連載:第11回 経営者が読むべき労務解説
経営者が覚えておきたい、カスタマーハラスメント問題から社員を守る方法
「コロナ禍もあり近年、カスタマーハラスメント問題が増えている」と社会保険労務士法人シグナル代表の有馬美帆さんは指摘します。カスタマーハラスメントとは、「顧客や取引先からの不当なクレームや嫌がらせ」を意味する言葉。顧客や取引先から社員を守るにはどのような施策が必要なのでしょうか。有馬さんが「カスタマーハラスメント問題」について労務の観点から詳しく解説していきます。
そもそも「カスタマーハラスメント」とは?
ハラスメント防止の対策は多くの企業で行われており、2022年4月には「パワハラ防止法」が中小企業でも施行されます。ですが、ハラスメントとして対応しなければならない領域は日々拡大し続けているといっても過言ではありません。経営者や人事労務管理担当者の方々には、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の防止にも対策が必要です。
部長: 「社長! 店でうちの女性社員が大変なことに!」
社長: 「どうしたんだ、一体?」
部長: 「レジでお客様から延々とクレームを受け続け、最後には土下座して謝れと言われたため、泣き出して倒れてしまったんです」
社長: 「何だと?店長や他の社員たちは何をしていたんだ?」
部長: 「それが、社長が常日頃から『お客様は神様だ』と訓示されていらっしゃるので、彼女が誠心誠意対応しておりまして、周りも何となくそのまま任せてしまっているうちに……」
社長: 「私はそんなつもりで言っていたんじゃないぞ! お客様も大事だが、社員だって大切だ! 周りが彼女を守らないでどうするんだ!」
カスタマーハラスメントには法的な定義はありませんが、一般的には「顧客や取引先からの不当なクレームや嫌がらせ」を意味する言葉で、近時大きな社会問題になりつつあります。 鉄道やタクシーなど交通や物流業界の労働組合でつくる「全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)」が2021年に組合員2万人に行った調査によれば、直近の2年間で46.6%が顧客から「カスタマーハラスメント」に遭った経験あると答えていたりもします。
カスタマーハラスメントの具体的な行為としては、「暴言」や「悪質なクレーム」などが代表的です。
カスタマーハラスメントの行為例
- 暴言(名誉毀損、侮辱など)
- 悪質なクレーム(従来の「クレーマー」問題など)
- 脅迫
- 不当な要求(金品、特別待遇、土下座、辞職などの要求)
- 性的な嫌がらせ(セクハラ)
- 暴力
- 長時間拘束
いずれの行為も、民事事件だけでなく刑事事件にもなり得る問題です。経営者は、カスタマーハラスメントの問題から大切な従業員を守らなければなりません。
カスタマーハラスメントは2種類、従業員が「加害者」にも「被害者」にもなる
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