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2019年4月9日(火)更新

原価管理

原価管理とは、利益管理の一環として製品の製造に必要となる「原価」を管理することであり、最近では「コスト・マネジメント」とも言います。特に製造業における経営管理に用いられてきましたが、近年では経営環境の変化から幅広い業種で活用されています。この記事では、原価とは何かから具体的な手法まで、原価管理の全体像を解説します。

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原価管理とは

原価管理とは、発生する原価を管理することによって利益をコントロールするための様々な管理手法のことです。これは、持続的な企業の発展を目的に行われています。

原価管理の手法はこれまでに多く開発されています。例えば、VE(Value Engineering)と呼ばれる、製品機能とコストの関係から「価値」をコントロールしていくという考え方があります。他に、商品が世の中に誕生する前の開発段階から「どれだけコストを費やしてどれだけ利益を得るか」を考える「原価企画」という手法もあります。

この記事では、様々な管理手法の中で最も使いやすく、様々な業種に適合可能な原価計算を用いる王道的な原価管理を中心に解説します。

原価とは

原価管理を理解するにあたって、まずは原価とは何かについて説明します。

原価とは、簡単に言えば、「製品やサービス1単位を生産するために必要となったコストを集計したもの」です。

コストは生産プロセスにおいて、様々な場所やタイミングで発生します。例えばパンを1つ作るためには、小麦粉を買ってきて、こねて、焼いて、という工程があります。その中で、原料費や人件費や光熱費などがかかっていることが想像できるでしょう。

これらをすべて集約したものが原価です。

このように、原価には様々な種類があり、原価を分類する考え方にも様々なものがあります。後述する原価計算を理解する上で必要となるため、原価の分類について概略を説明します。

まずは何に使われたコストなのか、という分類です。この観点からは材料費、労務費、経費に分けることができます。

次に、特定の製品とどれだけ関係するか、という観点から直接費と間接費に分類できます。例えばアンパンの原価を考えるとき、アンパン以外の材料にならない小豆は直接費となりますが、食パンなど他の製品の材料にもなる小麦粉は間接費です。

これら2つの分類を組み合わせて、直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費という区分で計算する手法が、原価管理では多く用いられます。

そして、製造と販売を分けて考えた際には、製造原価と販売費・一般管理費は別の原価としてとらえることができるため、これら全てをあわせたものが総原価となります。

以上の一連の原価概念の全体像を示したものが以下の図です。

原価計算との違い

原価という言葉からは、「原価計算」というキーワードが連想されるかも知れません。

ここでいう原価計算とは、文字通り、製品やサービス1単位にかかる原価を、目的に応じて正確に計算して把握する、という手続きを指します。

つまり原価計算はあくまで手段にすぎない、ということです。

原価計算と原価管理との違いは、手段と目的という違いです。

原価計算の目的には、正しい利益計算をして適切な財務諸表を作成することや、製品価格を決定することなどがありますが、それに加えて「原価管理」という重要な目的があるのです。

原価管理の歴史

原価管理の歴史は古く、戦後の高度経済成長期から始まりました。当時の時代背景を考慮すれば明らかなように、少品種大量生産を目指した製造業において、国民に対して安定的に十分な量の商品を供給することが、日本の産業全体を通じた目標でした。

そのため、当時の原価管理とは原価を安定させることが目的だったため、原価統制(コスト・コントロール)と呼ばれていました。

これに対して、現在の原価管理の考え方は、従来より広い観点からコストの削減を考える必要があり、その意味で、コスト・マネジメントと呼ばれています。また、このような意味の広がりとともに、ビジネス環境の変化から適用すべき業種にも変化が表れました。

現在では消費者ニーズは多様化し、製品ライフサイクルはどんどん短縮し、多品種少量生産となっています。

このような環境で利益を確実に確保するためには、製造業にかかわらず様々な業種で、緻密な計画の策定と、迅速な改善行動が求められます。こうしたことから、原価管理の必要性はどんどん広がってきているのです。

原価管理を行う目的

それでは、原価管理は一体何の役に立つのでしょうか。つまり、原価管理を行う目的は何か、ということになります。

ビジネスを行っていく上では、持続的に利益を獲得し続けることが何よりも重要です。そして利益を継続的に獲得する企業は、「利益を会計的に管理する」ということの重要性を例外なく認識しています。利益を管理するためには、その一環として製品やサービスを生産する上で発生する原価を管理していくことも同時に必要となります。

原価管理の目的を理解するためには「企業が成長するために何が重要か」というマクロ目線と、「実現するために必要な具体的行動は何か」というミクロ目線が必要です。

利益管理への役立ち

企業経営では、あらゆる面からPDCAサイクルが重要であるとされています。そうであれば、企業の継続的な発展を具体化する「利益」についても同様に考えるべきです。事前に利益計画を策定して、計画にもとづいて生産・販売活動を実行し、その結果を分析して改善行動を促し、次の計画に反映する、というプロセスが重要となります。

利益管理のPDCAサイクルを示したのが以下の図です。

企業における利益は、単純化すると以下の式で計算されます。

利益 = 収益 ― 費用

より厳密に言えば収益と費用は様々な要素で構成されます。簡略化して考えると、例えば製造業において、主要な収益は売上高であり、主要な費用は製造原価です。つまり、企業の発展を利益という面から計画し、実現していくためには、製品1単位をいくらで生産して(原価)、いくらで売る(売上)のかを検討することがきわめて重要です。

しかしながら、売上をコントロールする、すなわち販売価格を上げることは現実問題として困難であることから、原価のほうをマネジメントしていくことによって、利益を管理することができるようになるのです。

現場管理者の統制

前節で述べたPDCAサイクルへの役立ちは、どちらかと言えば全社的観点からの利益管理に有効であるという考え方でした。

ここではもう少し視点を落として、経営者が現場管理者を統制する問題として捉えます。

これは製造業で昔から使われてきた活用方法で、原価を管理する責任者を設定し、経営者はその責任者に対してある程度権限を委譲する代わりに、発生した原価について報告と説明を求めるという考え方です。

通常は工場長などがその責任を負います。それは製造業の場合、原価の多くは工場で発生し、製品製造も工場で完結することが一般的だからです。

工場長に原価管理責任を負わせると同時に、工場運営にかかる人事権や資材調達権を与えます。それによって、現場での迅速な判断と、それを駆使した目標利益の達成が期待できるのです。

つまり、原価をカットするために必要な人員削減や材料調達先の選定が任されるため、発生したコストに責任を持つべき、ということになります。

この場合、原価管理というツールはそのまま現場管理者の統制ツールとして機能することになります。もちろん、現場管理者の業績評価、査定ツールにもなり得ます。

注力すべき製品の抽出

伝統的な原価管理の手法からは少し離れますが、製品やプロジェクトごとに原価管理を行うことによって、高利益率の製品が何かが明確になります。

そうすれば、今後どのような製品戦略を採っていくのか、不採算製品からは撤退すべきなのか資本強化すべきなのか、といった検討材料ととして活用できます。

原価管理の手法

実際の原価管理について、大きく流れを示すと、標準原価の設定→原価計算→差異分析→改善行動となります。

標準原価の設定

標準原価とは、製品やサービス1単位を生産するために必要と考えられるコストの標準額です。つまり「うまくいけばこれくらいで生産できるはずだ」という目標です。

標準原価は事前に設定するものですから、当然、完全な予測は不可能ですが、できる限り理想的、かつ現実的な標準を設定するためには工夫が必要です。

標準原価を設定する方法として一例を挙げます。

パンの製造であれば、材料の標準はパンのレシピにもとづいて考えることができます。つまり、レシピがあれば、パン1個あたりに必要な小麦粉や卵といった材料の分量はわかっています。そこで、この数量に、これまでの仕入れ価格の実績や現時点の実勢価格を反映することによって、1個あたりの標準的な価格を求めることができるでしょう。

これが材料の標準を算定する方法の一例です。

このようにして標準原価を設定していきますが、もちろんこれは目標利益を実現できるものである必要があるため、利益計画との関連性や整合性についても検討します。

利益計画に基づき売値を決め、そこから希望利益を控除して原価を設定する方法や、見積もり原価を先に算定後、利益を加算して売価を決定する方法、その両者をすり合わせていく方法と、様々な方法があります。

いずれにしても、この段階で製品やサービスを1単位生産するために必要な原価が定まります。これが目標利益を実現するための基準となる原価、すなわち標準原価として機能します。

原価計算

次に、今度は生産段階に入ってから、実際に発生した原価を材料費、労務費、経費に分けて集計します。

材料費:製品製造のために投入される原材料です。パンの製造なら小麦粉やバター、水です。サービス業ではあまり材料費は発生しないでしょう。

労務費:工員の賃金などの人件費です。サービス業では労務費のウェイトが比較的大きくなるでしょう。

経費:材料費や労務費に含まれないような原価で、工場の建物や機械などの減価償却費や、水道光熱費などの管理費です。

さらに細かく言えば、既述のとおり、材料費は直接材料費と間接材料費、労務費も直接労務費と間接労務費といったように特定の製品製造とどれくらい関連するのかで区分することもできます。

差異分析

こうして実際に発生した原価を集計した後に、標準原価と比べてどうだったのかを分析します。つまり、目標利益を達成するために設定された標準原価に対して、実際に発生した原価が上回ったのか下回ったのかを確認するのです。

この原価差異分析を緻密に行えば行うほど、経営課題が明確になります。

例えば、材料費は仕入価格×数量に分解して各要素ごとに標準原価と対比すれば、仕入れ価格が想定よりも高かったのか、投入材料に無駄が生じたのか、など原因が明らかとなり、それぞれの影響額まで把握できます。

具体的には、以下のような図を作成すると全体像が捉えやすくなります。実際に発生した原価の総額は、実際価格(実際に仕入れた価格)×実際数量(実際に使用した数量)、つまり図の外側の面積で表すことができます。それに対して、標準原価は標準価格×標準数量、つまり内側の面積で表されます。

実際に発生した額と標準原価の面積の差が原価差異の総額となります。この差異の総額は、さらに価格差異と数量差異に分けて考えることができます。

実際価格から標準価格を引いた金額に実際数量を乗じた金額が価格差異、つまり想定した価格よりも高い価格で仕入れたことでコストが高くなってしまった部分です。

実際数量から標準数量を引いた値に標準価格を乗じた金額が数量差異、つまり標準よりも多い数量を投入したことによって発生した、無駄なコストを表します。

改善行動

課題が明確になれば、その後の経営管理行動につなげていくことができます。仕入れ価格の問題であれば調達方法を見直すことが必要かも知れませんし、投入量の問題であれば製造工程で無駄が生じていないかを検討し、工程を再構築するべきかも知れません。

いずれも、把握した差異原因の分析と改善行動を踏まえて、新たな利益計画や次の標準原価に反映していくことによってPDCAサイクルが回っていきます。これが、現代における原価管理、すなわちコスト・マネジメントなのです。

原価管理システムについて

ここまで、原価計算と原価管理の流れについて説明しました。その具体的な作業工程をイメージしてみると、システム化を検討する余地が考えられます。つまり、標準原価の設定や、実際原価の計算、あるいは差異分析くらいまではある程度自動化が可能ではないかという発想です。

実際にこうした機能を持つ原価管理システムは多くリリースされています。

原価管理システム導入のメリット

原価管理システムの機能は、もちろん個々のサービスによって異なりますが、やはり共通するコンセプトとしては、定型的な処理を自動化することによって、人間の事務処理負担を軽減することでしょう。当然、このことは最終的にコスト削減に繋がります。

自動化は負担軽減だけでなく、人的ミスを防ぐというメリットもあります。また、原価計算は緻密で膨大な量の計算が発生するため、迅速に自動化できれば、システム導入の大きなメリットになることは明らかでしょう。

原価管理システムの機能

原価管理において、定型的な処理は、原価計算の過程で多く発生します。

原価管理システムの具体的な機能として代表的なものが、原価計算で発生する製品ごとの製造原価を費目別や直接費・間接費に区分して集計し、製造原価明細書作成することです。さらに、標準原価との差異を数値で表して出力することが基本機能となるでしょう。

また、システムによっては、過去の原価の変動状況にもとづき、将来のシミュレーションを行うことができるという機能もあります。

そこで、このような原価管理システムの機能を最大限に活かすには、原価の情報が誤り無くインプットされていることが重要です。

この意味で、原価管理システム単体での導入では効果が低いと考えられます。一つ一つのデータを都度インプットするのでは、作業負担増やミスに繋がります。

そのため、単体での使用よりも会計システムやERPとデータを連携させることが有効です。会計システムで認識されている支払いや固定資産の動きなどの取引データは原価計算でも必要となります。

さらにその次の段階で差異の計算まではシステム処理で可能になったとしても、その計算結果から原因を分析して改善策を導出するのは人間の役割です。いずれはAIが代替する可能性はありますが、現在のところは、経営者が創造性を発揮すべき場面であると言えます。

原価計算システムの導入は、定型的な作業を機械化することによって時間を効率化し、その空き時間をより創造的で付加価値の高い仕事に振り向ける、という効果が期待できるものであると言えるでしょう。

まとめ

  • 原価管理とは、利益を管理するために製品1単位あたりの原価を管理することです。
  • かつては製造業において標準原価以下に抑えることが主目的でしたが、近年では多様な業種で活用されています。
  • 標準原価をあらかじめ設定し、実際に発生した額を算定して標準との差異を分析し、その結果を検討して改善行動につなげることが重要です。

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