社会人インターン
社会人インターンとは、新卒採用で言うインターンシップの事で、社会人でありながら興味を持った企業の現場で一定期間働く体験をする事を言います。この社会人インターンを企業が受け入れる目的としては、優秀な人材の採用・雇用のミスマッチの防止。また、イノベーションの創出を目的とするケースもあります。今回は、この社会人インターンについてご紹介します。
1.社会人インターンとは?
まず、社会人インターンとはどのようなものなのか見てみましょう。
インターンとは
そもそも「インターン」とは、「インターンシップ」の略称です。一般的に就職前の学生を対象として企業が実施するもので、実際の職場で働く事を体験します。楽天みんなの就職活動日記の調査では、2018年卒の学生の約8割が参加しています。アルバイトと違い、無給で業務を行うインターンシップがほとんどです。また、業務は基本的に平日の日中で、期間は1日〜1ヶ月程度まで幅広く設けられています。
インターンに学生が参加する目的としては、興味のある業界について深く知ったり、自分自身のスキルアップを狙うなどが挙げられます。募集企業側は、自社とマッチする学生の囲い込みや、企業イメージの向上などを目指して実施されます。
【出典】みんなのインターン「最新版:2019卒必見、2017年夏インターンシップ徹底解説!」
【関連】BizHint HR「インターンシップの意味とは?実施の目的やメリットをご紹介」
学生向けインターンとの違い
この一般的な学生向けインターンと、社会人インターンの違いは何でしょうか。
まず大きな違いとしては、社会人インターンの場合は給与が発生する場合がほとんどという点。一般的には、時給1,000円程度から募集されているようです。また、就業時間にも違いがあります。平日昼間は本業を持っている社会人も多いため、就業時間が土日や終業後などに設定されていたり、週2日間〜の稼動や、在宅勤務などの相談ができたりする場合も多いようです。
社会人インターンを実施する目的については、「3.社会人インターンを実施する目的」で詳しくご紹介します。
2.社会人インターンの種類
社会人インターンは、期間によって主に3つの種類に分けられます。詳しく見てみましょう。
長期インターン
まず、数ヶ月間などの長期インターンです。あらかじめ「3ヶ月まで」など期間が設定されている場合や、就業する中で相談して期間を決定する場合もあります。
長期インターンの場合、基本的に人材をその企業の組織に所属させ、社員と一緒に通常業務をこなすOJT的な研修が実施されるケースが多いようです。人材は実際に戦力として扱い、最終的な成果を求める場合もあります。
短期インターン
次に、数週間程度の短期間のインターンです。あらかじめ「2週間程度」など期間が設定されており、その中で通常業務を実施するOJTが実施されるケースが多いようです。
ただし、長期インターンと違って期間が限られているため、例えば、数日単位で工場勤務・営業・事務補助などの一通りの職種を体験するケースもあるようです。また、その期間の中で特定のミッションを与え、成果を求めるケースもあります。
1dayインターン
最後に、近年増加している1日だけのインターン「1dayインターン」です。
これは、自社に興味のある人材を対象に、自社の仕事内容などを伝える研修や社内見学を行ったり、既に自社に就業を希望している人を対象に、最終面接の代わりとして1日の業務を体験してもらう等の目的で実施される事が多いようです。
【関連】BizHint HR「1dayインターンシップを企業が導入する意味と内容」
3.社会人インターンを受け入れる目的
それでは、企業が社会人インターンを受け入れる目的について見てみましょう。
優秀な人材の確保
まずは、優秀な人材の確保です。近年は深刻な人材不足となっており、求人情報・転職サイトのDODAの調査によると、転職求人倍率は2017年7月で2.31倍と高い数値を記録。優秀な人材の獲得競争は激化しています。
そんな中、自社に興味を持った人材が気軽に職場体験できるような門戸を広げる事で垣根を低くし、優秀な人材を囲い込む事が大きな狙いの一つとなっています。
【出典】転職ならDODA(デューダ)「転職求人倍率レポート(2017年7月)」
雇用のミスマッチの防止
次に、雇用のミスマッチの防止です。雇用のミスマッチとは、企業側と求職者側のニーズにギャップがあり、それによりそもそも人材が集まらなかったり、採用に至っても早期離職に繋がったりする事を言います。
中小企業庁の2015年の調査では、中小企業における中途採用者の離職率(3年目)は、30.6%となりました。実に3割の人材が、就業から3年目までに退職している事が分かります。
同調査の「仕事を辞めた理由」を見てみると
- 1位…人間関係(上司・経営者)への不満(27.7%)
- 2位…業務内容への不満(10.7%)
- 3位…給与への不満(9.6%)
という結果となりました。
「給与」については、条件面を細かく摺り合わせておく必要がありますが、「人間関係」「業務内容」については、入社前にお互いのギャップを完全に把握する事は困難です。しかし、社会人インターンを利用して一定の期間、実際に働く機会を設ける事により、これらの雇用のミスマッチをある程度回避する事もできます。
【関連】BizHint HR「雇用のミスマッチの意味とは?現状を踏まえた原因と対策・解消法」
【関連】BizHint HR「ミスマッチの意味とは?アンマッチとの違いや原因、対策をご紹介」
イノベーションの創出
近年では上記の目的以外にも、「同業を含む他社の人材を一定期間受け入れる」というスタイルの、社会人インターンを行う企業も出てきました。
これは採用を目的としたものではなく、他社での経験や社風を持った人材を一定期間迎え入れる事により、組織に刺激を与えたり、新しい考え方や働き方を取り入れて、イノベーションの起爆剤にするという目的があります。
4.社会人インターンが注目される背景
それでは、なぜ社会人インターンが注目されるようになったのでしょうか。
多様な働き方が認められるようになった
近年では、成果主義の台頭や人材不足により、多様な働き方が認められるようになりました。例えば「副業」。まだまだ少数ではありますが、通信大手ヤフーや、ソフトウェア開発のサイボウズなど、事前申請があれば副業を可とする企業も増えてきました。また、就業時間や出社の有無ではなく、その成果のみを重視する傾向から「在宅ワーク」「時短勤務」が認められる企業も増加しています。
これらの社会の変化により、企業側も社会人インターンを柔軟に受け入れる環境ができ、人材側も本業以外のチャレンジに取り組みやすくなったとう背景があります。
【参考】サイボウズ株式会社「複業採用」
【参考】ヤフー株式会社「文化 - 制度・環境 - 採用情報」
スタートアップやベンチャー企業の増加
近年、国や自治体の支援事業等の積極化もあり、スタートアップやベンチャー企業が増加しています。しかし、知名度や条件面でのメリットの大きい大企業と比較すると、その人材の獲得競争には厳しいものがあります。
そのスタートアップやベンチャー企業の採用手段の一つとなっているのが、社会人インターンです。これは、セキュリティ面や情報漏洩などの観点から、大企業ではあまり実施されていません。その点、スタートアップやベンチャー企業は小規模で柔軟な対応が可能なため、人材側にもメリットの大きい社会人インターンを積極的に実施する事ができるのです。
5.社会人インターンの募集方法
それでは、社会人インターンを募集する方法を見てみましょう。
自社ホームページへの掲載
まずは、自社ホームページへの掲載です。採用情報ページに掲載する事で、自社に興味を持っている人材に社会人インターンを実施している情報を伝える事ができます。就業前に実際に働いてみるチャンスがある事は、人材にとっても大きなメリットとなります。
インターン専門サイトへの掲載
「7.社会人インターン募集サービス紹介」でもご紹介しますが、インターン募集専用サイトへの掲載という方法があります。あらかじめ時給・応募資格・勤務条件・勤務地などを設定しておき、任せたい仕事や業務内容を精査した上で情報を掲載します。複数の応募があった場合は、受け入れ可能人数に応じて選抜します。
求人サイトやビジネスSNS等への掲載
転職サイトや求人系のビジネスSNSなどへの掲載も、一つの方法です。ただし、まだまだ社会人インターンを募集している企業が少ないため、転職サイトでは一般の求人に埋もれてしまう危険性もあります。
比較的、社会人インターンの受け入れの多いスタートアップやベンチャーの利用の多いビジネスSNSであれば、じっくりと自社の考え方や目指すところを紹介した上で、それに共感した人に対して社会人インターンを訴求する事もできます。文字数や内容にあまり制限が無いため、社風や社会人インターンに求める姿勢や役割なども詳しく紹介する事ができます。
6.社会人インターンの企業事例
実際に社会人インターンを募集している企業を見てみましょう。
株式会社ソラド
まず、自社ホームページに社会人インターン情報を掲載している例です。
東京都に拠点を置き、フードデリバリー事業も手がけるIT企業、株式会社ソラドでは、「ベンチャー勤務の体験をしたい」という社会人向けのインターンを「アルバイト採用」として募集しています。
仕事内容は、営業・企画・マーケティング等様々で、例えば営業なら実際に法人へのアプローチ等を担当。企画・マーケティングは、アイデア出し・分析などを行います。条件や勤務時間などもあらかじめ決められておらず、相談できます。ただし、営業の場合はコミュニケーションスキル、そして企画・マーケティングの場合は1年以上の経験が必要です。
【出典】株式会社ソラド「インターンシップ、社会人インターン」
株式会社パブリックグッド
次に、大人のインターン専門サイト「仕事旅行」に情報を掲載している例です。
東京都に拠点を置き、企業の戦略プランニングやメディアプロモーション等を手がける株式会社パブリックグッドでは、「PRディレクター」を目指す社会人のインターンを募集しています。
期間は無給の1日間と、時給の発生する3ヶ月間を選ぶ事ができ、実際に対外的な折衝のアシスタントやリサーチ、クライアント対応等のアシスタント業務を担当します。インターン参加後は「正社員採用の可能性大」と明記されており、採用目的のインターンである事が分かります。
【出典】仕事旅行「”共感創造PR”で世の中をアッと驚かせよう! PRディレクターを目指す方を募集中」
株式会社コノル
次に、求人系のビジネスSNS「Wantedly」に情報を掲載している例です。
東京都に拠点を置き、ウェブサイトの企画開発などを行う株式会社コノルでは、「社会人インターンという形から始まる新しい仲間を探しています」というメッセージと共に、社会人インターンの募集を行っています。
主にエンジニアを目指している人を中心に、最長13ヶ月のプログラムでの受け入れを予定しています。スキルや経験は問わず、異業種や他のWEB関連からの転職も可能とされています。
【出典】Wantedly「本気でエンジニアを目指している人に来てもらいたい!社会人インターン - 株式会社コノルのWeb エンジニアインターンシップ・契約・委託の求人」
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
中小企業やサービス業が、自社の人材を優良企業にインターンさせる事で人材育成に繋げるという目的で運用されている「大人の武者修行」に掲載されている例です。
コンビニエンスストア大手セブン‐イレブン・ジャパンでも受け入れを実施しており、実際の入社研修カリキュラムをこなします。4週間の中で、座学およびコンビニエンスストアでの深夜を含む全ての時間帯の勤務を経験し、最終的には「人に教えられるレベル」を目指します。35歳までで同業者でなければ、スキル無しに参加が可能です。
【出典】大人の武者修行「株式会社セブン-イレブン・ジャパン - 優良企業で社会人インターンシップ」
ChatWork株式会社
「ビジネスが加速するクラウド会議室」をキャッチコピーに、業務の効率化を目指したコミュニケーションツール「ChatWork」を展開するChatWork株式会社でも、社会人インターンを募集しています。
この目的は、「1人でも多くの日本人がグローバル展開で成功できるきっかけを作る」という事。つまり、自社の採用が目的ではなく、海外経験を積みたい・世界で活躍したいと願う社会人の後押しをする研修制度として実施しています。具体的には、シリコンバレーのChatWorkのオフィスにて自社の仕事をするも良し、ChatWorkのプロジェクトを手伝うのも良しというスタイルです。
【出典】ChatWork「ChatWork シリコンバレー社会人インターンシップ研修プログラム」
7.社会人インターン募集サービス紹介
最後に、社会人インターンの募集を専門にしているサービスをご紹介します。
仕事旅行
仕事旅行は「おとなのインターン」をキャッチコピーとした体験型転職サービスです。
最終的には採用を目的としていて、まずはインターンプログラムを作成、その後募集用の原稿を作成し、掲載します。応募があれば選考を行い、通過した求職者にインターンを実施するという流れです。 実際に仕事旅行に掲載してインターンを受け入れたメディア系企業では、求人広告では採用が苦戦していたものの、社会人インターンを募集したところ、これまで出会った人材よりも「きちんとした人」「驚くような人」と出会え、最終的に採用に至っています。
【出典】仕事旅行「やりたい仕事をできる仕事に。おとなのインターン」
ゼロワンインターン
ゼロワンインターンは、長期インターンに特化した日本最大級のインターンシップサービスです。ベンチャー企業から、大手企業まで多数の掲載実績があります。
主に学生向けが中心ですが、既卒者向けのインターンも多数掲載されており、社会人やフリーターも参加できるケースも多々あります。掲載費用は業界最低水準であり、採用のニーズに沿った様々なプランから選ぶ事ができます。また、最短で申し込み当日に掲載が可能で、急な募集にも対応できます。
【出典】ゼロワンインターン「既卒歓迎のインターン・インターンシップ募集」
PROJECT INDEX
PROJECT INDEXは、新サービスや地域の課題に取り組んでいる、意欲のある団体や企業を厳選したインターンシップ紹介サービスです。大学生から社会人までを対象としています。
最終的な採用を目的とせず、インターン生は自身の成長や経験を、そして受け入れ側は若く新しいアイデアやイノベーションの創出を目的としたものが多数あります。募集しているのは、地域やまちづくり関連、観光、農林水産系が多い事も特徴の一つです。
【出典】PROJECT INDEX「社会人対象のインターンシップ」
大人の武者修行
この社会人インターンシップサービスは、採用を目的としたものではありません。まず、中小企業やサービス業が、優良企業へ社会人インターンとして自社の人材を派遣します。人材が、そこで実地体験を積み、アイデアや経験を自社へ持ち帰る事で、人材育成や企業のイノベーションの創出に繋げるという目的のものです。
経済産業省補助事業でもあり、社会人インターンを派遣する事業者には補助金が支払われます。
【出典】大人の武者修行「新しい社会人インターン「大人の武者修行」とは? - 優良企業で社会人インターンシップ」
8.まとめ
- 社会人インターンは学生向けインターンと違い給与が発生するものが多く、また、週2 回程度や夜間・土日などに実施されるケースも多い
- 社会人インターンの目的は主に「採用」であり、優秀な人材の採用や雇用のミスマッチの防止が挙げられるが、中には受け入れによりイノベーションの創出に繋げるという目的のものもある
- 近年、スタートアップやベンチャー企業を中心に社会人インターンの受け入れ企業が増加しており、専門サービスなども複数生まれている