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2018年10月23日(火)更新

労働生産性

労働生産性とは、労働投入量に対する産出量の割合を意味し、就業者一人当たり付加価値額や生産数量などで表現されます。少子高齢化社会に伴う労働人口の減少は、日本経済に深刻な人手不足をもたらし、社会問題となっています。人手不足を解消するためにも、政府・民間主導で取り組まれている対策が「労働生産性の向上」です。今回は労働生産性の定義や、日本企業の労働生産性の実態、問題点から労働生産性を向上させるポイントまでご紹介いたします。

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労働生産性とは

企業にとって、従業員の労働生産性の向上は、売上・利益の向上だけでなく、あらゆる経済活動に効果的です。労働生産性の定義や計算式・計算方法、労働生産性向上の必要性を知ることで、理解を深められます。

労働生産性の定義

生産性とは、投入量(インプット)と算出量(アウトプット)の割合を意味する言葉です。つまり、「どれだけのリソースを投入し、どれだけの成果が得られたか」を意味します。

労働生産性とは、就業者一人当たりの付加価値額(成果)や生産数量(産出量)の算出に用いられる、労働投入量(ヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源)に対する産出量の割合を指す労働効率の用語です。

一般的に労働者一人当たり、または時間あたりの産出量で表現され、以下の計算式が採用されています。


労働生産性= 産出量(アウトプット)/労働投入量(インプット)

※産出量は付加価値額、または生産量
※労働投入量は労働者数、または労働者数×労働時間


2種類の「労働生産性」の定義と計算式

労働生産性は「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の2種類に分けられ、それぞれ算出する目的により使い分けられ、計算式・計算方法が異なります。

中でも付加価値労働生産性は、人件費削減や原価率の引き下げ、売上単価の上昇といった企業努力に依存しない、商品(製品)・サービスの価値向上に大きく貢献する要素として認識されています。

物的労働生産性の計算式・計算方法

物的労働生産性とは、産出量(アウトプット)に、「生産数量」や「販売金額」などをおく考え方で、「労働者が一人当たり、どれだけ効率的にモノやサービスを生産しているか」を意味します。計算式は以下になります。


物的労働生産性=(生産数量or販売金額)/労働量


物的労働生産性は、基本的に商品(製品)・サービスを対象にしており、生産量の効率性を数値化したものであり、設備投資の判断や品質管理の向上などの参考値として活用できます。

付加価値労働生産性の計算式・計算方法

付加価値とは、一般的に企業が生み出した総生産額から、原材料や外注費などの非付加価値額を差し引いた価値を表す用語です。また、企業が商品やサービスに機能的・感情的・自己表現的価値を付加することで得られる利益とも定義されています。

付加価値労働生産性とは、産出量(アウトプット)に付加価値をおく考え方で、「労働者が一人当たり、どれだけ付加価値の高い仕事をしているか」を意味します。計算式は以下になります。


付加価値労働生産性=付加価値(額)/労働量


付加価値労働生産性は、利益を最大化させるための指標として算出されます。

労働生産性向上の必要性

近年、労働生産性の向上を目指す企業が増えており、CRMSFAといった、最新システムの導入も増加傾向となっています。労働生産性向上の必要性が高まっている要因として、「人手不足問題への対策」と「ワーク・ライフ・バランスの実現」が挙げられます。

人手不足問題への対策

総務省が発表している、「平成29年版 情報通信白書」のベースシナリオでは、人口減少に伴う就業者数は2030年までに5,561万人まで減少するといわれています。また、パーソル総合研究所の『労働市場の未来推計』によると、2025年には卸売・小売業で188万人、情報通信・サービス業で482万人の人手不足が発生すると予測されており、産業・業界によって対策が急務です。

一方で、機能性・利便性が高い商品(製品)・サービスへの需要が高まり、事業継続や拡大の動きが加速しています。そのため、業務システムを利用し、労働者一人当たりの労働生産性を高める業務改革を求める企業が増えていると考えられます。

【参考】総務省 平成29年版 情報通信白書
【参考】パーソル総合研究所:労働市場の未来推計2016

【関連】労働力人口とは?労働力人口の減少に企業はどう立ち向かうべきか?/BizHint

ワーク・ライフ・バランスの実現

近年、長時間労働による過労死や生産性の低下が問題視されています。そのため、政府・民間主導で「働き方改革」を実施する動きが加速しており、労働者のワーク・ライフ・バランスの実現が注目されています。

労働生産性の向上は、長時間労働を是正し、子育てや介護といった家庭の事情で時短勤務せざるを得ない優秀な人材の登用や、成果主義を前提とした評価制度を求める人材の評価を高められます。また、ワーク・ライフ・バランスの実現は同一労働同一賃金の観点からも、短時間で高いパフォーマンスを発揮し、正当な評価を得られる働き方を促し、正社員と非正規社員の格差を是正することにもつながります。

そのため、労働生産性とワーク・ライフ・バランスは一緒に議論されることが多く、労働生産性の向上に欠かせない要素といえます。

【関連】ワーク・ライフ・バランスとは?正しい意味や取り組み、企業事例などご紹介/BizHint

日本企業の労働生産性の実態

世界第三位の経済大国で知られる日本ですが、労働者一人当たりの労働生産性は西欧諸国と比べても低いとされています。その実態についてご紹介いたします。

国際比較から見る日本の労働生産性

公益社団法人の日本生産本部が公表した「労働生産性の国際比較2017年版」のデータによると、2016年の日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は1時間あたり46.0ドル(4,694円)となっています。

これは経済協力開発機構(OECD)加盟国35カ国中20位という結果です。アメリカ合衆国の3分の2の水準にあたり、主要先進国7カ国でみると、1970年以降、最下位の状況が続いています。

また、従業員一人当たりの労働生産性では81,777ドル(834万円相当)、OECD加盟国35ヶ国中21位で、いずれも低水準となっています。

【参考】公益社団法人日本生産本部 労働生産性の国際比較2017年版

国際社会の労働生産性について

国際社会の中でも、しばしば「日本の労働生産性は低い」と指摘されており、今後のグローバル経済への対応が求められる日本企業においても労働生産性の向上は急務といえます。

しかし、国際社会における労働生産性はGDP(国内総生産=その国の中で生み出された付加価値の総額)を基準に算出しているため、と日本企業が算出する労働生産性には違いがあります。


国際社会における労働生産性=GDP/1年間の平均就業者数×労働時間


この国際社会における労働生産性は、別名「国民経済生産性」と呼ばれており、前述の労働者一人当たりの労働生産性とは異なります。国際社会において、日本の労働生産性が低いと指摘されている数値の根拠は「国民経済生産性」であり、労働者一人あたりの労働生産性を指摘されていないという点も理解しておかなければいけません。

さらに、国民経済生産性は国毎に事情が異なるため、実際の生産性と比べて、算出結果が前後します。計算式に使用されている就業者数は、その国独自の雇用体制・慣習によっても影響されます。日本においては、メンバーシップ型雇用が前提となっており、失業者(完全失業者)や求職者が出にくい労働環境にあるため失業率が低く、国民経済生産性の数値は低く算出されがちです。

日本の中小企業の労働生産性

日本企業のうち、99.9%の割合を占める中小企業の労働生産性の向上は、日本経済においても直近の課題です。また、労働生産性を算出するにあたり、企業の規模や従業者数も、一人当たりの労働生産性を決定づける重要な要素となります。

日本の中小企業は、大企業と比べてどの産業においても一人当たり労働生産性が低い結果がでています。後継者問題やIT投資の遅れなどにより、昔ながらの生産工程や業務に終始している企業も多く、中小企業の労働生産性は低水準となっています。そのため、中小企業がいかに労働生産性を向上できるかによって、今後の日本の経済成長が左右されると言っても過言ではありません。

近年ではクラウドを利用したITシステムも充実してきており、資金力が少ない中小企業においてもIT投資を行いやすくなっています。また、中小企業庁が推進する先端設備等導入計画の利用も効果的です。

一方、大企業では製造業の労働生産性が高く、一企業当たり付加価値額は46.5億円、付加価値率は22.0%となっています。

【出典】中小企業の生産性分析/中小企業庁:中小企業白書(2016年版) 労働生産性と労働構成比(規模別、業種別)

【参考】経済産業省 平成29年企業活動基本調査速報-平成28年度実績 4.付加価値額の状況

業界・業種毎の労働生産性

従業員一人当たりの労働生産性は、業種別や産業別によっても大きく異なります。

日本では、情報通信業や学術研究、卸売業は一人当たりの付加価値額が高くなり、飲食や宿泊、福祉や介護などのサービス産業では一人当たり付加価値額は低くなる傾向がみられます。

そのため、サービス産業においては、労働者のスキルアップにつながる社員教育や 業務改革の実施だけでなく、労働環境の整備や労働生産性向上におけるIT設備への投資などが求められます。

【出典】統計トピックスNo.73 経済センサスと経営指標を用いた産業間比較-平成24年経済センサス‐活動調査の分析事例①〔経理項目〕/統計局ホームページ 従業者一人当たり付加価値額(労働生産性)

労働生産性向上における問題点

大企業・中小企業に関わらず、日本企業全体の労働生産性の向上が急務である現代において、労働生産性の向上を妨げる問題点も複数指摘されています。

日本独自の人事評価制度の存在

日本の人事制度は、成果よりもプロセスを重視する内向きの評価体制と、「残業すること」が美徳とする企業内文化の蔓延から、適正な人事評価がされていない傾向がみられます。

また、年功序列や終身雇用を前提にした人事制度による、有能でない人物の昇進・昇級、無意味な会議や業務の多さなども労働生産性向上の障害となっていると考えられます。

このような人事評価制度のままでは、労働生産性向上は望めません。

規制緩和の遅れ

ホワイトカラー・エグゼンプション女性活躍推進などの働き方改革は、労働生産性向上には欠かせない取り組みと考えれます。一方で、対象となる労働者範囲(年収1,000万以上の給与所得者)の規制緩和や、子育て・介護支援といった労働者保護政策の遅れも指摘されています。

また、日本は厳格な労働基準法が適用されており、企業や経営者による従業員の解雇が実施しにくく、結果として労働力の流動に悪影響を与えているといわれています。そのため、従業員の仕事や業務に対する意識が薄く、労働生産性向上の阻害要因となっている可能性も指摘されています。

生産性に対する経営者・従業員の意識

日本の経営者や労働者は、生産性に対する意識が低く、組織全体で労働生産性を下げていると指摘する声も見受けられます。

「残業代を稼ぐことで手取りを増やしたい」という、若年労働者中心とした就業者の意識は業務効率化や時間管理術を身につける機会の損失につながっている可能性があります。また、残業代ありきの給与の支給は、実力以上の生活水準を高める原因ともなり、将来的に従業員が管理職登用の拒否や安易な転職につながってしまいます。

また、日本人の管理職や経営者は、従業員の残業を前提としたスケジュールや予算を作成する傾向がみられます。これは「管理者が効率を重視しない」、もしくは「人員増強によるコストよりも既存従業員の残業代の方が低い」という意識が原因と考えられます。経営者の考え方(マインドセット)は、企業全体の労働生産性に大きく影響を与えるため、大きな権限や役職を持つ人材が率先して、意識を改めなければいけません。

さらにビジネスモデルの高付加価値化を目指さず、過度な値下げ競争を繰り広げているケースも散見されます。高付加価値化が実現できなければ、一人当たりの付加価値も低水準となり、従業員の所得を向上させることもできません。その結果、採用難や人手不足に陥る可能性が高まります。

労働生産性を向上させるポイント

労働生産性を向上させるためには、労働者のスキル向上や業務改革が欠かせません。そのためにも企業として、さまざまな施策を実施することが大切です。今回は労働生産性を向上させる上で押さえておきたい成功ポイントをご紹介いたします。

従業員満足度の向上

労働生産性の向上は、従業員が業務に対してやりがいを持ち、ビジネスパーソンとしての成長や達成感を実感できることが大切です。

そのためにも、仕事自体が作業に終始しないよう労働生産性を高める業務へと注力させ、事務作業や単純作業はシステム化、およびアウトソーシングを通した削減が求められます。

また、給与・休暇などの待遇面の改善、チームワークを最大限に発揮できる職場環境の構築、企業としての将来性やビジョンの明確な定時が従業員満足度を高めると同時に、労働生産性の向上にもつながります。

【関連】従業員満足度とは?上げる方法と、向上事例・施策をご紹介/BizHint

生産性を重視する人事評価制度の導入

労働生産性の向上は、全従業員が公正・公平な評価を受けられる、役割等級制度成果主義を前提とした評価制度への移行が有効です。

そのため、日本独自の雇用慣習である年功序列終身雇用を前提とした人事評価制度を見直し、実績次第では若手社員・女性社員の管理職登用が可能な人事評価制度の導入を検討する必要があります。

また、日本企業の多くがフルタイム勤務者や残業が多い従業員に相対的に多くの賃金を支払っており、非正規職員・従業員においても、25歳以上の男性の就業調整している割合が圧倒的に低くなっています。今後は労働時間ではなく、生み出した付加価値を重視して評価できるような制度の構築が求められます。

【参考】総務省 平成29年就業構造基本調査結果

【関連】人事評価制度とは?評価対象や評価手法、企業事例などもご紹介/BizHint

IT投資の促進

特に中小企業においては、従業員一人ひとりの業務負荷が高まり、効率が下がってしまうことが少なくありません。

労働生産性の向上に欠かせない業務改革には、IT投資による業務補助を促すシステムの導入が効果的です。近年では、事務作業だけでなく、マーケティング・営業活動業務の一部を補助してくれるCRMSFAを導入する企業が増えており、本来、注力すべきデータの分析、施策の企画、新規顧客の開拓を目指した営業などに注力できます。

生産性の高い労働環境の改善

労働生産性の向上を妨げる要因のひとつに、経営者や管理職の仕事や労働環境への意識が挙げられます。

残業ありきのスケジュールや予算の編成は、チームメンバーや従業員を疲弊させ、労働環境を悪化させてしまいます。そのため、経営者や管理職(管理者)は従業員の労働時間を適正に管理し、残業や長時間労働に依存しないスケジュールや予算の立案を心掛けなければいけません。

また、企業として、労働者自身が勤務時間をコントロールするフレックスタイムの拡充や、会社以外で仕事を行なうテレワークの実施など、柔軟性の高い労働環境の整備も必要です。

労働時間の短縮

労働時間の長さと労働生産性は密接な関係にあり、労働時間が長ければ、労働生産性は低くなります。また、労働生産性の低い企業は仕事や商品(製品)・サービスの単価が低く、競合企業と比べて、従業員一人当たりの業務負荷や労働時間が長くなってしまいがちです。

さらに労働時間の増加は、人件費の増大につながるため、必然的に付加価値労働生産性も下がってしまいます。そのため、限られた労働時間内に効率よく業務をこなし、生産性を高めなければ、労働生産性の向上は見込めません。

強制的な労働時間の短縮は、はじめこそ従業員の反発を招きますが、従業員に業務に対する考え方の改善や業務のムダやムラを見つけ出すきっかけにもつながります。企業としても業務システムの導入などを通して、従業員が限られた時間内に業務を完遂できるように労働環境を整備することが求められます。

まとめ

  • 労働生産性とは、「労働投入量(インプット)に対して、どの程度の産出量(アウトプット)を生産できたか」を意味し、物的労働生産性と付加価値労働生産性の2種類に分けられ、計算式・計算方法がそれぞれ異なる。
  • 「国際社会における日本の労働生産性は低い」と評価されがちだが、計算方法や就労者数、失業者数などに影響を与える各国の産業構造が異なるため、一概に高低を判断することできない。一方で、中小企業の労働生産性は大企業と比べて低く、圧倒的多数を占める中小企業の労働生産性の向上は急務の課題である。
  • 日本企業の労働生産性を向上させるには、従業員のスキルアップや業務改革が重要である。また、従業員満足度の向上や労働環境の整備、IT投資の促進、労働時間の短縮、業務に対する考え方を改める社員教育などが求められます。

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