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2018年7月26日(木)更新

ノーワーク・ノーペイ

「ノーワーク・ノーペイ」とは、“労働者の労務提供がなければ会社は賃金を支払わなくてよい”という原則のことです。労働者が1時間の遅刻をした場合、この1時間については賃金請求権は発生しません。早退や欠勤、就業時間途中の私用外出についても同様です。ここでは、この「ノーワーク・ノーペイの原則」について、主に月給者の場合を想定して説明します。

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ノーワーク・ノーペイの原則とは

労働なくして賃金なし。これが「ノーワーク・ノーペイの原則」です。労働者が働いていない時間については労働者の賃金請求権は発生せず、会社は賃金を支払わなくてよい、という意味です。

9:00始業の会社に10:00に出社すれば1時間の遅刻ですが、この1時間分については給与からマイナスすることができます。なぜなら、この1時間は、労働者が働いていない時間だからです。また18:00終業の会社で体調不良などの理由により15:00に早退したときも、15:00~18:00の「働かなかった時間」に対しては、給料を支払う義務はありません。

遅刻や早退だけではなく、私用外出や欠勤などの場合も同様です。そしてこうした場合の“ノーペイ”は、労働基準法違反(24条の全額払いの原則違反)とはなりません。

しかし、この「ノーワーク・ノーペイの原則」は、法律で決められた義務ではありません。絶対に“ノーペイ”にしなければならないという決まりもないのです。ですから遅刻や早退をした場合でも、不就労分の給与の一部または全部を支払うことは任意です。

さて、法定の義務ではない「ノーワーク・ノーペイ」ですが、この原則の根拠はどこにあるのでしょうか?

賃金の請求権

労働契約(雇用契約)とは、労働者の労務提供に対し、会社が賃金を支払うという双務契約です。労働者は「働くという債務と賃金を受けるという債権」を、会社は「労務提供を受けるという債権と賃金を支払うという債務」を持ち合っているのです。

民法の条文をみてみましょう。民法623条では「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」としています。(ちなみに、労働契約法6条にも「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」という条文があります。)

さて、「ノーワーク・ノーペイ」に関係してくるのは、続く624条です。

民法624条は、「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない」としています。

他の双務契約、例えば売買契約などの場合は、買う側が代金を支払わない場合は、売る側は商品の引き渡しを拒むことができます。つまり代金の支払いと商品の引き渡しは、特約がない限り同時に行われるべき前提があります。

しかし労働契約については、労働者の労務提供が終わった後でなければ賃金の支払いを受けることができない、つまり労働者の賃金請求は後払いされているのです。

この民法624条の「労働が終わった後でなければ賃金請求ができない=支払いが受けられない」ということが、「ノーワーク・ノーペイの原則」の根拠と言われています。

【参考】電子政府 e-Gov/民法

ノーワーク・ノーペイの適用例

次に、ノーワーク・ノーペイの原則が、労務の現場でどのように適用されているかをみていきましょう。

不就労時間分の賃金控除

労働者は所定労働時間中は働かなければならないはずですが、諸般の事情でそれができないこともあります。本人の体調不良、あるいは寝坊、家族の急な入院など、理由は様々でしょう。

契約上働くことになっている時間に、労働者側の都合で労務提供がなされなければ、ノーワーク・ノーペイの原則が適用され、その不就労時間については賃金カットをすることができます。

遅刻の場合

労働者が始業時刻に遅刻した場合は、ノーワーク・ノーペイの原則により、遅刻した時間分の賃金を控除することができます。

この控除は、原則として「分単位」で行うべきものです。ですから始業時刻が9:00の会社の場合、9:43に出社したら、43分ぶんの賃金控除をすることになります。しかし現実には、給与計算処理を円滑にするために「10分単位」「15分単位」で計算処理をしている会社も多いでしょう。

尚、遅刻の原因が公共交通機関の遅延であるときは、ノーワーク・ノーペイの原則を当てはめず、遅刻をしなかったものとして扱う会社もあります。こうした扱いをする場合は、遅延証明書を提示させるなど就業規則等でルールを定めておくとトラブルが少なくなります。

早退の場合

労働者の都合で早退する場合も、早退により不就労となった時間分の賃金を控除することができます。分単位の処理が原則であることは、遅刻の場合と同様です。

欠勤の場合

労働者が自分の都合で欠勤した場合も、ノーワーク・ノーペイの原則により、就労しなかった日分の賃金を支払う必要はありません。

次は、遅刻や欠勤があった場合に、具体的にどのような計算をして賃金控除をするのかみていきましょう。

欠勤控除額などの計算方法

不就労時間に対応する賃金の計算方法について、労働基準法は何も定めていません。

割増賃金の計算方法については、計算式や除外可能な手当などが法律で定められているのに対し、欠勤や遅刻などの際の賃金控除については、こうした定めはありません。

計算基礎となる賃金

ノーワーク・ノーペイの原則に基づく賃金控除は、通常支払われるはずの賃金から不就労分をマイナスするものです。ですから基本的には、労働契約上、固定的に支払われる賃金が計算基礎となり、臨時の手当は控除計算式に入れません。

賃金控除の計算式

一般的に用いられている控除計算式をご紹介します。

賃金控除額=(基本給+諸手当)/1ヶ月平均所定労働時間×遅刻や早退などの不就労時間

欠勤の場合は、次のように、時間でなく「日」を単位とする計算式を使う会社もあります。

賃金控除額=(基本給+諸手当)/1ヶ月平均所定労働日数×欠勤をした日数

尚、「1ヶ月平均所定労働時間」「1ヶ月平均所定労働日」を「その月の所定労働時間」「その月の所定労働日数」とする会社もあり、どちらを使用しても違法にはなりません。

さて、上の式内にある「諸手当」とは、どの範囲を指すのでしょうか?

計算基礎に算入できる手当

役職手当、職務手当、家族手当、住宅手当、通勤手当等々、手当には様々なものがありますが、こうした固定的な手当について「算入しなければならない手当」や「除外しなければならない手当」は法定されていません。

ですから次のような方法が考えられ、どれを採用しても合法です。

  1. (諸手当がある会社であっても)基本給のみを控除対象とし、他の手当は満額支給する
  2. 「基本給+諸手当」を全て控除対象とする
  3. 「基本給+諸手当の一部」を控除対象とする

控除時に注意すべき手当

次に、賃金の控除計算の際によく話題となる手当について、いくつか説明します。

【固定残業代について】

通常の時間外労働や深夜労働に対する割増賃金(残業等の手当)は、毎月必ず支払われる契約の手当ではないため、賃金控除を行う月にこれらの割増賃金が発生していても控除計算式には算入しません。割増賃金は既になされた時間外労働や休日労働に対し、労働基準法37条の定め(割増賃金支払義務)に基づいて支払うものであるため、ノーワーク・ノーペイの原則による控除の対象となる性質のものではありません。

では、固定残業代はどうなるのでしょうか?

固定残業代は定額の手当なので控除計算式に算入させたくなりますが、その性質は時間外労働手当や休日労働手当ですから、理論上、控除計算式から除外すべきものです。しかし、固定残業代を控除計算式に算入しても違法となるわけではありません。ただしこの場合は、その旨を就業規則に明記しておく必要があります。尚、固定残業代を控除計算式に入れた場合、控除後の固定残業代が実際に残業した分の手当額に満たないときは、当然ですが差額を支払う義務があります。

【通勤手当について】

欠勤の場合は“通勤”自体が発生していないため、通勤手当を控除対象とすることができます。通勤手当を控除対象とする場合は、基本給や他の手当と同じ計算式に算入して控除を行わず、通勤手当単体で控除計算をします。なぜなら、通勤手当は非課税であることが多いため、課税される基本給などと一緒にして計算してしまうと、所得税の計算が不正確になるからです。

尚、「通勤定期を既に買ってしまっているから」という理由で、通勤手当は控除を行わない会社も見られます。控除対象とするか否かは、会社の自由です。

端数処理

遅刻や欠勤などのノーワーク分を控除するときの端数処理についても、法令上の決まりはありません。円未満の端数を四捨五入している会社もありますし、切り捨てている会社もあります。

ただしリスク管理的に見ると、控除分は切り捨て処理をした方が、就労分が完全に支払われるという意味で、万全であると言えます。

尚、割増賃金の計算では、1ヶ月分の時間外労働等の合計時間について1時間未満を四捨五入する扱いが認められていますが、これを遅刻などの控除に当てはめることができるか否かについては、賛否が分かれています。

しかし時間外労働などの時間に比べ、遅刻や早退の時間は1ヶ月分を合計してもそれほど多くはならないため、1時間未満の端数処理を行う必要はないとも考えられます。

賃金控除額の上限について

遅刻、早退、欠勤などの賃金控除について、控除額の上限はありません。

欠勤控除の場合、使用する計算式によっては、支給額より控除額の方が多くなってしまうことがありますが、こうした場合は支給額をゼロとします。賃金の総支給額にマイナスは発生しません。(ただし、ゼロ円である総支給額から社会保険料などを控除するため、最終的な差引支給額はマイナスになります。)

尚、欠勤が長期に及ぶ場合は、賃金から不就労分を控除せず、出勤分の賃金を支払うという扱いをする会社も多くみられます。

懲戒としての減給の場合

さて、労働者の都合による遅刻や早退があまりにも多い場合は、懲戒処分をされることがあります。

懲戒処分の一つに「減給」があります。給与が減額されるという意味で、「ノーワーク・ノーペイの原則」と似ていますが、減給については上限があります。

減給の制裁の上限は「1回の額が平均賃金の1日分の半額」、「総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1」とされています。(労働基準法91条)」

1回の懲戒事由については、平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、複数の懲戒事由があったときでも、その合計額は1ヶ月の賃金の10分の1を超えてはならないという意味です。

【関連】減給とは?減給が可能なケースや制裁の制限額、注意点を解説 / BizHint HR

ノーワーク・ノーペイの控除と減給の制裁

注意していただきたいことは、この減給の制裁とノーワーク・ノーペイの原則による賃金控除は、別のものだということです。

ノーワーク・ノーペイの原則による控除は、懲戒としてするものではありません。単純に、就労しなかった分をドライに差し引くだけのことです。

ただし、ノーワーク・ノーペイの控除が、本来差し引くべき額を超えてしまった場合は、超過分は減給の制裁とみなされ、労働基準法91条の上限(1回分が平均賃金の半額、数回分でも1ヶ月の賃金の1/10を超えてはならない)が適用されることになります。(昭和63.3.14基発150号)

適用時の注意点

次に、賃金控除をする場合の注意点をみていきます。

就業規則の規定

賃金の控除を行う場合は、どのような場合に、どのような方法で控除するのかを、就業規則に明記しておくことが必要です。

賃金に関する事項は重要な労働条件ですから、計算式まではっきりと記載しておいた方がよいでしょう。

尚、労働者数が少数である等の理由でまだ就業規則を作成していない場合でも、労働契約書などに「遅刻や欠勤の場合には賃金の控除を行うこと」及び「控除の計算方法」を明記しておいた方がトラブルになりません。

【関連】就業規則とは?作成~届出までの手順・ポイントをご紹介 / BizHint HR

ノーワーク・ノーペイの原則の例外とは

ノーワーク・ノーペイの原則は、「就労がなかったら、賃金もない」でした。しかし「就労がなかった」原因によっては、「ノーペイ」にならないことがあります。

最初の方で説明したとおり、労働契約とは労働者と会社との双務契約です。労働者は労務の提供という債務と賃金の受領という債権をもち、会社は労務の受領という債権と賃金の支払いという債務を持っています。

この契約当事者のどちらの責任によって「就労がない」結果が生じたかにより、「ノーペイ」になるか否かが異なります。

会社都合による休業・自宅待機

就労がなかった原因が会社側にある場合は、完全なノーペイにはなりません。

民法536条2項では「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」としています。

工場の機械が故障して、労働者を休ませた場合を思い浮かべてください。この場合、労働者側は就労ができるのに、会社側の都合で働くことができないという状況になります。これを民法536条2項に当てはめると、「(労務の提供を受ける債権をもつ)会社に責任がある事由によって、労働者が労務の提供という債務を履行できない」ことになります。

そしてその場合は、「労働者は反対給付(=賃金)を受ける権利を失わない」わけです。ですから、こうしたときは、「ノーワーク」ではありますが「ノーペイ」とはならないのです。

休業期間中の補償手当

このように、不就労の原因が会社の責任である場合は、民法の原則では、労働者側は賃金の全額を請求できることになっています。

しかしこの権利の実現には裁判等の手続きを要するため、労働者側はそこまでして賃金請求をしようと考えないことも想定されます。休業の責任が労働者側にないというのに、これでは労働者の保護には不十分です。

そこで民法の特別法である労働基準法では、その26条で「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とし、会社側に休業手当支払の義務を課しています。

では、休業の責任が労働者側にない場合は、どのようなときでも休業手当が支払われるのでしょうか?

不可抗力による休業の場合

巨大地震で会社の社屋が倒壊して業務を行うことができない場合など、不就労の状況が発生することがあります。これは不可抗力によるものであり、会社の責任でも労働者の責任でもありません。

こうした不可抗力による休業は、使用者の責に帰すべきものではないため、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されることになります。

東日本大震災のときにも、厚生労働省はノーワーク・ノーペイの原則の適用を認める扱いをしていました。

【参考】地震に伴う休業に関する取扱いについて

有給休暇の取得

「就労がないのに賃金が受領できる」という意味では、有給の休暇も、ノーワーク・ノーペイの例外ということができます。

年次有給休暇とは

「有給の休暇」の代表的なものに、年次有給休暇があります。年次有給休暇とは、一定期間継続して勤務した労働者に与えられる休暇のことです。

労働基準法39条では、「6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」とし、会社に対し、継続勤務した労働者に一定の有給休暇を付与する義務を課しています。

年次有給休暇の他にも、労働基準法や育児介護休業法にはいくつもの休暇が設定されていますが、年次有給休暇以外の休暇は、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されるものです。

【関連】有給休暇とは?付与日数や義務化への改正情報、買取りについてなど詳しく解説 / BizHint HR

法定休暇取得の場合

年次有給休暇以外の法定休暇について、順にみていきましょう。

  • 産前産後休業
    産前6週間から休業を請求でき、産後の休業は原則として8週間とされています。
  • 育児休業
    原則として、労働者が養育する子が1歳に達するまで休業することができます。
  • 介護休業
    家族の介護をする労働者が介護を行う場合に、その対象家族1人につき通算93日まで休業することができます。
  • 子の看護休暇
    小学校入学前の子を養育する労働者が、原則として1年度に5日、子の看護を行うための休業を取得することができます。

こうした休暇には、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。法定の休暇ではありますが、法律が認めているのはあくまでも「休む権利」であり、賃金を受ける権利については言及されていません。

そして多くの会社で、就業規則に「無給とする」旨が明記され、ノーワーク・ノーペイの原則を当てはめています。ただし会社が任意で有給とすることは差し支えなく、賃金の一部を有給とする会社も見られます。

他にも、公民権行使の時間(労働基準法7条)、育児時間(労働基準法67条)、生理休暇(労働基準法68条)など、労働者がその労働から離れる権利が保障されていますが、これらもノーワーク・ノーペイの原則を適用することができます。

法定外休暇取得の場合

法定された休暇ではなく、会社が任意で設定する休暇もあります。いわゆる慶弔休暇というもので、親族の葬儀、結婚、配偶者の出産、会社の創立記念日などで、通常は有給の休暇とされます。

こうした休暇もノーワーク・ノーペイの原則の例外であり、労務の提供をしなくても賃金を受領することができます。

尚、公民権行使の時間とは別に「裁判員休暇」を設定している会社もありますが、有給とするか無給とするかは会社が任意で決めることになります。有給の扱いをする会社も少なからずみられますが、無給としても違法ではありません。

【関連】特別休暇とは?休暇の種類、有給休暇との違いなど解説 / BizHint HR

まとめ

  • ノーワーク・ノーペイの原則とは、労働者が就労しない時間については、労働者の賃金請求権も発生せず、会社は賃金支払をしなくてよいというものです。
  • ノーワーク・ノーペイの原則は法律で強制されているものではなく、労働者の就労がない場合でも会社が賃金を支払うことは自由です。
  • 不就労分の具体的な賃金控除の方法は、会社が任意に決定することができます。
  • 会社に責任のある休業については、ノーワークでもノーペイとはならず、会社は労働基準法26条の休業手当を支払う義務があります。
  • 天災事変など不可抗力による休業の場合は、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。

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