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2018年3月8日(木)更新

リテンション

重要な経営資源のひとつである人材の社外流出は、企業にとって、重要な経営課題です。終身雇用の崩壊や少子高齢化による人手不足など社会情勢が変化する中において、人材の流出を防止する『リテンション施策」が注目されています。今回はリテンションの意味やリテンションマネジメントのメリット、具体的なリテンション施策をご紹介いたします。

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リテンションとは

優秀な人材を自社に留めておくことは、企業の将来を左右する重要な要因となります。そのため、リンテンション施策やリテンションマネジメントを重視する経営者(経営陣)や人事担当者が増えています。

リテンションの意味やリテンションが必要とされる社会的背景を知ることで、リテンションに対する理解を深めることができます。

リテンションの意味とは?

リテンションとは、自社の人材や顧客(ユーザー)との関係を「維持・保持」するという意味で使われており、人事部門においては「人材確保」を意味する人材マネジメント用語です。経営幹部候補や将来を有望視されている若手社員など、企業に必要な人材の確保や、社外流出を防ぐための人事戦略・経営戦略としても重視されています。

リテンション施策は、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」を従業員に提供し、取り組まれるのが一般的です。

金銭的報酬は給与・報奨金の保証などの短期的インセンティブ、ストックオプション制度(自社株式の購入権)などの長期的インセンティブが該当します。一方、非金銭的報酬は労働環境の整備・充実やワークライフバランスの実現、スキル・キャリア向上の支援といった、金銭以外の報酬が該当します。この2つの報酬をバランスよく組み合わせていくことが重要とされています。

厚生労働省が発表している「平成25年度厚生労働白書 第4節 仕事に関する意識」では、若者就労者の働く目的として「楽しい生活がしたい」、会社の選択においては「能力や個性を活かしたい」という意識がそれぞれ35%以上と高い傾向がみられます。一方で、「経済的に豊かな生活を送りたい」、「会社の将来性」などの意識は、2000年以降、下降傾向がみられます。そのため、企業には「非金銭的報酬」を重視したリテンション施策の実施が求められると考えられます。

【参考】厚生労働省 平成25年度厚生労働白書 第4節 仕事に関する意識

また、リテンションは、マーケティング部門における「CRM(顧客関係性マネジメント)」に関連するマーケティング用語として使用されることもあります。主にアプリやゲームなどのコンテンツサービスで、新規顧客獲得(新規ユーザー獲得)施策とは別に、既存顧客(既存ユーザー)を維持し、離反させない既存顧客維持のマーケティング活動(マーケティング施策)に活用されています。

データサーバに保存された顧客データを基に顧客管理を行い、顧客一人ひとりの状態を分析した上で、プッシュ通知やメルマガによる休眠顧客(休眠ユーザー)の呼び戻しや、既存顧客のニーズに合った他製品・サービス(関連コンテンツ)の利用促進が一般的です。Web担当者が定期的な既存顧客維持施策を行なうことで、新規ユーザー獲得コストを低く抑えることができ、売上・利益の底上げにつながります。

その他、企業買収に関わる人事デューデリジェンスにおいても、人材のリテンションは重要性の高い関連情報として認識されており、経営においても重要な用語といえます。

リテンションが必要とされる社会的背景とは?

企業がリテンションを重視するようになったのは、経営環境の変化や労働市場の変化など、企業を取り巻く社会的背景が深く関わっているといえます。今回はリテンションが必要とされる社会的背景をご紹介いたします。

経営環境の変化

一般社団法人 日本経済団体連合会(以下、経団連)が発表している「経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方」によれば、経済のグローバル化に伴い、国際競争が激化しており、企業は経営のスピード化やグループ経営・連結経営の強化を余儀なくされています。また、少子高齢化による国内市場の縮小や労働人口の減少への対応策として、雇用形態の多様化に対応しなければならず、同時に内部統制の強化や個人情報保護(セキュリティーの強化)の対応も求められるようになりました。

これらの経営を取り巻く環境の変化に伴い、日本で長く定着した終身雇用制度は崩壊しつつあり、「長期雇用は確約されない」という認識が一般労働者に定着しつつあります。終身雇用の崩壊は、優秀な人材の流出につながり、基幹業務の停滞につながる恐れがあります。

また、頻繁に起きる担当者の変更は、業務の停滞だけでなく、顧客からの信用を毀損し、企業価値の低下にもつながりかねません。そのため、優秀な人材を定着させるリテンション施策が重要視されるようになったと考えられます。

【参考】一般社団法人 日本経済団体連合会 経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方 ~新たな人事労務マネジメント上の課題と対応策~

労働市場の変化

経営の不確実性が増す中、雇用の安定や良い労働環境、待遇を求めて、転職する労働者が増え、人材の流動化および労働市場に変化をもたらしています。企業にとって、優秀な人材を獲得する機会となっていると同時に、自社の優秀な人材の流出につながると懸念が広がっています。優秀な人材はより魅力的な企業に転職していき、一方でそうでない人材は企業に留まる傾向が高いため、企業の生産性向上を阻害する要因ともいわれています。

また、団塊世代の大量退職や、少子高齢化に伴う人材不足、雇用形態の多様化に伴い、企業による人材獲得競争はさらに激化することが予想されています。そのため、経営者(経営陣)は優秀な人材の獲得をする一方で、より長く自社に籍を置いてもらうための方法として、魅力的なリテンション施策の実施が重視されています。

リテンションマネジメントのメリットとは?

優秀な人材を確保・維持するためにも、リテンションマネジメントの重要性が高まっており、効果的なリテンションマネジメントを求める経営者(経営陣)や人事担当者が増えています。リテンションマネジメントの実施は、以下のメリットが得られるため、積極的に展開することが望ましいと言えるでしょう。

採用に関するコストの削減

人材が流出すれば、不足した人材の補充するために、新たな人材採用に必要な求人広告費用や人材紹介会社への紹介料といった多大なコストが必要です。また、面接や試験などの採用に関連する業務が増え、それらに従事する自社の従業員の人件費も高騰してしまいます。さらにオリエンテーションやOJTといった現場の社員にも負担が増え、現場の生産性低下につながる可能性があります。

そのため、経営者(経営陣)や人事担当者は新たな人材の採用は、目に見えるコストだけでなく、機会損失によるコストを考えなければいけません。魅力的なリテンション施策の実施は、人材流出が防止できるだけでなく、人材の補充にかかる人的・時間的コストや、間接コストも削減することが可能です。

従業員のモチベーション向上

リテンション施策は、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2つを組み合わせて実施されることが多いため、従業員のモチベーションを高める効果が期待できます。

既にご紹介している通り、若年就労者を中心に、長期雇用の下で「自分自身の能力・個性を発揮したい」というキャリア形成を要望している声が増加しており、非金銭的報酬の需要が高まっています。また、金銭的報酬は従業員の不満防止に対する一定の効果が見込めますが、従業員の積極的な態度や姿勢を引き出す効果は低いとされています。

また、金銭的報酬と相性が良いとされている成果主義に否定的かつ懐疑的な社員に対しては、有効なリテンション施策として機能しにくいのが現状です。そのため、これらの社員には、組織の中で仕事に対するやりがいや成長できる実感、充実したワークライフバランス、福利厚生といった非金銭報酬を前提としたリテンション施策を実施することが、モチベーションの向上や維持につながる最適な方法と考えられます。

顧客・企業機密の流出防止

人材の流出は企業機密や顧客情報が流出するリスクの発生につながり、中には既存顧客を抱えて、競合他社に転職、または起業する可能性も考えられます。近年ではIPOを目指したベンチャー企業を設立する人も増えており、同僚や部下を引き連れて、退職するケースも考えられます。

金銭的・非金銭的報酬が享受できる労働環境の構築、社内ベンチャーの公募などの新規事業の構築支援、という形で従業員を後押しすることで、顧客・企業機密の流出を未然に防止する効果が期待できます。

リテンションマネジメントを成功させるためのポイントとは?

リテンションマネジメントを成功させるためには、成果に対して報酬が支払われる金銭的報酬を充実させると同時に、組織に対するロイヤリティを構築することが大切です。そのため、以下のポイントを重視し、リテンションマネジメントを実施することが効果的といわれています。

非金銭的報酬の充実

経団連が発表した「経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方」でも記載されているとおり、会社の選択に非金銭的報酬(楽しく生きる、能力や個性を活かせる等)を求め、長期雇用の下でキャリアを形成する傾向が強くなっています。その結果、高い報酬を求めて転職する人以外にも、やりがいやスキル・キャリア向上などの「非金銭的報酬」を求めて転職するケースも増えていると考えられます。

転職市場においても、福利厚生の充実やワークライフバランスの実現を重視し、働く価値を見つけられる企業を求めて、転職する人も少なくありません。従って、リテンションマネジメントを成功させるためには、離職理由を適切に分析し、社員が納得する労働環境の構築や人材開発プログラムを充実させることが大切です。

【参考】一般社団法人 日本経済団体連合会 経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方 ~新たな人事労務マネジメント上の課題と対応策~

従業員エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメントとは、企業と従業員の間に培われる信頼関係や貢献し合うことを意味する概念、愛着を指すビジネス用語、または経営用語です。従業員エンゲージメントは自発的な貢献意欲を高める効果があり、年収や待遇といった金銭的報酬ではない、企業と従業員の間に「絆」を生み出せます。

従業員エンゲージメントと離職率は密接に関係しており、従業員エンゲージメントが高い企業では離職率が低く、逆に従業員エンゲージメントが低い企業では離職率が高いという調査結果が報告されています。

従業員エンゲージメントを高めるには、ワークライフバランスの推進や適切な人事評価制度の構築、タレントマネジメントの活用、人材育成といった、非金銭的報酬の充実がポイントとなっています。従業員エンゲージメントや離職率リテンション施策を実施する際のKPIとしても設定できるため、リテンション施策を実施する際には強く意識しておきたいポイントといえます。

【関連】従業員エンゲージメントの意味とは?影響する要素、高めるポイントをご紹介/BizHint HR

社員の裁量の拡充

非金銭的報酬を前提としたリテンション施策は、社員にやりがいや自己の成長を実感させなければいけません。中でも管理職の存在は組織力を高める上でも重要なポジションであり、彼らのモチベーションや企業への帰属意識の向上がリテンション施策を成功に導ける鍵となります。

そこで、管理職を中心に職責に応じた権限を与え、社員の裁量を拡充することで、管理職にやりがいや自己成長を実感させることが可能です。

具体的なリテンション施策とは?

リテンション施策の内容は、企業によっても異なりますが、基本的な方針は同じといえます。今回はリテンションを高める、具体的な施策をいくつかご紹介いたします。

スキル・キャリア向上の支援

キャリアパスに関わる相談窓口の設置や専門的なスキルの向上支援、さらに従業員の自発性を高める上で社内公募制度社内FA制度といった新たな人事制度の策定も、リテンション施策として有効です。

また、間接部門に従事する社員にスポットを当てるためにも、サンクスカードといったノーレイティングを基にした新たな評価システム(サブシステム)を導入することで、全社員のリテンションを高める効果が見込めます。

人事部門が中心となって、役職や職能に応じて、研修やセミナーを実施し、社員に「自分のスキル・キャリアを向上している」と実感させることも大切です。

ワークライフバランスの実現

長時間労働の常態化が問題視されるようになり、政府主導で推進がされている「働き方改革」は、新たな勤務体制や雇用形態を促進することを目的にしています。

従業員のライフスタイルに合わせた、在宅勤務や時短労働、フレックスタイム制の導入、育児休暇制度の充実といった幅広い雇用・勤務形態を導入した、ワークライフバランスの実現は、リテンション施策の非金銭的報酬に該当し、社員に高い満足度を与える効果が期待できます。

今後、女性や高齢者の就労が促進される中においても、ワークライフバランスの実現は重要な要因となるため、時代の流れに合った労働環境を構築することが大切です。

【関連】働き方改革とは?必要となった背景や実現会議と実行計画、事例まで徹底解説 / BizHint HR
【関連】ワーク・ライフ・バランスとは?メリットや推進ポイント、取組事例もご紹介 / BizHint HR

継続的なコミュニケーションを促す環境作り

リテンションを高める重要なポイントである従業員エンゲージメントの向上は、社員同士で自由に意見交換や議論ができる企業風土・環境が欠かせません。社員同士の関係が円滑になれば、組織としての連帯感が生まれる上、信頼感も高まります。

部下の能力を引き出すコーチングフィードバックの実施に代表されるような継続的なコミュニケーションを促す環境作りも、リテンション施策の代表的な施策です。

【関連】リテンション施策とは?/ BizHint HR

経営者(経営陣)との対話

経営者(経営陣)との直接的な対話は、組織の風通しをよくするとともに、団結力を高め、社員への労いにもつながります。経営者が社員の日々の努力や成果に感謝を示すことは、社員に「会社経営のパートナー」として認識させ、信頼関係を深める効果が期待できます。

しかし、経営者(経営陣)との1対1の対話は社員を萎縮させてしまうこともあるので、複数人の社員での対話から始め、定期的にコミュニケーションを図ることが望ましいといえます。

選考段階でのスクリーニングの実施

社員の離職率を下げる施策として、採用選考の段階から退職しやすい人材かどうかを見極めスクリーニングの実施が挙げられます。入社後に活躍し続けている人材と、早期退職していった人材との間に、選考中に問われた質問内容や選考回数、選考時間にどのような差があったかを定量的に分析することで、精度の高いスクリーニングの実施が可能です。

応募者の面接においても、事業や企業理解に関する説明の精度や質疑応答の有無なども、ミスマッチを防ぐ重要な判断軸になります。そのため、選考の段階で聞くべき質問事項についても、PDCAを回して改善・運用を行なうことが重要です。

候補者情報は、採用管理システム等を用いて選考情報を一元管理しておくと、分析が大容易になるのでおすすめです。

【関連】「採用管理システム」導入メリットと、比較・検討のポイント / BizHint HR

まとめ

  • 労働人口の減少に伴い、優秀な人材を確保しておくためのリテンション施策は、企業にとって、重要な経営課題のひとつといえます。
  • 今後は金銭的報酬よりも非金銭的報酬を重視する人材が増えることが予想され、経営者(経営陣)や人事担当者は労働環境の改善や社員育成に焦点を合わせたリテンション施策が求められます。

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