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2018年10月22日(月)更新

ワークエンゲージメント

ワークエンゲージメントとは従業員が仕事に対して感じている充実感や就業意欲を総合的に表現した言葉であり、心の健康度を示す概念の一つです。従来のメンタルヘルス対策に比べて多くのメリットをもたらしてくれるワークエンゲージメントの意味や高める方法、扱う上での注意点などについて分かりやすく解説致します。

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ワークエンゲージメントの意味

ワークエンゲージメント(ワークエンゲイジメント)は従業員と仕事内容の間に構築されるエンゲージメント(絆、愛着心、思い入れ)であり、仕事に対してポジティブで充実している心理状態を指します。

ワークエンゲージメントという言葉は、バーンアウト(燃え尽き症候群)研究で有名なオランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ(Wilmar B.Schaufeli)教授によって提唱されました。

ワークエンゲージメントを構成する3つの要素

ワークエンゲージメントは『活力』、『熱意』、『没頭』の3要素から構成されている複合概念です。そのため、ワークエンゲージメントを高めるためには3要素全てを意識しながらアプローチを行う必要があります。

【活力】

活力(Vigor)とは仕事に対して自ら積極的に取り組むことによって生まれる高水準のエネルギーであり、高いパフォーマンス力です。活力が高まるほど精神力や継続力が向上し、就業中のトラブルや失敗に対してストレスを感じにくくなります。また、活き活きとした表情で仕事を楽しむことができます。

【熱意】

熱意(Dedication) とは仕事内容や自身のスキル(知識、技術)、キャリア(経験、個人業績)に対するプライド(誇り)や強い思い入れ、やりがいです。熱意が高まるほど仕事への興味心や探究心が向上し、より良い商品やサービスを生み出すために努力するようになります。また、自身の担当業務だけではなく関連する商品やサービス、部門に対しても幅広く興味を示せるようになります。

【没頭】

没頭(Absorption)とは、熱中して仕事に取り組む状態です。没頭が高いほど丁寧で質の高い仕事を行えるようになり、人為的ミスが減少します。また、作業速度や作業効率が飛躍的に向上します。

ワークエンゲージメントを高めるメリット

『活力』、『熱意』、『没頭』の3要素はいずれも仕事を行う上で重要な要素です。その3要素を含むワークエンゲージメントを高めることにより、組織や従業員は次のようなメリットを享受することができます。

ストレスに強くなる

仕事に対して肯定的に向き合うことで不安や不満を感じにくい心が育ち、発生したわずかなストレスも思い入れのある仕事に関わり続けることができる喜びによって就業中に少しずつ軽減されていくため、限界まで自分の中に溜め込むようなことが少なくなります。

パフォーマンスを最大化し、ポテンシャルを引き出せる

ワークエンゲージメントが高まった従業員は、自分の保有する全てのスキルを活用して全力で業務に向き合えるようになります。また、パフォーマンスの最大化による生産性向上や業績アップが自信に繋がることで、ポテンシャル(潜在能力)という更なる力を引き出すことが可能となります。

自発性が高まる

自信に満ちあふれた従業員は、自分の力を最大限に活用するため臆することなく様々な課題や困難に挑戦し続けるようになります。挑戦することによって自分の可能性が広がり、可能性が広がることによって更に自発性が高まっていくのです。

人材育成に有利な組織風土が構築される

ワークエンゲージメントを高めた従業員が活き活きと働く姿は同僚や後輩にとって非常に良い刺激となり、刺激を受けた従業員もまたワークエンゲージメントを高めていくことになります。刺激が刺激を生み出すことで職場から組織全体へと連鎖的に拡大したワークエンゲージメントの好影響は、意欲的な人材の育ちやすい組織風土として定着するでしょう。

【関連】組織風土とは?意味と改善方法、組織風土改革の企業事例をご紹介 / BizHint HR

顧客満足度が上昇する

扱う商品やサービスの価値を心から信じ、確かな知識を持って活き活きと説明する営業マンの姿を見た顧客は営業マンに対して信頼を置き、商品に対して安心感を抱きます。また、情熱とこだわりを持った職人が作り上げた商品の質は高く、その商品を手にした顧客は感動を覚えます。

このように、ワークエンゲージメントを高めた従業員が仕事に力を注ぐことによって間接的に顧客満足度も高めることができるのです。

組織が活性化する

ワークエンゲージメントを高めた従業員が組織内に増えることによって組織力が底上げされると、これまで達成不可能と思われてきた困難課題のクリアも現実味を帯びてきます。従業員個人だけではなく組織の可能性も広がることにより、組織はこれまで以上に速いスピードで活性化していくでしょう。

メンタルヘルス改革を実施できる

経営者や人事担当者にとって、組織内で発生する心理的ストレスから従業員を守るためのストレスマネジメントは大きな課題です。多くの企業で実施されているメンタルヘルス対策の多くは、発生したストレス要因への対応やストレスチェックによる早期発見といったものですが、それらはストレスが発生することを前提とした対処療法でしかありません。

しかし、ワークエンゲージメント向上によって得られるストレス耐性は予防的効果が含まれるため、全従業員に対してワークエンゲージメント向上を図ることで戦略的にストレスに強い組織を構築することができるのです。

ワークエンゲージメントの尺度

ワークエンゲージメントの測定に際し、世界で最も多く用いられているのがシャウフェリ教授らによって開発されたユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(Utrecht Work Engagement Scale:UWES)です。

UWESはワークエンゲージメントを構成する『活力』、『熱意』、『没頭』の3要素を17項目の質問に答えるだけで簡単に測定できるようになっており、使用されている23カ国のいずれの国においても信頼性と妥当性の高い結果を導き出せることが確認されています。

ただし、日本人のようにポジティブな自己評価を行うことに抵抗を感じる国民性がある場合には、点数が低めに出る場合もあるため注意する必要があります。

ワークエンゲージメントを高める方法

ワークエンゲージメントには『個人資源』と『仕事資源(組織資源)』という2つの規定要因が存在します。この2つの規定要因に対して適切なアプローチを行うことで、ワークエンゲージメントを意識的に高めることが可能となります。

個人資源(Personal resources)

ワークエンゲージメントと関連のある個人資源については以下のようなアプローチが有効となります。

自己効力感を高める

自己効力感(セルフエフィカシー)とは、ある状況下において必要とされる行動を正しく遂行する能力を自分が持ち合わせているかどうかの認知であり、自己に対する有能感や信頼を示すものです。

この自己効力感が確固たる自信を生み出すことによって、仕事に対して積極的に関わりを持つことが出来るようになります。

【関連】自己効力感(セルフエフィカシー)の意味とは?尺度と高める方法 / BizHint HR

ポジティブ思考を身に付ける

マイナスをプラスに転換することのできるポジティブ思考は不安感を消失させてくれるだけではなく、失敗から多くの改善点を発見し、困難課題を成長機会(チャンス)に変えてくれます。

ポジティブ思考によって組織や職場を生きた学習の場へと生まれ変わらせることで、誰に指示されることなく日々の業務を前向きに受け入れることが出来るようになるでしょう。

ロールモデルを設定する

ロールモデルとは物事の手本や模範となる成功モデルのことです。このイメージが具体的であるほど、自分との差異の見極めや不足要素の洗い出しが容易となります。

組織や職場内にロールモデルとなる人物が存在することによって、優れたスキルだけではなく仕事に対する熱意や想いも学び取ることが可能となるでしょう。

【関連】ロールモデルの意味とは?必要性から、女性の場合の考え方まで/ BizHint HR

仕事資源(Job resources)

ワークエンゲージメントと関連のある仕事資源については以下のようなアプローチが有効となります。

動機付けを行う

動機とは、目標に向けた第一歩を踏み出すきっかけや目標達成まで継続的に挑戦し続けるためのモチベーションであり、動機付けとはその要素を本人の意識改革または外部影響によって増幅することを指します。

外部影響による動機付けには次のようなものがあります。

  • ロールモデルとして組織が求めている理想の人物像を掲げる
  • 上司や先輩、指導者からの一方的サポートではなく、社員同士が互いにサポートし合える環境を構築する
  • 仕事に没頭することのできる職場環境を用意する
  • パフォーマンスを正しく評価できる評価制度を構築する

この中でも『仕事に没頭することのできる職場環境を用意する』という施策は特に重要な役割を持っています。どれだけ従業員自身が仕事に没頭したいと願っても、没頭するための職場環境が整っていなければ実現させることができないため、ワークエンゲージメントを活用したいと考えている組織は、最優先で没頭できる職場環境を用意しなければいけません。

成長機会を与える

自己効力感を高めさせるため、成長機会を与えることも重要となります。

  • 外部研修やセミナーへの参加
  • eラーニングなどによる学習機会の提供
  • プロジェクトメンバーへの抜擢
  • 裁量権など一定の権限や責任を与える

対象従業員の性格や考え方に合った成長機会を与えることによって経験値や専門知識、自己効力感を獲得することができるでしょう。

ポジティブ・フィードバックを与える

人材育成においてフィードバックは欠かせないものとなっていますが、ワークエンゲージメントを高めるためにはポジティブ・フィードバックを意識的に行う必要があります。

  • 業務プロセスや思考過程を褒める
  • 作業結果を褒める
  • 改善点を見つけ出し、前向きな言葉で伝える
  • 成功や成長を共に喜ぶ

このポジティブ・フィードバックは対象者から信頼や尊敬を得ている人物が行うほど効果が高いため、ロールモデルに設定されている人物や創業者、経営者などが積極的に参加することが望ましいでしょう。

ワークエンゲージメントを扱う上での注意点

組織や従業員に対して多くのメリットと効果を与えてくれるワークエンゲージメントですが、その取り扱い方を誤ってしまうと思いもよらぬ損失を被る可能性があります。

ワーカホリックと混同しないように注意する

ワーカホリック(ワーカホリズム)とは『仕事中毒』のことであり、脅迫観念や不安感情に背中を押されることによって闇雲に働き続ける状態のことを指します。

率先的に働く姿からワークエンゲージメントが高められている状態と混同することがありますが、両者は似て非なる存在であり、全く異なる性質を持っているため正確に見極めなくてはいけません。

仕事に対して受動的に向き合う中毒状態では、一時的に爆発的な力を発揮することができても長時間維持することはできません。仕事に心から興味を持ち、自身の行動に主体性を持たせることによって、初めて熱中することができるのです。

経営者や人事部が従業員の評価を行う際には、活き活きと楽しみながら仕事することができているかという部分に注目する必要があるでしょう。

ネガティブ思考を全否定してはいけない

ネガティブ思考から生み出されるものにはマイナス要素が多く、ポジティブ思考に対して劣っている印象が強くありますが、組織内からネガティブ思考を完全に排除するのは得策ではありません。

ネガティブ思考の存在を全否定するのではなく、不満や不安といった感情が新たなアイディアや商品、イノベーションを生み出すこともあることを正しく理解した上で、必要に応じて使い分けることができる柔軟な組織を目指しましょう。

対象者への理解を十分に深める

ワークエンゲージメントは精神的要素が多く関わるものであるため、どれだけ多くの施策を実施したとしても対象者が自ら変わろうと思わなければ何の効果も生まれません。また、本人の性格や意向を無視したまま半強制的にアプローチを行ってしまうと、その行為そのものがストレッサーとなり、ワークエンゲージメントを低下させることにもなりかねません。

多くの権限を与えて自由度を高めることで就業意欲を刺激するべきか、それとも一定の範囲に限定することで不安要素を取り除くべきか。ロールモデルの背中を見ながら成長イメージを模索することで成長するタイプか、それとも丁寧なコーチングによって自信を積み重ねていくタイプか。

ワークエンゲージメントの高め方に正解はなく、従業員の数だけ有効なアプローチが存在します。上層部が直々にワークエンゲージメントに取り組む際には、直属の上司から部下の意向や情報を引き継ぐなどして十分に理解を深めた上で実施する必要があるでしょう。

ワークエンゲージメントの参考書籍

ワークエンゲージメントについての理解を深め、効果的に高めるためのノウハウが詰まった2冊を紹介致します。

ワーク・エンゲイジメント入門

本書はタイトルに入門という言葉を含まれている通り、ワークエンゲージメントの基礎知識や関連用語を分かりやすく解説しています。積極的なメンタルヘルス対策を実施する重要性と組織にもたらす好影響について学ぶことができる優れた1冊であるといえるでしょう。

【書籍情報】

  • ワーク・エンゲイジメント入門
  • 著者:ウィルマー・B・シャウフェリ、ピーターナル・ダイクストラ
  • 翻訳:島津明人、佐藤美奈子
  • 出版社:星和書店
  • 発売日:2012年11月15日

ワーク・エンゲイジメント ポジティブメンタルヘルスで活力ある毎日を

ワークエンゲージメントの提唱者であるシャウフェリ教授の元で客員研究員として研究を重ね、『ワーク・エンゲイジメント入門』の翻訳も担当した東京大学大学院准教授の島津明人氏が綴った本書には従業員一人ひとりが心身ともに健康な状態で活き活きと活躍するためのノウハウやヒントが数多く掲載されています。これらの情報を積極的に活用することにより、全従業員が最高のパフォーマンスを発揮できる組織を構築することができるでしょう。

【書籍情報】

  • ワーク・エンゲイジメント ポジティブメンタルヘルスで活力ある毎日を
  • 著者:島津明人
  • 出版社:労働調査会
  • 発売日:2014年7月4日

まとめ

  • ワークエンゲージメントとは、従業員と仕事内容の間に構築されるエンゲージメントであり、高めることによって仕事に対して積極的かつポジティブに向き合うことができるようになる
  • ワークエンゲージメントとは『活力』、『熱意』、『没頭』の3要素から構成される複合概念であり、それら全てにアプローチを行うことによって高めることができる
  • ワークエンゲージメントはストレスマネジメントに力を注いでいる組織が積極的に採用するべき攻めのメンタルヘルス対策である
  • ワークエンゲージメントは対象者自身の意思によって初めて効果を発揮するため、強制的に実施するのではなく本人の意欲や興味が高まるように支援していく必要がある

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