スタートアップ 採用
スタートアップの採用は一般に難しいといわれています。特に設立当初で優秀な人材を確保できるかどうかはその後の会社の進展にも大きく関わってきます。そこで、本記事ではスタートアップの採用をどう進めればよいのかを、事例や失敗例を交えてご紹介します。
スタートアップの採用はまず準備から
企業の立ち上げ段階であるスタートアップフェーズでの採用は、悩みが尽きないものです。優秀な人材を採用するためには、まず準備をしなければなりません。なぜなら、面接や採用の前に欲しい人材の決定を行うべきであるからです。
面接や面談の中だけで自社にふさわしい人物かを判断していくのは難しいのは事実です。ですから、あらかじめどのような人材を求めるのかをはっきりと決めたうえで、募集をかける必要があります。
これらの面接前の下準備は軽んじられがちですが、実はとても大切です。スタートアップの採用に先立って、どのような下準備を行ったらよいのかポイントを押さえていきましょう。
欲しい人材の定義づけを行う
知名度があり企業イメージが良い会社でも、採用活動がうまくいかない場合は多々あります。そのような中で、スタートアップフェーズでの採用を成功させるには、どういう人材が欲しいのかを定義づける必要があります。この定義づけによって採用活動を成功させるためのイメージを作ることが出来ます。
欲しい人材を定義づけするには、必要な人材を実際の人物像に落とし込むことが必要です。もし、定義づけが行われておらず人物像が曖昧な状態になっていると、面接の際に面接官の間で評価基準が異なってしまうかもしれません。そうなると本当に会社にとって必要な人材を失ってしまいかねません。
不明確で曖昧な表現にはどのようなものがあるでしょうか。よく使用されてしまいがちな表現の一つが「仕事が出来る人」です。どのような人が「仕事が出来る人」なのかという判断基準は、面接官によって異なります。単に仕事が出来るというだけではなく、過去にエンジニアとして働いた経験があるなど、定義を明確な表現へ変えてみましょう。
このように、欲しい人材の定義づけをする時は曖昧にしてしまわないことが大切です。人物像を明確に表現し、面接官同士の間で欲しい人材に対する共通意識を持つことが出来ているか確認しましょう。そうすれば、スタートアップフェーズの採用を成功させるために一歩前進することが出来ます。
採用を増やして母集団を形成
人材採用を成功させるためには、まず採用を増やして母集団の形成をする必要があります。母集団の形成は自社に興味や関心を持ってくれる人たち全てを集めることから始まります。この時に大切なのは、定義づけされた、欲しい人材に近い母集団を形成することです。そのための方法としては「ブランディング」が有効です。ブランディングに力を入れる事によって自社を十分に宣伝することができます。
ブランディングとは
ブランディングとは、会社に対するファンを増やすために使うマーケティング手法で、会社の名前をブランド化させることによって自社の魅力を底上げする方法のことです。
母集団を形成するためのブランディング手法のひとつとして、採用ページを充実させることが有効です。採用のためのホームページに募集要領のみをのせるのではなく、自社の魅力をアピールする場として活用しましょう。説明会を開催するのであれば、その日程を告知することもできます。
また、ブランディングにはそのほかのメリットもあります。ケース別に見ていきましょう。
- 企業のことをより知ってもらうことでミスマッチを防ぐことができる
ブランディングをしっかりと行うことで、企業についての噂やネット上の情報だけではなく、正しく理解したうえで応募してくれる人が増えます。そうすれば、応募者と採用者のミスマッチが生じることを防ぐことが出来ます。 - 宣伝広告費などの採用コスト削減にも役立つ
採用ブランディングに力を入れておくことで、自然と口コミによって企業の良さが社会に伝わり、母集団を増やすことも可能です。採用がなかなかうまくいかないために多大な会社の宣伝広告費をかけてしまうことを避けられます。コスト削減し優秀な人材を採用することが出来るという点は、大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
現在行っている採用活動・PR方法を見直し一工夫するだけで、ブランディングによるメリットを十分感じることが出来るでしょう。
スタートアップだからこそ役に立つ面接のハウツー
自社のブランディングにより母集団を形成出来たら次はいよいよ見極めに入ります。スタートアップの採用において、自社に必要な優秀な人材を見極める方法はあるでしょうか。面接を行う際にスタートアップだからこそ役に立つ方法をご紹介します。
デキる人を面接官に
就職希望者にとって面接官は会社の顔ともいえる存在です。面接官の印象は入社への意欲に大きく影響するため、適任ではない人が面接官を担当することがないよう注意しなければなりません。「デキる人」を面接官に選定しましょう。たとえば以下に挙げるような人を面接官とすることが有効です。
採用したい候補者と近いタイプで活躍している人材
すでに働いている社員の中で、欲しい人材に近いタイプの社員を選定し面接官として据えることによって、面接の場がリラックスしたものとなります。なぜなら、同じようなタイプの人と面接を行うことが出来て、経験や観点の相違が生じにくくなるからです。
また、入社後に自分がどのように働き、活躍できるのかを、面接官の姿から応募者自身が想像することが出来ます。その結果、入社意欲は高まることでしょう。
経営トップや部署の責任者
経営トップの人が面接を行い、企業理念や今後の見通しを伝えることで、応募者のモチベーションを高めることが出来ます。加えて、技術が必要とされる会社では、その専門部署の責任者が面接に加わり技術チェックをすることで、優秀な人材を見極めやすくなります。
さらに責任者にとっては、これから部下になる人がどのような人材なのかを早くから知ることができるため、入社後の教育への意欲を高めることが出来ます。
スタートアップの面接は、自社を最大限アピールできる場であるということを覚えておきましょう。
自社の課題を議論する
スタートアップならではの課題が山積みである場合も、その課題を隠すのではなく、そのままテーブルにのせてディスカッションすることをお勧めします。課題を克服するために何が出来るのかを面接で議論しましょう。
会社を設立したのち、課題を克服するためにどのようなことを行ってきたのかという点を盛って話してしまうと、入社後のミスマッチを防ぐことはできません。ですから、今ある課題を候補者と一緒に克服していきたいという気持ちを伝えましょう。
自社の課題を議論することによって、候補者の強みを知ることができます。それと同時に問題の克服の仕方が会社の理念と合っているものかどうかも確認することが出来ます。つまり自社との相性を確認することもできるでしょう。
このように課題について一緒に考える際、問題ありの返答が返ってくることもあるでしょう。例えば「中に入ってみないとわからない」「入社してみないと難しい」と答えるかもしれません。このように返答をごまかしてしまう人は、入社したのちも問題を解決するために動けない人であることがほとんどです。限られた情報の中でも問題を克服していくための提案を述べることが出来る人は、入社後にしっかりと会社の成長に貢献してくれることでしょう。
優秀な人材を惹き付けるためのポイント
企業は人で出来上がっているため、スタートアップにおいて優秀な人材を惹きつけ、採用に成功することは、企業がこれから成長していくうえで重要です。その人材のクオリティが企業の業績や存続に影響力を持つことになるでしょう。優秀な人材を引き付けるためのポイントをいくつかご紹介します。
“ストレートに熱い思いを伝える”ことが大事
優秀な人材を惹きつけるためには、自社に入ってもらいたいという熱い思いをストレートで伝えることが大事です。応募者にとって「優秀であると思って声をかけられた」という事実は悪い気はしません。
またストレートな言葉は、相手にとっては予期していない言葉となり、唐突に質問された形になります。そのような場合、人の思考は揺れ動き、本音や深層心理を引き出しやすくなります。自社の課題が山のように大きいものでも、どのようにその山を登っていくのかを情熱的に語り続けるなら、話をポジティブに受け止めてもらいやすくなります。
スタートアップの採用の成功例は?
スタートアップフェーズにおいて、採用活動を成功させるための方法をいくつか考えることが出来ました。実際に成功している会社はどのような工夫をしたのでしょうか。2つの企業の成功例から学びましょう。
MIIDAS COMPANY「採用のために技術を学ぶ」
MIIDAS COMPANYは人材系サービスを行う事業で、株式会社パーソルキャリア(旧インテリジェンス)の中の新規事業としてスタートしたものです。スタートアップ採用の時にはアピールする技術力がまだない会社でしたが、採用のために技術選択を行い、成長していく環境を整えることにより採用活動を成功させることが出来ました。
具体的にはどのようなことをしたのでしょうか。まず、開発を内製化する仕組みに変えました。それまではすべての開発を外注していた企業でしたが、新しい人材を採用しエンジニアを増やすために、半年ほどかけて開発の内製化を整えていったのです。
採用では、しっかりとメリットを打ち出すこと、エンジニアとしての本質を見極められるよう採用プロセスを見直すことで、入社後のミスマッチを防ぎ内定辞退をなくすことが出来ました。その結果、テクノロジーで他の企業に勝てる会社となれるよう成長し続けています。
「採用のために」技術を選ぶ⁉優秀なエンジニアを惹きつけるチーム作りとは
メルカリ「ビジネス特化型SNS活用」
株式会社メルカリは現在米国にも進出している情報通信業を営む株式会社です。このメルカリが急激な成長を遂げることが出来たのは、世界最大級のビジネス特化型SNSを活用し採用に成功したからです。
このビジネス特化型SNSであるLinkedlnによって、自社の魅力を伝えながらも、共感できる人材を探し、その人材の中から自社で働く価値のある人を見つけることが出来たのです。そしてメッセージを積極的に送り、職場を体験してもらうことで応募者の意欲を高めることが出来ました。
さらに、ミートアップに招待しイベントから選考に進むことが出来た人材もいたようです。このような多くの工夫を凝らし優秀な人材採用に成功した結果、今ではグローバルなトップ企業と大差ない人材レベルを誇る企業となっています。
LinkedInをどう使う?世界に通用する人材に出会う、メルカリの採用戦略とは
スタートアップでの採用に失敗する原因
スタートアップでの採用に失敗してしまう原因は何なのでしょうか。あらかじめその原因を調べて大勝しておく必要があります。
会社側が盛り過ぎ
企業の立ち上げ段階であるスタートアップフェーズの場合は、特に意識せずに自社を盛り過ぎてしまう傾向にあります。その結果、面接時に過剰な期待を抱かせてしまい、入社後にミスマッチが発覚すると、最悪の場合、会社の業績に悪影響が及びます。
スタートアップなので将来このようになりたいという点について、盛ることは問題ありません。しかし盛りどころが悪いと問題になります。つまり今の状態を盛ってしまうと、入社したのちに聞いていた話と違うではないか、と反感を買うことになりかねません。
例えば、「スタートアップの割に働きはマイルド」「既存プロダクトではなく新規事業をして欲しい」などと面接では言っていたのに、実際候補者が入社してみると、人材がそろっておらず多くの仕事に追われたり、既存プロダクトが手いっぱいで新規事業まで手が回らなかったり、という状態であることが考えられます。このような状態は、採用後に人が逃げてしまう原因となります。事前に期待値調整をしておかなければ優秀な人材がいなくなってしまいます。
どうしても、優秀な人材を多くとりたいと思うがゆえに、過剰に会社の魅力について盛って話してしまいがちですが、優秀な人材の採用に成功し、会社を成長させるためには盛り過ぎないことが大切です。
役職インフレの発生
スタートアップ採用で注意しなければならないもう一つの点は、役職インフレです。採用できたことに満足して、自社に関心を示して集まってきた人全員に肩書を配ってしまいがちです。確かにその時は、入社した人全員のモチベーションが上がり仕事がスタートするため、うまくいっているように思えるかもしれません。
しかし、時間がたつと肩書がふさわしくない人たちが明らかになります。この時点はすでに降格人事はやりにくい状況となっており、企業にとって非常に危険な状態です。なぜなら、人事担当の人が、この役職にはもっとふさわしい人がいるのではないかという意見と、はじめから自分がこの役職で仕事を果たしてきたという意見との狭間に立たされ、解決するのが非常に難しいからです。
ですから、採用前に経営メンバーで話し合う必要があります。問題が起こってしまう前に役職の割り当て、降格人事をどのように行うのかを決定していると、問題が起きた時にはすぐに対処できるでしょう。
まとめ
- スタートアップの採用は、欲しい人材を明確な表現で定義し、採用ブランディングに力を入れることによって成功できる。
- 会社の顔ともいえる面接官を適切に選定し、会社の今の状態を盛って話すのではなく課題について議論するなら、優秀な人材の入社意欲を高めることが出来る。
- スタートアップだからこその罠にはまらないように気を付け、優秀な人材を採用するためにあらゆるツールを利用し、ストレートに熱い思いを伝えることで、採用を成功させることが出来る。
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