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連載:第10回 【Future of Work Japan】

なぜ、サービス業の生産性は上がらないのか

Logo markBizHint 編集部 2018年10月3日(水)掲載
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働き方改革や生産性向上が注目を集めるなか、日本の就業者数において7割近くを占めるサービス業では「生産性が上がっていない」とされています。なぜ、サービス業の生産性は上がらないのか。それに対して打ち手はあるのか。グロービス経営大学院で経営戦略、マーケティング、管理会計、仮説思考等の講義を担当する嶋田毅さんと回転寿司チェーン「あきんどスシロー」を始め、多数の多店舗展開企業の経営改革を主導してきたClipLine株式会社代表の高橋勇人さんが議論を交わしました。[sponsored by ClipLine]

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サービス業における「働き方改革」の課題とは

――サービス業における「働き方改革」の課題をお二人はどう感じているでしょうか?

嶋田毅さん、(以下、嶋田) :働き方改革が叫ばれる昨今ですが、サービス業では生産性の向上は急務の課題です。サービス業は基本的に均一な製品を提供するメーカーと比べると、提供する形が見えづらく、「標準化は難しい」と思っている会社も多いでしょう。そもそも、 生産性の向上を図るうえでは、そのサービスの「標準」を作ることがとても重要 です。そして、標準化をすれば、やることやらないことがはっきりとしてきて、効率はどんどん上がっていきます。「サービスのブレを無くして平準化する」のがサービス業の働き方改革では大切です。

高橋勇人さん、(以下、高橋): そうですね。私も、サービス業における生産性向上の鍵は「ばらつき改善」にあると思っています。生産ラインが整った工場などとは違って、サービス業では効率がいい店舗とそうでない店舗で生産性に大きな差が出ます。例えば、 大手飲食チェーンでも労働生産性でみた時に、店舗ごとに±10%以上の差が生まれています。 マニュアルがしっかりと整備されている大手飲食チェーンでさえも、です。その差が積み重なるとひとつひとつでは小さな差かもしれませんが、日本全体のインパクトで考えると非常に大きくなります。サービス業の人件費は、日本全体で30~40兆円と試算されます。仮に10%の改善できたら3兆円から4兆円の人件費に該当するほどのインパクトがあります。

嶋田: 確かにサービス業を見回してみると、 “人”がサービスを提供しているので、必ずしもいつでも同様のサービスが提供されているわけではないですよね。実際のところ、そのパフォーマンスの差を分ける要素は何でしょうか。

高橋: 店舗ごとの生産性の差の理由をヒアリングをしてみると、生産性の悪い店舗はオープンしたばかりの新店舗でスタッフに新人が多く慣れていなかったり、優秀な店長が辞めてしまって店舗を回すマネジメントが混乱していたり……という人的な話が多いですね。

暗黙知を形式知化しにくいサービス業で生産性を上げるヒント

――サービス業のなかで、生産性を上げるために打ち手はあるのでしょうか?

高橋: サービスを平準化するために必要なことの一つは、 教育システムがちゃんとしているかどうかだと思います。いかに熟練度の高いメンバーを揃えるか。それによって提供できるサービスのレベルがグッと上がります。

嶋田: 仕組みに投資を行うことは、すべての会社にとって重要なこと ですね。そして、そこに力をかける企業が採用においても選ばれる時代になりつつありますよね。人手不足が叫ばれてなかなか人が集まらない昨今においては特にポイントになりやすい。

高橋: 教育がしっかりしていて人材も確保できている企業は長い目で見ると総じて業績が安定しているように思います。よくサービス業で引き合いに出されるのは、スターバックスですよね。大学生にとってスタバで働いていることはステータスです。きちんと教育してくれているので、採用においても人が集まるようになっています。もちろん、「アルバイト求人への応募要因」には“時給”という要素もありますが、時給で数十円単位の違いは大きな差にはならないと思います。ただ、企業視点では、時給10円の違いは利益率に直結します。

社員教育への投資は、人材の流出を防ぐ効果もあります。これは、とあるサービス業の企業の事例ですが、アルバイトも含めると1年間で130%もスタッフが入れ替わっているというデータがありました。

嶋田: 1年後にはメンバーが入れ替わっている計算ですね。採用しても定着しないことには、良質なサービスは提供しづらくなるでしょう。

高橋: そもそも新人が一人前になるまでにかけるリソースも馬鹿になりません。例えば、アルバイトの人材募集をかけて、媒体経由で採用すると1人15万円程度かかります。一人前になるまでに30~100時間程度はかかるので、時給1000円だとしても3~10万円の人件費が教育される側の費用として必要です。さらに教育をするためのスタッフも必要です。もろもろ合計すると採用費から含めて一人あたり数十万円の育成費用がかかっています。

教育の設計を担当している人は、以前現場で優秀だった方が本社に登用されたケースも多くあります。ただ、彼らが持っているノウハウは、最新ではありません。以前現場で通用していたノウハウを基に研修を組み立てたりマニュアル化すると、現場の実態とはズレが生じます。結果として、サービスの平準化ができなくなっていくと思います。私は 「現場こそがサービス業のすべて」 だと思います。最新の現場のノウハウを吸い上げる仕掛けが大事だと思っています。

嶋田: 現場で施策を考えてもらって、現場が自律的に考えたアイデアを吸い上げていく仕組みは必要ですよね。その時にITツールの存在は重要だと思っています。

高橋: 私たちはClipLineという動画共有サービスを提供しています。多店舗ビジネスにおける、教育や運営などの情報を動画で共有するものです。紙のマニュアルがあっても、そこには抜け落ちてしまう情報が存在します。お客さまに「いらっしゃいませ!」と一言声をかけるのも、初めて現場に立つ人間は「どう言えばいいのか……」と困惑してしまうもの。ClipLineの動画をみることで、「こんな風にふるまえばいいんだ」と理解できれば、その障壁は下がるはずです。

さらに、ClipLineでは、接客の様子や、対応の様子を動画に撮り、本部や上長に送る機能があります。本部は「一定のレベルに達した」とみなせば合格にして、現場に送り出しています。サービス業の標準化に対して有効なツールだと思っています。

声掛けに限らず、 現場にはメンバー間で共有している“暗黙知”が存在します。それを動画で本部と現場とをインタラクティブにつなぎ、“形式知”に していくものです。吉野家さんやアイセイ薬局さんなど多数のナショナルチェーンでご利用いただいていますが、どの企業さんでも「現場にこんなにできる人がいたのか!」といった発見があります。また、現場から経営陣が思ってもいなかったノウハウが上がってきて、それがそのまま教材になることもあります。接客コンテストやレジの早打ちコンテストも、動画を通じて行うこともできるのです。全社でノウハウを共有できるのが特徴です。

企業ごとのニーズに応じて、弊社では最新の現場オペレーションの撮影や編集・セットアップ、その後の業務オペレーション改革のコンサルティング、そして、店舗へのフォローアップとして、コールセンター的な支援などを一気通貫で支援しています。

嶋田: 興味深いツールですね。ちなみに、動画を撮るという行為に対して、現場では抵抗感などはないのでしょうか?

高橋: ここ数年で状況が大きく変わった感じがあります。現在、サービス業で主力となって働く若い人たちはスマホと共に育った世代です。自撮りの動画を撮るのにも違和感がなく、それに対してコメントをもらって行動を直していくのに抵抗はほぼなくなった、という感触です。むしろ、ほとんどのクライアントでは、全店導入前に現場アンケートを取り、現場からの強い要望を受けて全店導入に踏み切ることが多いです。さらに、弊社のプロダクトはUI/UXにこだわっているので、スマホに慣れ親しんでいない世代でもチュートリアルに沿って進めてもらえれば自然と使いこなせていますね。

嶋田: 集まった現場のノウハウは他の店舗へも横展開も必要ですが、こうしたサービスを使えば比較的スムーズに進みそうな予感がします。私が知っている事例だと、アメリカの某金融業者の営業部門の話がおもしろかったです。「営業をどう教育していくのか」というプロセスの標準化がものすごく出来ていいて、スキルや行動の標準化プロセスが可視化されている。メンバーはその行動指針をなぞって行くと売れる営業になるのです。一方で、日本の特にサービス業は遅れている部分があると思います。ファブレスメーカーのキーエンスなどでは、一挙一動に対しても徹底して教育する仕組みが整っていますが、極稀な例ですね。やはり、「お客さんが違えば、行動様式も変わるのが当たり前」という意識が根強く残っているのが問題ではないでしょうか。

サービス業の未来をどう作るか

――ITツールを使って仕組み化することに対して、メリットを感じない経営者も少なからずいそうです。改革やツールの導入が必要な理由を納得していただくにはどうしたらよいのでしょうか? 

高橋: ClipLineをご紹介する際に、「新人スタッフも仕事に定着しやすいですし、教育にかかるコストも削減できる」、こうお伝えすると耳を傾けてもらえることは多いです。ただし、我々が経営者を説得するわけではなく、結局のところ、我々のご紹介の前に経営者に課題意識があり、それが解決できるかも、と思ってもらうのが始まりです。

嶋田: そもそも どんな企業も危機感を持っていなければ終わり です。反対に言えば、きちんとしている経営者は何かしらの危機感を持っている。その点、ツールによって目下の悩みが解消できますよね。

一方で、経営者は明るい未来も持っていて、店舗型のチェーンだったら出店数をさらに増やしたい。そして、大きくなるためには、人を採用して早期に教育していくことが絶対に重要になります。 「利益と成長」を追い求めるには、やはり早期のスピード感のある育成は必然 になる。「正しく大きくなる」、そのためにサービス業でできることとは何だと思いますか?

高橋: 弊社のクライアント様を見ていても、業務改革がうまくいくかどうかは経営陣がどれだけ強く危機感を持っているかが鍵です。短期間で一気にClipLineの活用度が高まり、業績も上がったケースも少なからずありますが、ある企業の場合はトップ自ら弊社にお越しいただいて、普段はエリアマネージャークラスの方々と行うようなミーティングにも頻繁に顔を出されていました。やはり「ClipLineという仕掛けを使ってこれからやっていくんだ!」といった本気度合いを、経営者の方が示さないと変わっていきません。結局ClipLineもサポート的な存在ですし、経営者が変えようとする意識が重要です。

『Future of Work Japan 2018 未来の経営と働き方に出会うEXPO-』

――2018年9月6日(木)『Future of Work Japan 2018 未来の経営と働き方に出会うEXPO-』の14:00~開催のセッション『なぜ、サービス業の生産性は上がらないのか』にて、嶋田さんと高橋さんがさらに議論を深めました。

高橋さんは改めて、「サービス業の生産性が上がらない理由」について、「サービス業は平準化がなされず異質な状態」と指摘。そのサービスのバラつきを抑えるために、「人を育てる仕組みをデジタルに置き換える」ことを提唱しました。

嶋田さんも「お客様満足度の向上は、すぐ売上にはつながらないものの、人材育成は取り組むべき課題。メンバーのロイヤリティをどう高めるかもポイント」と付け加えました。そして、「スーパーマンで支えられている組織は、保たない。これからはデジタルも利用した”仕組み”でどう支えるかが必要です」と締めくくりました。

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