はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2017年12月17日(日)更新

労働生産性

日本企業で長時間労働や不必要な管理職が指摘される中、同時に話題となるのが労働生産性です。労働生産性の向上は政府が掲げる働き方改革や人件費を抑えたい企業にとって、重要な課題です。今回は労働生産性の意味や定義、計算(算出)式から日本の労働生産性の現状と課題、向上施策についてご紹介いたします。

労働生産性 に関するニュースやイベントの情報を受取る

労働生産性と付加価値の関係性

企業が労働生産性を向上させるためには、労働生産性の意義をしっかりと把握しておく必要があります。

労働生産性とは?

労働生産性とは、投入した労働力に対して、どの程度生産量を確保できたかという生産過程における労働効率の用語です。また、労働者一人あたりが生み出す付加価値の割合を指します。

一般的に労働時間1時間あたりの生産額で算出し、生産額を物量で表す「物的生産性」と生産額を価格で表す「価格生産性」の2種類の計算方法があります。企業や異業界の比較、また国際比較の指標としても使用されています。

労働生産性には労働者の技術向上や意識改革が欠かせませんが、政治的要因や社会的要因、さらには自然的条件にも左右されることから、たびたび賃金と関連して議論されることが多いのも特徴です。

付加価値とは?

労働生産性は、従来の説明では「労働者一人当たりの生産量」と定義されており、今も一般的な考え方となっています。しかし、「労働者一人当たりが生み出す付加価値」という新たな定義も登場しました。

付加価値とは、一般的に企業が生み出した総生産額から原材料や外注費などの非付加価値額を差し引いた価値を表す用語です。また、企業が商品やサービスに機能的・感情的・自己表現的価値を付加することで得られる利益とも定義されています。

これらの付加価値は企業が得る利益と密接に関係しており、労働生産性を考える上でも大切な要素といえます。なぜなら、労働生産性人件費削減や原価率の引き下げ、売上単価の上昇などの企業努力だけでは、労働生産性を向上させることは難しく、商品やサービスに消費者が感動する価値をつけることが欠かせないからです。

労働生産性の計算式

労働生産性の計算(算出)方法は以下の式で求めることができます。

労働生産性=付加価値(生産量)÷従業員の平均人数

この計算式で割り出された数字が高ければ、労働生産性が高いといえます。
※この計算式は労働生産性を求める一般的なものですが、業界や業種、ビジネスモデルにより、結果の捉え方が異なります。

また、先にご紹介したとおり、付加価値は計算方式では粗利などの数字として扱いますが、広義な意味では商品やサービスの付け加えられた価値と考えることができます。そのため、労働生産性を向上させるためには、経費の削減や従業員の技術向上以外にも、「どのような価値」を提供するかを考えることが大切です。

日本の労働生産性の現状

世界第三位の経済大国で知られる日本ですが、労働者一人当たりの労働生産性は西欧諸国と比べても低いとされています。その実態について、ご紹介いたします。

国際比較から見る日本の労働生産性

公益社団法人の日本生産本部が公表した「労働生産性の国際比較2016年版」のデータによると、2015年の日本の労働生産性は1時間あたり42.1ドルでした。これはOECD加盟国35カ国中20位という結果となります。また、この数字はOECD加盟国第5位であるアメリカ合衆国の6割強しかない結果を意味しています。

今回の結果は就業者の増加により分母が大きくなった分、生産性低下が促されたものの、労働時間の短縮と名目GDP(商品やサービスの付加価値の合計金額)の拡大がプラス要因に働き、前年比で2.1%向上しています。しかし、国際比較データからもわかるように世界第3位の経済大国の地位を維持している割にはまだまだ低い水準であり、先進国7カ国の中では最下位となっています。

また、従業員一人当たりの労働生産性では74,315ドル(783万円相当)となっており、OECD加盟国35ヶ国中22位となっています。

【参考】公益社団法人 日本生産本部 労働生産性の国際比較2016年版

日本企業の付加価値額について

経済産業省が発表した「平成28年企業活動基本調査速報-平成27年度実績」のデータによると、製造業の一企業当たりの付加価値額は 46.5 億円で前年比1.4%増、付加価値率は21.1%の前年度差0.5ポイント増となっています(卸売・小売業は34.1億円の前年比4.5%増、付加価値率10.5%の前年度差0.6ポイントの上昇)。

日本経済を支える製造業や今後強化を目指す卸売・小売業において、労働生産性を高まる付加価値額が上昇していることは喜ばしいことといえます。

【参考】経済産業省 平成28年企業活動基本調査速報-平成27年度実績 4.付加価値額の状況

中小企業の労働生産性と研究開発指数の伸び率の鈍化

日本経済に大打撃を与えたリーマンショックは、中小企業の2007-2009年の労働生産性を1.8%も下落させた最大の要因となりました。しかし、その後の2009-2013年には上昇率が1.0%となり、リーマンショック前の2003-2007年の水準から0.1%上昇し、回復傾向が見られます。

一方で、リーマンショックを乗り越えた存続企業の労働生産性の伸び率は縮小の推移を辿っています。さらにリーマンショック前に行なわれた、個人事業主や小規模企業を対象とする「中小企業実態基本調査」を用いた調査でも、中小企業の労働生産性は低いとというデータが出ています。そのため、日本の従業者数の約7割が中小企業に勤めている実態を考えると、中小企業における労働生産性の向上は大きな課題といえます。

また、日本の国内生産額の約30%(2011年時点)を占める製造業において、大企業(従業者数300人以上)と中小企業(従業者数299人以下)の研究開発費指数の推移は2倍以上の差が生じています。企業が労働生産性の向上を目指す上で、商品やサービスに付加価値をつけることは必要不可欠であり、その源泉となり得る(従業者数の7割を占める中小企業の)研究開発指数推移の鈍化は深刻な事態と考えるべきです。

その他にも2015年の医療や福祉業、飲食店などのサービス業においては、資本生産性に比べて、資本装備率が低いことから従業員が多いと推測でき、労働生産性の低下の要因にもなっています。

【参考】中小企業庁 平成28年度(2016年度)の中小企業の動向 2 労働生産性と全要素生産性の変化要因
【参考】中小企業庁平成28年度(2016年度)の中小企業の動向 4 TFPの変化要因の業種別比較
【参考】中小企業庁 第2部 中小企業の生産性の向上に向けて

日本企業は労働生産性向上が急務

「日本企業は労働生産性を向上させるべき」という課題は、長年に渡り、議論され続けて来ました。これには日本社会が抱える深刻な事態が関係しています。それが人口減少及び少子高齢化社会の到来です。中小企業庁の発表データによると、日本の15~64歳の人口が2030年には6,740万人に減少するといわれています。これは2009年の約83%の水準です。

この深刻な労働者不足をカバーするために女性や高齢者による就業活用を実施したとしても、2020年の就業者数は減少するといわれています。そのため、就業者数の減少をカバーする上でも日本人の労働生産性の向上は欠かせません。特に日本の従業員数の7割を占める中小企業の労働生産性の向上が急務となっています。

【参考】中小企業庁 第3部 経済成長を実現する中小企業

【関連】「生産性向上」は日本経済の課題!知っておきたい法律や改善方法、導入事例をご紹介/ BizHint HR

日本の労働生産性の低さの原因とは?

世界第3位の経済大国にも関わらず、OECD加盟国35ヶ国中20位、先進国7ヶ国中最下位という日本の労働生産性の低さには以下の原因が考えられます。

プロセスを重視する人事評価

日本の人事制度は、成果よりもプロセスを重視する内向きの評価体制としばしば指摘されています。また、残業することが美徳とする企業内文化も蔓延していることもあり、適正な人事評価がされていない傾向にあります。そのため、労働時間1時間当たりで生産量を計算する労働生産性の低下につながっていると考えられます。

また、年功序列終身雇用を前提にした人事制度による、有能でない人物の昇進・昇級、無意味な会議や業務の多さなども労働生産性向上の障害となっていると考えられます。

残業を前提とした予算と就業者の意識

日本人の管理職や就業者の意識も労働生産性を低下させる原因となっています。日本企業の管理者(管理職)は従業員の残業を前提とした予算を作成する傾向があります。これは管理者が効率を重視しない、もしくは人員増強によるコストよりも既存従業員の残業代のコストの方が低いという意識から来るものと考えられます。

また、若い世代を中心に残業代を稼ぐことで手取りを増やしたいという意識も関係しています。このような意識は労働生産性の低下はもちろん、仕事の効率化や時間管理術などを身につける機会損失につながり、身の丈に合っていない生活水準を高める原因にもなります。

今後、従来の年功序列を前提にした等級制度は廃止の方向に向かい、役割等級制度成果主義を前提とした評価制度へと移行することが考えられます。残業代に頼るという意識のままでは、今後、社会的に生き抜くことが難しいと認識する必要があります。

規制緩和や労働者保護政策の遅れ

ホワイトカラー・エグゼンプション女性活躍推進などの働き方改革は、労働生産性向上には欠かせないものと考えれます。しかし、その一方で対象となる労働者範囲(年収1000万以上の給与所得者)の規制緩和や、子育て支援といった労働者保護政策の遅れが指摘されています。

また、日本の従業員は労働基準法により過剰なまでに保護されています。そのため、企業側は簡単に従業員を解雇することができず、有能でない非効率の社員を解雇できない現状にあります。これも規制緩和の遅れによる労働生産性の低下の原因とも考えられます。

経営者・管理者による労働環境の悪化

長時間労働による過労死パワハラといった経営者や管理者による労働環境の悪化も労働生産性低下の原因とされています。また、無駄な作業を効率化できるIT技術の導入の遅れも指摘されています。

今後、AIやロボットによる労働の自動化で、労働環境が劇的に変わり、労働生産性の向上が見込めます。しかし、従業員保護の観点から「無駄な仕事を作る」という古い日本的慣行が影響し、労働環境が変わらない事態も予想されます。

日本企業が取り組むべき労働生産性向上策とは?

既にご紹介したとおり、日本人の労働生産性の低さには、日本の労働者の就業意識や企業のあり方に課題があるといえます。今後、日本が労働生産性を向上させるためには以下の施策が必要です。

産業構造の転換とイノベーションの創出

日本経済では、製造業が占める役割が大きい産業構造になっています。厚生労働省が示唆しているように、日本の製造業は地域雇用の確保、技術革新によるイノベーション、サプライチェーンの拡大、サービス業への波及効果など日本経済全体に大きな影響を与えます。そのため、アベノミクスでは輸出依存が高い製造業を活性化させるためにも、大胆な金融緩和を実施し、円安・株高を実現したのは理に叶った政策といえます。

しかし、製造業に依存した経済政策には否定的な論調も多く、イノベーションによる新しいサービスの創出が求められています。今後、日本経済の急成長が見込めない以上、新たな雇用や需要の確保はもちろん、産業構造自体を変革させるイノベーションの創出は必要な要素と考えられます。

【参考】厚生労働省 1.我が国の産業構造における製造業の重要性

労働環境の改善

労働生産性を向上させる上で、労働環境の改善は欠かせません。特に長時間労働の是正による従業員の効率性低下の防止は、労働生産性向上施策としては最適とされています。管理職(管理者)が従業員の労働時間を適正に管理し、残業前提のスケジュールや予算を見直す必要があります。また、労働者自身が勤務時間をコントロールするフレックスタイムの拡充や、会社以外で仕事を行なう テレワークの実施など、柔軟性の高い労働環境の整備も必要です。

そして、これらの新しい働き方をサポートするためにもIT技術の活用は必要不可欠といえます。最新の勤怠システムによる労働時間の把握や、クラウド技術を使った社内リソースへのアクセスの実施など、最新のIT技術をフル活用することで労働生産性向上の効果が期待できます。

海外市場への進出

労働生産性向上の要因として、「海外出資」によるものが大きいという指摘があります。そのため、海外市場の進出は新たな消費者市場の開拓以外にも労働生産性を向上させるヒントが得られるチャンスでもあります。これは海外市場の争奪戦における企業間競争力の強化によるものと考えられます。

さらに今、経営陣が注目しているリバース・イノベーションという経営戦略があります。これは現地に研究開発拠点を置くことで、国内では得られない新たな発想やイノベーションを起こせるメリットがあるイノベーションの手法の一つです。このように海外市場での経験値が企業に新たな付加価値を生み出し、労働生産性向上への効果が期待できます。

まとめ

  • 今後、日本社会はさまざまな課題や問題に直面するため、従業員ひとり一人の労働生産性の向上は欠かせない課題といえます。
  • 現在、大企業を中心に、日本的慣習の強い人事・評価制度を見直す動きが活発化しています。
  • 労働生産性向上施策を、日本の従業員の7割を占める中小企業にどれだけ浸透させられるかが大きな鍵となります。

注目の人事トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計20,000人以上の会員が利用しています。

BizHint HRの会員になるとできること

  • 厳選されたニュースが毎日届く
  • BizHint HR限定公開の記事を読める
  • 実務に役立つイベントに申し込める
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

労働生産性の関連記事

136件中 1 - 5件

労働生産性の関連記事をもっと読む

キャリア・働き方の記事を読む

ニュースやイベントの情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次