連載:第3回 ニュースが(ゼロから)わかる法律知識
「給与のデジタル払い」を弁護士が解説。企業と従業員のメリットデメリット
時事的なニュースを法的に読み解くとどうなるか。今回は「給与のデジタル払い」を取り上げます。企業が「○○ペイ」などの電子マネーで給与を支払うことができるように、政府による検討が進んでいると報じられています。新たな給与の支払方法が選択できるようになると、企業や従業員にとってどんな影響があるのでしょうか。法律事務所ZeLo・外国法共同事業の野村諭弁護士に聞きました。
野村 諭 弁護士・ニューヨーク州弁護士
法律事務所ZeLo・外国法共同事業、東京弁護士会所属
1997年東京大学法学部卒業、2000年弁護士登録。長島・大野・常松法律事務所、Porter, Wright, Morris & Arthur(米国)、クリフォードチャンス法律事務所を経て、2020年より法律事務所ZeLo・外国法共同事業に参画。弁護士としての主な取扱分野は、ジェネラル・コーポレート、スタートアップ支援、ファイナンス、金融関連その他の規制法対応など。論文「Fintech legislation in recent years」(『Butterworths Journal of International Banking and Financial Law』)を執筆するなど、FinTechにも精通している。
給与の支払方法は、現在は現金と振込に限られる
──企業が従業員に給与を支払うとき、現在はどのようなルールがありますか。
従業員が「働いたにもかかわらず、対価として報酬を受け取ることができない」という事態に陥らないように保護するため、労働法によって厳格な規制が設けられています。
具体的には、労働基準法24条は、給与の支払方法について「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めていて、給与の支払いは現金で行うのが大原則なのです。
例外は限定されていて、労働者が指定する金融機関の口座への振り込みであれば、労働基準法施行規則により認められています。他にも、たとえば以下のような細かな規制が、労働基準法や通達で設けられています。
- 原則として、労働者に対して直接払わなければならない。
- 給与の全額を支払わなければならない。
- 月1回以上期日を決めて払わなければならない。
- 銀行振込の場合、給料日には全額が引き下ろせるようなタイミングで、振り込まなければならない。
従業員が希望したとしても、給与のデジタル払いをすれば労働基準法違反の可能性も
──今報道されている「給与のデジタル払い」では、どうやって給与を支払うのでしょうか。
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