連載:第10回 老舗を 継ぐということ
完全年功序列、日本一綺麗を謳う青果仲卸に求職者が殺到。伝えるのは「○○ないこと」
京都中央卸売市場内にある青果の仲卸業、万松青果株式会社。卸売市場での取引高が年々減少し、仲卸業者数も減少している中、万松青果はこの10年間増収増益を続けています。 「完全年功序列・家族主義・日本一綺麗な仲卸」を標榜するレガシーな業態でありながら、求人募集の際には応募が殺到するといいます。その背景や人材に対する考え方について、専務取締役の中路和宏さんにお話を伺いました。
万松青果株式会社
専務取締役 中路 和宏さん
京都市出身。23歳から5年間、築地の青果卸売会社でセリ人として勤務後、家業の万松青果株式会社に入社。「従業員を幸せにしたい」という想いを胸に、社長である弟さんと二人三脚で様々な改革に取組む。また「取引先の力になりたい」と中小企業診断士の資格を5年前に取得し、現在は経営者とコンサルタントの2足のわらじで活躍中。
「夫を面接に行かせます!」。従業員30名の会社の求人に応募が殺到
――貴社の求人募集時には多くの求職者が面接に訪れたと聞いています。
中路和宏さん(以下、中路さん): はい。前回の募集時には2ヵ月で40名の方に面接に来ていただきました。募集が終わった後も当社のホームページを見て「まだ面接できますか?」 と連絡をいただいた方もいました。
同じ時期、同業者では事務スタッフを募集しても応募が全く来なかったと嘆いておられましたので、本当に有難いことだと思っています。
――応募される方の動機はどういったものが多いのでしょうか?
中路さん: 当社のホームページに記載している経営理念や会社の考え方に共感して応募される方が多いですね。応募者本人ではなく、奥様が電話で「夫を面接に行かせますので!」と連絡をいただくこともありました。後日、面接に本人がやってきて「家内からいい職場が見つかった、と聞いて来ました!」と言うのです。あまりにも面白かったので即採用しました(笑)。
実はこれと全く同じパターンで入社した従業員がもう1人います。これらの出来事を通じて、少なくともホームページを見ていただいたその奥様方にとって、当社は 『自分の夫に働いてほしいと思える会社』 として映っているのだろうな、と感じました。
ここまで来るのにいろいろありましたが、結果としてすごくよかったなあと思っています。
組織がうまくいく秘訣は「様々なタイプの人、異質なものを認め合うこと」
青果仲卸の常識を覆す万松青果のユニフォーム。従業員は、多岐にわたるデザインから好きなものを選べる。
――人材については以前から順調だったのでしょうか
中路さん: いえいえ。従業員が次から次に辞める時代が続き、本当に苦労しました。私自身も30年前の入社以来、長年の間、社員と折り合いが悪くて毎日会社にいくのが嫌で仕方がありませんでした。周りは自分より年上の人ばかりで、自分の考えが全く通じなかったからです。
私は「挑戦したい!変革したい!」と考える人間でしたので、先鋭的な取り組みを進めるのですが、何をやってもすべて裏目。従業員は次々と辞めていきますし、衆目の中で罵倒されることもありました。夜も眠れず本当に苦しい日々で、家内には「今日で会社辞めるから……」と、度々弱音を吐いていましたね。
――最終的に辞めずにここまで頑張ってこられたのは何故でしょうか?
中路さん: 一番大きいのは、後から入社してきた弟の存在ですね。弟は私にとって初めての味方でした。弟は私がやろうとすることに賛同してくれて、「一緒に頑張ろう」という気持ちが生まれました。弟と私は性格やキャラクターが全く違うのですが、 「目指すところが同じ」というのは本当に大切なこと だと思いました。
近年、私は取引先の力になりたいと思い、社長業のかたわら中小企業診断士の資格取得を目指すことを決意したのですが、勉強との両立はさすがに難しかったので、弟に必死に頼み込んで社長を引き受けてもらいました。私にとって、弟の存在は本当に大きくて、心から感謝しています。
――今振り返ると、従業員が辞めていく原因は何だったと思われますか?
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