改定します。
  4. 育児休業等終了時改定:3歳未満の子を養育する被保険者が育児休業等を終え復帰した際に、復帰前の報酬と比較して低下した際に標準報酬月額の改定を行います。
  5. 産前産後終了時改定:被保険者が産前産後休業を終え復帰した際に、復帰前の報酬と比較して低下した際に標準報酬月額の改定を行います。

健康保険料

協会けんぽが保険者となる健康保険制度に加入している場合は、次の数式により保険料が算出されます。

健康保険料=標準報酬月額×保険料率

標準報酬月額は全国一律で、区分ごとに最大50等級まで設けられています。1等級が63,000円未満、最大となる50等級は1,355,000円以上の者が該当します。保険料率は、毎年3月に料率が更改され、内容は都道府県ごとに異なります。

たとえば、東京都在住の30歳サラリーマンで、月額25万円の給与を受け取る者の健康保険料は月額25,766円で、その折半額である12,883円ずつを会社・被保険者本人が負担することになります(平成29年9月時点)。

【参考】全国健康保険協会 協会けんぽホームページ:都道府県毎の保険料額表

介護保険料

協会けんぽが保険者となる健康保険制度に加入している場合は、同時に介護保険料の適用もなされます。介護保険料については、次の数式により求められます。

介護保険料=標準報酬月額×保険料率

標準報酬月額は健康保険制度の場合と同様に、全国一律で、区分ごとに最大50等級まで設けられています。1等級が63,000円未満、最大となる50等級は1,355,000円以上の者が該当します。

ただし、保険料率については、健康保険制度とは異なり全国一律です。更改月は毎年3月で、平成29年3月更改の介護保険料率は1.65%です。

【参考】全国健康保険協会 協会けんぽホームページ:協会けんぽの介護保険料率について

厚生年金保険料

厚生年金保険制度に加入している場合は、次の数式により保険料が算出されます。

厚生年金保険料=標準報酬月額×保険料率

標準報酬月額は全国一律ですが、健康保険制度とは異なり、区分ごとに最大31等級まで設けられている点に注意が必要です。1等級が93,000円未満、最大となる31等級は605,000円以上の者が該当します。保険料率は、毎年9月に料率が更改されますが、これまで実施されていた段階的な料率引き上げが終了し、平成29年9月以降は一律に18.3%で固定されることが定められています。

また、厚生年金制度に加入する会社は、子ども・子育て拠出金を全額事業主負担で納付しなければなりません。拠出金率は0.23%で、被保険者ごとの標準報酬月額・標準賞与額に拠出金率を乗じた額になります。

【参考】日本年金機構ホームページ:厚生年金保険の保険料(1.保険料)

標準賞与額

社会保険の被保険者が受け取る賞与についても、保険料の支払いが必要となります。そのために必要となるのが、標準賞与額です。

実際に被保険者に対して賞与を支払った場合、まずは1,000円未満の端数を切り捨てます。その上で、健康保険(介護保険も含む)の場合は年度累計額573万円、厚生年金の場合は1ヶ月当り150万円を上限とした標準賞与額を定め、保険料を求めることになります。

社会保険の喪失手続き

退職や死亡など、何らかの事情で従業員が社会保険の被保険者ではなくなる場合、会社は社会保険の喪失手続きを行う必要があります。

必要書類

社会保険の喪失手続きにまず必要となる書類は「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」です。こちらの書類についても、フォーマットを日本年金機構のホームページで入手することができます。

【参考】日本年金機構ホームページ:従業員が退職・死亡したときの手続き(3.申請及び届書様式・添付書類)

なお、添付書類については、健康保険制度の保険者が協会けんぽの場合、健康保険組合の場合に応じて次のように異なります。

協会けんぽの場合

保険者が協会けんぽの場合は、書類の届け出と同時に、健康保険被保険者証の返納が必要となります。被保険者本人の保険者証に加えて配偶者の保険者証、交付がなされている場合は高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証などの返納も行わなければなりません。

組合健保の場合

保険者が健康保険組合の場合は、添付書類は特に必要ありません。ただし、健康保険組合の制度に応じた手続きを別途行う必要があります。

喪失年月日とは

社会保険の資格を喪失する年月日は、喪失の理由が発生した翌日となります。たとえば、退職日が月末である従業員の場合、資格喪失日はその翌月の初日です。

ここで覚えておかなければならないのが、喪失年月日によって社会保険料の最終徴収月が異なるという点です。

たとえば、ある従業員が5月20日に退職した場合、資格喪失日は5月21日となり、資格を喪失した月は5月です。この場合は、5月分の社会保険料の徴収はありません。一方、5月31日に退職した従業員の場合、資格喪失日は6月1日となり、資格を喪失した月は6月になります。したがって、5月分の社会保険料が聴収されることとなる点に、注意が必要です。

提出先・期限

書類の提出先は、被保険者が勤務する事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センターです。提出方法は、電子申請・郵送などが挙げられます。または、所轄の年金事務所へ直接持ち込む方法も認められています。提出期限は、被扶養者加入の事実が発生してから5日以内です。

任意継続とは

任意継続とは、会社を辞めた際に社会保険の資格を喪失した場合でも、喪失者本人が希望し、一定の要件を満たせば、そのまま継続して健康保険の被保険者であり続けることができるという制度です。なお、任意継続をした場合は、その者は「任意継続被保険者」と呼ばれます。

任意継続被保険者となるためには、まず資格を喪失した日の前日、つまり退職日当日までに継続して2ヶ月以上の社会保険への加入期間があることです。また、資格喪失日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を被保険者の所在地を管轄する協会けんぽまたは加入していた健康保険組合へ提出する必要があります。

【参考】全国健康保険協会 協会けんぽホームページ:任意継続被保険者資格取得申出書(申請書様式)

資格喪失証明書とは

資格喪失証明書とは、社会保険の加入者が退職したことでその資格を喪失した際に、会社側が交付する資格を喪失したことを証明するための書類です。様式に指定はありませんが、協会けんぽのホームページにてフォーマットの提供が行われています。

この証明書は、退職した従業員が新たに国民健康保険などへ加入する際に、健康保険の資格を喪失したことを確認するための書類として提出します。

国民健康保険へ加入する場合は資格喪失日より14日以内の届け出が必要となるため、従業員は退職後の限られた時間内で、適切に新たな加入手続きを整えることになります。資格喪失をした従業員に対し、すみやかな発行を心がけましょう。

【参考】全国健康保険協会 協会けんぽホームページ:健康保険厚生年金保険 資格喪失証明書

まとめ

  • 社会保険とは、生活する際に直面するリスクに備えて事前に保険料を徴収し、いざという際に保険給付を行う公的な制度で、主に健康保険・介護保険・厚生年金保険をいう。
  • 社会保険制度には、勤務先が適用事業所であり、要件を満たした者が加入をすることが可能。パート・アルバイトなどの加入要件については、平成28年に適用範囲が拡大。
  • 社会保険の計算方法は、被保険者の報酬月額を一定額ごとに区分された等級表に当てはめ、標準報酬月額を割り出した上で、制度ごとに定められた保険料率を乗じて算出する。

<執筆者> 加藤知美 社会保険労務士(エスプリーメ社労士事務所)

愛知県社会保険労務士会所属。愛知教育大学教育学部卒業。総合商社で11年、会計事務所1年、社労士事務所3年弱の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。


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