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2019年3月1日(金)更新

賃金台帳

賃金台帳とは、従業員に支払った賃金について、その計算の根拠となった労働日数・時間数や社会保険料などの控除額を記録するための帳簿です。賃金台帳は、労働者名簿や出勤簿とともに法定三帳簿と言われているもので、労務管理上、非常に重要な帳簿になります。ここでは、賃金台帳の作成や管理にあたって理解しておくべき事項について解説します。

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賃金台帳とは

賃金台帳とは、各従業員について、毎月の給与の額、手当別の内訳、控除する社会保険料の額など等を記録しておくものです。労働基準法によりその作成が義務付けられています。

≪労働基準法第108条(賃金台帳)≫ 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法第108条

「事業場ごとに賃金台帳を調製」とは、例えば本社と支社などのように事業場が別の場所にある場合には、その事業場ごとに賃金台帳を作成する必要があるということです。

なお、具体的に賃金台帳に記入しなければならない事項は、厚生労働省令(労働基準法施行規則第54条)で定められていますが、これらについてはこのあと説明します。

賃金台帳の対象者

賃金台帳の作成、記入対象となるのは、正社員やパートなどの雇用形態を問わず、会社から賃金を支払うすべての従業員です。

なお、役員についても賃金台帳の作成は必要です。役員はいわゆる「労働者」には当たりませんが、役員報酬が0でない限りは健康保険や厚生年金保険の被保険者となることから、保険料の控除額を記録する意味でも賃金台帳は作成しておくべきです。年金事務所などの調査でも、役員分の賃金台帳の提示を求められることがあります。

給与明細書との違い

給与明細書とは、給与の支払いのたびに従業員に交付するものであり、賃金台帳のように、会社側で保管しておくものではありません。法律上の根拠も下記のとおり異なります。

  • 給与明細書
    労働保険徴収法や健康保険法、厚生年金保険法、また、所得税法において、給与から控除した各種保険料や所得税などの額を従業員に知らせるために作成義務が課せられているもの。
  • 賃金台帳
    労働基準法において、適正な労務管理のために作成義務が課せられているもの。

なお、一般的に、給与明細書に記載する事項は、このあと説明する賃金台帳に記載する事項とほぼ同様であり、仮にそれらをすべて網羅できているのであれば、1部を従業員に交付し、もう1部を賃金台帳として運用していくことも可能です。

賃金台帳の記載事項

賃金台帳に記載しなければならない事項は、労働基準法施行規則第54条において下記のとおり示されており、これらは必ず記載しなければなりません。

  1. 氏名
  2. 性別
  3. 賃金計算期間
  4. 労働日数
  5. 労働時間数
  6. 時間外労働時間数
  7. 休日労働時間数
  8. 深夜労働時間数
  9. 基本給の額
  10. 各種手当の額
  11. 賃金控除額

なお、賃金として通貨以外で支払うものがある場合(例えば、通勤定期券や自社製品などの現物給付)には、その評価総額も記入しなければならないことになっています。

それでは、上記の中で注意すべき事項について説明していきます。

【参考】労働基準法施行規則第54条/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕

賃金計算期間

「賃金計算期間」とは、給与計算の締日までの1か月間のことを言います。例えば、月末が締日であれば、単に「〇月分」あるいは、「〇月1日~〇月31日」などと記載、毎月15日が締日であれば、「〇月16日~〇月15日」と記載します。

日雇い労働者の場合には、1ヶ月を超えて継続的に使用しているような場合を除き、この「賃金計算期間」の記入は不要とされています。

労働日数・労働時間数

「労働日数」には休日に出勤した日を含めた日数、「労働時間数」には「時間外労働時間数」や「休日労働時間数」、「深夜労働時間数」などすべての労働時間数の合計を記載します。

しかしながら、企業によっては割増賃金計算上の利便性なども考え、「労働日数」については「所定労働日数」と「休日労働日数」に分けて記載したり、「労働時間数」についても「所定労働時間数」と「時間外労働時間数」や「休日労働時間数」、「深夜労働時間数」を別に整理しているところもあります。これらは運用上の整理と解され、労働基準監督署の調査が入っても指導を受けることは少ないですが、あくまで法律で示されている整理でないことは理解しておく必要があります。

深夜労働時間数

「深夜労働時間数」とは、午後10時から午前5時までの間の労働時間数のことであり、該当があった場合には、その合計時間を記載します。

なお、経営者と一体的な立場にある、いわゆる「管理監督者」については、時間外労働、休憩、休日労働についての労働基準法の規定が適用されないため、前述の「時間外労働時間数」と「休日労働時間数」については記載する必要はありません。しかしながら、深夜労働の規定だけは適用されるため、深夜労働があった場合は、この「深夜労働時間数」は記載しなければなりません。

どのような者が労働基準法上の「管理監督者」に当たるのかについては、以下の記事でご確認ください。

【関連】「管理監督者」の定義とは?労働基準法の適用範囲や注意点、判例まで詳しく解説/BizHint

賃金控除額

「賃金控除額」とは、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税の額、また、社宅費や懇親会費などのように労使協定で賃金から控除することを定めた額のことです。それらはすべて項目ごとに整理したうえで記載しなければなりません。

賃金台帳の様式・テンプレート

賃金台帳の様式は労働基準法施行規則第55条で定められていますが、必要な事項を網羅していれば、追加しても問題ありません。

ここでは、定められている様式やエクセルのテンプレートを入手できる厚生労働省のホームページなどをご紹介します。

常用労働者用(様式第20号)

日雇い労働者を除く、一般的な労働者の賃金台帳としては、下記の様式が定められています。

【賃金台帳(常時使用される労働者に対するもの(様式第20号)】

【出典】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:様式第20号(第55条関係)

日雇い労働者用(様式第21号)

日雇い労働者の賃金台帳としては、下記の様式が定められています。

先に説明したとおり、日雇い労働者については記載する必要がない「賃金計算期間」の欄などがありません。

【賃金台帳(日日雇い入れられる者に対するもの(様式第21号)】

【出典】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:様式第21号(第55条関係)

上記はPDFですが、厚生労働省のホームペーでは、エクセル形式のものも公開されています。

厚生労働省のテンプレート(エクセル形式)

厚生労働省(関係機関を含む)のホームページから、PDF形式のもののほか、エクセル形式のテンプレートもダウンロードできます。

労働基準法施行規則で定められている様式は、あくまで最低記載項目で整理したものになりますので、これらをベースに、会社として必要な情報を追加することもできます。

以下は、上記の様式のように縦書きではなく、基本的に使いやすい横書きで整理されています。

【参考】厚生労働省 東京労働局:様式集 労働基準法関係
【参考】厚生労働省 大阪労働局:労働基準関係法令主要様式集

賃金台帳の記入例

インターネット上には、賃金台帳の記入例も数多く公開されていますが、やはり、厚生労働省やその関係機関のものを参考にした方が安心です。

例えば、以下の都道府県労働局のホームページから、記入例をダウンロードすることができます。(記入例とともに、ワードやエクセル、PDF形式の様式も公開されています。)

【参考】厚生労働省 福岡労働局:賃金台帳記入例
【参考】厚生労働省 福岡労働局:労働基準関係 様式集

賃金台帳の保存期間

労働基準法第109条では、賃金台帳を3年間保存しなければならないこととされています。

なお、賃金台帳に年末調整関係の項目を追加すれば、賃金台帳を源泉徴収簿として使用することもできます。このような整理にしている場合には、国税通則法という法律により、源泉徴収簿として7年の保存期間が定められていますので注意が必要です。

【参考】国税庁:[手続名]給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿の作成

保存期間の起算日

賃金台帳の保存期間を計算する上での起算日については、労働基準法施行規則では、「最後の記入をした日」となっています。このため、一般的には、従業員が退職した後、3年が経過すれば、賃金台帳は廃棄できることになります。

なお、上記で説明したように、賃金台帳を源泉徴収簿としても使用している場合には、国税通則法において「法定申告期限」から起算されることになっており、そこから7年は廃棄できません。

賃金台帳の保存方法

賃金台帳は、これまで、様式に直接記入、あるいは、エクセルなどに入力して印刷したものをファイルに綴じて保存することが一般的でした。しかしながら、電子データによる保存も認められているため、昨今のペーパーレス化の動きもあって、電子データとして保存する企業が増えています。

電子データとして保存する場合には、先に説明した法定記載事項をすべて網羅しており、かつ事業場ごとにパソコンなどで表示、印刷できる状態になっているという条件を満たさなければなりませんので注意が必要です。

賃金台帳における罰則

賃金台帳の作成義務違反や保存義務違反に該当すると、労働基準法における罰則が適用されることがあります。ただし、その適用までには一定の流れがあります。

是正勧告・指導

労働基準監督署の調査において、賃金台帳の記載事項に不足がある、また、正しく記載されていないなどの違反を指摘された場合であっても、直ちに罰則が適用されるケースは稀です。

一般的には、まずは、「是正勧告書」(法律違反の是正を求めるもの。)あるいは「指導票」(法律違反はないが改善を求めるもの。)というものが交付され、指定期日までに、是正や改善した状況を「是正報告書」により報告することになります。

罰則

上記の是正勧告をまったく無視するなど、不誠実な対応をとった場合には、罰則が適用される可能性が高くなります。

賃金台帳の作成義務違反や保存義務違反についての罰則は、「30万円以下の罰金」とされていますので注意が必要です。

法定三帳簿

法定三帳簿とは、労働基準法においてその整備が義務付けられている帳簿のことで、「労働者名簿」、「出勤簿」、そして、「賃金台帳」の3つを指します。これらの帳簿は、「どの従業員に」「何日・何時間の労働をさせ」「どのくらいの賃金を支払ったのか」を記録するもので、従業員を適切に管理していくために必須のものになります。

最後に、これまで説明した「賃金台帳」以外の「労働者名簿」や「出勤簿」とはどのようなものなのかについて説明します。

労働者名簿

労働者名簿とは、労働基準法第107条および労働基準法施行規則第53条より、事業場ごとに作成が義務付けられているもので、記載すべき事項は下記のとおりとされています。

  1. 氏名
  2. 生年月日
  3. 履歴
  4. 性別
  5. 住所
  6. 従事する業務の種類(※常時30人未満の労働者を使用する事業場では記載不要)
  7. 雇入れの年月日
  8. 退職の年月日およびその事由(退職事由が解雇の場合、その理由)
  9. 死亡の年月日およびその原因

多くの会社では、上記の必須事項以外に「電話番号」や「被扶養者名」、「緊急連絡先」といった情報も追加し、運用しやすいように整理しています。

賃金台帳と一様式で作成することも可能

労働者名簿と賃金台帳は、必ずしも別の様式として作成する必要はなく、あわせて一様式として作成することも認められています。(労働基準法施行規則第55条の2)

一様式とする場合には、それぞれの記載すべき事項をすべて網羅していることが必要です。

出勤簿

出勤簿とは、各従業員の出勤日や出社、退社時刻を記録した書類あるいはデータのことです。出勤簿には、手書きのものからタイムカードから取り込んだデータ(給与計算上の労働時間と一致していることが必要)、エクセルなどで作成したものなど様々な形態があり、その会社で使い易いものが出勤簿とされています。

なお、労働基準法には賃金台帳と労働者名簿の作成義務規定はありますが、この出勤簿については明確に触れられていません。ただし、出勤簿は賃金台帳の記載事項である「労働日数」や「労働時間数」、「時間外労働時間数」などの裏付けとなる重要な資料であるため、その意味では、賃金台帳の作成義務(労働基準法第108条)に根拠があると言えます。

まとめ

  • 賃金台帳には、氏名や性別のほか、賃金計算期間や時間外労働を含めた労働時間数、基本給や各種手当の額、賃金控除額など、記載しなければならない事項が法律で定められています。
  • 賃金台帳の様式も法律で定められていますが、記載しなければならない事項が網羅されていれば、必要に応じて項目を追加できます。
  • 賃金台帳は、労働者名簿や出勤簿とあわせて「法定三帳簿」と呼ばれる重要なものです。作成義務や保存義務に反すると罰則の適用もあります。

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