はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2019年1月9日(水)更新

賞与

日本では多くの会社が毎月の給与とは別に支給する一時金制度を持っています。この一時金制度の名称は会社によって賞与、夏季手当、年末手当、俸給など様々ですが、今回はこの一時金制度「賞与」の特徴や留意点、計算方法などについて解説します。

賞与 に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

賞与とは

賞与は会社の賃金制度を構成する重要な要素のひとつですが、毎月支払われる賃金とは異なる性質を持ちます。賞与の定義や賃金との違いについて以下に記載します。

賞与の定義

賞与に関する労働基準法上の定めはありませんが、同法制定にあたり発行された通達において次のように定義されています。

《労働基準法の施行に関する件 法第24条関係》
賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであつて、その支給額が予め確定されてゐないものを云ふこと。定期的に支給され、且その支給額が確定してゐるものは、名称の如何にかゝはらず、これを賞与とはみなさないこと。
【引用】法令等データベースサービス-通知検索第5編 労働基準 第1章 労働基準 労働基準法

従って、事前に支給が確定せず、労働者一人ひとりの勤務成績の評価結果に基づき支払われるものは賞与、夏季手当、冬季手当、決算手当、ボーナスなど如何なる名称であっても労働基準法上は賞与とされます。

厚生年金保険法、健康保険法においては、賃金、給料、俸給、手当、賞与などの名称の如何を問わず、労働者が労働の対償として受け取るもののうち、毎月支払われる賃金とは別に3ヵ月を超える期間ごとに支払われるものは賞与とされます。なお、年4回以上支給されるものや結婚祝金など慶弔手当は賞与とはされません。

《厚生年金保険法第3条第1項第4号》(用語の定義)
賞与 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。
【引用】電子申請の総合窓口e-Gov/厚生年金保険法

《健康保険法第3条第6項》(定義)
この法律において「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。
【引用】電子申請の総合窓口e-Gov/健康保険法

所得税法においては、毎月の給与とは別に支払われる賞与、ボーナス、夏季手当、年末手当、期末手当などの名称で支給されるものを賞与と定義しています。

社会保険の手続き上は支給回数、税法上は社会保険より広い範囲で給付の名称や性質により賞与に該当するか否かが判定されることとなります。

【参考】国税庁/No.2523 賞与に対する源泉徴収

賃金との違い

賃金は、労働基準法第24条において労働者の労働の対償として使用者の支払義務が定められており、その支払いは同条に定められる賃金支払五原則(通貨払い、直接払い、全額払い、毎月1回以上払い、一定期日払い)に則って企業は支払わなければならないとされています。

一方賞与には支給義務や支給方法に関する労働基準法その他関連法令上の特段の定めはありません。賞与は会社が支給制度を設ける、あるいは慣例として支給実態がある場合は就業規則や労働契約書への記載が求められるものであって、明記されたことで初めてその支給義務が問われることとなります。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/労働基準法第24条(賃金の支払)

決算賞与とは

賞与は一般的には夏と冬の年二回に支給される制度が多いと思われますが、これらに加えて会社の事業年度の年度末の前後に支給される賞与を決算賞与と言います。

決算賞与は会社の業績に左右されるため、年度末近くにならないと実際に支給できるかどうかわかりません。

役員の賞与

会社の取締役や監査役などの役員に対して定期で一定の額で支払われるものを役員報酬といいます。役員報酬以外に臨時で支払われるもののうち、退職慰労金以外のものが役員賞与とされます。

役員賞与は金銭的な報酬に限定されません。例えば、会社が保有する資産を贈与する、あるいは相場より安い賃料で役員に提供する、会社からの借入金などの債務を免除することなどは経済的な利益供与とみなされ、その利益供与の対価が臨時の報酬と位置付けられ賞与として扱われます。

【参考】国税庁/No.5202役員に対する経済的利益

役員とは

会社法上の役員とは取締役、執行役、監査役などを指します。しかし、法人税法上の役員の範囲は会社法上の役員の範囲より広く、取締役ではない者も一定の要件を満たした場合みなし役員として税法上の役員として扱われます。みなし役員とは、以下のよう者を言います。

  • 取締役ではない会長、顧問などの名称の如何を問わず、会社の使用人以外の者で会社の経営に従事している者。
  • 同族会社の使用人で特定の株主等に該当し、かつ会社の経営に従事している者。

会社の使用人としての業務に対して臨時で賞与を支給する場合において、支給対象の労働者が税法上の役員の範囲に該当した場合は、支給した賞与の額は会社の経費とみなされないことに留意が必要です。

【参考】国税庁/No.5200 役員の範囲
【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/会社法第329条(選任)

税金の取扱い

定期同額のルールに則って支払われる役員報酬と、臨時で支払われる役員賞与とでは税金の取扱いが異なります。

役員報酬は役員が会社のために職務の執行にあたったことに対する報酬であり、会社の費用として認めら課税対象には含まれません。一方、役員賞与は会社の業績結果に対する役員の貢献に対して支払われる報酬であり、会社が獲得した利益の処分とみなされ、その金額は課税対象となります。

つまり、役員賞与と認定された金額には原則法人税、所得税などの課税関係が生じることとなり、役員賞与を支払う際には注意が必要です。

【参考】国税庁/No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)
【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/法人税法第39条第1項(役員給与の損金不算入)

賞与を支給する際の手続き

賞与の支給を決定した場合の社内規則や雇用契約書の整備、監督官庁への届出などの一連の手続きについて以下に説明します。

就業規則への明記

就業規則は、労働者の賃金や労働時間などの労働条件、労働者が順守すべき服務規定を記載した職場におけるルールブックです。常時10人以上の労働者を使用している会社は、就業規則を作成し過半数組合または労働者の過半数代表者からの意見書を添付し所轄労働基準監督署へ届出することが必要です。加えて届け出た就業規則を労働者に周知することが求められます。

就業規則は労使双方が就業規則のルールを守ることで無用のトラブルを防ぎ、労働者が安心して働くことができる環境を保持する役割を担っています。労働基準法その他関連諸法令において賞与の支払義務に関する定めはありませんが、会社が賞与の支給を決定した場合の支給基準などと就業規則の関係について以下に整理します。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/労働基準法第89条、90条

相対的必要記載事項

就業規則には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、会社が職場で定めをする場合に記載しなければならない事項 (相対的必要記載事項)があります。賞与支給に関する事項は、労働基準法における臨時の賃金等とされ、定めをした場合に記載が必要な相対的記載事項となります。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/労働基準法第89条

記載が必要な項目

相対的記載事項である賞与支給に関する就業規則への記載内容に関しては、法令上詳細な決まりはありません。ただし、臨時的な賃金とされる賞与は一般的に会社の業績の良し悪しに影響を受けるため、賞与制度を設ける場合は労働者とのトラブルを避けるためにも支給基準、支給時期、支給対象者などをあらかじめ定めておくことが望まれます。

賞与に関する就業規則への記載は厚生労働省が公開しているモデル就業規則の規定を参考にすることができます。

【出典】厚生労働省/モデル就業規則について

なお、賞与の支給基準や支給時期などは、業態、企業規模といった会社の個別の事情によって異なります。モデル就業規則を参考に、自社の実態に則した規定づくりを心掛けることが肝要です。

  • 支給基準
    会社の業績と支給の関係、支給にかかる査定基準、対象期間や対象期間内の出勤率などを記載します。
  • 支給時期
    6月、12月の末日など具体的な日時を設けるか、あるいは夏季、冬季の会社が決定した日などおおまかな支給時期とするかなどについて記載します。
  • 支給対象者
    賞与の支給対象の範囲、支給日在籍基準などを記載ます。なお、支給日在籍基準を設ける場合は、決算賞与の支給に関して税法上費用として認められない可能性があることに留意が必要です。

労働契約書への明記

労働者と労働契約を結ぶ際には、労働基準法第15条において賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定められています。さらに明示事項のうち労働契約の期間、賃金の決定や賃金の計算方法、退職に関する事項などは絶対的明示事項として書面で明示し労働者に交付することが必要とされています。賞与に関する労働契約書への明示について以下に記載します。

賞与支給の有無

会社が賞与制度を設けている場合は、制度を定めた場合に明示が必要となる相対的明示事項のため、労働契約締結時に明示が必要ですが、書面での交付までは求められていません。ただし、労働条件を巡るトラブルを防止するといった観点から、書面により明示することが望ましいと考えられます。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/労働基準法第15条
【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/労働基準法施行規則第5条

パート労働者への明記方法

パートタイマーなどの短時間労働者の場合は、パートタイム労働法において、書面の交付により賞与制度の有無を明示することが義務付けられています。

【参考】短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則(平成五年労働省令第三 十四号)

賞与引当金の計上

引当金とは、将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつその金額を合理的に見積ることができる場合に、将来の支出に備えるために貸借対照表の負債の部(又は資産の部にマイナス)に計上する勘定科目のことをいいます。当期の負担に属する金額については、当期の費用又は損失として引当金に繰り入れなければならないとされています。

賞与は、就業規則に基づき当期末以前の労働の対償として支給額を見積もることが可能で、その支払いもほぼ確定している資金です。このことから翌期に支給される賞与のうち、当期の負担となる部分を見積もり賞与引当金へ費用計上することが求められます。

例えば、決算が3月末、賞与支給月が6月(支給対象期間は10月~3月)と12月(4月~9月)の場合、当期3月末の決算時点でその3ヶ月後の6月に支給される賞与のうち、10月〜3月分は、就業規則などに基づき支給予定日以前の事象を対象に合理的に金額を見積もることが可能であり、費用計上が必要です。

【参考】企業会計基準委員会/「中小企業の会計に関する指針」

損金算入は可能か

税務上賞与引当金の繰入額は費用として認められず、損金計上はできません。なお、前期に費用計上し税務上否認された引当金繰入額は、当期税務上認容され損金算入されます。

【参考】国税庁/No.5350 使用人賞与の損金算入時期

決算賞与の損金算入

決算賞与は会計上未払賞与へ費用計上することになりますが、会社が対象となる事業年度において、決算賞与を労働の対償として労働者に支給するとした場合であっても、以下の要件を満たさなければ、税務上当該年度に損金算入が認められる賞与とみなされないことに注意が必要です。

  • 決算賞与の対象となる事業年度終了の日までに、会社の支給対象となるすべての労働者に対して個別に通知を行っている。
  • 当該事業年度末まで、あるいは当該事業年度終了日から1か月以内に全額支払っている。
  • 労働者に通知した金額の総額を当該事業年度内に損金として経理処理を行っている。

【参考】国税庁/No.5350使用人賞与の損金算入時期

賞与支払届の提出

労働者や役員に賞与の支給を行った場合、健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料と同率で計算された保険料を納付しなければなりません。賞与支払届に基づき標準賞与額が決定され、賞与支給額に対する保険料額が算出されます。

【参考】日本年金機構/従業員に賞与を支給したときの手続き

提出書類

会社が被保険者へ賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」に「賞与支払届総括表」を添付して所轄の年金事務所または事務センターに支給額などを届出します。

賞与の支給がなかった場合

賞与の支給がない場合は、不支給の表示がされた賞与支払届総括表のみ年金事務所へ提出することとなります。

賞与の計算方法

労働者一人ひとりの賞与支給額の計算について以下記載します。

賞与支給原資

賞与の計算方法は、支給原資を決定した上で労働者個別の支給額を計算することとなります。支給原資の全部または一部を決定する方法は、会社の業績を考慮し売上高や粗利益、営業利益、経常利益などに連動させる方法が一般的といえます。

労働者個別の賞与支給額計算

算出された支給原資に基づき労働者個々人への分配額を算定します。労働者個別の賞与の支給額計算の方法には様々なものがありますが、計算対象期間中の労働者一人ひとりの勤務成績を公正に評価し、その評価結果を支給額に反映させることが重要です。

賞与支給額と手取り額

算出された労働者個別の支給額は、労働者の手取り額とは異なります。労働者個別の支給額から社会保険料、雇用保険料、源泉徴収税を控除したものが労働者の実際の手取り額となります。

賞与の手取り額=賞与総支給額-社会保険料-源泉徴収税

賞与における社会保険料の算出方法

算出された労働者個別の支給額をもとに法令に則って健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の算出をします。労働者が受けた賞与支給額の千円未満を切り捨てた額を標準賞与額といい、毎月の賃金と同率の保険料を納めます。保険料支払いの対象となる賞与額に含まれるものは以下の2種類となります。

  • 通貨支払によるもの
    賞与、ボーナス、期末手当、決算手当、俸給など如何なる名称であったとしても労働者が労働の対償として受け取るすべてのもののうち3か月を超える期間ごとに受け取るものをいいます。
  • 現物支給によるもの
    自社製品などの通貨以外で支給されるものであり、価額はその地方の時価によって厚生労働大臣が定める価額を以って保険料の対象となる賞与額とされます。

標準賞与額に労働者が加入する保険制度および保険者ごとに定める料率を乗じて計算された健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料を労使折半し労働者負担分を総支給額から控除します。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/健康保険法第3条第5、6項(定義) 第45条(標準賞与額の決定) 第46条(現物給与の価額)第156(被保険者の保険料額)167条 (保険料の源泉控除)
【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/厚生年金保険法第3条第3、5項(用語の定義) 第24条の4(標準賞与額の決定) 第25条(現物給与の価額)第81条(保険料)第82(保険料の負担及び納付義務)第84条 (保険料の源泉控除)

健康保険・介護保険の場合

健康保険・介護保険の保険料は次の算式で計算されます。ただし、介護保険料の納付は40歳以上65歳未満の介護保険第2号被保険者であり、65歳以上39歳以下の労働者は介護保険料の納付は必要ありません。

健康保険料・介護保険料=標準賞与額(千円未満切り捨て)×健康保険・介護保険料率

健康保険・介護保険の標準賞与は年度(4月1日から翌年3月31日まで)で573万円を上限額とします。従って、年度で573万円を超えて賞与支給があった場合は、超えた額に関しての保険料納付は必要ありません。

健康保険・介護保険の賞与に乗じられる保険料率は、加入する全国健康保険協会、組合健保、共済組合など被用者保険ごとに異なり毎年改定される点に注意が必要です。全国健康保険協会の場合は都道府県ごとにも保険料率が異なり併せて注意が必要です。

また、退職時に支給される賞与の支払いに関しては保険料の徴収に注意が必要です。例えば、6月10日に賞与支給、同日退職した場合は、被保険者資格の喪失月が6月となり賞与から保険料控除をしないことに留意が必要です。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/健康保険法第45条(標準賞与額の決定)
【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/健康保険法第156(被保険者の保険料額)

厚生年金保険料の場合

厚生年金の保険料は次の算式で計算されます。

厚生年金保険料=標準賞与額(千円未満切り捨て)×厚生年金保険料率

標準賞与は1か月150万円を上限額とします。健康保険とは異なり年度ごとではなく1か月単位で上限額を判定します。厚生年金の標準賞与に乗じる保険料率は1000分の183、労使折半で労働者負担分は1000分の91.5(平成29年9月以降)です。

また、退職時に支給される賞与の支払いに関しては、健康保険同様の取扱いとなり保険料の徴収に注意が必要です。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/厚生年金保険法第24条の4(標準賞与額の決定) 第81条(保険料)第82(保険料の負担及び納付義務)第84条 (保険料の源泉控除)
【参考】厚生労働省/厚生年金保険料率の引上げが終了します

賞与における雇用保険料の算出方法

賞与から控除する雇用保険料の額は、賞与支給額に業種の区分に応じた保険料率を乗じて算出します。保険料計算の対象となる賞与額は支給総額です。

雇用保険料=賞与支給総額×雇用保険料率

【参考】雇用保険に関する業務取扱要領(平成29年10月1日以降)雇用保険給付関係(一般求職者に対する求職者給付)第5
【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/労働保険の保険料の徴収等に関する法律第31条 (労働保険料の負担) 第32条 (賃金からの控除)
【参考】厚生労働省/平成29年度の雇用保険料率

注意点

雇用保険料の算出に当たり労働者の賞与から控除できる保険料はあくまでも雇用保険料の被保険者負担分です。労災保険は全額事業主負担となることに留意が必要です。

また、平成29年1月より65歳以上の労働者についても雇用保険の被保険者とされることとなりました。ただし、平成31年年度までは雇用保険の納付は免除されるため、免除対象者の賞与から保険料を控除しないように注意が必要です。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/労働保険の保険料の徴収等に関する法律第31条 (労働保険料の負担) 第32条 (賃金からの控除)
【参考】【重要】雇用保険の適用拡大等について~ 平成29年1月1日より65歳以上の方も雇用保険の適用対象となります ~

賞与における源泉徴収税の算出方法

賞与は所得税の課税対象であり、会社は労働者の賞与支給額から所得税を控除します。賞与に対する所得税額を算出する準備、手順について以下に記載します。

計算に必要となる書類

賞与に対する所得税額を算出する税率を確認するために以下の書類を準備します。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

扶養控除等申告書が労働者より提出されている場合は、この申告書により扶養家族の人数を把握することができます。

【参考】国税庁/給与所得者の扶養控除等の(異動)申告

賞与に対する源泉徴収額の算出率の表

賞与にかかる所得税算出のための税率表です。この表は源泉徴収税額表(月額表)と異なり、適用する税率を求めるものであることに注意が必要です。

【参考】国税庁/平成29年分 源泉徴収税額表

前月の賃金台帳

賞与に対する源泉徴収額の算出率の表で適用する税率を求めるために、前月の給与計算の社会保険料等控除後の額を使用します。

計算の手順

賞与から控除する源泉徴収税の計算は以下の手順で行います。

1.社会保険控除後額の算出

賞与の支給総額から社会保険の合計額(健康保険料・介護保険料+厚生年金保険料+雇用保険料)を控除し社会保険控除後の額を算出します。

2.扶養親族数の確認

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書から扶養家族の人数を確認します。

3.課税対象額の算出

前月の賃金台帳を確認し、前月給与の社会保険控除後の課税対象額を確認します。

4.税率の算出

2で確認した「扶養親族数」と3で算出した「課税対象額」をもとに「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」より賞与に対する所得税率を求めます。

5.所得税額の算出

1の「社会保険控除後の賞与額」に4で求めた「賞与に対する所得税率」を乗じて賞与から源泉徴収する所得税額を算出します。

賞与の引き下げや不支給について

賞与は会社の業績の良し悪しに影響を受けるため支払ごとの賞与支給額は変動する可能性があり、会社の裁量権が認められるものと一般的には理解されています。

しかし、実際に賞与を減額、あるいは不支給とした場合、就業規則の賞与に関する記載内容や労働者の勤務成績・勤務態度・能力などの評価の合理性などの不備により会社の裁量権が否定され、賞与支払に係るトラブルに発展する可能性があります。就賞与の支払いに対する会社の裁量権を保持するために求められる要件について以下に記載します。

就業規則への記載について

賞与に関する就業規則の記載に関する留意点を以下に解説します。

賞与支給額の算定方法

定額支給額、基本給に乗じる支給月数や売上高・営業利益などに対する支給率など具体的な賞与額計算方法を明記した場合、例え業績が悪化して支給原資を捻出することが難しい場合であっても、定めた算式に基づく賞与支給額の労働者への支払い義務が生じる可能性があります。 賞与支給額の算式などを就業規則へ記載し固定化することで会社の裁量権を制限することなく、会社の業績や労働者の成績評価や出勤率など勤務状況に応じて柔軟に決めることができるようにしておくことが合理的であるとされます。

【参考】確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省/判例5.賃金5‐4賞与不払い

支給日在籍要件

賞与の請求権は、会社の機関決定を経て具体的な算定基準や算定方法が定められ、算定に必要な勤務成績査定もなされてはじめて賞与請求権が発生するとされます。従って、賞与の支給日または一定の基準日に在籍する者のみ賞与を支給するという取扱いは有効であるとされています。

なお、決算賞与も含めて支給要件として支給日在籍要件を設ける場合は、税法上の取扱いに留意することが必要です。

【参考】確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省/判例5.賃金5‐4賞与不払い

勤務成績などの査定の合理性

賞与規程に評価基準を定め評価に基づき労働者への支給額に差を設ける、あるいは不支給事由を定め当該事由に該当した労働者に賞与を不支給とすることは可能です。賞与の査定期間内の労働者の勤務成績の不良や勤務態度が悪く職場の秩序を乱したなどの合理的な評価に基づき、賞与を減額あるいは不支給にすることは許されるとされます。

ただし、合理的な理由もなく恣意的な評価により支給額を不当に低くすることは人事権の乱用とみなされ、トラブルに発展する可能性があることは言うまでもありません。

【参考】厚生労働省/労働紛争の調整事例と解説18 周知されていない就業規則を理由とする賞与の不支給

産前産後休業、育児休業取得中などの取扱い

賞与を支給するにあたり勤務評価の指標として出勤率を用いて、一定以上の出勤率を達成した者に賞与を支給すると定めることは評価基準として合理性があるとされます。

しかし、法令により育児に係る権利が守られている期間である産前産後休業や育児休業の取得をしたこと、または育児のため短時間勤務を選択したことから出勤率が低くなる場合は、この規定には問題があるといえます。

労働基準法や関連法令などで権利や利益を守る措置が施されるべき期間、その権利や利益を失わせるような賞与の基準を設けることは許されないとされます。ただし、賞与を実際に出勤していなかった育児時間、産前産後休業や育児休業の取得期間の割合に応じて減額することは許容されるとしています。

【参考】独立行政法人労働政策研究・研修機構/【賞与】賞与支給の要件と不利益取扱い

まとめ

  • 賞与は法的な支給義務はなく、会社の業績に貢献した労働者に対して功労報奨的な意義を以って支給していたものが慣習化され、現在では労働者にとって生活給として重要な位置づけを持つ制度となりました。
  • 労働者の生活を支える機能を持つ賞与の計算や支給は、法令に則って正確に行われることは当然であり、変動のある会社業績とのバランスを保って公正な評価でその配分が決定されなければなりません。
  • 賞与制度を有効に機能させるために、賞与支給における会社の裁量権を保持しつつ、労働者の生活水準の維持向上に繋げることができる制度作りを心掛けることが望まれます。

注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計170,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 事業運営のキーワードが把握できる
  • 課題解決の事例や資料が読める
  • 厳選されたニュースが毎日届く
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

賞与の関連キーワードをフォロー

をクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードフォローの使い方

ビジネス事例や製品の情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次