はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2018年10月16日(火)更新

エンプロイー・エクスペリエンス

エンプロイー・エクスペリエンスとは、従業員が組織や会社の中で体験する経験価値のことを意味します。日本企業の課題「働き方改革」の実現や、組織風土改革、企業文化の浸透にも重要な考え方です。この記事では、エンプロイー・エクスペリエンスの概要や、向上させるために人事ができること、企業の先進的な取り組み事例について紹介します。

エンプロイー・エクスペリエンス に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

エンプロイー・エクスペリエンスとは

「エンプロイー・エクスペリエンス」という言葉の意味やトレンドについて解説します。

言葉の意味

エンプロイー・エクスペリエンスとは、従業員が組織や会社の中で体験する経験価値のことを意味します。

「従業員満足度」や「従業員エンゲージメント」といった指標のみならず、従業員の健康状態や組織としての一体感など、社員が会社生活の中で経験する、全ての印象や影響を包括した考え方です。

エンプロイー・エクスペリエンスは、企業と従業員との接点全てにおいて発生します。つまり、会社への入社前から採用プロセス、入社後の研修や配属、評価や異動、退職までの、全てのプロセスにおいて発生しているという考え方をとります。

【関連】従業員満足度とは?上げる方法と、向上事例・施策をご紹介/BizHint HR
【関連】従業員エンゲージメントの意味とは?影響する要素、高めるポイントをご紹介/BizHint HR

世界のトレンドワードに

この「エンプロイー・エクスペリエンス」という言葉は、人事領域における世界のトレンドワードになっています。

デロイトトーマツコンサルティング合同会社は、人事部門・人材活用の課題とトレンドをまとめた「グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2017~デジタル時代の新たなルール~」を公表しています。このレポートは、世界140か国10,000人を超える人事部門責任者および管理職へのアンケートとインタビューを基に作成されました。グローバルで継続的に実施している人事、人材、リーダーシップに関する調査としては世界最大級のものです。

このレポートでは、テクノロジーの革命的・急速な変化と、企業や政府といった組織とのギャップを埋めることが必要であると解説しています。そして、特にテクノロジーとのギャップが大きく、企業が取り組むべき10のテーマを以下のように定義しています。

1.未来型組織:もう始まっている
2.キャリアとラーニング:リアルタイム・継続的な学びの実現
3.採用:コグニティブによる採用
4.エンプロイー・エクスペリエンス:組織文化とエンゲージメントとその先を見据えて
5.パフォーマンス・マネジメント:勝利の切り札
6.リーダーシップ革命:限界を超える
7.デジタルHR:プラットフォーム、人材、仕事そのもの
8.ピープル・アナリティクス:新たな道を進む
9.ダイバーシティ&インクルージョン:リアリティ・ギャップ
10.労働の未来:拡張される労働力
【引用】グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド 2017/デロイトトーマツグループ

このように、「エンプロイー・エクスペリエンス」は、企業が取り組むべきテーマの一つとして紹介されています。急速に発展を続けるテクノロジーをうまく活用し、総合的なエンプロイー・エクスペリエンスを向上させる取り組みが、日本のみならず世界中の企業に広く求められているのです。

エンプロイー・エクスペリエンスの向上は人事のミッション

エンプロイー・エクスペリエンスの向上は、人事部門の重要なミッションであるとも言えます。

これには、「エンプロイー・エクスペリエンスを向上させることが、組織風土改善や人材の採用力向上に直結する」という考え方が背景にあります。また、人事部門の業務を「サービス」、顧客対象を「企業の従業員」ととらえた時に、経営者はもちろん人事部門が主体となって従業員のエクスペリエンス向上に取り組むべき、といった考え方もあります。

いずれにせよ、エンプロイー・エクスペリエンスの最大化に向けた取り組みには、人事部門が主要な立場を担うことは間違いないでしょう。

エンプロイー・エクスペリエンスが注目される背景

エンプロイー・エクスペリエンスが注目される背景について解説します。

「エクスペリエンス」という発想自体への注目

背景としては、「エクスペリエンス(=経験価値)」という発想自体への注目が挙げられます。

産業の高度化やEコマースの普及により、サービスやツールの使い勝手(ユーザビリティ・ユーザーインターフェース)の良し悪しが、売上を大きく左右するような時代となりました。

この考え方が発展した結果、商品やサービス単体のクオリティ・満足度だけではなく、総合的な経験価値(ユーザーエクスペリエンス・カスタマーエクスペリエンス)が良質であることが求められるようになってきました。質の高い「エクスペリエンス」を提供し、カスタマーのエンゲージメントを高めていくことが、企業の成長の鍵であるとされています。

それと同様に、人事サービスのユーザー・カスタマーともいえる従業員が、良質な「エクスペリエンス」を得ることで、従業員のエンゲージメントを高めていくことができる、と考えられるようになってきたのです。

組織風土や企業文化が差別化の要因に

優れた組織風土や企業文化は、良好な顧客体験を提供するため、また変化の激しい時代に企業が対応するために重要です。そして、エンプロイー・エクスペリエンスは、組織風土や企業文化の醸成に寄与します。

前述の通り、良好なカスタマーエクスペリエンスは顧客のエンゲージメントを高め、結果として企業の差別化に大きく貢献します。良好な顧客体験を提供するためには、その企業における一貫性の取れたサービス、理念が必要とされます。セクショナリズムが横行していたり、組織の文化に一貫性がなかったりするような場合、部門によりちぐはぐな対応となり、優れた顧客体験を提供することはできないからです。

また、現代は不安定で不確実、複雑性の高いVUCAの時代であると言われています。正解が見えず、昨日まで成功していたことが今日は失敗する、といったことが起こりうる時代です。このような状況下では、従業員全員が共感できる共通ゴールを描き、組織としての適合性を高め、権限委譲を進め変化に対応していくような、しなやかな組織づくりが必要とされます。

優れた顧客体験が提供できるほど良好で、変化に適応し続けられるほどしなやかな組織風土・企業文化を育むには、企業で働く人々が仕事を通じて獲得する「エンプロイー・エクスペリエンス」の質が重要となります。優れた組織風土・企業文化の醸成には、従業員一人一人のマインドセットや行動の変容が必要ですが、それは仕事での体験から学び気づくことによって生まれるものであるからです。

【関連】VUCAの意味とは?VUCAな時代に求められるリーダーシップとは?/BizHint HR
【関連】組織風土とは?意味と改善方法、組織風土改革の企業事例をご紹介/BizHint HR

日本企業の課題「働き方改革」の観点から

エンプロイー・エクスペリエンスという考え方は、日本企業の課題「働き方改革」の観点からも重要です。

デロイトトーマツコンサルティング合同会社が発表したレポート「働き方改革の実態調査2017~Future of Workを見据えて~」では、働き方改革を実施する企業の割合が、2015年から倍増しています。

そして、働き方改革に取り組む目的としては、「生産性向上」に次いで、「従業員の心身の健康」や「従業員満足度の向上」など、エンプロイー・エクスペリエンス視点の狙いが挙げられています。

【参考】『働き方改革の実態調査2017~Future of Workを見据えて~』調査結果を発表/デロイトトーマツグループ

【関連】働き方改革とは?必要となった背景や実現会議と実行計画、事例まで徹底解説/BizHint HR

ミレニアル世代の採用と定着

質の高いエンプロイー・エクスペリエンスは、ミレニアル世代の採用と定着にも大きく寄与します。

ミレニアル世代とは、1980年代以降に生まれ、2000年代に成人となる世代のことを指します。幼いころからインターネットやスマートフォン、SNSなどに触れてきたデジタルネイティブ層でもあり、それ以前の世代と比べ、好む仕事の仕方や消費傾向などが特徴的であるとされています。そして、企業において働き盛りとされる30代前後の人材は既にミレニアル世代となっている一方、企業制度の改革が間に合っていない現状があります。ミレニアル世代の希望とのミスマッチが増え、採用難や離職につながっているのです。

ミレニアル世代の好む会社は、エンプロイー・エクスペリエンスに優れた企業であるとも言えます。エンプロイー・エクスペリエンスという観点を元に制度を見直し、働きやすく働きがいのある会社へと改革することで、ミレニアル世代の採用力や定着率の向上も期待することができます。

【関連】採用難とは?原因と人手不足を乗り越えるための対策をご紹介/BizHint HR
【関連】離職率を改善するための対策とは?新卒社員の離職率・退職理由なども併せて解説/BizHint HR

エンプロイー・エクスペリエンスを向上させるために人事がすべきこと

エンプロイー・エクスペリエンスを向上させるために人事がすべきこととは何でしょうか。必要とされる取り組みについて解説します。

エンプロイー・ジャーニー・マップの可視化

必要な取り組みの一つとして、「エンプロイー・ジャーニー・マップ」の可視化が挙げられます。

エンプロイー・ジャーニー・マップとは、採用応募から退職までの一連のフローにおいて、従業員がどのようなエンプロイー・エクスペリエンスを得るのかを整理した「旅の地図」のことです。

「採用」や「配属」などの企業と従業員が接点を持つ各フェーズにおいて、例えば以下のような内容を整理、記載していきます。

  • 「経験価値が高い状態」の具体的なゴール設定
  • 従業員が実際に受けているエクスペリエンス
  • エンゲージメントや感情の起伏
  • ゴールと実際とのギャップを埋めるための施策案
  • ゴールや施策の効果測定指標と調査方法

これにより、採用から退職までの全フローを通じ、一貫した取り組みを実現することが可能になります。

部門横断的な責任者の配置と連携

エンプロイー・エクスペリエンスは、入社前から退職まで、企業と従業員のすべての設定において発生するものです。従って、全ての業務プロセスにおいて、包括的に取り組むための体制づくりと担当者間の連携が必要とされます。

具体的には、採用、教育、評価など、一連の人事サービスの全プロセスを束ねる、包括的な責任者を配置し、共通のゴールに基づいた担当者間の連携や業務改善が必要となるでしょう。

また、このような連携は、人事部門内だけでとればいいというものではありません、職場の教育担当者や現場責任者など、エンプロイー・エクスペリエンスに大きな影響を与える各所のステークホルダーを巻き込んだ、組織横断的な取り組みも必要となります。

従業員エンゲージメントの調査

エンプロイー・エクスペリエンスの向上には、従業員エンゲージメントの調査も非常に重要となります。可視化されたエンプロイー・ジャーニー・マップに基づき、どのような従業員がどのように感じているのか、定期的に診断する必要があるからです。

効果的な従業員サーベイを実施し、従業員エンゲージメントの調査を定期的に行いましょう。

【関連】従業員サーベイとは?企業と従業員の関係性の改善し、エンゲージメント向上を目指す/BizHint HR

健康経営の推進

健康経営とは、企業が従業員の健康管理を経営的な視点から考えることです。昨今は特に、長時間勤務やパワハラなどによる、従業員の健康障害が問題視されています。

働き方改革やエンプロイー・エクスペリエンスの文脈でも、心身ともに健やかに働けるような、健康的な会社づくりの重要性が高まっています。

【関連】健康経営とは?企業の取り組み事例を交えご紹介/BizHint HR

衛生要因の見直し

エンプロイー・エクスペリエンスを構成する要素は、ハーズバーグの「動機付け・衛生要因理論」に基づき、「動機付け要因」と、「衛生要因」に分類することができます。「動機付け要因」とは、働きがいやモチベーションといった仕事に満足感をもたらす要因で、「衛生要因」とは、従業員の健康や労働時間、賃金や休暇など、不十分な場合に不満をもたらす要因です。

これまでの人材マネジメントの視点では、いかに従業員を動機付けし、パフォーマンスを発揮させるかといった「動機付け要因」が重要視されていました。しかし昨今では、不安定な雇用や長時間労働、低賃金労働や職場の人間関係の悪化など、衛生要因への不満が大きく顕在化しています。

総務や労務、経営管理や人事部門など、会社経営における衛生要因を担う部門で連携し、衛生要因の領域に関しても見直しや改善ができるようにしましょう。

オフィス改革の実施

コミュニケーションの活発化を促進し、人間のクリエイティビティを刺激するようなオフィス環境は、エンプロイー・エクスペリエンスにも良い効果をもたらします。また、社風を体現するようなオフィス環境にすることで、企業理念の浸透をねらうことも可能です。

【関連】オフィス改革の効果、成功のポイントや事例について紹介/BizHint HR

エンプロイー・エクスペリエンス向上に向けた企業の取り組み事例

ここからは、エンプロイー・エクスペリエンスの向上に向けた、企業の取り組み事例を紹介します。

Airbnb

バケーションレンタルサービス世界最大手のAirbnbは、人事部門の呼称自体を「エンプロイー・エクスペリエンス」とするほど、力を入れて取り組んでいます。

業務内容も幅広く、最新テクノロジーの用意、超一流人材のスカウト、最高の環境を目指した職場環境の手配から、健康経営の観点から「ヘルシーでおいしい社食の献立を組む」ことまで、多岐に渡っています。

【関連】人事(エンプロイー・エクスペリエンス)担当チーム/Airbnb採用情報

freee株式会社

中小企業の事務管理向けのクラウドサービスを開発、運営するfreee株式会社の取り組み事例は、多くの業務を抱え、攻めの領域に手を出しづらい管理部門の方や人事担当者にとって参考になることでしょう。

freee株式会社における総務人事部門「メンバーサクセスチーム」では、付加価値業務や自身の成長により多くの労力を割くことが、本質的に価値があることであると定義しています。

その上で、人事労務機能における「守り」の領域を正確かつ効率的に業務ができるよう、テクノロジー活用による業務効率化を行っています。これにより、エンプロイー・エクスペリエンスの向上といった、攻めの部分に注力することを可能にしています。

たとえば、労務領域担当者の場合、給与計算、勤怠、社会保険の手続き、保育所に出す就業証明書など、0.5人/月の工数で実施しています。残りの時間は、企業文化浸透のための情報を提供したあり、育児支援の体系化といった業務に割いたり、外部の勉強会へ参加したりと、攻めの領域に費やすことができているそうです。

【参考】freee人事労務が取り組む「マジ価値人事業務」と「カルチャー浸透方法」とは?

株式会社おかん

法人を対象とした食の福利厚生サービスを手がける株式会社おかんも、エンプロイー・エクスペリエンスという考え方に注目しています。

これまで株式会社おかんが実施してきた健康経営支援やコミュニケーション活性化の知見、総務・労務・人事担当者とのネットワークをなど活かし、「エンプロイー・エクスペリエンス・サミット」というイベントを企画・実施するなど、エンプロイー・エクスペリエンスという概念を広める為の取り組みを実施していくようです。

【参考】総務・労務・人事担当者必見!2018年注目ワード『Employee Experience(エンプロイー・エクスペリエンス)』とは?/おかんの給湯室

まとめ

  • エンプロイー・エクスペリエンスとは、従業員が企業生活の中で得る体験のこと。働き方改革や人事領域におけるトレンドワードとしても注目されている
  • エンプロイー・エクスペリエンスの最大化のためには、エンプロイー・ジャーニー・マップの可視化、部門横断的な責任者の配置や連携、健康経営の推進などが必要
  • 企業の生産性を上げ、衛生要因を改善したり、攻めの人事を実現できる工数を捻出したりすることも重要

注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計60,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 厳選されたビジネス事例が毎日届く
  • BizHint 限定公開の記事を読める
  • 実務に役立つイベントに申し込める
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

この記事の関連キーワード

フォローボタンをクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードについて

チーム・組織開発の記事を読む

ビジネス事例や製品の情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次