はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2019年1月9日(水)更新

雇用契約

事業主が従業員を雇用する際に行う雇用契約。日常的に行っていても正しく理解されず、曖昧なまま行われている会社も多いようです。そこで本記事では、雇用契約の意味や労働契約との違いはじめ、雇用契約書の内容や注意点などを詳しく解説していきます。

雇用契約 に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

雇用契約とは

まず、日常的によく使われる「雇用契約」という言葉の意味を解説してゆきます。

契約とは

契約とは、相対立する二人以上の意思表示の合意によって成立する法律行為です。契約の成立、効力、解除については、民法に定められており、一度契約が成立すると、無効、解除、取り消しなどの特別な事情がない限り、当事者は契約によって生じる義務を履行すべき法的な拘束を受けることになります。

民法第623条では、雇用契約についても定められています。

≪民法第623条(雇用)≫
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕民法第623条

契約の方法

民法上では、申込と承諾が一致したときに契約が成立します。当事者の合意があれば口頭でも成立し、契約書の有無は契約成立の要件とされていません。したがって、契約書を作成し、署名・押印をしていなくても契約は成立することになります。

口頭による場合

労働者が一定の労働条件の下、労務を提供し、使用者が賃金を支払うことに合意すると、口頭による契約であっても労働契約は成立することになります。ただし、労働基準法では労働者保護の観点から、一定の労働条件を書面で明示する規定が設けられているため、雇用契約を結ぶ際には、書面での契約が一般的です。

書面による場合

一般的には契約を交わす際には契約書を作成します。その一番の理由は、証拠として残すためです。合意内容にお互いの認識のズレがないかどうかを書面で確認し、各自が保管することで、合意内容を明確にし、その履行を確保することにもつながります。

「労働契約」との違い

労働契約の成立については、労働契約法で以下のように定められています。

≪労働契約法第6条(労働契約の成立)≫
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働契約法第6条

このように労働契約とは、労働者が使用者の指揮命令の下で労務を提供し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを約束する契約です。

契約の形態としては民法上の雇用契約(民法第623条)ととても似ていますが、一般法である民法の契約では、契約当事者同士が対等とされており、現実の社会における使用者が優位にたつ使用従属関係とは少し異なった形となっています。そこで、特別法である労働基準法や、労働契約法において、労働契約に関して強制的な基準や規制を設けて労働者を保護しています。

雇用契約書とは

雇用契約を結ぶ際には、民法では、両者が合意した時点で契約は成立しますが、特別法である労働契約法において、「できる限り書面により確認」することが求められているため、使用者と労働者の双方が合意した内容で雇用契約書を作成し、お互いに控えを保管します。

労働条件通知書との違い

会社によっては、労働条件通知書を交付する場合もあります。労働条件通知書は、使用者が労働条件を書面によって通知する義務があるという労働基準法に基づくもので、使用者側が交付する一方的な通知となります。

一方、雇用契約書は、労働者及び使用者が労働契約の内容をできる限り書面によって確認するという労働契約法の規定に基づいた両者の合意による契約書ということになります。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働契約法第4条

【関連】労働条件通知書とは?雇用契約書との違い、記載事項や交付時期まで徹底解説 / BizHint HR

雇用契約書作成は義務なのか

労働条件通知書の交付は、労働基準法によって義務とされていますが、雇用契約書を交わすことは義務とはされていませんので、労働条件通知書のみを交付することでも差し支えありません。労働条件通知書兼雇用契約書として、通知義務のある労働条件の内容を含めて雇用契約書を作成してもかまいません。

署名・押印は義務なのか

雇用契約書の交付において署名・捺印することは法律では規定されていません。

しかし、会社が作成した雇用契約書を交付しただけの場合、従業員が目を通したかどうかの証拠がありません。何かトラブルが生じた時に、口頭では合意していたとしても「勝手に交付されただけで同意していない」と主張される恐れもあります。

民事訴訟法では、以下のように定められています。

≪民事訴訟法第228 条第4項(文書の成立)≫
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕民事訴訟法228条第4項

万が一の訴訟の際は、署名・押印が重要であることがわかります。契約内容を改めて文書で確認してもらう時間を設け、合意したという証拠に双方署名・押印をしましょう。

雇用契約書が必要な理由

雇用契約書を作成することは、様々なリスクを回避することにつながります。

労使トラブルの防止

労働トラブルの原因で最も多いのは、雇用契約書を交付していなかったというケースです。使用者と労働者、お互いの意思の疎通によって合意に至り、労働契約は成立しますが、いざ働き始めて年月が経過すると、お互いに認識・解釈の相違が生まれてくることも少なくありません。その際に、契約時に雇用契約書を交わし、両者それぞれが保管しておくことで確認をすることができ、無用なトラブルを防ぐことができます。

社内ルールの徹底化

雇用契約書は、パートタイマーやアルバイト、契約社員といった非正規雇用労働者と雇用契約を結ぶ場合にも必要です。労働基準法では、1日だけの短期アルバイトでも労働者とみなされ、労働基準法が適用されます。1日だけだから必要ないと思わず、短いつきあいだからこそ、就業規則に目を通す機会も少ない労働者の為に、社内のルール、服務規則を盛り込んだ契約書を作成し、交付しましょう。

労働条件の明示義務

労働基準法では、使用者は、労働契約の締結の際に、定められた労働条件を明示する必要があると規定されています。

≪労働基準法第15条第1項(労働条件の明示)≫
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働基準法第15条第1項

「厚生労働省令で定める方法」とは、書面による交付とされていますので、労働条件の「賃金」「労働時間」「その他の厚生労働省令で定める事項」を明示する際は、書面を作成し、交付する必要があります。

雇用契約書の内容

雇用契約書に明示すべき「厚生労働省令で定める事項」には、「絶対的明示事項」とよばれる労働契約を結ぶ際には必ず書面にて明示すべき事項と、退職手当など、会社に定めがある場合にのみ明示しなくてはならない「相対的明示事項」があります。

絶対的明示事項

まずは、絶対的明示事項の内容です。

労働契約の期間

期間の定めがある労働契約の場合はその期間を、期間の定めがない労働契約の場合はその旨を明示します。

就業場所

実際に労働者が勤務することになる就業の場所を明示します。後々就業場所が変わる場合も、雇い入れ直後の就業の場所を明示すればよいとされています。

従事する業務

実際に労働者が携わる業務内容を明示します。雇い入れ直後の業務と併せて将来的に就く業務を網羅的に明示しても構いません。

始業時刻及び終業時刻

労働者に適用される始業・終業の時刻を明示します。シフト制など、日によって時間が異なる場合には勤務パターンごとの始業・終業時刻を記載します。あまりにも膨大になる場合には、シフト制によるなどのルールを示した上で労働者に適用される就業規則の関係条項名を網羅的に示します。

【関連】「シフト勤務」とは?企業が知るべき導入方法・注意点などまとめて解説 / BizHint HR

所定労働時間を超える労働の有無

所定労働時間を超える労働の有無とは、残業の有無のことをいいます。残業の有無を明示しますが、ここで注意するべき点が「所定」労働時間であるということです。

所定労働時間と法定労働時間は異なります。所定労働時間が7時間の会社では、法定労働時間の上限8時間まで1時間の猶予がありますが、7時間を超える労働がある場合は「あり」ということになります。

【関連】残業時間の上限は?36協定や変形労働時間の概要、計算法や削減対策まで解説 / BizHint HR

休憩時間、休日、休暇に関する事項

所定労働時間に対応する休憩時間も具体的に明示します。労働基準法では、6時間を超え8時間未満までのときは少なくとも45分、8時間を超えるときは少なくとも1時間の休憩が必要とされています。休憩時間を明記することで労働者の標準となる労働時間が定まります。

休日については、1週間に1日、または4週間に4日の休日を与える必要がありますが、毎週決まった曜日にする必要はなく、シフト制休日と設定してもかまいません。不定期の場合は労働者に適用される休日パターンや、休日・休暇に関する就業規則の関係条項名を示します。

【関連】法定休日とは?法定外休日との区別、振替休日と代休の関係、規定例まで解説 / BizHint HR

交代制勤務に関する事項

交替制勤務をさせる場合には、就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)に関する事項も明示します。長くなる場合には、どういったルールで交代勤務を行うかなどを規定した就業規則の関係条項名を網羅的に示します。

賃金の決定、計算、支払いの方法に関する事項

賃金(月給制・日給制・時給制など)の計算方法について明示します。

支払方法については、手渡しか、振り込みかも明示します。賃金を金融機関に振り込む方法で支払う場合には、労働者の同意を得る必要があります。

労働保険料・社会保険料など、給料明細上で控除すべきものがある場合にはその内容も明示します。

【関連】給与計算とは?計算方法をはじめ、手順や年間スケジュールまで徹底解説 / BizHint HR

賃金の締め切り、支払日に関する事項

賃金は、労働基準法によって毎月1回以上、一定の支払日を定めて支払うことが定められています。毎週金曜日と週払いで定めてもかまいませんが、月払いの場合に、毎週第4金曜日と設定することはできません。月によって変動が生じる定め方はできませんので注意が必要です。(毎月月末とすることは可能です。)

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働基準法第24条

昇給に関する事項

昇給の有無にかかわらず、絶対明示しなくてはならない事項とされています。ただし、絶対的明示事項のうち、昇給についてのみ、書面による明示でなくてもよいとされています。

【関連】定期昇給とは?ベアとの違いや中小企業の平均、定期昇給率の計算法もご紹介 / BizHint HR

退職に関する事項

退職の事由及び手続、解雇の事由などを明示します。明示すべき事項の内容が膨大になる場合には、労働者の利便性も考慮し、対象労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示しても構いません。

【関連】解雇の意味や種類とは?解雇が認められるケースや解雇予告・解雇通知まで徹底解説 / BizHint HR

相対的明示事項

次に、定めがある場合にのみ明示しなければならいとされる「相対的明示事項」です。

退職手当に関する事項

退職手当がある場合には、退職手当の支給される労働者の範囲、決定方法、計算方法、支払方法、支払時期についても明示します。

臨時の賃金・賞与に関する事項

臨時の賃金とは、勤務態度や、業績などに応じて支払われる報奨金などが該当します。臨時で支払われる手当を定めている場合や賞与が存在する場合には、年に何回、いつ支給するのか、何を基準に支給するのかなどを明示します。

【関連】賞与とは?定義や計算法、社会保険料などの算出法、手続きについて解説 / BizHint HR
【関連】インセンティブ制度の事例と導入するメリットについて解説 / BizHint HR

労働者に負担させるべき食費、作業用品などに関する事項

従業員に負担させるものがある場合に明示します。社員食堂などがあり、食事を支給する場合の従業員負担分や、作業着などの必要な道具がある場合の支給・不支給、従業員の負担金などを明確にしておきます。

安全、衛生に関する事項

安全衛生及び災害補償に関する事項は、業務にあたり、機械設備、工具等の就業前点検などの定めがある場合や、保護具の着用の有無、喫煙場所、健康診断の時期、回数などの定めがある場合には明示します。

職業訓練に関する事項

労働者に対して、業務に必要な職業訓練の受講などが定められている場合には明示します。

災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

労働者が業務中に起こった事故、または業務外で負った傷病などに対し、会社が行う補償に関する定めを明示します。

表彰、制裁に関する事項

会社の業績に貢献したときや、社会的功績があった場合に、表彰する定めがある場合や、賞金などがある場合にどのような場合に、いつ行うのか、などを明示します。制裁事由についても定めがある場合には明示します。

【関連】懲戒処分とは?その意味や種類、就業規則の規定内容や実施手順まで徹底解説 /BizHint HR

休職に関する事項

会社独自の休職制度がある場合に明示します。

相対的明示事項の書面化

相対的明示事項については口頭での明示で構いませんが、書面化することで、労使間の行き違いや誤解の発生を防ぐことができます。書面明示についての様式は自由ですが、対象労働者に該当する部分を明確にし、労働契約の締結の際に就業規則を交付しても良いです。

有期労働者に対する雇用契約書の注意点

有期労働契約の雇用契約書を作成する際は様々な注意が必要です。

雇止めトラブルの懸念

数年前まで、有期労働契約 (期間を定めて締結された労働契約)では非正規雇用労働者の契約更新が繰り返され、一定期間雇用されていたにもかかわらず正規雇用にしてもらえず、ある日突然契約更新が行われず、退職させられるという「雇い止め」のトラブルが多発していました。

そこで、トラブル防止のため、平成15年に「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が策定されました。

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準

さらに、平成25年に行われた労働基準法施行規則の改正では、絶対的明示事項の契約期間の項目に、期間の定めがある場合には、「契約更新の有無」「契約更新する場合の基準」を明示する義務が追加されています。

【参考】有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について

更新の有無の明示

契約を「更新あり」とした場合には、「自動更新」なのか、「更新する場合があり得る」のかを明示する必要があります。

契約更新基準の明示

「契約更新をする場合があり得る」とした場合には、「契約終了時の業務量によって判断する」のか、「勤務成績によって判断する」のか「会社の経営状況によって判断する」のかなど、具体的な更新基準を契約時点で明示する必要があります。

契約期間変更時の対処

契約期間の変更・更新を行う際にも、労働条件の明示義務は適用されます。更新後の雇用条件が以前と変わらない場合でも労働条件の明示が必要です。

雇止めの予告

有期契約労働者の「雇止め」というトラブルを回避するため、厚生労働省では、契約期間についての配慮を求めています。一定の期間継続した有期労働契約を更新しない場合には、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければならないと定めています。(あらかじめ「契約更新しない」としていた契約は除きます。)

対象労働契約とは

対象となる有期労働契約は、以下の3つです。

  1. 有期労働契約が3回以上更新されている場合
  2. 1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、 最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
  3. 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

雇止め実施理由の明示

雇止めの予告を行った際に、労働者から雇止めの理由の明示を求められた場合には、使用者は雇止の理由を明示する必要があります。「担当していた業務が終了したため」「事業縮小のため」「業務遂行能力が十分ではないと認められたため」など、明確な理由を明示しましょう。

契約期間の長期配慮

明示事項のほか、契約更新をする場合には期間についても注意が必要です。

契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している労働者との契約更新の際は、度重なる契約更新によって労働者の不安定な状況が続かないよう、契約をできる限り長くするよう配慮が求められています。

試用期間における雇用契約書の注意点

次に、試用期間中の雇用契約についてです。経営者の中には、試用期間中は本採用するかどうかを見極める期間だから雇用契約書は必要ない、と考える方もいますが、試用期間も立派な契約期間のため、雇用契約書は必要です。

試用期間とは

試用期間とは、使用者が労働者を採用した後、一定期間を試用期間と定めて、労働者としての適格性を観察・評価し、本採用するか否かを決定することができる期間です。

試用期間とはいえ、労働者には変わりありませんので、労働保険(労災保険・雇用保険)、社会保険(厚生年金保険・健康保険)の加入条件に該当する場合には、加入手続きも必要となります。

解雇予告制度

労働基準法では、従業員を解雇する際には、以下のように定められています。

≪労働基準法第20条(解雇予告)≫
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働基準法第20条

しかし、続く第21条では、適用除外として、「試用期間中の者」と定めています。そこで、試用期間を1年など長期間で設定しておくことで、解雇予告を行わずに解雇ができると考える方がいますが、労働基準法では、試用期間中の者でも、「14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には、解雇予告の対象とする」と定められているので注意が必要です。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働基準法第21条

合理的といえる解雇事由

裁判例では、試用期間は使用者の解約権が留保された労働契約が成立している期間としてみなされ、通常よりも広い範囲で解雇の事由が認められていると解されています。

留保契約権を行使する際は、客観的に合理的な理由が存在していれば認められます。客観的に合理的な理由としては、「採用条件の要素となるような経歴詐称」「2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の催促にも応じない場合」「賭博、風紀紊乱等によって職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合」など、労働者の責めに帰すべき事由がある場合とされています。

【参考】独立行政法人労働政策研究・研修機構 三菱樹脂事件

雇用契約書の内容

試用期間とはいえ採用が決定し、使用者側、従業員側が同意した時点で労働契約は成立しています。このため試用期間の開始時にも、労働基準法15条により一般用の雇用契約書と同様に正しいルールに基づいた雇用契約書を作成する必要があります。

試用期間は有期雇用といえるのか

判例では、労働契約の期間が従業員の適格性を評価・判断する目的で「試用期間」を設けた場合には、雇用契約に期間を設けたとしても、法的には期間の定めのない労働契約を締結しているとみなされ、有期契約の期間は「有期契約期間」ではなく、「試用期間」に該当するとされています。

したがって、設定した期間の満了時に労働契約関係を終了させようとすることは、解雇権濫用法理の適用を受けることになります。

【参考】独立行政法人労働政策研究・研修機構 神戸弘陵学園事件

試用期間で終了したい場合

試用期間で終了し、本採用を拒否したいケースもあるかと思います。

先述したとおり、客観的に合理的な理由がある場合には、解雇することも可能です。ただし、試用期間が14日経過した後に解雇する際には、一般の労働者と同様に、少なくとも30日前にその予告をするか、30日前に予告ができない場合には、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

雇用契約書がない場合

雇用契約書の必要性について述べてきましたが、実際には雇用契約書がないという会社もまだまだ存在します。

罰則は科せられるのか

労働基準法15条の労働条件の絶対的明示事項を明示しなかった場合には、労働基準法第120条によって30万円以下の罰金が科されます。

労働基準法に規定される罰則は刑法9条の「刑」に該当し、犯罪の成立についての刑法の一般原則によると同時に、刑を科すにあたっても刑法の一般原則が適用されます。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働基準法第120条

契約解除が可能なケース

労働条件が明示されていても、労働契約を即時解除できる場合があります。労働条件が、事実と相違する場合には、労働者側は労働契約を解除することができます。また、会社に就職するために引越をしてきた労働者が契約解除から14日以内に帰郷する場合には、使用者は必要な旅費(帰郷旅費)を負担しなくてはなりません。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働基準法第15条

書面による明示がなかった場合

労働基準法違反となりますが、労働契約自体は労働契約法によって労働者と使用者の合意によって成立するため、明示事項が洩れていたとしても雇用関係は維持されます。

契約内容と実態が異なる場合

雇用契約書によって労働条件を明示していた場合にも、労働基準法の基準に達しない労働条件は、無効となります。また、実際に労働が開始され、実態が就業規則で定める基準に達しない労働契約も無効とされ、就業規則に定める基準が適用されることになります。

雇用契約書の雛形

雇用契約書の雛形はインターネット上でも無料でダウンロードすることができます。しかし、インターネット上の雛形は、最新の法改正内容が反映されていないことも多々あります。無料のテンプレートサイトなどからダウンロードする際はご注意ください。

厚生労働省によるテンプレート

厚生労働省のホームページでは雇用形態別に「労働条件通知書」のテンプレートを無料提供しています。

一般雇用者用

まずは、正社員・契約社員等の一般労働者向けのテンプレートです。有期契約の方にも活用できます。様々な雇用形態の方に対応できるよう対象労働者に合致する内容を選択していく形式になっています。

用語の内容がわからないという場合は、労働基準監督署、または社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

【参考】厚生労働省 一般労働者用

短時間雇用者用

パートタイム労働者やアルバイトを雇用する際にも、正社員と同様に労働条件を明示する必要があります。

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)では、これらに加えて、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」の4つの事項を文書の交付、FAX、メール等の手段で明示することが義務付けられています。

【参考】厚生労働省 短時間労働者用

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

外国人労働者用

外国人を雇用する企業も増えており、外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(以下、「外国人指針」)では、募集の時点から以下の事項を定めています。

≪外国人指針 第4条≫
外国人が採用後に従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間、就業の場所、労働契約の期間、労働・社会保険関係法令の適用に関する事項について、その内容を明らかにした書面の交付又は当該外国人が希望する場合における電子メールの送信のいずれかの方法により、明示すること。

【引用】厚生労働省 外国人指針

英語では「employment agreement」といいますが、日本語の読めない外国人労働者のために、外国語での労働条件通知書のテンプレートも配布されています。

【参考】厚生労働省 外国人労働者向けモデル労働条件通知書(英語)

中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、インドネシア語、ベトナム語の労働条件通知書についても以下のページで公開されています。

【参考】厚生労働省 <労働基準法関係>

一から作成する場合

テンプレートを使用せずに、自社でオリジナルの雇用契約書・労働条件通知書を作成してもかまいません。作成の際には、絶対的明示事項の記載漏れがないよう注意をして作成しましょう。

まとめ

  • 雇用契約を結ぶ際には、労働条件の明示が必要。
  • 労働トラブルを防ぐためには、雇用契約書を交わし、署名・押印の上、交付を。
  • 有期労働契約、試用期間中の労働者でも労働条件を書面で明示する必要がある。

<執筆者>
高橋永里 社会保険労務士(和泉中央社会保険労務士事務所 代表)

大学卒業後、ホテルのウエディングプランナーの仕事に従事。数百件の結婚式をプロデュースする中で、結婚式という期間限定のサポートではなく、より長く人のサポートを行う仕事に就きたいと思い、社労士業界に転職。顧問件数6,000社を超える大手税理士法人で法人設立、労務管理の仕事の経験を経たのち、2015年に「和泉中央社会保険労務士事務所」を開業。現在は、年金アドバイザー、簿記、ファイナンシャルプランニングの資格を活かし、中小企業の設立、労務管理、就業規則作成、助成金申請など幅広い業務を行う。


注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計60,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 厳選されたビジネス事例が毎日届く
  • BizHint 限定公開の記事を読める
  • 実務に役立つイベントに申し込める
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

この記事の関連キーワード

フォローボタンをクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードについて

ビジネス事例や製品の情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次