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2018年11月21日(水)更新

給与制度

会社を経営していく中で、給与制度の見直しが必要となる場合があります。重要な事柄ですから、不十分な設計の結果として制度が機能しなくなることがないようにしたいものです。どのようにすれば給与制度の見直しがうまくいくのでしょうか。ここで解説をしていきます。

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給与・賃金を構成するもの

最初に、給与や賃金を構成する一般的な要素を確認しておきましょう。

  • 基本給
    給与の基幹部分であり正社員の多くは月額で設定される
  • 賞与・ボーナス
    会社の業績に応じて利益を社員に配分するもの
  • 成果報酬
    個人の売上高や出来高に比例して与えられるもの
  • 各種手当て
    個人それぞれの事情に応じて支給されるもので、職務に関連するものと生活に関連するものに分類できる

給与体系の基本軸

社員各人の給与を決める基本軸として考えられる分類を見てみましょう。月給制や年俸制といった期間設定の軸とあわせて、近年の日本企業では複数を組み合わせて運用することが一般的になっています。

年功給

年齢や勤続年数によって決定される賃金です。同じタイミングで入社した同年齢の社員どうしはこの部分の金額が等しくなります。年功給を採用した年功制は日本的経営における最大の特徴の1つであり、この部分の比率が大きいと、社員の能力に限らず人件費が高くなる傾向があります。

職務給

個人に対してではなく、社内における職務内容について金額を決めるものです。企業が必要とする仕事の内容などに応じて価値を決め、それを賃金に反映させます。次に説明する役割給と似たような意味で使われますが、役割給が主に社内の階層に対して設けられるのに対して、職務給は事務や技術といった職種に対しても用います。

【関連】職務給とは?職能給との違い、メリット・デメリットをご紹介 / BizHint HR

役割給

社内で必要な役割について設定される賃金体系の区分です。職務給との違いは上述のとおりで、管理職ポストなどのような社内階層に対して設定されることが多いということです。したがって、役職手当はこれに近い意味合いの報酬ということになります。非正規社員も含めた社内階層に対して序列を設け、等級として給与額を設定します。

職能給

人事評価と連動して用います。知識や経験、技術といった職務遂行能力で個人の能力評価をして、その高低で賃金の差に反映させるものです。基準となる資格を設けて運用する場合もあります。しかし、本質的には終身雇用を前提としており、評価者の判断が経年による加算に偏りがちとなることによって年功給の意味合いが強くなるケースも多く見られます。

【関連】職能給とは?職務給との違い、メリット・デメリットをご紹介 / BizHint HR

業績給

会社の業績が良ければ高くなり、悪ければ低くなるものです。民間企業では賞与・ボーナスがこれに相当することが多いですが、基本給において採用する企業もあります。年俸制などと組み合わせて取り入れられることも多く、上がるだけでなく下がることもあり得る給与の体系です。

成果給

成果給は歩合給とも呼ばれ、個人が作り出した売上や販売金額、あるいは製品の出来高などに比例して決められます。成績評価を元に、やればやっただけ賃金が増えるということですから社員のモチベーションにつながります。営業や保険セールスなどの職種で適用されることが多く、成果主義を人事制度に取り入れた企業では、この部分の割合が多くなります。

日本企業における給与制度の傾向

日本的経営の代表的な例は上場企業などの大企業に多く見られ、年功制賃金、職能給中心の査定、固定的なボーナスの支給といった特徴があります。しかし、近年では大手企業の中でも成果報酬型賃金制度への移行が目立つようになっており、自動的に給与が上がっていく体制からの脱却を目指す動きといえます。

一方、中小企業は同じ年功給を採用する場合でも上げ幅は小さくなる傾向があります。また、特定の軸に重きを置かず、社内の序列や業界内の相場、自社の財務力などから総合的に賃金が決定されるのも中小企業の特徴です。ただ、そんな中でも頑張った社員の努力や工夫に報いるような制度導入も見られ、成果給の要素を取り入れるケースも増えてきました。

また、中途採用の割合が多くなるベンチャー企業では、年功給を採用すると新しい社員と既存社員とのバランスをとるのが難しくなります。そのため、ベンチャー企業経営者は、資格を摘要した職務給や、業績や成果と連動した職能等級、それらを組み合わせた年俸制を採用することも珍しくありません。組織体制が変わりやすいのもベンチャー企業の特徴であり、給与制度そのものを適宜に見直ししながら運用していくケースもあります。

公務員の給与制度も日本的経営の特徴が強く見られ、年功的な賃金上昇が高コスト体質の要因となっています。しかし、民間企業なみの劇的な変化はありませんが、人事評価制度の中で勤務や職務の内容に見合った報酬となるよう、近年では賃金テーブルの見直しが行われるようになっています。地方公務員においては、自治体ごとに独自の取り組みをしているところもあります。

給与制度の見直し

会社の状況によっては給与制度の見直しが必要になる場合があります。それはどんなときなのでしょうか。また、見直しを行う場合に気をつけなくてはいけないことはどんなことでしょうか。

給与制度の改正が必要になるとき

給与制度の見直しが必要になる一番のケースは、組織構造に大きな変更があるときです。部門の整理統合が行われたり、会社そのものの合併や分社化が行われるときがそれに当たります。また、経営戦略や人事戦略におけるなんらかの転換がある場合にも組織改革が必要とされることがあり、これも同じようなケースといえます。

また、環境が変わっていくことによって事業内容に大きな変化が生まれることがあり、この場合も給与制度を見直す必要性が高まります。それは、事業的な変化によって求められる人材像が変わってしまうことや、利益構造が変わることがあるためです。社内制度を全面的に改定することもありますから、給与制度もその中で見直しをするのが良いでしょう。

給与制度は経営戦略や人事戦略に連動させる

人事戦略は経営戦略に則って策定されます。そして、給与制度を含めた各種の人事制度はそれぞれに連携しながら人事戦略に基づいて効果を発揮するものでなければなりません。給与制度を見直す際にはそのことを忘れないように注意しましょう。他の制度と同様に、あくまでも上位の戦略を実現するためにあります。

また、社内制度は従業員へのメッセージになるという点も重要です。何に対して賃金を払うのかということや、どんな事柄に対して評価を行い高い賃金を払うのかということが、会社が社員に何を求めているのかという宣言になります。評価制度と連動させて社員の納得感を醸成しつつ、事業に必要な能力の発揮と成長を求めるように制度を設計しましょう。

見直しや改正で注意すべきこと

制度改正を行う場合に、他社がすでに導入しているものを参考にすることがあります。そのこと自体は悪くないのですが、真似をしすぎないように注意しましょう。上位の戦略に連動した制度にすべきですが、その戦略とはもちろん自社のものです。自社の現状や課題をしっかりと認識して、適切な職務の設計とあわせて考えましょう。

また、今がどうであるかを考えながらも未来のシミュレーションも必要です。あるいていど設計ができた段階で、その内容で運用したら今後どうなるのかを、短期的に、そして中長期的にも考えてみます。固定給部分も成果に連動した変動部分も、あるいはその他の手当てなども、すべて事業の発展に資するものでなくてはいけません。一人ひとりの働きに見合った報酬によって、社員のモチベーションが上がり、人材育成につながるように制度を考えるようにしましょう。

新たな給与制度を導入する手順

給与制度の見直しをすることに決め、その際に注意すべきことが分かったら、実際の導入までにどのようなプロセスを経れば良いのかを考えます。適切な手順をとることで、制度改正の効果が最大限となるようにしていきます。

新しい給与制度を検討する組織

給与制度の見直しを始める際に、担当するチームを組織します。規模の小さな会社であれば経営者が1人で設計することもありますが、従業員の納得感を得て導入を進めるためには、やはりあるいていど開かれた場が必要です。専門の委員会という形でも良いですし、幹部社員や従業員代表を集めて事前に検討会を開くのも有効です。

報酬を発生させる対象を定める

自社が従業員の何に対して報酬を発生させるのか、そのことを基本コンセプトとして最初に定めます。経営者が社員にどんなことをしてほしいと考えているのか、社員のあるべき姿とはどのようなものなのか、企業理念に沿ってはっきりと決めていきます。

もちろん普通は仕事そのものに報酬を発生させますが、家族手当などのように直接的には仕事に関係ない事柄に賃金を設定することも珍しくありません。また、業績や成果に比例させる賃金設定もあり、報酬を設定する事柄は経営者が大事だと考えている事柄です。したがって、給与制度の構築においては最上位に来る概念として考えてください。

固定給に変動部分を組み合わせる

何に対して給与を発生させるのかを定めたら、固定部分と変動部分との組み合わせを考えます。基本的に固定給となる要素は社員の安定した生活につながります。安心してその会社で働けるという気持ちにさせる部分であるということを意識して設定しましょう。

変動部分は能力評価の結果や、業績の良し悪しによって加算される要素となります。もっと頑張ろうと考える社員のモチベーションの源泉になる部分です。また、賞与・ボーナスのように会社の業績に連動する要素は、財務状況に対して調整弁の役割も果たします。安心の元となる固定給に、うまく変動部分を組み合わせることを目指しましょう。

能力主義や成果主義を採用する場合、これを固定部分に入れるのか変動部分に入れるのかが検討課題になります。それぞれ、社員に安心して働いてもらうための要素とするのか、あるいは、より高いモチベーションを引き出すために使うのかということが判断基準になりますので、自社の理念に沿って考えます。能力や成果は必ずしも一定ではないので、固定部分に入れた場合には高コスト化の懸念もあります。

等級ぎめの基準軸を決める

給与制度の中で、縦軸と横軸を使った賃金テーブルを用いることがあります。例えば縦軸に勤続年数を、横軸に職能による階層を配置し、それぞれの該当する値が交差する座標で基本給が決まるように表を作成しておくのです。このときの縦軸または横軸は給与の等級を決めるための基本軸となるもので、社員に対しては何を目安に働けば収入を増やしていけるかというメッセージになります。したがって、非常に重要なものとしてこれを決める必要があります。

また、成果や業績によって変動する賃金についても、どのような基準で金額の高低をつけるのかという軸を決めなければいけません。個人の売上高によるのか、部署や部門の成果に連動させるのか、あるいはそれらの複数を組み合わせるのか、自社に相応しい軸は何があるのか見落としの無いように考えましょう。

基準を定めて階層を明確にする

決定した基準に対して、どのようなレベルで階層を切っていくのかを考えるのが次の段階です。勤続年数であれば1年ごとなのか2年ごとなのかという期間を考えます。また、職能給を軸とするなら資格や技能レベルなどで金額の高低差を設けていく作業です。

ここで設定していく階層は昇給の目安であり、従業員が成長していくステップを表現するものにもなります。したがって、人材育成の面で考えれば、キャリアの未来を示すものだと考えることも出来ます。目標を定めて高いモチベーションで仕事をするようにするために、どのくらいの幅で階層を切っていくのが適切なのか丁寧に検討しましょう。

賃金改定を社員へ周知

給与制度の内容が固まったら、導入までの間にしっかりと社内に周知する期間を設けます。いつの間にか新しい制度が始まっていたということがないように、いつからどのような制度が導入されるのかを明示しなければなりません。

給与制度がうまく機能するための条件の1つには社員が納得していることが挙げられます。納得するためにはまず知らなくてはいけませんから、周知のための手段や期間も重要です。社員向けの資料を作成して配布したり、説明会を開いたりしてスムーズな制度導入を目指しましょう。

まとめ

  • 給与制度も他の人事制度と同様に、自社の事業戦略を実現するためにあります。したがって、自社が置かれた状況や環境にあわせて設計し、導入していくことを考えなくてはいけません。
  • 必要があって見直しを図る場合には導入までの適切な手順があります。新しい制度がうまく機能するために注意点や手順にも気をつけて考えていくのが良いでしょう。

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