連載:第1回 採用 独自ノウハウを聞く
【1年で20名以上の採用】JapanTaxiがエンジニア採用に強くなった理由
タクシー業界で変革を起こしているのがアプリ「全国タクシー」を提供するJapanTaxi。老舗タクシー会社日本交通の子会社でありながら、ここ数年でIoTからビッグデータを活用した広告配信システムまで、最先端のプロダクトを世に送り出しています。この第二創業期を支えているのはそれまで同社にはいなかった「WEB系エンジニア」です。JapanTaxiではどのように「会社を変えるエンジニア採用」を行ってきたのか。同社の採用を担当する小川成子さんに伺いました。
第二創業期を迎えるJapanTaxi
JapanTaxiは1929年創業の老舗タクシー会社、日本交通の子会社です。タクシーのビジネスモデルはこれまで大きく変わってきませんでした。提供している主な価値は「移動したい人をタクシーで送り届ける」こと。駅や病院で待っていればお客さんが来てくれます。よい乗務員は経験や勘を頼りに、どこに行けばお客さんが居るかを探し出していました。
しかし、スマートフォンの登場でタクシーを取り巻く環境一変しました。位置情報を利用すれば、お花見をしている最中の公園にも正確な場所指定ができ、ピザが届く時代です。タクシーでもITを活用すれば何かできるのではないかと思い、数年前に当社では新しい取り組みを模索し始めました。
考えてみると、 アプリやビッグデータ、IoTなど、今ある先端技術は全てタクシーに応用できる可能性を秘めている 。そこから当社では、それまで物理的な移動手段のみを提供していたところから、ITプロダクトを作り、提供していくことに注力していったのです。
まず着手したのは、アプリ「全国タクシー」の開発です。JapanTaxiは、もともと「日交データサービス」という、日本交通の業務支援システムの開発・保守を行う会社でした。業務システムを扱うエンジニアとアプリを作るエンジニアとでは、求められる開発思想やスキルセットなどが全く異なるのですが、四苦八苦しながらも、なんとかローンチまで漕ぎ着けました。これが「全国タクシー」の前身アプリ「日本交通タクシー配車アプリ」で2011年のことです。
日本のタクシー業界の中では「アプリでタクシーを配車する」アプリの提供は初めての取り組みだったので、うまくいくか不安ではありましたが、世に出してみるとお客様にも高い評価をいただけました。川鍋の知名度もあったおかげで「日本交通がアプリで頑張っている」と認知をいただけたのです。
「全国タクシー」アプリのリリース後、乗客がアプリで車を呼ぶライドシェアの光景を海外でみた代表の川鍋は「このままでは日本のタクシー業界は世界からおいていかれてしまう」と、強い焦燥感を持つようになりました。
エンジニア採用が事業のボトルネックに
ただし、今後も大きくサービスをスケールさせるためには、WEBやアプリに精通したエンジニアの採用が必要でした。業務システムを担当してきたエンジニアのみの開発体制ではとても追いつきません。エンジニア採用が急務でした。
SIer の世界はバグやミスが許されない世界です。そのため、要件を定義して、それを間違えないように実装していく形式です。一方のWEBのエンジニアリングはまったく質が違いユーザーファーストです。仕様書のない中で、機能を実装し、PDCAを早く回して、改善していくことが求められます。
2015年の秋には現在CTOを務める岩田が入社しました。実はそれまで、WEB系エンジニアのスキルセットを見極められる者がいなかったのですが、岩田の加入でエンジニアリングスキルの良し悪しを見分けることができるようになり、より活躍できる人材を採用する体制が整いつつあり、事実、採用数も増えてきました。
しかし、今後開発していきたいプロダクトの規模や数を鑑みると、まだまだエンジニアが足りません。 エンジニア採用を加速させるために、採用の在り方を変えていく必要がありました 。
2016年9月、このような状況で、私はJapanTaxiに入社しました。
採用管理システムによるフローの改善
入社後に取り組んだのは、 「採用フローを整えること」 です。
採用業務は候補者さんとのメールのやりとりや、面接で使う会議室の確保、面接官への応募書類の共有やフィードバックなど多岐に渡ります。そして、その一つ一つは抜け漏れがあってはならないものです。そのため、ベースとなるフローの整理に取り掛かったのです。
私は前職でゲーム会社に在籍し、エンジニア採用を担当していました。2012年前後はソーシャルゲームの盛り上がりから大量採用を行っていた時期です。年間で三桁単位の方を採用するには、毎月300~400人以上の方と面接しなければなりません。しかも、他社もスピード感を持って採用を行っているので素早い判断が求められます。
大量の候補者管理、コミュニケーションをスピーディーに行わなければならない状況の中で学んだことが2つあります。
1点目は、 候補者の管理をエクセルで行うには限界がある点 です。エクセルでの管理はかなりの確率で“抜け漏れ”が発生しますし、データを消してしまい、ステータスがわからなくなることもしばしば。複数人で共有すると何が正しいのかを理解できなくなってしまいます。
2点目は、 採用に関するツールを集約すること 。人間の記憶力には限界があるので、おびただしい数のコミュニケーションを繰り返す中で、どのタスクが終わって、何が終わっていないかを全て記憶しておくのは困難です。メールや履歴書管理、候補者ステータスの管理などのツールが別れていると、ひとつの情報を見失うと、対応が漏れてしまうことは容易に発生してしまします。
この2点を解決するために、前職では、採用管理システムを導入し、完ぺきとはいかないまでも、大きく状況を緩和することができていました。
JapanTaxiは第二創業期であり、エンジニア採用は事業をドライブさせる重要な業務です。 そのため、採用業務が担当者のミスで止まるのは避けたい。加えて、スピード感を持って採用業務にあたりたい。前職での経験もあり、そのためには採用管理システムが必須だと思い、川鍋と相談して私の入社後、1か月足らずで採用管理システムを導入しました。
システムは、採用管理だけでなく、将来的に評価管理などほかのモジュールへの展開も視野にいれて選定を行いました。ERPパッケージなど、既存の製品もありますが、オーバースペックで高い。そのため、スモールスタートできて将来の拡張も見込めるクラウドツールを選定の対象にしました。
選んだのは「HRMOS採用」。候補者のステータスや面接の連絡など一元管理でき、重宝しています。
実は、前職ではほかの採用管理システムを利用していました。ただ、採用管理システムから送ったメールはシステムではなく、通常のメールフォルダに返ってきてしまいシステム上で管理できず、メールを探すのに大きな手間がかかっていました。また、担当者がメールを自分の名義で返信して、応募上の経緯などが分からなくなってしまうトラブルもよく起こっていました。
「HRMOS採用」は、メールのやり取りもすべてシステムで管理ができます。また、採用アシスタントやクラウドツールを使ったことがないスタッフにも使いやすい優しいUIなのもよかった点です。なかなか、新しいソフトの操作を覚えるのは大変なのですが、何も伝えなくても利用してもらうことができました。
応募者のデータは個人情報ですからデータの機密性が担保されるかも大切です。データを紙で出力するとポンと机の上にほったらかして危ない状況も発生する可能性がありますが、採用管理システムを使えば、すべてのデータがシステム内にあるので、データ漏えい対策になります。
エージェント紹介を倍にした表彰制度
「HRMOS採用」を導入した結果、 採用に関する細かな分析ができるようになりました 。弊社は7割がエージェント経由の採用です。これまで、何となく感覚値で「このエージェントさんが紹介してくれる人は通過しやすい」と思っていましたが、具体的ではありませんでした。
分析した結果を基に、エージェントとのコミュニケーションを開始しました。数値を裏付けとして話をするので、こちらからの説明にも説得力があります。その結果、それまで当社はWEB系のエンジニアを求めているのに、SIer系エンジニアが紹介されるということが頻繁に起こっていたのですが、徐々にその数は少なくなりました。
今ではスキルマッチは当たり前として、「いかに候補者がJapanTaxiのカルチャーにフィットしているか」という観点でコミュニケーションを始めることができています。
JapanTaxiでは新しいプロダクトを作っていく必要があるため、働く個人の自発性や自律性が非常に重要です。候補者がJapanTaxiでどんな経験を積みたいのか、また会社にどんな変化を与えてくれそうかを理解してくれているエージェントさんの方が通過率や決定率が明らかに違うのです。
この取り組みの集大成として、「ベストパートナー賞」を創設しました。年間で一番採用にコミットしてくれたエージェントさんをJapanTaxiから表彰させていただいています。
結果、お付き合いしているエージェント数は大きく変わらないものの、 紹介件数は倍増 しました。 以前は50名~100名程度の母集団形成だったのが、現在は月300~400名の方に応募 いただいています。募集要件もしっかり見て、弊社のカルチャーを分かっているエージェントさんとガッチリ組むことで、よりよいエンジニア採用ができています。
組織を変えて、日本のタクシー業界を変える
採用が効率的になったことで、今では、採用広報にも力を入れることができています。エンジニアが中心の会社ではありますが、社内の様子を伝えています。Wantedlyのフォロワー数も260人から3倍近く増えました。
当社ではすでに、ビックデータの活用やIot車載端末開発、車内広告タブレット『Tokyo Prime』、スマートフォン決済システムをローンチしていますが、今後もさらにプロダクト開発を進めていく変革の時期が続きます。JapanTaxiがサービスを提供していくことで、日本の交通の在り方を変えていきたいと考えています。
「タクシー業界の変化が電車やほかの交通にも波及する」ということがもし起こったらすごくおもしろいですよね。
そのために一番重要なのはエンジニア採用です。今後も積極的に採用し、事業をドライブしていきたいと考えています。
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