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2018年8月24日(金)更新

シェアードサービス

グループ経営の過程で、間接部門の集約・標準化はいずれ検討するべき事項です。そこで、人事や総務、法務の業務を対象にした共通化の取り組みであるシェアードサービスが注目されています。今回はシェアードサービスの意味やメリット、導入ポイント、課題、事例を合わせてご紹介いたします。

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シェアードサービスとは?

シェアードサービスは多くの子会社を持つ大企業にとって魅力的なサービスの一つですが、導入には多くの課題があり、困難を伴います。

シェアードサービスの意味とは?

シェアードサービスとは、企業グループにおいて、人事や総務、法務といったコーポレート機能を担う部署を一箇所に集約し、コスト削減や業務効率及び品質の改善を図る経営手法です。

シェアードサービスの対象となる部門は人事や総務、経理、情報システムなどの間接部門に多い傾向があります。人員や設備の集約や業務を標準化することで、コスト削減や知識や経験の蓄積、業務の透明性の向上、責任の明確化によるガバナンス意識の強化、内部統制品質の向上、内部牽制の強化などの効果が期待できます。合併やM&Aによる経営統合で、コスト削減や業務品質改善を目的とした導入も増えています。

一方で、シェアードサービスの導入は初期投資や長期的な改革を必要とし、従業員の業務意欲、モラルの低下にもつながりやすい傾向もあります。

国内需要が減少する中、海外に活路を見出す日本企業も増えており、グローバル人事の構築が急務となっています。それと同時に間接部門の集約による業務改革も求められており、今後もシェアードサービスの需要が増えると予想されています。

シェアードサービスが注目される背景

シェアードサービスが注目される理由として、「経営環境のグローバル化」と「専門化組織の需要拡大」の2つが関係していると考えられます。

経営環境のグローバル化

国内需要が減少する中、活路を海外に見出す日本企業は少なくありません。しかし、現地従業員と日本人従業員の待遇や評価制度を公正公平なものにするためには、グローバル人事の導入が欠かせません。

そのため、日本国内だけでなく、世界中の間接部門を集約し、一つの組織として機能させる必要があります。また、国内でサイロ化した組織のてこ入れとしても活用されることも多く、アウトソーシングの一環として、シェアードサービスの拡大につながったと考えられます。

【関連】グローバル経営とは?グローバル経営管理の課題も合わせてご紹介 / BizHint HR

専門化組織の需要拡大

グローバルな経済活動を行なう上で、経営戦略やリスク管理、販売促進費用の効果分析など、高度で専門的な知識を要する専門家の需要が拡大しています。また、これらの専門的な業務を一箇所に集約することで、業務の効率化とパフォーマンスの最大化が期待できるため、新興市場などのマーケティング活動をスムーズに行なえるメリットがあります。

このようにIT技術を活用した専門化組織の設立のニーズが増えているため、アウトソーシングとともにシェアードサービスの必要性も増したと考えられます。

シェアードサービスとBPOの違いとは?

シェアードサービスとBPOは、業務の効率化という観点から、よく一緒に議論されるサービスです。

BPOとは、経理や総務など間接部門の全てを外部の企業や子会社に委託することで、業務の効率化とコストの削減を図る経営手法で、ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略称です。

一方、シェアードビジネスは分散しているグループ内業務を一箇所に集約させ、業務の効率化とコストの削減を図る経営手法です。委託先がグループ会社か、外部会社かによって、使い分けられる点で異なります。

シェアードサービスのメリットとは?

シェアードサービスを導入することで、さまざまなメリットが生まれます。

業務の品質改善

シェアードサービスの活用目的の一つとして、業務の品質改善が挙げられます。

シェアードサービスは業務プロセスを透明化・標準化する狙いがあり、その結果、従業員による作業のバラつきを防ぎ、品質を高める効果があります。また、業務のノウハウの蓄積及び体系化することが可能なため、業務に従事する社員の専門性を高めることができます。

コスト削減

もう一つのシェアードサービスの活用目的が、コスト削減です。

企業グループの経済活動が大きくなると、大小のグループ会社が設立します。それらの会社に同様の機能を担う組織が点在することは、コストの観点からも非効率です。業務内容が共通しやすい人事部門や総務業務などの間接部門をひとつに集約することで、人件費や設備のコストを抑えることが可能となります。

納期遵守の高さ

シェアードサービスは、間接部門の業務を専門的に扱う組織です。

そのため、納期遵守の意識が芽生えやすく、納期が遵守されるメリットがあります。人事部や財務部は繁忙期が予測できるため、それらのスケジュールにも対応できる納期の設定が可能となります。

グループ経営の向上

シェアードサービスは業務を一つに集約することで、責任の所在を明確化にでき、ガバナンスに対する意識を強化できます。

また、シェアードサービスセンターは高度な専門的知識と経験が必要とされる間接部門の部長候補や経営幹部候補の育成の場としても活用できます。その結果、優れた経営管理の情報を提供できるようになり、グループ経営力を強化し、経営環境の向上に寄与します。

シェアードサービス導入のためのポイントとは?

シェアードサービスを導入する際は、以下のポイントを押える必要があります。

シェアードサービス対象業務を選択

シェアードサービスの対象となる間接部門は、主に財務・経理、総務・人事、情報システム、法務・事務が挙げられます。

《シェアードサービスの対象業務一例》

  • 財務や経理部門:一般会計や債権・債務・固定資産管理、経費処理
  • 総務・人事部門:給与計算などの給与業務や福利厚生業務、備品・オフィス管理
  • 情報システム部門:ヘルプデスクやシステム運用業務
  • その他:受発注処理や契約処理、物流・配送管理、渉外 など

一般的に業務内容の見直しやプロセスを明確にしやすい業務が対象となり、どの業務を集約化するべきかを検討します。

達成成功度合いを知る

シェアードサービスの主たる目的は、業務改善と品質向上です。これらが改善されているかどうかを検証することは必要不可欠です。また、対象となる業務によって、検証方法も異なるため、最適な検証方法を模索する必要があります。

一般的にコスト削減や業務ノウハウの蓄積は成功する可能性が高いといわれています。一方で、事業統合やM&A、人材育成を目的としたシェアードサービスは、不成功の割合が高いとされています。そのため、導入が難しい業務については、達成成功度合いをしっかりと把握し、改善を繰り返さなければいけません。

業務標準化とシステム変更

シェアードサービスを導入するためには、グループ企業毎に異なる業務内容の全体を俯瞰して、生産性の向上や処理の適正化を図る必要があります。そのため、シェアードサービスを導入する際は、事前に業務標準化することが、迅速な業務移管へとつながります。

また、シェアードサービスを実装するためには、情報システムはとても重要なインフラとなります。委託する業務を効率よく遂行するためにも、システムの再構築や変更が必要となる場合があります。特に会計処理においては、システム変更を行なうことで、業務ルールの維持管理、会計システムの連携強化、清算処理の自動化などの高い効果を得られます。

しかし、必ずしも業務の標準化やシステム変更を行なう必要はありません。シェアードサービスは既に業務の標準化がされており、優れたシステムを導入している組織への集約化も可能です。集約先が定める仕様に合わせることもシェアードサービスの導入手法とされます。

シェアードサービスの課題

シェアードサービスには、さまざまなメリットがある反面、導入が難しい一面があります。シェアードサービスの課題を知ることで、グループ企業への導入がふさわしいかどうかをよく検討する必要があります。

初期投資・長期的改革が必要

シェアードサービスの導入には、移管前、または移管中に業務の標準化やシステム変更に伴う人員・設備の統廃合が実施されるため、初期投資が必要です。また、各企業の業務プロセスや業務内容が異なるため、業務の集約や移管に時間がかかることもあります。

その結果、想定していたよりもコスト削減、業務の標準化が進まない事態も少なくありません。特に合併やM&Aによる企業統合の場合、業務内容が全く異なることも珍しくなく、シェアードサービスの導入の成功率が低い傾向があります。グループ会社への指導を強化するとともに、長期的な改革になることを覚悟の上で実施する必要があります。

サービス品質の低下

シェアードサービスの導入が必要ということは、各グループ会社の業務内容や仕様が異なることを意味します。しかし、全グループ会社にも対応するように業務を標準化した結果、サービスの品質が低下する恐れがあります。また、各グループ会社の満足度にもばらつきが生じる可能性もあり、シェアードサービスの導入前に入念な企画や仕様設計を行なわなければいけません。

関係社員のモチベーション・モラルの低下

シェアードサービスは、給与体系やキャリアアップに関わる人事業務も対象となります。そのため、導入による強制的な配置転換や給与体系の変更が生じ、社員のモチベーションやモラルの低下につながりやすい傾向にあります。

今では日本的慣習であった終身雇用職能資格制度は廃止の方向に進んでいます。今までの人事制度で昇進や昇級を果たしてきた従業員にマイナスな結果をもたらすことも珍しくありません。そのため、人事に関わる業務をシェアードサービスに移管する場合は、従業員が納得する給与体系や待遇の変更が欠かせません。

また、移管対象となる間接部門の担当者も業務が一元化されることで、業務に対する意欲が低下することも予想されます。担当者に対して、新たなミッションや課題を与え、業務に対する意欲を向上・維持させることも忘れてはいけません。

担当者不在による懸念

シェアードサービスは間接部門業務を集約化することで、業務の効率化とコスト削減が可能です。しかし、人員削減により、各グループ会社に間接部門の担当者が在籍しないこととなります。

人事部においては、従業員の給与業務や福利厚生業務以外にも、従業員のメンタルサポートや昇進・昇格推薦などの重要な業務を担っています。担当者が不在になることで、これらの業務が放置されやすく、人事制度の共通化も踏まえた上で、シェアードサービスを導入する必要があります。

シェアードサービスの導入企業と事例をご紹介

シェアードサービスにはメリット以上に、導入までの課題も多く、困難に直面することが少なくありません。そんな中でもシェアードサービスの導入に成功し、成果を上げている企業も存在します。

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)

世界最大の消費財メーカーで、グローバル企業のプロクター・アンド・ギャンブル(以下、P&G)は、今では当たり前となっている全ての間接業務を集約させるシェアードサービスをいち早く実現した企業として知られています。シェアードサービスを担うグループ会社であるグローバルビジネスサービス(以下、GBS)は、開始当初は14のサービスのみでしたが、現在では170を超える業務を集約し、10億ドルを超えるコスト削減を実現しています。

【参考】SAPジャパン 80カ国のバックオフィスを統合したP&G社のシェアードサービス

花王株式会社

大手化学メーカーである花王株式会社では、2010年に経理業務をシェアードサービスセンターに集約し、さらに集約された業務の一部を外部会社(中国にあるIBM大連センター)に委託することを発表しました。国内55箇所で実施されてきた支払業務を一箇所に集約化することで、導入から5年間で約18億円の削減が見込めるとしています。

【参考】花王株式会社 経理業務のオフショア化* を開始

株式会社NTTデータ

システムインテグレーター大手の株式会社NTTデータは、2008年にグループ・シェアード・サービスセンタを設立し、人事、財務、総務、購買の間接部門業務を集約すると発表しました。各グループ企業から担当社員の出向も行い、業務ノウハウを蓄積し、オペレーションの生産性・効率性の向上を目指す目的で実施されました。現在では、人事サービス事業部、福利厚生サービス事業部、財務・経理サービス事業部、購買サービス事業部、総務サービス事業部、営業事務サービス事業部を展開、さらにアウトソーシング事業にまで発展させています。

【参考】NTTデータ株式会社 NTTデータグループ各社の管理業務を集約する 「グループ・シェアード・サービスセンタ」を設立

サッポロホールディングス株式会社

ビール製造・販売の大手であるサッポロホールディングス株式会社では、2007年に「サッポログループ新経営構想について 〜新たなサッポロの価値を実現〜」で、グループ全体の人事、経理、総務、営業支援をグループ会社で、間接業務部門を担うサッポロプロアシスト(株)※に集約化し、コスト削減と業務品質の向上を推進すると発表しました。 ※2011年3月に「サッポログループマネジメント株式会社」に社名変更

【参考】サッポロホールディングス株式会社 サッポログループ新経営構想について〜新たなサッポロの価値を実現〜

まとめ

  • グループ企業の規模が大きいほど、シェアードサービスによるコスト削減や業務品質の向上が期待できます。
  • 導入には多くの初期投資や長期的な組織改革・運営が必要となりますが、その分、メリットも大きくなります。自社の規模に応じて、適切にシェアードサービスを導入することで、グループ経営力の強化にもつながります。
  • 導入の際は、業務の標準化と新たなシステムの導入や変更に注意を払いながら、実施する必要があります。

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