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2018年12月20日(木)更新

人時生産性

最近では「働き方改革」に見られるように、企業の生産性について注目が集まっています。その中で人時生産性をはじめとする、各種生産性指標の意味や計算方法、世界的に見た日本企業の生産性の現状を理解するとともに、その数値を向上させるための施策を見ていきます。

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人時生産性とは

人時(にんじ)生産性とは、「従業員一人当たり一時間にいくらの付加価値を生み出すことが出来るか」という意味の生産性指標です。

人時生産性で使用する付加価値には、通常、粗利益高が使われますが、営業利益を使う場合もあります。数値が大きい方が、より生産性が高いといえます。

人時生産性の計算式

人時(にんじ)生産性は以下の計算式で表すことができます。

つまり、どれだけの労働力を投入したわりに、どのくらい稼げたかと言う指標といえます。そのため、同じ総労働時間でも粗利益高が大きくなったり、同じ粗利益高でも総労働時間が少なくなったりすれば、生産性が上がるという事です。

人時売上高とは

人時生産性に似た指標に人時売上高というものがあります。人時売上高は、「従業員一人当たり一時間にいくらの売上高を上げたか」を表す生産性指標です。

業種業界によって利益率は違うため、同業種間での比較が有効な指標です。人時売上高も数値が大きいほうが、売る力が強いといえます。

労働生産性との違い

生産性という言葉は、投入した資源(インプット)に対してどれだけの成果(アウトプット)が生まれたかという指標です。そういった意味では、労働生産性は、労働という投入資源に対して、どのくらいの成果(売上や利益)を上げられたかということを表す指標ですが、労働生産性には複数の意味があります。

労働生産性とは一般に、「従業員一人当たりの付加価値」を計算したものです。通常では付加価値は粗利益高を用いますので、端的にいうと「一人当たりどれだけ稼いだか」という指標になります。

それに比べ、人時生産性は分母に労働時間の概念が入っており「一人一時間当たりどれだけ稼いだか」という指標のため、労働生産性に比べて「短時間にどれだけ稼げるか?」というシビアな生産性指標といえます。

【関連】労働生産性とは?定義や計算式、問題点や向上のためのポイント/BizHint

日本企業の生産性の実態

公益財団法人日本生産性本部が2017年に発表した「労働生産性の国際比較 2017 年版」によると、日本の労働生産性はOECD加盟国35か国中、第20位でした。国としてのこの順位は前年から変わっていません。さらに、主要国(G7)では常に最下位という状態です。

この場合の労働生産性とは、GDPを国民の総労働時間で割ったものです。日本企業の生産性は、世界的に見ても課題になっているようです。数値上では、近年の日本の労働時間は減少傾向ですが、なぜ日本企業の生産性は低いのでしょうか?

いくつかの理由がありますが、日本の企業は高品質を求めるあまり、製品の検査に多くの手間を掛けたり、顧客に対して過剰なサービスを提供したり、確実に仕事を進めるために社内で何段階にも及ぶ決裁や確認作業を行っているからだといわれています。

これらのことは、日本製品の優秀さを表す理由でもありますが、個別企業の収益を圧迫している原因でもあります。「こだわり」と同時に「割り切り」も必要であるといわれています。

【参考】公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2017 年版」

人時生産性を向上させる方法

人時生産性を向上させるには、人時生産性を構成する要素に分解して考えると、対応策が見えてきます。今回は小売業を例に、要素分解してみます。

一口に人時生産性といっても、実は複数の要素が相互に影響し合っていることが分かります。

  • 粗利益率
    売上に占める、原価を引いた後の利益の割合。高ければ高い方がよいといわれます
  • 守備範囲
    一人一時間当たりどのくらいの売場範囲をカバーできるかという指標です。広いほど良いのですが、広すぎるとサービスが顧客に対する低下します
  • 単位面積在庫
    一定面積当たりの在庫金額
  • 商品回転率
    商品が入荷して売れていくまでのスピード

ポイントとしては、以下が重要であるといえます。

  • これらの指標をコントロールしながら収益性を高めること
  • 実践的な取り組みによって効率性を高めること
  • 従業員のモチベーションを維持すること

収益性の向上

粗利益率を向上させるためには、商品構成の見直し、売価変更、商品ロスの低減が考えられます。以下に具体的な施策を見ていきます。

商品構成の見直し

粗利益を改善するためには、商品構成も見直すべきです。同レベル商品であれば粗利益額の高い商品を選択したり、仕入交渉や仕入単位の拡大をしたりして、仕入れ価格を引き下げることが重要です。

店舗や企業全体として粗利益を上げるための商品構成を考え直すと良いでしょう。そのためには、商品部門ごとの利益貢献度分析を行ってみるべきです。

売価変更

タイミングを考慮した売価変更も粗利益を向上させる有効な手段です。

毎年セールの時期だからといって慣例的に値下げをすることによって、本来得られた粗利益を自らの施策によって減少させている企業も多いものです。あまり、業界や自社の慣習にとらわれず、顧客の動向を慎重に見据えた上での「戦略的な値下げ」が必要です。

商品ロスの低減

商品ロスの低減は粗利益の向上に直結します。商品ロスには、商品や販売方法によるロスと、管理方法によるロスがあります。

商品自体に鮮度やダメージがあったり、あるいは流行おくれになっていたりすると、値下げしなければ売れなくなり、粗利を減少させます。さらに廃棄処理になれば、原価までも損失してしまいます。仕入方法や鮮度管理、売り切るタイミングの見極めが重要になるとともに、そもそも仕入段階から過剰発注を防止することも、ロスの低減に効果があります。

管理上のロスとは万引きや盗難、従業員のミスや不正です。万引きや盗難は、一定数起こりうることですが、発生しにくい状況を作っておくことで、かなり防ぐことが出来ます。

例えばクリンリネスの行き届いた店舗や死角を作らないこと、従業員からの声掛けなどを行うと随分防げるものです。また、従業員のミスや不正に対しては、マニュアルの整備と遵守、ジョブローテーションによって不正の温床を作りにくくすることなどが上げられます。

実践の伴った業務改革

人時生産性の向上は、粗利益率の改善のように戦略的な方法の他に、従業員の働き方や店舗設備の改善など、実践を伴った改善も有効な方法です。以下、具体的な施策を見ていきます。

オペレーションの見直しによる守備範囲の拡大と商品回転率向上

まずは、店舗でのオペレーションを見直していきましょう。具体的には、部署ごと・職務ごとの作業内容を見直していくべきです。

仕事のマニュアルには、仕事の方法や報告の方法などは記載されていると思いますが、見直しの際には、標準作業時間などの目標値を設定します。そのことによって、一人当たりの売場面積が広がり、人件費を合理的に圧縮しながら守備範囲を拡大できます。

マニュアルを見直して実施するときには、効果の把握が大切です。担当者ごとにストップウォッチを首から提げてかかった時間を計測し、現状把握とします。

やるべき仕事が明確になっている場合、その仕事をスピーディーに効率的に行うことにより生産性が上がる事は明白です。これは、業種業態を問いません。

スターバックスコーヒーの業績が伸び悩んだとき、トヨタのカイゼン方式を採用して業績が向上した例などが、分かりやすいお手本です。スターバックスでは、コーヒーの材料を担当者の近くにまとめたり、コーヒーの種類を一目でわかるように色別のシールを貼ったりして時間短縮に務め、実際にオーダーから提供までの時間をストップウォッチで計測し、客数を伸ばすことに成功しました。

物販業では、同様のことが商品の売れるスピードである「商品回転率」に反映されます。

【参考】livedoor NEWS 「スタバがトヨタ式「カイゼン」で急回復 効率優先が同社にもたらしたものとは」

【関連】商品回転率とは?定義や計算式、活用方法から向上対策までご紹介!/BizHint

適性在庫の維持

また、適切な商品在庫を売場に配置しておく「単位面積在庫」も重要な要素です。

商品数が少なければ欠品を招き、収益性を下げます。また、品薄感は消費者にとって貧相なイメージも抱かせます。しかし、過剰在庫は商品回転率を低下させ、資金不足や商品ロスを引き起こす可能性がありますので一方的な増加ではなく、適性在庫が重要です。

従業員モチベーションのコントロール

人時生産性は、収益性の改善や、仕事のやり方や仕組みを変えることによって大きく改善する可能性がありますが、実行するのは人間です。いくら成果が上がるといっても、従業員のやる気を削ぐようでは本末転倒です。

では、どんな点に注意しながら従業員のモチベーションを維持・向上して行ったら良いのでしょうか?

基本的には、まず、会社の目標と個人の目標を近づけることが大切です。会社の目標を、「言われるからやる」という状態では、なかなか達成出来ませんし、いつまでも言われた範囲の中しか実行しない従業員では、生産性の向上は望めません。

「会社の目標 = 従業員の目標」にするには、まず、目標数値の開示と共有が必要です。そしてその中でも、全社目標と部門目標、それを分解しブレイクダウンした個人目標との繋がりを理解させ、達成後のインセンティブまで明確にしていくことが重要です。

そのためには、従来から会社組織が持つ「縦」の指示命令系統ももちろん大切ですが、従業員間の「横」のパワーも活用すべきです。

横のつながりを活用したものには、「小集団活動」があります。小集団活動とはQC活動ともいわれ、従業員同士で自由闊達に話し合いながら職場の課題を解決していくものです。小集団活動は、製造業を中心に行われて来ましたが、小売業やサービス業でも有効な手法です。

【関連】モチベーションの意味とは?低下の要因や上げる方法、測定手法や企業施策までご紹介/BizHint

人時生産性の向上で注意したいポイント

人時生産性を向上することは、企業体質を強化して、「稼げる企業」にすることですが、良かれと思って行う施策の中には、注意が必要なものもあります。特に、従来から行ってきた施策に対しても、新しい視点で見直すことが重要です。

コスト削減をし過ぎない

コスト、つまり人件費を一方的に削減すると、一時的には投入資源(インプット)に対して成果(アウトプット)の比率が大きくなるため、一瞬、生産性が上がったように見えますが、成果に貢献している要員まで削ると、当然成果が萎んでいきます。

つまり、意味のあるコストを下げると、その分売上が上がらなくなり、売上が上がらないので再度コストを削減するという、「マイナスのトレードオフ関係」に陥ってしまいます。 コストは、その役割を確認した上で削減すべきです。

販促強化施策に頼らない

販売促進策を強化すると、一時的に売上が上がりますし、それにつれて粗利益高も拡大しますが、経費が増大し、営業利益ベースではマイナスになる場合もあります。

一般に人時生産性は、投入労働量に対する「粗利益額」の比率で算出するため、一見生産性が上がったように見えますが、成果(アウトプット)を「営業利益」に置き換えた場合には、以前よりマイナスになる場合もあります。

販売促進策は、予め効果を予測し、事後に必ず効果の把握を行うことが、とても重要です。「うちのやり方だから」とか、「今までやってきたから」ということでは、生産性向上は望めません。

特にセールやイベントなどの販売促進策は、華々しさもあり、社員の士気を上げるという重要性はあるものの、何らかの効果の把握と、目標・撤退基準は設定した上で実施したいものです。

経営陣・現場管理職が中心となる

人時生産性を上げることは、経営体質を筋肉質にすることであり、全社を挙げて行う重要な戦略です。部下に命じてPDCAを回しておけば良いというものではありません。

壊滅状態の日本航空を救った京セラの稲盛会長が、日本航空幹部と最初のランチミーティングで発言した言葉が、「この弁当なんぼや?」だったそうです。日本航空のコスト意識の無さを瞬時に指摘した言葉ですが、当時の日本航空幹部は、当然のように答えることができず、稲盛会長は怒りを爆発させ、改革をスタートしました。

どんなに世の中が変わっても、リーダーたるものが、まず範を示せなければ改革は起こりません。

【参考】PRESIDENT Online「液晶テレビ」のシャープは本当に復活できるのか」

まとめ

  • 人時生産性とは従業員一人一時間あたりの付加価値であり、人時売上高は従業員一人一時間あたりの売上高を表します。
  • 労働生産性とはその国の従業員一人当たりのGDPで計算されますが、日本企業の労働生産性はOECD加盟国35か国中第20位と主要国では最下位となっています。
  • 人時生産性を向上させるには、人時生産性を要素分解し、収益性を高めること、効率性を高めること、従業員のモチベーションを維持することに分けて対策することが重要です。
  • 人時生産性の向上で注意したいポイントとしては、「コスト削減をし過ぎない」「販促強化施策に頼らない」「経営陣・現場管理職が中心となる」ことなどがあります。

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